解離性健忘とは?症状や治療法を解説!【うつ・障害・原因・記憶・思い出す・治る】

皆さんは、解離性健忘という障害をご存じでしょうか。解離性健忘は、強いストレスやつらい体験などがきっかけとなり、特定の出来事や期間の記憶を思い出せなくなる心の障害です。たとえば、事故や災害のあとに、その当時の記憶だけ抜け落ちてしまう場合があります。子どもから大人まで年齢に関係なく起こる可能性があり、学校や仕事、人間関係に影響が出ることも少なくありません。しかし、安心できる環境の中で適切な治療や支援を受けることで、症状の改善が期待できるとされていますよ。今回の記事では、解離性健忘の種類や症状、原因、治療法について分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

解離性健忘とは?

強い心理的ストレスが原因で起こる記憶障害のこと

解離性健忘とは、強いストレスや心の傷がきっかけとなり、一部の記憶を思い出せなくなってしまう障害のことです。特に、大きな事故や深く傷つく体験をしたあとに、その出来事に関する記憶や自分自身の情報が抜け落ちてしまう場合があります。日常生活に必要な知識や習慣は保たれていることが多いものの、本人にとって大きな苦痛を伴う体験を無意識のうちに閉じ込めてしまうのが特徴ですよ。症状は短期間で落ち着くこともありますが、長く続くケースも見られます。そのため、安心できる環境の中で心理療法やカウンセリングを受けながら、少しずつ心の負担を和らげていくことが大切といえるでしょう。

解離性健忘の主な種類とは?

限局性健忘

解離性健忘の1つ目の種類に、限局性健忘があります。これは、ある特定の期間の記憶だけが部分的、あるいは完全に思い出せなくなってしまう状態を指します。たとえば、いじめや虐待、大きな事故や災害など、とてもつらい経験をしたあとに、その出来事に関する記憶だけが抜け落ちてしまうケースが見られますよ。また、限局性健忘は脳の損傷によるものではなく、強いストレスや心の傷が大きく関係していると考えられています。本人は記憶がなくなっていることに気づいていない場合もあり、周囲が戸惑うことも少なくありません。

選択的健忘

解離性健忘の2つ目の種類は、選択的健忘と呼ばれるものです。これは、つらい出来事のすべてを忘れてしまうのではなく、その中でも特に苦痛の大きかった場面だけを思い出せなくなる状態を指します。たとえば、事故に遭った際の出来事はある程度覚えていても、強い恐怖を感じた瞬間だけ記憶が抜け落ちてしまうケースがあります。また、虐待や大きなショックを受けた経験の中で、一部分だけ思い出せなくなることも少なくありません。限局性健忘と比べると記憶の失われる範囲は狭く、断片的に覚えていることが特徴です。場合によっては、限局性健忘とあわせて発症することもありますよ。

全般性健忘

解離性健忘の3つ目の種類は、全般性健忘と呼ばれるものです。これは、自分の名前や家族のこと、これまでの人生で経験してきた出来事など、大切な記憶を広い範囲で忘れてしまう状態を指します。突然発症する場面も多く、「自分が誰なのか分からない」「今どこにいるのか思い出せない」と混乱してしまい、日常生活に大きな影響が出ることも。発症のきっかけは、戦争体験や性的暴力、命の危険を感じるような出来事など、非常に強いストレスや深い心の傷が引き金になると考えられていますよ。全般性健忘は、ほかの解離性健忘よりも症状が重くなるケースが多く、すべての記憶が完全に戻らないこともあります。

系統的健忘

解離性健忘の4つ目の種類は、系統的健忘と呼ばれるものです。これは、特定の人物や出来事、場所などに関する記憶だけが部分的に失われてしまう状態を指します。たとえば、ある人との思い出だけが思い出せなくなったり、特定の場所へ行った記憶だけが抜け落ちてしまったりすることがありますよ。一方で、それ以外の日常生活に関する記憶は保たれている場合が多いため、本人も周囲の人も気づきにくいことが特徴です。系統的健忘は、強いストレスやつらい体験から心を守るための防衛反応の1つと考えられています。心に大きな負担がかかった際に、関連する情報を無意識のうちに遮断し、自分自身を守ろうとしている状態といえるでしょう。

持続性健忘

解離性健忘の5つ目の種類は、持続性健忘と呼ばれるものです。これは、新しく経験した出来事や聞いた内容を記憶として保ちにくく、覚えたはずのことをすぐに忘れてしまう状態を指します。たとえば、少し前に会話した内容や約束したことを思い出せなかったり、その日にあった出来事を覚えていなかったりする場合がありますよ。一般的な物忘れとは異なり、昔の記憶は比較的残っている一方で、新しい情報だけが定着しにくい点が特徴です。そのため、学校や仕事、日常生活の中で困りごとが増えてしまうことも少なくありません。こうした症状は、脳の損傷ではなく、強いストレスや心の負担などの心理的な要因が関係していると考えられていますよ。

解離性健忘の主な原因とは?

