自閉症という言葉を知っていても『高機能自閉症』は聞いたことがない、という方は多くいるのではないでしょうか。今回の記事では高機能自閉症の特性や、子どもに対する工夫をご紹介します。加えて、二次障害や大人で診断される人の特徴を解説します。高機能自閉症の子どもと関わる機会のある方は、ぜひ本記事の内容を役立ててくださいね。また、自分の生活で心当たりのある方には、生き方のヒントになれば幸いです。
自閉症とは
対人関係が不得意などの特性を持つ発達障害

自閉症は、生まれつきの脳の働き方による発達障害の一種のため、病気ではありません。主な特徴としては、対人関係をスムーズに築くことが不得意な点や、特定の物事に対する強いこだわりなどが挙げられます。こうした特性は本人の努力不足ではなく生まれた時からの個性と言えるでしょう。根本的に治療する薬は存在しないため、一人ひとりの異なる強みや苦手な特徴に優しく寄り添う必要があります。個別に根気強く教育することが大切です。
高機能自閉症とは
自閉症のうち知的な遅れを伴わないもの

高機能自閉症とは、自閉症特有のこだわりなどの特性がありながらも、知的能力の遅れが見られない状態を指す言葉です。一般的な自閉症の場合、言葉の遅れや知的な遅れがはっきりと現れやすいです。特徴的なのは、3歳頃までは言葉の発達に遅れが目立つものの、幼少期の後半になると自然と普通に言葉を話せるようになる点でしょう。パッと見では分かりにづらいですが、周囲がその特性に気づいて個別にサポートをしてあげることが、大切になるのです。
アスペルガー症候群やASDとの違い
アスペルガー症候群は言語能力の遅れも伴わない

知的発達に遅れがなく対人関係を苦手とする点から、高機能自閉症とアスペルガー症候群はとても混同されやすい存在です。しかしアスペルガー症候群の場合、知的能力だけでなく言語能力に関しても遅れや障害が見られないという明確な違いがあります。つまり、幼少期などに言葉の発達の遅れを伴う高機能自閉症とは、そこが見分ける際のポイントになると言えるでしょう。それぞれの特性を正しく理解してあげることで、向き合い方のヒントが見えてきそうですね。
ASDはいくつかの障害をまとめた新名称

2013年の診断基準改定によって、高機能自閉症やアスペルガー症候群など複数の障害が『ASD』という一つの名称に統合されました。ASDは、対人関係の難しさやこだわり、感覚の偏りなどを持つ発達障害。幼少期から生きづらさを抱えるケースが多いです。ただ、周囲の環境によっては大人になって初めて診断を受ける人もいますよ。個別の境界線をあえて曖昧にして捉え直した新名称が、グラデーションとも言える特性を包括できる仕組みを作ったのです。
高機能自閉症の特性
言語コミュニケーションの遅れがある

言葉の遅れ自体は改善するものの、その場の状況に合わせた言葉を適切に選んで使うことに困難さを感じるのが、高機能自閉症の特徴です。自分の気持ちを相手に上手く伝えられなかったり、逆に他人の心の動きを理解したりするのが苦手な人が少なくありません。また、相手の言葉をユーモアや比喩ではなく文字通りに受け取る癖がある場合も。相手の表情や身振りから感情を読み取るのが難しい、と感じる人もいるでしょう。その結果、相手の話を意図とは違う形で誤解してしまう場合があります。
こだわりが強くて反復行動を取る

高機能自閉症は、興味のある物事に対して過度な集中力を発揮する一方で、それ以外の分野には全く関心を持てないケースがあります。自分だけの明確なルールやルーティンがはっきりと決まっているため、限定的な行動を何度も反復するのも大きな特徴と言えるでしょう。そのこだわりゆえに、特定のジャンルにおいて驚くほどたくさんの知識を身につける人がいるのです。こうしたブレない独自のこだわりや行動パターンは、彼らにとって大切な心の拠り所だと言えます。
人間関係において困難さが生じる

人間関係の構築に苦手意識を抱えてしまうのは、高機能自閉症の人が直面しやすい代表的な特徴の1つです。自分の頭の中にある表現したい思いが上手く言葉にできず、ストレスを感じる場面が日常的にあると言えるでしょう。さらに、相手の本音を正確に読み取ることが難しいため、時に『場の空気が読めない人』と誤解されて周囲とトラブルになってしまうことも。こうした悪気のないすれ違いが生じるからこそ、高機能自閉症について理解して、支えていきたいですよね。
感覚に偏りがある

高機能自閉症の人は、五感の受け止め方が他の人よりも過剰に敏感だったり、反対に極端に鈍感だったりするケースが多いです。例えば不意に体に触れられることに、強い抵抗を覚える場合があります。また、電話の呼び出し音や犬の鳴き声といった日常の音が、ストレスになってしまうことがあるでしょう。味覚の敏感さがあれば、常に慣れた味ばかりを好んで極端な偏食になってしまうことも。周囲の刺激が強いからこそ、私たちは彼らの敏感さを否定せず、安心できる環境を用意できると良いですね。
高機能自閉症の子どもに対する工夫
分かりやすい言葉で話しかける

