ペアレントトレーニングって何?発達障害を持つ子供の保護者向けプログラム【種類・メリット・コアエレメント・進め方・実施場所・費用】

発達障害のある子供たちを持つ保護者向けに行われるペアレントトレーニング。”親は子供の最良の治療者である”という考え方のもと、療育の効果をアップさせたり維持することが目的とされています。近年では、発達障害のある子供だけでなく、埠頭個や非行に走る子供、養子などに対応したもの、虐待を受けた子供など様々なプログラムが増えてきています。今回はペアレントトレーニングの種類や内容について説明しているのでぜひ参考にしてみてください。

ペアレントトレーニングとは

子供との関わりを学ぶ保護者向けのプログラム

ペアレントトレーニングは、子供の行動問題や発達上の困難、社会的・情緒的な問題に対応するために、保護者に具体的な接し方や関わりを教えます。子育てにおける日常の困りごとは誰しもありますよね。そんな困りごとを解消し、子供の発達促進や行動改善を目的とした保護者向けプログラムです。1960年代にアメリカで開発され、当初は知的障害や自閉症を持つ子供がいる家族が対象でした。現在では厚生労働省による発達障害者支援策の一つとして位置付けられています。

療育効果の向上・維持が目的

ペアレントトレーニングでは、療育効果の向上や維持を目的とされています。1960年代にアメリカで開発されたこのプログラムは、子どもへの療育を家庭でも行えるように構成されています。発声や模範などの課題を、家庭でも同じように行うことで、子供が療育に関わる時間を費やすことができますよね。療育に触れる時間を多くすることで効果の向上を目指し、保護者の日常的なストレス軽減も図ります。

ペアレントトレーニングの種類

肥前方式ペアレントトレーニング

国立肥前療養所で開発されたプログラムです。知的障害のある子どもだけではなく、知的障害を伴わない発達障害を持つ子どもにも支援されています。 

対象年齢:3~12歳

定員:9名程度

概要:1回150分✖️10回ほどのセッション

内容:基本的な行動療法を学ぶ講義、家庭内での子供の対応を考えるグループミーティング グループミーティングでは、”家族を叩かない”などの目標を決め、スタッフと共に対応を考えます。家庭で実践した後に、結果を共有し指導方法を検討していきます。

精研式・奈良方式ペアレントトレーニング

アメリカのシンシア・ウィッタム博士がADHDの子供を持つ家族向けに開発したプログラムです。そのプログラムをもとにして、奈良教育大学などで日本向けに改良されたのが、精研式・奈良方式ペアレントトレーニングになります。 

対象年齢:4~10歳

定員:8名程度

概要:1回90分✖️10回のセッション

内容:講義を受け、ロールプレイ・ワークを行う セッションで学んだことを家庭で実践し、次回にグループ内で共有するプログラムです。

精研式・奈良方式ペアレントトレーニングの特徴は、子供の行動を、好ましい行動、好ましく行動、許しがたい行動の3つに分け、対応の仕方を学んでいくことです。

鳥取方式ペアレントトレーニング

兵庫教育大学が、自閉症スペクトラムを持つ子供の家庭むけに開発されたプログラムですが、現在は鳥取県での委託を受け開催されています。 

対象年齢:幼児〜小学校低学年、小学校高学年〜中学生向けに分かれている

定員:10名程度

概要:1回90~120分✖️6~8回のセッション

内容:講義とロールプレイ・ワーク

プログラム内容は、精研式・奈良方式と同様に行われます。保護者が子供の特性や発達状態を知ることで、子供とのコミュニケーションを楽しめるようになることが目的です。褒めて伸ばす接し方や環境調整の仕方、指示の出し方、行動の教え方などを学ぶことができるでしょう。

効果・メリット

1. 子供の行動改善

ペアレントトレーニングは、子供の問題行動や対処が困難な行動パターンに対処するための具体的な対応の仕方や接し方を保護者に提供します。セッションを通して学ぶことで、子供の行動を理解し、良い行動パターンが増えることが期待されるでしょう。「学校から帰ったら宿題を先にする」「お風呂上りにはすぐにパジャマを着る」といった好ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすことができます。

2. 子供の発達促進

子供の発達を促進するための方法も、ペアレントトレーニングで学ぶことができます。保護者が子供の発達段階やニーズを理解し、適切な対応やサポートを家庭内で行うことができるようになるでしょう。これにより、子供の認知能力、社会的スキル、コミュニケーション能力などの向上が期待されます。子供への接し方や褒め方、叱り方のコツなどを身につけることで、子供は自信を持ち自己肯定感を高めるきっかけになります。

3. 育児ストレスの緩和

子育ては決して簡単なことではなく、ストレスの原因となってしまうこともありますよね。ペアレントトレーニングは、保護者に対してストレス管理や自己ケアの方法を教えることもあります。また、子供の行動が改善されることで、保護者のストレスも軽減される見込みがあるでしょう。子供のことをより理解することができるので、育児ストレスの緩和につながります。セッションを通じて、子供との関係を改善させることができます。

コアエレメント(共通の部分)

行動に関するトレーニング

ペアレントトレーニングは、コアエレメントと呼ばれる6つの要素をもとに行われます。行動に関するコアエレメントは、3つあります。 

3つの行動のタイプ分け

子供の行動を、”好ましい行動” ”好ましくない行動” ”許しがたい行動”の3つに分けます。子供が”好ましい行動”をした場合は褒めるといった対応を工夫していきます。

行動理解(ABC分析)