事故・災害・犯罪被害などの外傷的な体験

解離性健忘の主な原因の1つに、事故・災害・犯罪被害などによる外傷的な体験が挙げられます。強い衝撃や極度の恐怖によって、交通事故の瞬間だけ思い出せなかったり、地震や火災を経験したあとに当時の記憶が抜け落ちたりするケースがありますよ。また、暴力や犯罪被害を受けた場合にも、恐怖心が強すぎるあまり、一部の記憶が思い出せなくなることも。人はつらい体験をすると、心が自分を守ろうとして、出来事そのもの・当時の感情・場所・人に関する記憶を無意識のうちに切り離してしまうと考えられています。

虐待・いじめ・DVなどの長期的なストレス

解離性健忘の2つ目の原因として、虐待・いじめ・DVなどによる長期的なストレスが挙げられます。暴言を繰り返し受けたり、身体的な暴力や虐待が続いたりすると、恐怖や不安が積み重なり、心に大きな負担がかかってしまいます。特に幼少期にこうした環境で過ごした場合、つらい出来事の記憶だけが抜け落ちたり、当時のことを思い出せなくなったりするケースがあるでしょう。これは、強い苦痛から自分自身を守るために、心が無意識のうちに記憶を閉じ込める防衛反応の1つと考えられていますよ。

大切な人との死別やトラウマ体験

解離性健忘の原因には、大切な人との死別や強いトラウマ体験も挙げられます。家族や親しい友人を突然亡くしたり、大きな事故や災害を経験したりすると、深い悲しみや強い恐怖によって心に大きな負担がかかってしまいます。そのショックがあまりにも大きい場合、耐えがたい経験による負担を減らそうとして、記憶が一時的に整理されにくくなることがあるのです。実際に、「お別れをした時の記憶だけ思い出せない」「当時の出来事を断片的にしか覚えていない」といったケースも見られますよ。こうした反応は弱さではなく、強いストレスから気持ちを保つために起こる反応の1つとされています。

過重労働や極度の生活苦による精神的圧迫

過重労働や極度の生活苦による精神的圧迫も、解離性健忘の原因として挙げられます。たとえば、長時間労働が続いて十分に休めなかったり、突然仕事を失って生活費や借金の不安を抱えながら毎日を過ごしたりすると、精神に大きな負担がかかってしまいます。さらに、「頑張らなければ生活できない」という緊張状態が長く続くことで、知らず知らずのうちに心が限界を迎えてしまうこともあるでしょう。強いストレスが心の許容量を超えると、「これは自分のことではない」と脳が記憶を切り離すように働く場合がありますよ。

解離性健忘の主な治療法とは?

安心できる環境で過ごす治療法

解離性健忘の治療では、まず本人が安心して過ごせる環境を整えることが大切です。つらい出来事を思い出させる状況を避けたり、理解のある家族や支援者に囲まれたりすることで、少しずつ心の安定を取り戻しやすくなりますよ。また、早急に記憶を回復させる必要がなければ、無理に思い出そうとせず、安心できる環境の中で過ごすだけでも十分な支援になることがあります。本人の気持ちやペースに寄り添いながら、必要に応じてカウンセリングや心理療法を取り入れることで、少しずつ記憶が整理されていくでしょう。症状によっては、催眠法や薬剤を用いた治療が行われることもありますよ。

心理療法

解離性健忘の治療には、心理療法という治療方法もあります。心理療法は、カウンセリングを通して不安やつらい気持ちを整理していく治療法ですよ。たとえば、事故や虐待などの体験によって強い恐怖を抱えている場合、安心できる環境の中で少しずつ気持ちを言葉にしていきます。無理に記憶を掘り起こすのではなく、自然に話せる状態を整えながら、心の回復を目指していくのが特徴といえるでしょう。具体的には、以下のような方法が用いられます。

    認知療法
    認知療法は、物事の受け止め方や考え方の偏りに気づき、心の負担を軽くしていく方法です。たとえば、「全部自分が悪い」と強く思い込んでいる場合、その考え方を少しずつ整理し、気持ちを落ち着かせていきます。不安や自己否定感を和らげることで、日常生活を送りやすくする目的がありますよ。
    催眠療法
    催眠療法は、リラックスしたトランス状態(催眠状態)を作りながら心の奥にある記憶や感情に向き合う治療法です。熟練した精神科医や臨床心理士のサポートのもとで行われ、強い緊張を和らげながら記憶を整理していきます。本来の自分や落ち着きを取り戻したり、ストレスに対応できる力を高めたりするのに効果的ですよ。
    記憶想起法
    記憶想起法は、写真や音楽、当時の出来事に関する話などをきっかけにして、少しずつ記憶をたどっていく方法です。たとえば、昔よく聴いていた音楽を耳にしたことで、当時の出来事を思い出す場合がありますよ。記憶想起法は、記憶がなかなか戻らないときや、早期の回復が必要な際に用いられます。本人が安心できる環境の中で行い、心に大きな負担をかけないよう配慮しながら進めていくことが重要ですね。

