子どもの自傷や他害とは?【療育・原因・対策・対処法】

子どもが、自分自身を傷つけてしまう自傷行為をする、またはお友達や大人に他害する姿を見ると、どうしても焦ってしまいますよね。そんなとき、自分や相手を傷つける子どもの行動を否定したり、強く叱りつけたりはしていませんか?今回の記事では、子どもが自傷や他害の行動をとる原因や、適切な対応の仕方について解説しています。子どもの行動を大人が一方的に否定して子どもの心を傷つけてしまわないように、この記事を参考にして子どもの自傷や他害の知識を深めてみてくださいね。

療育における自傷や他害とは?

自分自身の身体を傷つけること

療育における自傷とは、子どもが自分自身の身体を意図的に傷つけてしまう行動を指します。自分の頭を壁にぶつけたり皮膚を強く引っ掻いたりする姿として見られることが多く、一見すると不審に思えるかもしれません。しかし、こうした行動の多くは

・強い不安を和らげたい
・言葉にできない葛藤を伝えたい

といった、子どもからの切実なメッセージなのです。言葉での表現がまだ難しい子どもにとって、自傷は自分を守るためのSOSであることが少なくありません。

他者の身体や物を傷つけること

療育における他害とは、お友達や先生の身体、あるいは周囲の物を意図的に傷つけてしまう行動のことです。お友達を噛んでしまったり、玩具を乱暴に投げつけたりする姿として現れ、ヒヤリとすることも多いでしょう。こうした行動は一見攻撃的に思えますが、実は

・自分の思い通りにいかないもどかしさ
・パニック状態

などの感情を、上手に言葉で表現できないSOSであることがほとんどです。感情の整理や伝えるスキルが未発達な子どもにとって、他害は自分の気持ちを訴える手段の一つになってしまっているのです。

子どもが自傷行動をする原因は?

自分の気持ちを伝えられないから

子どもが自傷行動をする1つ目の原因は、自分の気持ちを伝えられないからです。例えば、要求が通らず悔しいときや体調が悪くて辛いとき、言葉で言えないもどかしさから自分の頭を叩くなどしてSOSを表現することがあります。まだ語彙力が未発達な子どもにとって、抑えきれない強いストレスや葛藤を外に発散する手段が、自分の体を傷つけることになってしまうのです。そのため、行動を叱るのではなく「嫌だったんだね」と気持ちを代弁し、少しずつ言葉で伝える手助けをしていきましょう。

痛みで不快な刺激を紛らわせたいから

子どもが自傷行動をする2つ目の原因は、痛みで不快な刺激を紛らわせたいからです。例えば、過度の緊張や大きな音によるストレスでパニックになった際、自分の身体に痛みを加えることで精神的な苦痛を打ち消そうとします。身体的な刺激に意識を向けることで、処理しきれないパニック状態や心のモヤモヤから一時的に逃れようとする、一種の自己防衛反応と言えるでしょう。そのため、不快な環境を速やかに整えて気持ちを落ち着かせ、安心できる空間や別の方法へ誘導してあげることが大切ですね。

手持ち無沙汰になっているから

子どもが自傷行動をする3つ目の原因は、手持ち無沙汰になっているからです。例えば、活動の合間の待ち時間が長かったりすると、手持ち無沙汰を解消しようと自分の髪を引っ張るなどの行動に出ることがあります。手元に意識が向かいやすい子どもにとって、退屈感や物足りなさを埋めるための行動が自傷に繋がってしまう可能性があるのです。そのため、次の見通しが立てやすい環境を整えたり夢中になれる玩具を用意したりして、スキマ時間を作らない工夫をしてあげましょう。

楽しくて興奮しすぎるから

子どもが自傷行動をする4つ目の原因は、楽しくて興奮しすぎるからです。例えば、大好きな遊びに夢中になった際、テンションが高まりすぎて気持ちのコントロールが利かなくなり、自分の体を叩いてしまうことがあります。ポジティブな感情が、処理しきれないほど大きな刺激となり、その過剰なエネルギーが自傷として現れるのです。そのため、過度に興奮している様子が見られたら一度落ち着ける静かな環境へ誘導し、気持ちをリセットできるよう優しくサポートしていきましょう。

パニックや癇癪の衝動

子どもが自傷行動をする5つ目の原因は、パニックや癇癪の衝動です。中には、てんかんに起因する自傷行動もあり、てんかん発作によって神経細胞が興奮することで、パニックや自傷行動を引き起こす場合がありますよ。突発的に行ってしまう自傷行動のリスクを減らすには、無理に言葉で諭そうとせず、まずは危険な物から遠ざけて安全を確保することが大切です。本人が落ち着くまでそっと寄り添ってあげましょう。

