幼少期は養育者との信頼関係を築く時期であり、その後の人格形成に大きく関わってくる大切な時期と言えますよね。もしそこで、上手く愛着が形成されずに子ども時代を過ごしてしまうと、愛着障害という形で困難が現れる可能性があります。今回の記事では、愛着障害の種類や原因についてご紹介します。また、大人の愛着障害についても解説するので、愛着障害に悩む方はぜひ参考にしてくださいね。
愛着とは
子どもと養育者の間で築かれる心理的な結びつき

愛着とは、子どもと養育者の間に育まれる心理的な結びつきを指す言葉です。赤ちゃんはお腹が空いた時や恐怖を感じた時、泣いてSOSを出しますよね。それに応えて父親や母親などの身近な養育者が何度も優しく接することで、コミュニケーションが生まれます。そして、赤ちゃんが『この人は自分を守ってくれる特別な存在なんだ』と心から認識することこそが、愛着形成の大きな第一歩と言えるでしょう。
愛着のタイプ
安定型

子ども時代に養育者から注がれた愛情をしっかりと実感し、穏やかな環境で伸び伸びと育った人は、安定型に分類されます。『この人はずっと自分を愛してくれる』という信頼感があるため、周りの人に対しても警戒せずに自然と心を開くことができるのです。誰かに素直に助けを求めたり頼ったりできると言えるでしょう。他人の言葉やリアクションもポジティブに受け止める傾向が強く、人間関係のすれ違いで無駄に悩むことも少ないタイプです。
回避型

周囲との間に壁を作り、人と親密な関係を築くのを無意識に避けてしまうのが回避型の大きな特徴。幼い頃に養育者を頼れなかった経験などから『どうせ人は助けてくれない』と学習し、人間関係の深まりを遠ざけてしまうのです。誰にも拘束されない自由な状態を何より重んじる回避型の人は、他人に迷惑を掛けずすべて自己責任で片付けようと努めます。こうした強い自立心と自存の裏には、傷つくのを防ぎたい心理が隠れているのでしょう。
不安型

周囲の顔色や相手の気持ちばかりが頭を離れず、対人関係において常に強い緊張や焦りを感じてしまうのが不安型です。『嫌われたらどうしよう』という恐れから周りの機嫌を伺っては、自分を押さえ込んでしまいます。時には不当な要求すら受け入れてしまうと言えるでしょう。ほんの少し相手がそっけない態度を見せただけでも、強い拒絶と受け取って激しく動揺してしまうのが特徴。その場面を頭の中で反芻しては落ち込んでしまうのが、不安型ならではの悩みです。
混乱型

相手への情愛と激しい恐怖心が交錯し、人との距離感に迷って対人関係が大きく揺れ動いてしまうのが混乱型。混乱型は、『人に近づきたい不安型』と『人から離れたい回避型』の両面を抱える複雑な状態を指します。幼少期に親から酷い虐待を受けたり、情緒が著しく不安定な養育者のもとで育ったりした経験を持つ方に多く見られるでしょう。守ってくれるはずの存在が脅威でもあったというトラウマが、こうした葛藤を生む原因になっているのです。
愛着障害とは
人との距離感が遠すぎたり近すぎたりする障害

愛着障害とは、他者とのコミュニケーションにおいて適切な距離感を保てず、遠すぎたり近過ぎたりしてしまう障害のこと。幼少期に養育者との間で十分な安心感や信頼関係を築けない環境で育った子どもに発症しやすい傾向があります。具体的な症状としては、他人を異常に恐れて固く心を閉ざしてしまうケースが挙げられます。一方で、初対面の人にまで無差別に馴々しく接近して関心を引こうとするケースもありますよ。どちらの現れ方であっても、当人は深刻な生きづらさを抱えているのです。
愛着障害の種類
反応性アタッチメント障害

反応性アタッチメント障害を抱える子どもは、養育者が相手であっても、極端に心を閉ざして一定の距離を置こうとします。困った時に甘えて抱きついたり、泣きついて助けを求めたりすることが滅多になく、表情の乏しさも目立つのが特徴。周囲の大人や同世代の存在にほとんど関心を示さず、自ら交友関係を築こうとしない傾向があります。感情をうまく処理できずにイライラを募らせたり、常に何かに怯えたりしている様子がうかがえるのも大きな特徴と言えるでしょう。
脱抑制型愛着障害

脱抑制型愛着障害を抱える子どもは、相手が誰であれ警戒心を持つことなく無差別に甘えてしまうという特徴が見られます。とにかく自分を見てほしいという一心から、初対面の人にまで過度に親しく接しようとするのです。一方で、同年代のお友達と足並みを揃えるような協調性はうまく育ちにくいという一面もあります。また、見知らぬ大人に対する距離感の調節が非常に難しいことも特徴。周囲からは『わがままで意地っ張りな子』と誤解されてしまいがちな点が、この障害の辛い部分と言えます。
愛着障害の原因
子ども時代に愛着が上手く形成されていない

愛着障害を発症する背景には、幼少期に特定の養育者との間で愛着関係を十分に育めなかったという事情が強く関係しています。例えば、養育者との死別や離別によって、子どもが安心できる心の拠り所を突然失ってしまった場合などです。また、虐待や不適切な養育であるネグレクトに苦しんできた経験も、愛着障害を発症する原因と言えるでしょう。さらに、施設等で世話を担当する大人が次々と変わることが、愛着障害の原因になる場合も。特定の養育者とじっくり向き合えない不安定な環境は、愛着形成の大きな阻害要因につながるのです。
愛着障害を見分ける方法
行動観察や聞き取りに基づいて診断される

