子どもたちと過ごす中で「どうしてこの子は周りと少し違うのかな?」「集団行動になじみにくくて心配…」と感じたことはありませんか?実は、そうした行動や感覚の違いを否定せず、その子ならではの豊かな個性として受け止めようという新しい考え方が広まっています。それがニューロダイバーシティ。今回の記事では、ニューロダイバーシティの考え方について詳しく解説していきます。子どもの短所に見えていた部分が、実は素晴らしい強みや個性であることに気づくきっかけになるかもしれません。
ニューロダイバーシティとは
神経と多様性が組み合わされた言葉

ニューロダイバーシティとは、神経と多様性が組み合わされた言葉です。私たちは日々の保育の中で、一人ひとりの子どもたちが見せる素敵なこだわりや豊かな感性にたくさん出会いますよね。たとえば、特定の遊びに目を見張るような集中力を発揮したり、音や光といった周囲の刺激にとても敏感だったりする姿も、その子の大切な特性の一つなのです。こうした脳や神経の働きの違いを短所や欠如として捉えるのではなく、互いに認め合える個性の彩りとして活かしていこうという想いが込められていますよ。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html
非定型的な発達を個性ととらえること

ニューロダイバーシティとは、非定型的な発達を個性ととらえることともいえます。子どもたちの脳や神経の発達ペースは一人ひとり異なっており、標準的とされる枠組みから外れている姿も決して間違っているわけではないからです。例えば、集団行動が少し苦手なお子さんであっても、特定の分野で驚くほどの集中力を発揮して周囲を惹きつける場面がよく見られますよ。このように、子どもの短所のように見える部分もその子の個性と捉えることが大切です。
ASD患者が提唱した概念
ニューロダイバーシティは、ASD患者が提唱した概念です。ニューロダイバーシティを提唱したのは、オーストラリアの社会学者であるジュディ・シンガー氏です。専門家や周囲の大人の視点からだけではなく、当事者自身の切実な声から生まれた概念といえますね。例えば「支援が必要な存在」と一方的に決めつけるのではなく、当事者の感覚や生きやすさを尊重する動きが世界中に広がりました。当事者の発信から生まれた歴史を理解することで、子どもの気持ちにより寄り添った温かい関わり方ができるのではないでしょうか。
発達障害とニューロダイバーシティの違いは?
改善すべき対象から環境を整える対象へのシフト

発達障害とニューロダイバーシティの両者の大きな違いは、捉え方の焦点が子どもの行動から、周りの環境へとシフトした点にあります。発達障害は本人の苦手さを改善すべき課題と捉えがちですが、ニューロダイバーシティは環境の不備に目を向ける考え方だからです。例えば、砂漠で生きる生物を海に連れて行ってなぜ泳げないのか、と責めても意味がないですよね。同じように、子どもを無理に変えようとするのではなく、その子が過ごしやすい環境を一緒に整えていく視点を大切にしましょう。
全ての人を包括する概念である
ニューロダイバーシティが持つ最大の特徴は、一部の人だけでなく社会に生きる全ての人を包括する概念である点です。発達障害が特定の診断や条件を持つ人に着目するのに対し、脳や神経の特性は誰しもが持つグラデーションだと捉えます。例えば、得意なことや苦手な感覚、集中の仕方が一人ひとり異なるように、定型発達とされる子も非定型発達の子も同じ連続体の上に存在していますよ。障がいのある子とそうでない子を線引きせず、みんなの特性の違いを当たり前に認め合う社会を子どもたちと一緒に築いていきたいですね。
個々の強みを伸ばす保育へ転換すること

ニューロダイバーシティの視点を取り入れることは、苦手さの克服から個々の強みを伸ばす保育へと転換することを意味します。従来の発達障害への支援はできない部分を補うことに注力しがちでしたが、本人の得意や関心を伸ばす方が生き生きと成長できると考えます。例えば、じっと座るのが苦手でも図鑑を読み込む力に秀でている子なら、その観察力や探究心を評価して個性をさらに開花させていきますよ。欠点ばかりに目を向けるのではなく、一人ひとりの持つ魅力的な強みを周囲の大人がしっかりと発見し、育んでいきたいですね。
ニューロダイバーシティが注目される理由
少子高齢化による生産年齢人口の減少

ニューロダイバーシティが注目される1つ目の理由は、少子高齢化による生産年齢人口が減少しているからです。働き手が減る現代社会において、すべての人が個性を活かして活躍できる環境づくりが急務となっているといえますよ。例えば、これまでは生きづらさを抱えやすかった子どもたちも、独自の強みを活かせる社会になれば将来の選択肢が豊かに広がります。社会全体で多様な人を大切にする視点を知ることは、未来を生きる子どもたちの可能性を育む大きな一歩になります。
突出した強みへの需要の増加
ニューロダイバーシティが関心を集める2つ目の理由は、社会の中で突出した強みに対する需要が高まっているからです。これは、IT分野をはじめとする現代の多様な産業において、特定分野への深いこだわりや優れた集中力が絶大な価値を持つようになったためです。例えば、平均的な作業をそつなくこなす能力よりも、驚異的な記憶力や斬新なアイデアといった才能が大きな力となります。子どもの好きや得意を突き詰める姿勢を温かく見守り、その個性を尊重することが未来の可能性を開く鍵といえますね。
イノベーションの創出