わからないことへの不安

子どもが自傷行動をする6つ目の原因は、わからないことへの不安です。例えば、初めての場所に行ったときや、何をしたらいいか分からない状況にいるとき、恐怖心から自分の皮膚を強く引っ掻いてしまうことがあります。先が見通せない状態は子どもにとって大きな負担となり、その心理的ストレスを和らげようとして自傷行動へと繋がってしまうのです。そのため、絵カードなどで次の予定を具体的に視覚化し、次に何をするのかを分かりやすく伝えて不安を取り除く取り組みが有効です。

急な予定変更に混乱するから

子どもが自傷行動をする7つ目の原因は、急な予定変更に混乱するからです。例えば、楽しみにしていたお散歩が急な雨で中止になったとき、ショックから自分の頭をぶつけるなどの行動に出てしまうことがあります。変化に対応する力が未発達な子どもにとって、想定外の事態はショックであり、その困惑が自傷として現れるのです。そのため、予定変更が生じた際は、理由を優しく伝えながら次の行動へスムーズに切り替えられるよう丁寧にサポートしていきましょう。

周囲の注意を引きたいから

子どもが自傷行動をする8つ目の原因は、周囲の注意を引きたいからです。例えば、先生が他のお友達に付きっきりで寂しいときに自分を叩いて見せることで「こっちを見てほしい」とアピールすることがあります。自分の存在を認めてほしいという切実な思いから、関心を引く手っ取り早い手段として自傷を選んでしまうことがあるのです。そのため、危険を防ぎつつ、普段の適切な行動の際に関わりを増やし、安心感を与えられるように心がけましょう。

子どもが他害をする原因は?

相手に嫌なことをされたから

子どもが他害をする1つ目の原因は、相手に嫌なことをされたからです。例えば、大切に使っていたおもちゃを急に奪われたり身体を押されたりした際、とっさに相手を叩いたり噛みついたりすることがあります。自分の不快感や悔しい気持ちを咄嗟に言語化できない子どもは、相手への直接的な攻撃行動によって嫌だという思いを表現してしまうのです。そのため、一方的に叱るのではなく、悔しさに共感しつつ言葉で伝える方法を優しく教えることが大切ですよ。

相手の反応をおもしろく感じているから

子どもが他害をする2つ目の原因は、相手の反応をおもしろく感じているからです。例えば、友達を押したときに相手が大きな声を出したりすると、そのリアクションを珍しいと楽しんでしまうことがあります。善悪の判断や、相手が痛がっているという痛みの理解がまだ乏しいため、純粋な好奇心から他害を繰り返してしまうのです。そのため、過剰に反応して喜ばせるのは避けましょう。他害はいけないことだと毅然とした態度で静かに伝え、別の遊びへと気持ちを切り替えさせることが重要です。

他害行動が悪いことである自覚がないから

子どもが他害をする3つ目の原因は、他害行動が悪いことである自覚がないからです。例えば、お友達の手を強く握ったり叩いたりした際、本人は親しみや冗談のつもりで行っていて、相手を傷つけている自覚がないことがあります。相手の立場に立って痛みや気持ちを想像する発達が未熟なため、自分の関わり方がいけない行動だと気づけないのです。そのため、痛いからやめようねと相手の気持ちやダメな理由を短く分かりやすい言葉で丁寧に教え、根気強く伝えていきましょう。

急な予定変更によって混乱し不安になるから

子どもが他害をする4つ目の原因は、急な予定変更によって混乱し不安になるからです。例えば、楽しみにしていた公園遊びが急な雨で中止になった際、パニックになって近くにいるお友達や先生を叩いてしまうことがあります。予定が変わったり、自分の思い通りにならなかったりすると感情のコントロールが利かなくなり、その行き場のない不安や焦りが攻撃行動として表れるのです。予定が変更になったときは、慌てないように理由を優しく伝え、別の見通しを提示しながら気持ちを落ち着かせる工夫を取り入れましょう。

自分の気持ちを伝えられないから

子どもが他害をする5つ目の原因は、自分の気持ちを伝えられないからです。例えば、おもちゃを貸してほしいときや嫌なことがあったとき、言葉が出ずに咄嗟にお友達を叩いてしまうことがあります。語彙力や表現力が未発達な子どもにとって、抑えきれないもどかしさや欲求を相手に知らせる手段が攻撃行動になってしまうのです。そのため、大人が「貸してって言いたかったんだね」と気持ちを代弁し、言葉で伝える方法を優しく教えることが大切ですよ。

自傷や他害の行動がみられる子どもへの対処法

寄り添い適切な声掛けを行う

自傷や他害の行動がみられる子どもへの1つ目の対処法は、寄り添い適切な声掛けを行うことです。例えば、パニックや癇癪を起こしている子どもに対し「悲しかったね」「〜したかったんだね」と感情を代弁すると、子どもは徐々に安心感を得られます。子どもの感情が高ぶっている場合、否定的な言葉は受け入れにくい傾向です。寄り添った言葉で受け止められたと感じると興奮が収まり、落ち着きを取り戻しやすくなりますよ。まずは子どもの心に寄り添い、短く優しい言葉で気持ちを包み込むような声をかけてみましょう。