A 行動の前のきっかけ B 行動 C 行動の後の結果 に子供の行動を分け、客観的な視点で行動を捉えることを目的としています。

不適切な行動への対応

不適切な行動をとったときは、計画的な無視を行い、誉めることのできる好ましい行動が見られるまで待ちます。不適切な行動への対応を目的とするのではなく、誉めることをベースに関わることが大切です。

環境、言動に関するトレーニング

環境・言動に関するコアエレメントは3つあります。 

子供の良いところを探し出し、たくさん誉める

”好ましい行動”といった子供のポジティブな行動に対して、たくさん誉めることです。25%ルールと言われる、100%できていなくても、25%できていたら誉めることが大切です。

環境調整

子供の周囲の環境を整えることで、子供たちが行動しやすくするための工夫を考えます。指示をわかりやすくしたり、ルールを決めるなどです。

子供がわかりやすい指示

子供が”好ましい行動”ができるように、否定的な感情を抑え、子供のそばで穏やかな声で指示を出すことです。冷静に指示を出すことが重要です。

ペアレントトレーニングの進め方

個人向け:個々のニーズに合わせて実施

実施する機関によって形式が異なりますが、ペアレントトレーニングには2種類あります。個人向けのペアレントトレーニングでは、個々のニーズに合わせて実施されます。 

取り組みの例としては、

・絵カードを用いた指示やコミュニケーション

・食事やトイレ、着替えなど基本的な日常スキルの指導

・要求言語の指導(やって、もっと〇〇したい、ちょうだい、〇〇がほしい、など)

・子供への指示の出し方や会話の仕方

集団向け:グループセッションを実施

集団向けに実施されるペアレントトレーニングでは、グループセッションを中心に実施されます。

取り組みの例としては、

・5〜6名程度の保護者向けに、90分✖️10回のセッションを2週間ごとに実施

・主にABAと呼ばれる応用行動分析学の理論に基づいて、対応方法を学ぶ

2種類のペアレントトレーニングはいずれも、子供の適切でない行動を減らすことをメインの目的と定めていません。保護者の方は子供自信の持つ困難さを理解することで、コミュニケーションを円滑に取れるようになることを目的としています。

ペアレントトレーニングの形式と具体例

1回90分の講義でテーマごとに接し方を学ぶ

ペアレントトレーニングのセッションは1回90分あり、形式によって異なりますが、ほとんどの場合は10回に分けて講義を受けます。セッションごとにテーマが決まっており、学んだことを家庭内で実践し次回の講義で共有します。 

テーマ内容の例 

・好ましい行動を増やすための褒め方(工夫やコツ) 

・好ましくない行動を減らすための一時的な無視の仕方 

・指示の出し方(子供が協力してくれる機会を増やす方法) 

・警告やペナルティの出し方

子供の3つの行動タイプ分け

行動にあった適切な対応をとるために、子供の行動を3つに分けます。 

1. 続けさせたい行動(好ましい行動):挨拶する、人に優しくする

2. 減らしたい行動(続けさせたくない行動):手洗いをしない、宿題をやらない

3. 許しがたい行動(やめさせたい行動):物を投げる、人を叩く

続けさせたい行動に対しては、どんなに小さなことであっても、褒めることが必要不可欠です。結果だけではなく、取り組んだ気持ちも肯定してあげましょう。好ましくない行動や、許しがたい行動に対しては、指示を工夫したり、計画的な無視を行うことで行動の線引きを行うことができます。

子供の良いところに着目し褒める

ペアレントトレーニングの主軸となるものは、“親は褒め上手に、子供は誉められ上手に”ということです。子供の良い行動に注目し、褒めることでその行動を増やしていくことができます。親に褒められたと実感することで、自信につながり自ら自分を褒められるようになるでしょう。褒める・認める・興味関心を示すことで、肯定的注目を与えていくことが大切です。褒め方は子供それぞれで異なるため、派手に褒めたりそっと穏やかに褒めるなど、性格や年齢に応じて対応すると良いです。

ペアレントトレーニングが受けれる場所

各都道府県の発達障害者支援センターなど

全国各地でペアレントトレーニングを受講することができます。 

・病院などの医療機関

・各都道府県の発達障害者支援センター、教育センター

・NPO法人

・大学附属の心理センター

・民間の事業所

・個人開業車

実施団体によっては、子育てに難しさを感じている保護者向けの家族向け支援プログラムである“ペアレント・プログラム”を行なっているところもあります。ペアレント・プログラムでは、子供の行動を理解する方法を学ぶことで、子育てを楽しむことが目的とされています。

ペアレントトレーニングの費用の目安

1回2000~6000円程度

ペアレントトレーニングを受ける上での費用はそれぞれの実施団体によって異なりますが、200〜6000円程度で受けることができます。居住している地域の行政機関であれば、無料〜2000円で受けられるところが多いでしょう。また、医療機関であれば基本的に保険適用外ですが、1回4000円程度のところがほとんどです。NPO法人や民間事業所になると費用は様々ですが、グループセッションの場合は2000〜6000円、マンツーマンセッションになると5000〜10,000円が1回の目安となるでしょう。

まとめ

子供への接し方を学び一緒に成長を目指そう

セッションを通して、子育てや子供の行動に対する関わり方を具体的に学ぶことを最大の目的としているのが、ペアレントトレーニングです。講義内では、知識を学ぶだけでなく、実際にワークや講師のアドバイスをもらうことで家庭内でも実践しやすくなります。同じ子育ての悩みを抱えている家族や親と出会うことで、話を共有したり、お互いにアドバイスすることもできるでしょう。子供への接し方や、好ましい行動の増やし方を学び、子供と一緒に成長を目指していくことが大切です。