薬物療法

解離性健忘の治療には、薬物療法という治療方法もあります。薬物療法は、解離性健忘そのものを直接治すというよりも、不安や不眠、抑うつ状態など、あわせて現れる症状を和らげるために行われる治療法です。「夜になると強い不安で眠れない」「気持ちが沈んで毎日を過ごすのがつらい」といった場合に、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠導入剤などが用いられることがありますよ。心や体の緊張を和らげることで、安心して休息を取れるようになり、心理療法にも取り組みやすくなります。ただし、薬だけで無理に記憶を回復させるものではないため、本人の状態に合わせながら、カウンセリングや周囲の支援とあわせて進めていくことが大切ですね。

解離性健忘は、早期発見・早期治療がとても大切です。「もしかしたら解離性健忘かも?」と思ったら、早めに専門の医療機関へ相談してみましょう。以下のサイトでは、精神科・心療内科など、全国の医療機関を検索することができます。ぜひ活用してみてください。

解離性健忘とほかの健忘症との違いとは?

原因が心的ショックか脳の障害かの違い

解離性健忘とほかの健忘症は、どちらも記憶を思い出せなくなるという共通点があります。しかし、大きな違いはその原因にあります。解離性健忘は、事故や虐待、大切な人との死別など、強いストレスやトラウマによる心のショックが関係しています。一方で、ほかの健忘症は、脳梗塞やアルツハイマー病、頭部外傷など、脳そのものの障害によって起こるケースが多いのが特徴ですよ。具体的な違いは、以下の通りです。

項目解離性健忘ほかの健忘症
主な原因強いストレスやトラウマなど心のショック脳梗塞・アルツハイマー病・頭部外傷など脳の障害
脳の異常検査で異常が見つからない場合も多いMRIやCTで異常が確認されることがある
回復の特徴心の安定とともに記憶が戻ることがある原因となる脳の状態によって異なる

解離性健忘と関連性のある障害とは?

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

解離性健忘と関連のある障害の1つに、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が挙げられます。どちらも強いトラウマ体験が関係する心の不調ですが、症状には違いがあります。解離性健忘では、つらい出来事に関する記憶そのものが意識から切り離され、特定の期間や出来事を思い出せなくなるのが特徴です。一方、PTSDでは記憶は消えずに残り続けるのが特徴ですよ。特に、事故や災害などの場面が突然よみがえるフラッシュバックや、強い緊張状態が続く過覚醒、トラウマを思い出させるものを極端に避ける回避などの反応が見られます。ただし、解離性健忘とPTSDは全く別の障害というわけではなく、合併症として現れるケースもありますよ。一人で抱え込まず、心療内科や精神科などの専門家に相談して、心の負担を軽減しながら回復を目指しましょう。

抑うつ・不安障害

解離性健忘は、抑うつや不安障害と関連して現れることもあります。強いストレスやつらい体験が長期間続くと心に大きな負担がかかり、「何をするにも気力が湧かない、体が動かない」といった抑うつ症状が見られることがあります。また、不安障害を伴う場合には、「常に不安で落ち着かない」「些細なことでも強い緊張を感じる」「不安が強くて眠れない」などの症状が現れることも。抑うつや不安障害が深刻化すると、仕事や学校に行けなくなったり、人との関わりを避けるようになったりするなど、生活全般に大きな影響が及ぶこともあります。そのため、症状を我慢し続けるのではなく、安心できる環境の中で十分に休養を取りながら、必要に応じて医療機関や相談機関などの専門的な支援を受けることが大切ですよ。

子どもの不安障害については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

解離性同一性障害・解離性とん走

解離性健忘と関連が深い障害として、解離性同一性障害や解離性とん走が挙げられます。解離性同一性障害は、自分の中に複数の人格が存在するように感じられる状態で、多重人格障害と呼ばれることもあります。人格が切り替わる際には、別の人格のときの記憶が抜け落ちてしまうことがあり、自分では行動をコントロールできない感覚に戸惑う場合も少なくありません。また、解離性とん走では、突然遠くへ移動し、その間の行動や出来事を覚えていない状態が見られます。たとえば、「気づいたら知らない場所にいた」「どうやって来たのか思い出せない」といったケースもありますよ。これらの症状は、強いストレスやつらい体験によって心に大きな負担がかかり、「苦しい現実や危険から逃れたい」という無意識の欲求が背景にあるとされています。こういった場合は、うつ病と合併するケースもあるため、早めに専門家の支援を受けるようにしましょう。

まとめ

安心して回復できるように周囲が理解し支えよう

いかがでしたか?今回は、解離性健忘について詳しく解説していきました。解離性健忘の症状がある人を支えるうえでは、家族や友人が症状について正しく理解し、安心できる存在になることがとても大切です。しかし、場合によっては家庭環境そのものが強いストレスとなり、症状に影響しているケースもあります。また、「周囲に知られたら変に思われるかもしれない」と不安を感じ、自分の状態を隠している場合も少なくありません。そんなときは無理に問い詰めず、「大丈夫だよ」と落ち着いて寄り添うことが安心につながります。本人の気持ちを大切にしながら、周囲が適切にサポートしていきましょう。