SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?【本・ゲーム・具体例・絵カード】

子どもと関わる中で、「友達とのコミュニケーションがうまくいかないのかな」「自分の気持ちを言葉で伝えるのが苦手なのかな」と感じたことはありませんか?そのような子どもへの支援方法の1つに、SST(ソーシャルスキルトレーニング)があります。SSTは、具体的な場面を通して、社会生活に必要なコミュニケーションや人との関わり方を学ぶ支援のことです。この記事では、SSTの具体的な実践方法や、療育に取り入れる際のポイントについて詳しく解説します。子ども1人ひとりに合った支援を考える際に、ぜひ役立ててみてくださいね。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?

社会生活で必要な対人スキルを習得するための支援

SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、社会生活に必要なコミュニケーション力を身につけるための支援プログラムです。特に、発達障害や精神障害などにより、人との関わり方や自分の気持ちの伝え方に難しさを感じている子どもに向けて行われていますよ。支援プログラムでは、具体的な場面を想定したロールプレイングやゲームを行いながら学ぶ機会をつくります。例えば、友達に遊びに入れてほしいときの声のかけ方や、相手の気持ちを考える練習などが挙げられますよ。こうした経験を重ねることで、対人関係での困りごとを減らし、友達と安心して関われるようになるでしょう。

参考:SSTとは|一般社団法人 SST普及協会

SST(ソーシャルスキルトレーニング)の流れ

①教示(インストラクション)

SSTに取り組む際は、まず教示(インストラクション)を行います。教示とは、SSTでどのようなスキルを学び、何を練習するのかを子どもたちに伝える段階です。取り組む目的や、そのスキルが日常生活でどのように役立つのかを分かりやすく説明することで、子どもたちも見通しを持って参加しやすくなりますよ。言葉だけで理解することが難しい場合には、イラストや絵カード、ホワイトボードなどを活用するのも1つの方法です。1人ひとりの年齢や発達の特性に合わせて伝え方を工夫し、安心して練習を始められるようにしましょう。

②モデリング

モデリングでは、保育士や支援者が実際にお手本を見せながら、望ましい行動や関わり方を伝えていきます。言葉で説明するだけではイメージしにくいことも、実演を通して見ることで理解しやすくなるでしょう。例えば、友達に遊びに入れてほしいときの声のかけ方などを題材に、よい例と改善が必要な例をそれぞれ示す方法があります。子ども自身が日頃困っている場面を取り上げると、より身近なこととして考えやすくなりますよ。事前に子どもの様子や困りごとを把握し、実際の生活に結びつくお手本を用意することが大切です。

③リハーサル

リハーサルでは、モデリングで確認したお手本を参考にしながら、子どもたちが実際に行動やコミュニケーションを練習します。ロールプレイングで友達とのやり取りを再現したり、ゲームやワークシートを活用したりと、さまざまな方法で取り組むことができますよ。保育士や支援者が相手役になり、子どもが安心して練習できるようにするのもよいでしょう。初めから上手にできなくても心配はいりません。お手本やカードを見ながら、1人ひとりのペースに合わせて進め、失敗を恐れずに挑戦できる雰囲気を整えることが大切です。

④フィードバック

リハーサルの後は、子どもと一緒に練習を振り返り、できたことや次に挑戦したいことを確認します。その際、まずは「相手の話を最後まで聞けたね」など、よかった点を具体的に伝え、頑張りを認めてあげることが大切ですよ。うまくできなかった部分があっても、否定的な言葉で指摘するのは避けましょう。「次はこんな伝え方をしてみようか」と前向きな声かけを心がけ、必要に応じてお手本をもう一度示すのも効果的です。頑張りを温かく受け止め、自信を持って次の練習に取り組めるよう支えてあげてくださいね。

⑤般化(チャレンジ)

般化(チャレンジ)とは、SSTで学んだスキルを、園や学校、家庭などの日常生活でも活用できるようにすることです。練習で身につけた関わり方を実際の場面で試す機会をつくり、次回のSSTで取り組んだ結果を振り返ります。日常では練習と同じ状況になるとは限らず、うまくいかないこともあるでしょう。そのようなときも、困った場面や対応方法を一緒に考え、必要に応じて再び練習することが大切です。こうした経験を積み重ねながら、学んだスキルを少しずつ日常生活に生かせるよう支援していきましょう。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)の具体例