愛着障害の医学的な診断を下す際には、精神科医や臨床心理士といった専門家による多角的な視点からの見極めが不可欠となります。診察では、子どもの普段の様子や行動パターンの慎重な観察を行います。過去にネグレクトや虐待などの不適切な養育環境がなかったかどうか、丁寧な聞き取りも同時に進められますよ。見知らぬ人物に対する極端な親密さや、本来の発達段階にそぐわない社会的応答がみられるかなどを総合的に考慮して診断します。
ADHDやASDとの違い

一見すると愛着障害は発達障害であるADHDやASDとよく似た行動パターンを示すため、判断に迷う場面が少なくありません。しかしADHDの多動傾向は、脳の特性として常に見られます。それに対して愛着障害の場合、感情の強い揺らぎが原因で落ち着きを失う点が大きく異なるのです。また、ASDは言葉を文字通りに解釈し、日々のルーティンに固執する特徴を持っています。それに対して愛着障害は、人間関係の不安定さによって情緒が激しく乱されるなど、原因や本質には明確な差があると言えるでしょう。
大人の愛着障害とは
感情や人との距離感が上手くコントロールできない

大人の愛着障害は未だ研究の途上にあり、現在のところ医学的に明確な病気としては確立されていません。しかしメンタルヘルスの現場では、患者が抱える悩みの根本に愛着の問題が潜んでいると見なされる場面が多いのです。例えば、幼少期に安心できる絆を結べないまま成長すると、人格形成に影響を及ぼすと指摘されています。大人になってから人間関係で苦しんでいても、その原因を愛着障害だと自分自身で気付けない場合、一人で途方に暮れてしまうケースも少なくないと言えるでしょう。
大人の愛着障害の特徴
過剰反応や怒りを抑えられない

大人の愛着障害には、周囲の何気ない一言に過度に反応して深く傷ついたり、昔の過ちをずっと引きずって苦しんだりする特徴があります。自分の中で湧き上がる怒りの感情を制御するのが難しく、激しい憤りを感じた時には『自分は一体何に対して腹を立てているのだろう』と整理がつかなくなることも。心の揺らぎが大きいため他者と柔軟に歩み寄るゆとりが持てず、上手に折り合いをつけられない苦しさを抱えていると言えるでしょう。
対人関係を築く際に苦労する

人間関係を円滑に築けず、社会生活で様々な生きづらさを感じてしまう点が大人の愛着障害における顕著な傾向です。養育者に対して強い怒りや恨みを抱き続ける人がいる一方で、必要以上に流されて従順になってしまう人もいます。子どもの頃の症状と同様に、適切な距離感を測ることが苦手。パートナーや実の子どもと向き合う場面でも『どう愛せばいいのか分からない』と悩むなど、愛し方の壁に突き当たってしまうケースがあります。
アイデンティティの確立が困難

自分という存在に確信が持てず、アイデンティティの確立に大きな困難を抱えてしまう点が、大人の愛着障害における特徴的な症状。幼少期に愛着基盤を作れなかった影響が重く、キャリアの選択といった人生の重大な局面でなかなか決断を下せないのです。時間をかけて悩んだ末にわずかな情報だけで焦って決めてしまったり、いざ決断した後も自分の判断に満足できず後悔を重ねたりします。考えがブレやすい自分自身に、長年苦しめられ続けていると言えるでしょう。
愛着障害の治し方
子どもの場合

子どもに愛着障害の兆候が見られた際、何よりも優先して取り組みたいのが『安全基地』を作ってあげることです。温かく受け止めてくれる養育者の存在を実感できてこそ、子どもは『ここは守ってもらえる場所なんだ』と心を解きほぐすことができます。ただし、愛着障害の原因が育児環境にある場合、養育者だけに負担をかけず、親族や医師と連携しながら家庭全体を支えていく視点が欠かせません。周囲の大人がチームとなって子どもをサポートすることで、子どもは健やかな愛着を再形成できるのです。
大人の場合

大人の愛着障害を克服するには、不足していた愛情や安心感をスキンシップやコミュニケーションで補っていくプロセスが不可欠。とはいえ大人になると、実の親と関係をやり直すのは難しいケースが多いですよね。恋人や友人といった身近な存在との交流が、回復への大切なきっかけになります。また、職場などで対等に信頼し合える人間関係を築き、自分の存在を尊重してもらえる環境に身を置くことが大切。本来の自己肯定感を取り戻し、症状がやわらいでいく可能性が高まるでしょう。
まとめ
愛着障害の克服に向けたメンタルケアをしよう

いかがでしたか?今回の記事では、愛着や愛着障害について解説しました。幼少期の愛着の形成が、その後の対人関係やアイデンティティの確立に影響を与えます。また、子どもと大人の場合に分けて、愛着障害の治し方もご紹介しました。愛着障害の根本的な原因は愛着が欠けていることにあるため、それが子どもであっても大人であっても安心感を作ることが大切。愛着障害を克服するために、メンタルケアをしっかりと行いましょう。