環境から不快な刺激を減らす

自傷や他害の行動がみられる子どもへの2つ目の対処法は、環境から不快な刺激を減らすことです。なぜなら、大きな生活音や眩しい光、混雑した場所などでストレスを感じてパニックを起こし、自傷や他害に繋がることがあるからです。例えば、音に敏感な子にはイヤーマフを活用したり、光に過敏な子には静かな薄暗い空間を用意したりして、子どもが安心して過ごせる環境を整えてあげましょう。刺激に過敏な子どもにとって不快な環境は強い苦痛となるため、その要因を取り除くことで心と行動が安定するのです。

コミュニケーションツールを利用する

自傷や他害の行動がみられる子どもへの3つ目の対処法は、コミュニケーションツールを利用することです。例えば、自身の感情が相手に伝わりやすくなる表情のカードや、トイレやご飯などの要求が伝わりやすくなるイラストのカードなど取り入れます。このようなアイテムがあると、言葉が出ない場面でも自分の意思をスムーズに表現できるようになりますよ。自分の思いを相手に伝える手段が増えると、言葉にならないイライラや伝わらないもどかしさが解消され、攻撃的な行動が自然と減っていくでしょう。

スケジュールの見通しを持ちやすいようにする

自傷や他害の行動がみられる子どもへの4つ目の対処法は、スケジュールの見通しを持ちやすいようにすることです。なぜなら、先の見通しが持ちにくい環境に置かれたり、急な予定変更などに直面したりすると、苛立ちや不安を覚えて自傷や他害の行動を行う可能性があるからです。例えば、次に何をするかを視覚的なスケジュール表で示しておくと、見通しが立って安心して次の行動へ移れるようになりますよ。子どもにとって、先が分からない不安や急な展開による混乱は強いストレスとなり、パニックや衝動的な行動を引き起こす大きな要因となるのです。

自傷や他害が起きた状況を記録する

自傷や他害の行動がみられる子どもへの5つ目の対処法は、自傷や他害が起きた状況を記録することです。なぜなら、記録を振り返ることで、子どもにとって苦手なことが見えてくるため、自傷や他害の行動が起こる前に対策を講じやすくなるからです。例えば「朝、保育室で〇〇した」というように起きたことを細かくメモしておくと、引き起こす原因やパターンの分析にとても役立ちますよ。記録ノートなどを活用して日々の変化を把握し、適切な予防策や関わり方に繋げていきましょう。

子どもの自傷や他害に困ったら

専門機関に相談する

児童相談所

子どもの自傷や他害に困ったときに相談できる1つ目の専門機関は、児童相談所です。児童相談所では、専門的な視点から問題の原因を紐解き、家庭や園での適切な関わり方について具体的なアドバイスを直接受けることができます。また、児童相談所には児童心理司や社会福祉士などの専門家が在籍しており、子どもの心や行動に関する深い悩みにも手厚く対応してくれますよ。電話や窓口で気軽に無料相談ができますので、一人で抱え込まずに専門家の力を頼ってみてくださいね。

参考:子ども家庭庁|児童相談所の概要

発達障害者支援センター

子どもの自傷や他害に困ったら相談できる2つ目の専門機関は、発達障害者支援センターです。なぜなら、個々の特性に応じた具体的な療育方法や関わり方を提案してくれるため、課題の根本的な解決に向けた道のりが見えやすくなるからです。ここでは、発達の特性に関する専門知識を持ったスタッフが、子どもの行動上の悩みに特化したサポートを行ってくれます。地域ごとに設置されており、電話相談から個別面談まで親身に対応してくれますよ。子どもの自傷や他害に困ったときは、活用を検討してみましょう。

参考:国立障害者リハビリテーションセンター

医療機関

子どもの自傷や他害に困ったら相談できる3つ目の専門機関は、医療機関です。なぜなら、専門的な検査を通して背景にある発達の特性や心の状態を把握できるため、より適した接し方や治療方針を見極めやすくなるからです。医師や心理士といった専門家から医学的な観点に基づいた診断やアドバイスを受けられ、必要に応じて薬物療法や精神的なケアを行えます。自傷や他害で本人や周囲の安全が脅かされる場合は、一人で抱え込まず早めに受診を検討してみましょう。

まとめ

子どもの自傷や他害の原因を知り対処しよう!

今回は子どもの自傷や他害について解説しました。子どもが自傷や他害の行動をしてしまう背景には、発達障害やその特性に原因がある場合も見受けられます。一見、子ども同士の喧嘩や、相手に対する一時的な暴力のように見えても、原因に応じた適切な対処を行わなければ悪化させてしまう危険性がありますよ。保護者や保育士は医療機関や支援機関などと連携し、正しい知識を身につけて、子どもの自傷と他害の行動の改善を目指していきましょう!