子どもの発達や行動について悩み、つい叱ることが増えてしまうなど、子育ての難しさを感じている保護者の方もいるでしょう。叱ることが続くと、親子双方の負担が大きくなり、子育てが悪循環に陥ってしまうこともありますよね。そこで役立つのが、子どもの特性を理解し、叱るのではなく褒めることを大切にしながら、関わり方を見直していくペアレントトレーニングです。子どもの望ましい行動に目を向け、適切な関わりを重ねることで、親子の関係を少しずつ好循環へ変えていくことを目指します。この記事では、具体的な方法や期待できる効果、実践例、おすすめの本まで詳しくご紹介しますよ。ぜひ参考にしてみてくださいね。
ペアレントトレーニングとは?
保護者が子どもへの関わり方を学ぶ支援プログラム

ペアレントトレーニングは、保護者が子どもの行動や発達の特徴を理解し、その子に合った関わり方を身につけるための支援プログラムです。1960年代にアメリカで、障害のある子どもの保護者を対象として発展したのが始まりとされていますよ。当初は、支援機関で行われる療育を家庭でも実践し、子どもの学びや成長を支えることが目的でした。現在は、子ども本人を直接変えようとするのではなく、保護者の関わり方を整えることで、子どもの望ましい行動を増やし、不適切な行動を減らすことを目指しています。
発達障害に限らず幅広く活用される支援プログラム
ペアレントトレーニングは、現在では特定の障害だけを対象としたものではありません。ADHDやASD、知的障害のある子どもに加え、発達障害の可能性がある子どもや、不登校、非行、虐待など、さまざまな背景に応じたプログラムが開発されています。里子や養子など、それぞれの家庭状況を考慮した支援もあり、対象は幅広くなっていますよ。また、保護者の子育てに対する不安やストレスを和らげることも大切な目的の1つです。
ペアレントトレーニングの具体的なやり方とは?
①子どもの行動を3つに分類する

ペアレントトレーニングでは、子どもの行動を3つに分けて考えます。具体的には、以下のとおりです。
- 望ましい行動(例:ありがとうやごめんねを言える、挨拶ができる、自分から片付ける、ルールや順番を守るなど)
- 望ましくない行動(例:遊びをやめずに困らせる、なかなか着替えない、駄々をこねる、大声で騒ぐなど)
- 許しがたい行動(例:友だちやきょうだいを叩く、物を壊す、激しい言動をするなどの危険行為)
このように子どもの行動を整理すると、それぞれにどのような対応が必要なのかを考えやすくなりますよ。ここでは、望ましい行動と望ましくない行動の対応方法について、詳しく解説していきます。
②望ましい行動に注目して肯定的に関わる
子どもの行動を3つに分類したら、まず望ましい行動に目を向け、肯定的な関わりを増やしていきましょう。できたことを褒めたり、感謝を伝えたりすることで、子どもの「またやってみよう」という気持ちが育ち、望ましい行動が繰り返されやすくなりますよ。言葉だけでなく、ハイタッチをしたり頭を優しく撫でたりするなど、子どもに合わせて喜びを表すのもよいでしょう。一方で、「いつもできればいいのにね」といった批判や皮肉は控えることが大切です。否定されたと感じ、反発する気持ちにつながることがありますよ。
③望ましくない行動には落ち着いて対処する
子どもの望ましくない行動を見ると、注意したり理由を問いただしたりしたくなるものですが、かえって行動を繰り返すきっかけになることがあります。子どもにとっては、叱られることも「親に注目してもらえた」と受け取る場合があるためです。危険のない行動であれば、あえて必要以上に反応せず、できている行動や望ましい姿が見られたときにしっかりと認めることが大切ですよ。イライラしてしまう場面でも感情的に叱るのではなく、子どもの行動を客観的に捉えながら、落ち着いて対応していきましょう。
④効果的な褒め方のポイントを知る

子どもを褒めるときは、タイミングを意識することが大切です。すべての行動が終わるのを待つのではなく、25%ほど進んだ段階で「ここまでできたね」と伝えると、頑張りを認めやすくなりますよ。また、得意なことや以前よりできるようになったことにも目を向けてみましょう。子どもの目を見て笑顔で明るく声をかけたり、「片付けられたね」といった具体的な行動を褒めたりすることもポイントです。
以下の記事では、子どもへの正しい褒め方について詳しくご紹介しています。あわせて参考にしてみてくださいね。
⑤効果的な指示出しのポイントを知る

子どもに指示を伝えるときは、日頃から褒めたり認めたりする関係を築いておくことが前提です。十分な信頼関係がないまま行動を改善させようとすると、子どもの反発を招き、親子のやり取りが悪循環になることもあります。指示を出す際は、いきなり伝えるのではなく、「もうすぐ片付けるよ」などと予告して、気持ちを切り替える時間をつくりましょう。その後、子どものそばで視線を合わせ、穏やかな声で短く具体的に伝えます。「おもちゃを箱に入れよう」のように、してほしい行動を明確にするのがポイントですよ。できたときにはしっかり褒め、肯定的なやり取りで終えることを心がけましょう。
⑥子どもの行動を分析して理解する
ペアレントトレーニングでは、子どもの行動をABC分析という方法で整理し、その背景を理解していきます。Aは行動のきっかけ、Bは実際に起こった行動、Cはその後に生じた結果を指します。この3つを振り返ることで、「なぜこの行動が起きたのか」を客観的に捉えやすくなるでしょう。行動の理由が分かると、子どもへの関わり方も考えやすくなります。「どうしてこんなことをするの?」と悩む場面でも、行動の背景に目を向けることで、保護者の気持ちにも少しずつ余裕が生まれていきますよ。
⑦子どもが過ごしやすい環境を整える
子どもが落ち着いて過ごし、望ましい行動を取りやすくなるように、身の回りの環境を見直すことも大切です。たとえば、音や光が気になりやすい場合は刺激を減らしたり、気が散りやすいときは不要な物や掲示物を整理したりする方法があります。着替えなどの手順が分かりにくい場合には、順番を絵や文字で示すのもよいでしょう。こうした工夫は、行動が起こるきっかけに目を向けて環境を整える取り組みです。子どもの特性に合わせて環境を調整することで、困った行動を減らし、安心して適切な行動を取りやすくすることにつながりますよ。
ペアレントトレーニングで期待できる効果とは?
子どもに対する効果