ニューロダイバーシティが関心を集める3つ目の理由は、社会に新しい価値や革新をもたらすイノベーションの創出が期待されているからです。例えば、他人が気づかない違和感にすぐ反応できたり独特な角度から物事を見つめたりする子どもの感性が、誰も思いつかない課題解決につながる場面は少なくありません。このように、全員が同じ発想をする集団よりも、異なる思考パターンや視点を持つ人が集まる方が画期的なアイデアが生まれやすいのです。みんなと同じを求めるのではなく、人と違う発想を面白がり受け入れる寛容さが、新しい未来を切り拓く力になっていくのです。
保育におけるニューロダイバーシティの重要性
子どもの特性を否定せず成長を支える

保育においてニューロダイバーシティを尊重する1つ目の理由は、子どもの特性を否定することなく、健やかな成長を支えられる点にあります。なぜなら、ありのままの自分を受け入れてもらう経験が、自己肯定感を育み、次の行動へと踏み出す自信になるからです。例えば、集団行動から外れてしまう子に対して「早くしなさい!」と怒るのではなく「今は一人で静かに過ごしたいんだね」と寄り添いながら見守ります。このような、否定から入らずに個性として受け止めることが、一人ひとりの可能性を最大限に引き出すきっかけになるのです。
子どもの自己肯定感を守る土台になる

保育においてニューロダイバーシティを尊重する2つ目の理由は、子どもの自己肯定感を育み守る強い土台となる点です。なぜなら、一人ひとりの感じ方や学び方の違いを認めてもらえる環境では「自分はこのままでよい」という安心感を育みやすくなるからです。例えば、集団活動が苦手な子どもに対して無理に周囲と同じ行動を求めるのではなく、その子に合った参加方法を選べるようにすると、成功体験を積み重ねやすくなりますよ。このように、子どもの個性を尊重する保育は、自己肯定感を育み、将来にわたって自分らしく成長していくための大切な基盤になります。
みんな同じようにという無意識のバイアスに気づく
保育においてニューロダイバーシティを尊重する3つ目の理由は、みんな同じようにという無意識のバイアスに気づくことができる点です。大人が当たり前だと思っている基準は、すべての子どもに当てはまるとは限りません。例えば「静かに座って話を聞くべき」「みんなと同じ方法で活動するべき」という考え方にとらわれると、子どもの特性や得意な学び方を見落としてしまう可能性があります。一方で、多様な発達や個性を前提に子どもと関わることで、自分自身の思い込みに気づきやすくなるでしょう。その結果、子どもを型にはめるのではなく、それぞれの力を引き出す保育や子育てにつながります。
ニューロダイバーシティを進める方法
啓発活動

ニューロダイバーシティを進める1つ目の方法は、啓発活動を行うことです。なぜなら、発達特性や認知の違いに対する正しい知識が広まることで、誤解や偏見が生まれにくくなるからです。例えば、園内研修でニューロダイバーシティについて学ぶ機会を設けたり、保護者向けの資料や講座を通して理解を深めたりする取り組みが挙げられます。知識を共有する場が増えると、子どもの行動を一面的に捉えるのではなく、特性を踏まえて関わろうという意識が育まれるでしょう。
サポート体制の整備
ニューロダイバーシティを進める2つ目の方法は、サポート体制を整備することです。なぜなら、子どもの特性に応じた支援を継続して提供できる体制があれば、子どもたち一人ひとりが安心して成長できる環境を提供できるからです。例えば、保育士同士で子どもの様子を共有する仕組みを整えたり、専門職や関係機関と連携して支援方法を検討したりする取り組みが挙げられます。サポート体制を充実させることは、子どもの可能性を伸ばすだけでなく、保育士や保護者が安心して関われる環境づくりにもつながりますよ。
物理的な環境の整備

ニューロダイバーシティを進める3つ目の方法は、物理的な環境を整備することです。なぜなら、子どもが安心して過ごせる環境は、それぞれの特性を十分に発揮するための土台になるからです。例えば、音や光などの刺激を受けやすい子どものために落ち着けるスペースを設けたり、活動内容が分かりやすいように視覚的な掲示を活用したりする方法がありますよ。このように、物理的な環境を見直す取り組みは、多様な子どもが自分らしく過ごせる保育環境の実現につながります。
多様な働き方の整備
ニューロダイバーシティを進める4つ目の方法は、多様な働き方の整備です。なぜなら、保育士一人ひとりの事情に応じた働き方が認められることで、多様性を尊重する考え方が園全体に広がりやすくなるからです。例えば、短時間勤務や柔軟なシフトを導入したり、得意分野を生かして役割を分担したりする方法が挙げられますよ。このように、保育士が安心して働ける職場は、子ども一人ひとりに丁寧に向き合える余裕を生み出します。その結果、ニューロダイバーシティの考え方が日々の保育にも自然と根付きやすくなるでしょう。
ニューロダイバーシティを進める企業の実例
マイクロソフト