高機能自閉症の子どもは言語能力に遅れを伴うケースが多いため、分かりやすい言葉を選んで話しかけてあげることが大切。もし難しい表現や曖昧な言い方で声をかけてしまうと、子どもは何をすべきか分からずにパニックを起こしてしまうでしょう。そのため、普段よりも意識してゆっくりと話すことも重要になってきます。例えば「そこに座って」などの抽象的な指示は避けましょう。「白色の椅子に座ろうね」といったように具体的な言葉を添えてあげると、子どもは理解できて安心するのです。
集中しやすい環境を整える

高機能自閉症の子どもは、何かにじっくり取り組む際に集中が途切れやすいという問題を抱えているケースが多いです。だからこそ、周りの大人が集中しやすい環境を整えてあげることが重要になってくるでしょう。例えば、周囲の些細な音が気になってしまう子や、視界に物が多く入るだけで気が散って手が止まってしまう子などがいます。まずは刺激の少ない静かな学習空間を用意したり、机の上をすっきりと片付けたりする工夫から始めましょう。
イラストを取り入れるなどして視覚的に伝える

高機能自閉症の子どもは、目に見えない出来事を想像や直感だけで理解することが苦手な傾向にあります。そのため、急な予定の変更や見通しの立たない状況に強い不安を覚え、時にはパニックを起こしてしまうことがありますよ。だからこそ、日々の予定を伝える際にはイラストや図形を積極的に取り入れて、視覚的にアプローチするのが効果的な手法と言えます。また、時間の始まりや終わりを体感するのが難しいのも特徴。時計の文字盤を一緒に見せながら把握しやすいようにしておげましょう。
興味の幅が広がるように促す

高機能自閉症の子どもは反復行動が目立ちますが、好きなことを制限して、別のことに無理に興味を持たせる必要はありません。ただ、いつも楽しんでいるお気に入りの遊びが終わった後に、それと関連した別の遊びを提案してみることはおすすめ。子どもの世界や、興味の幅が広がっていく可能性があるでしょう。例えば、普段から車のおもちゃで遊んでいる子どもに、乗り物がたくさん登場する絵本を読み聞かせるような工夫をすると効果的です。
高機能自閉症で起こる二次障害
内在化障害

高機能自閉症を抱える人が、日々の生活の中で二次障害を発症してしまうケースは珍しくありません。その中でも特に注意したいのが『内在化障害』と呼ばれる症状。これは自分自身への苛立ちや、深い精神的葛藤が外ではなく自身の内側へと向けられてしまう状態を指しています。具体的には、強い不安障害や抑うつ、睡眠障害や引きこもりといった症状が起こると言えるでしょう。中でも抑うつ状態に関しては、発達障害を持つ大人が最も直面しやすい深刻な二次障害です。
外在化障害

高機能自閉症による葛藤や自分自身への苛立ちが、内側ではなく周囲の他者に向けて表れてしまう状態を『外在化障害』と言います。これは、周りの人に対して攻撃的な発言を浴びせてしまったり、反抗的な態度を取り続けたりする症状のことです。こうした周囲を巻き込むような行動は、大人になってから突然始まるものだけではありません。実は小学校の低学年といった、かなり早い段階からその兆候が見られるケースがあるのです。
大人で診断される人の特徴
コミュニケーションで適切な言葉が使えない

言語の遅れが成長とともに克服されても、大人の社会生活において状況に応じた言葉選びをすることは、苦手な場合があります。自分の複雑な気持ちを適切な言葉で相手に伝えることや、逆に他人の心情を察することが難しいのです。そのため、相手の言葉をユーモアではなく、文字通りに真に受けてしまいがちです。雑談には困難を抱えやすく、今は自分が話す番なのか、聞き役に回る番なのか判断に迷ってしまう場合も。こうした些細なすれ違いの積み重ねが、社会に出てからの壁になることがあります。
対人関係の複雑さについていけない

大人になってから高機能自閉症の診断を受ける人の中には、社会生活における対人関係のルールについていけないと感じる人が多くいます。具体的には、他人との適切な距離感を上手く掴めない場合が多い点です。極端に他人との交流そのものを避けてしまうほど、コミュニケーションに強い苦手意識を抱えるケースがあるのです。その一方で、初対面の相手に対して一方的に親しく話しかけてしまい、周囲を驚かせてしまう人もいますよ。
臨機応変な対応が難しい

大人になってから高機能自閉症であると診断される人にとって、臨機応変な対応というのは、時に非常にハードルが高いものです。予期せぬトラブルが起きたり、物事が思い通りのスケジュールで進まなかったりすると、動揺してしまうことがあるでしょう。さらに、周囲の刺激や自分の感情といった強い感覚に、一気に圧倒されてしまうことがあります。一度心を落ち着かせるため、どうしても一人きりになる時間が必要になってくる人が多い傾向です。
まとめ
高機能自閉症を理解して接し方を工夫しよう

いかがでしたか?今回の記事では、高機能自閉症の定義や特性についてご紹介しました。また、高機能自閉症の子どもに対する工夫や大人で診断される人の特徴を解説しました。この障害だけでも生きづらさを感じる人はいますが、二次障害が起こる人がいることも理解できたのではないでしょうか。困難なことがあっても本人の努力不足と決めつけず、高機能自閉症を理解して、接し方を工夫するようにしましょう。