子どもの行動を理解し、保護者が関わり方を工夫することで、日々の生活にさまざまな変化が期待できます。たとえば、困った行動が見られた際に頭ごなしに叱るのではなく、状況に応じた声かけを意識することで、問題行動の軽減につながるでしょう。また、「自分で片付けられたね」など、できたことを具体的に認めて褒めると、望ましい行動が増えやすくなります。こうした積み重ねは、子どもの自己肯定感を育むだけでなく、親子の信頼関係を深めるきっかけにもなりますよ。
保護者に対する効果
子どもへの関わり方を具体的に学ぶことで、保護者自身にもさまざまな変化が期待できます。たとえば、適切な指示の出し方や褒め方を身につけることで、子育てへの自信につながります。また、子どもの行動の背景を理解しやすくなるのもポイントです。「なぜこんなことをするの?」という戸惑いやイライラが和らぎ、育児ストレスの軽減にもつながりますよ。さらに、同じ悩みを持つ保護者と経験を共有することで、「自分だけではない」と安心できることも大きな効果といえるでしょう。
発達障害児の保護者向けペアレントトレーニング例
①精研・まめの木・奈良式ペアレントトレーニング

アメリカで開発されたプログラムをもとに、奈良教育大学などで改良されたペアレントトレーニングです。もともとはADHDのある子どもとその保護者を対象としていましたが、現在は発達障害全般を対象としています。対象年齢は4~10歳程度で、定員は8名ほど。全10回、1回90分を基本としています。講義やグループワークで学んだ内容を家庭で実践し、次回に取り組みを共有する流れが特徴ですよ。わかりやすい言葉で説明されるほか、保護者同士で支え合うピアサポートも大切にしており、親子関係の改善や子育てへの自信につながるでしょう。
②肥前式ペアレントトレーニング
肥前式ペアレントトレーニングは、独立行政法人肥前精神医療センターで開発されたプログラムです。もともとは知的障害のあるASDの子どもとその保護者を対象としていましたが、現在はADHDのある子どもとその保護者を対象としたプログラムとなっていますよ。対象年齢は3~12歳程度、定員は9名ほどで、全10回、1回150分を基本とします。講義で行動理論や具体的な対応方法を学んだ後、小グループで家庭ごとの困りごとについて話し合います。支援者やほかの保護者と一緒に対応を考えられるため、子育ての知識やスキルを身につけるだけでなく、保護者の気持ちの安定にもつながりますよ。
以下の記事では、ADHDの子どもに合った療育について解説しています。あわせて参考にしてみてくださいね。
③鳥取大学式ペアレントトレーニング
鳥取大学式ペアレントトレーニングは、兵庫教育大学で自閉症スペクトラム症の子どもとその保護者を対象に開発されたプログラムです。現在は、発達障害全般を対象としており、幼児~小学校低学年・小学校高学年~中高生の2つに分けて実施されていますよ。定員は10名程度で、全6~8回、1回90~120分ほどが基本です。講義やグループワークで学んだことを家庭で試し、次回に実践した内容を共有しながら進めます。家庭ごとの状況に合わせて関わり方を見直せるため、保護者の不安や気持ちの落ち込みが和らぎ、家族全体がより穏やかに過ごせるようになるでしょう。
ペアレントトレーニングの研修はどこで受講できる?
医療機関・発達支援センターなどで実施されている

ペアレントトレーニングは、地域のさまざまな機関で実施されており、自治体の発達支援センターや保健センター、療育機関、病院などの医療機関が代表的です。そのほか、大学の心理センターや親の会、支援団体が運営するNPO法人、民間事業所などで開催される場合もありますよ。また、近年ではオンラインで受講できる研修や講座もあり、自宅から参加できるため、会場へ足を運ぶことが難しい方にも利用しやすいでしょう。ただし、実施の有無や対象年齢、開催回数、費用、オンライン対応の有無などは機関によって異なります。受講を検討する際は、自治体や身近な支援機関、各実施機関に問い合わせ、内容や参加条件を確認してみると安心ですね。
ペアレントトレーニングを学べるおすすめの本は?
初めて学ぶ方にもわかりやすい本
著者:らせん ゆむ
解説:庄司 敦子
出版社:合同出版
発売日:2020年7月17日
実践的なテクニックを学びたい方向けの本
監修:上林 靖子
出版社:講談社
発売日:2009年12月1日
まとめ
焦らず試行錯誤しながら子育てに向き合おう!
子どもへの関わり方に悩んだり、思うようにいかず落ち込んだりすることは、決して珍しいことではありません。ペアレントトレーニングで学んだ方法も、すぐにうまくいくとは限らないでしょう。大切なのは、子どもの様子を見ながら声かけや伝え方を少しずつ工夫していくことです。「今日はできた」「この方法なら伝わりやすかった」と小さな変化を大切にしながら、無理のないペースで取り組んでみてくださいね。迷ったときは、家族や支援機関などに相談することも大切です。焦らず試行錯誤を重ねながら、親子に合った関わり方を見つけていきましょう。