ニューロダイバーシティを進める1社目の企業は、マイクロソフトです。マイクロソフトでは、発達特性のある人を含め、多様な人材が能力を発揮できる職場づくりに取り組んでいます。採用方法を工夫し、一人ひとりが実力を発揮しやすい選考プロセスを導入している点も特徴です。また、入社後も働きやすい環境づくりや必要なサポートを充実させ、多様な人材が活躍できる体制を整えています。このような取り組みは、個性を強みとして生かすというニューロダイバーシティの考え方を実践している好例といえるでしょう。
参考:https://www.microsoft.com/ja-jp/mscorp/diversity-itlearning

ニューロダイバーシティを進める2社目の企業は、Googleです。Googleでは、多様な人材が能力を発揮できる職場づくりを重視し、一人ひとりの特性を尊重する取り組みを進めていますよ。採用や職場環境の整備においても、さまざまな認知特性を持つ人が安心して働けるよう配慮しているという特徴があります。また、社員同士が互いの違いを理解し、協力し合える組織の育成にも力を入れています。このような姿勢は、誰もが自分らしく活躍できる環境づくりにつながるでしょう。
参考:https://ideasforgood.jp/2021/09/02/autism-career-program/
オムロン
ニューロダイバーシティを進める3社目の企業は、オムロンです。オムロンでは、得意な能力を存分に発揮してもらうため、得意分野に特化した採用や個々の働きやすさに応じた環境整備を行っているからです。例えば、長期インターンシップなどを通じて本人の特性と職場を丁寧にマッチングさせ、入社後も医療職などと連携した手厚い支援を続けています。このような姿勢は、一人ひとりの強みを生かすニューロダイバーシティの考え方を実践している好例といえるでしょう。
参考:https://www.omron.com/jp/ja/recruit/neurodiversity/
水ing株式会社
ニューロダイバーシティを進める4社目の企業は、総合水事業を展開する水ing株式会社です。同社は経済産業省の調査事業に協力し、デジタル分野における障がいのある方の雇用拡大や、キャリア形成を後押しする取り組みを積極的に進めています。例えば、当事者との対話を重ねながら業務内容を整理し、作業手順をフロー化することで、一人ひとりが働きやすい環境づくりにつなげました。その過程で業務の進め方を見直すきっかけにもなり、受け入れを行ったデジタル関連部門からは前向きな声が多く寄せられたそうです。
参考:https://www.swing-w.com/news/20231110
株式会社リコー
ニューロダイバーシティを進める5社目の企業は、株式会社リコーです。リコーでは、多様な人材がそれぞれの個性や能力を発揮できるよう、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)の推進に力を入れています。障がいの有無にかかわらず、安心して働ける職場づくりを目指し、入社後の定期面談や支援機関との連携など、継続的なサポート体制を整えている点も特徴ですよ。このように、個々の特性を尊重しながら能力を生かせる環境づくりは、ニューロダイバーシティを実践する好例といえるでしょう。
株式会社リクルートオフィスサポート

ニューロダイバーシティを進める6社目の企業は、株式会社リクルートオフィスサポートです。同社では、少人数でのトライアル雇用から取り組みを始め、一人ひとりが安心して働ける環境を少しずつ整えてきました。その結果、2024年6月時点では、社員の8割以上が何らかの障がいのある方となり、多様な人材が活躍する職場へと発展しています。例えば、精神障害や発達障害のある方が無理なく働けるよう、在宅勤務を取り入れるなど、個々の特性に配慮した就業環境を整えていることも特徴です。
参考:https://recruit-holdings.com/ja/blog/post_20231108_0001/
まいばすけっと株式会社
ニューロダイバーシティを進める7社目の企業は、まいばすけっと株式会社です。まいばすけっとでは、障がいのある社員が安心して働き続けられるよう、『キャラバン隊』という独自の取り組みを行っています。例えば、1チーム3〜8人の障がいのある社員で構成されたチームをつくり、お互いに支え合いながら業務を進められる環境を整えていることが特徴ですよ。また、採用前には体験実習や雇用前実習を約3週間実施し、仕事内容や勤務条件を丁寧に確認することで、入社後のミスマッチを防いでいます。このような工夫は、特性に合わせて環境を整える保育にも通じる、大切な考え方といえるでしょう。
まとめ
できることに目を向けよう!
いかがでしたか?今回はニューロダイバーシティについて詳しく解説していきました。ニューロダイバーシティの視点を取り入れることは、子どもたちの未来の可能性を無限に広げる大切な一歩となります。なぜなら、脳や神経の特性を個性として受け入れ、得意な強みを活かせる社会や企業の動きが大きく広がっているからです。例えば、日々の関わりで短所を直そうとするのではなく環境を整えたり興味を尊重したりする工夫が、生き生きとした成長や自尊心へとつながります。この記事を参考に、ありのままの姿を温かく認め合い、一人ひとりが自分らしく輝ける環境を家庭や保育の場から一緒に作っていきましょう。