役になりきって練習するロールプレイング

ロールプレイングは、日常生活で起こりやすい場面を再現し、登場人物の役になりきって対応方法を練習する手法です。SSTでもよく取り入れられており、実際に声に出して話したり、相手の顔を見ながら身振りを交えて伝えたりすることで、適切な関わり方を身につけていきます。例えば、友達の遊びに加わりたいときや、嫌なことをされたときの伝え方、順番を待つ場面などが練習の題材になりますよ。まずは保育士や支援者がお手本を示し、その後に子ども自身が実践してみましょう。

整列ゲーム

整列ゲームは、子どもたちがグループになり、決められたテーマに合わせて順番に並ぶ遊びです。背の高い順や、誕生日が早い順など、さまざまなルールを設定して楽しめます。取り組む中で、相手に自分の考えを伝えたり、友達の話を聞いて順番を調整したりする経験ができ、コミュニケーション力を育むことにつながりますよ。子どもの年齢や発達、練習したいスキルに応じてルールを工夫し、みんなで協力しながら取り組めるようにしましょう。

私はだれでしょうゲーム

私はだれでしょうゲームは、質問と回答を繰り返しながら、お題が何かを推理するSSTの遊びです。動物や食べ物、身近な物などを書いたカードを用意し、出題者はカードに書かれたものになりきります。他の子どもたちは「生き物ですか?」「家にあるものですか?」など、はい・いいえで答えられる質問をして、少しずつ答えを絞り込んでいきましょう。ゲームを通じて、相手の話を聞く力や、質問を工夫する力を育むことができますよ。

まいっかドンジャンケン

まいっかドンジャンケンは、勝ち負けのある遊びを通して、悔しい気持ちとの向き合い方や、気持ちを切り替える方法を学ぶSSTの遊びです。特別な道具は必要なく、通常のドンジャンケンに、勝ったときは「やったー!」、負けたときは「まいっか!」「次いこう!」などの言葉を使うルールを加えて楽しみます。保育士や支援者は、子どもたちの悔しさにも寄り添いながら、前向きな言葉を使えた姿を温かく認めていくことが大切ですよ。

気持ち当てゲーム

気持ち当てゲームは、表情や身振り、しぐさなどから、相手がどのような感情を抱いているのかを想像するSSTの遊びです。喜びや悲しみ、怒り、驚きなどの感情カードを用意し、出題者がカードに描かれた気持ちを表情やしぐさで表現します。他の子どもたちは、その様子をよく観察し、どのような気持ちなのかを考えて答えましょう。遊びを楽しみながら、相手の立場に立って気持ちを想像する力や、表情から感情を読み取る力を育むことにつながりますよ。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)で使う教材

本・絵本

SSTでは、子ども1人ひとりの特性や困りごとに寄り添い、必要に応じて教材を活用します。自分の気持ちを言葉で伝えるのが難しい子どもには、本や絵本が理解を助ける手がかりになることもあります。また、読み聞かせを通して登場人物の気持ちや行動について一緒に考えることで、楽しみながら人との関わり方を学べるでしょう。ただし教材を必ず用意する必要はなく、その子が理解しやすく、安心して取り組める方法を選ぶことが大切ですよ。

以下の記事では、療育におすすめの絵本を紹介しています。あわせて参考にしてみてくださいね。

場面カード

場面カードは、あいさつをしても返事がないときや、順番を待つのが難しいときなど、日常生活で起こりやすい状況をイラストで表した教材です。絵を見ながら具体的な場面をイメージできるため、子どもたちが状況を理解しやすくなります。「こんなとき、どうしたらいいかな?」「相手はどんな気持ちかな?」と一緒に考えることで、状況に合った行動や相手の気持ちを想像する力を育むことができますよ。年齢や理解度、困りごとに合わせて、問いかけを工夫してみましょう。

感情カード

感情カードは、うれしい・悲しい・悔しいなど、さまざまな気持ちを表情のイラストや言葉で表した教材です。相手の表情から感情を読み取ることが難しい子どもも、カードを手がかりに気持ちを想像しやすくなります。また、自分の感情に合うカードを選ぶことで、言葉で伝えることが苦手な子どもも、自分の気持ちを表現しやすくなるでしょう。子どもたちが自分や相手の気持ちを理解するきっかけとして、ぜひ取り入れてみてくださいね。

発達障害のある子へSSTを行う上で大切にしたいこと

子どもの特性や発達に合った方法を選ぶ

SSTにはさまざまな活動がありますが、同じ方法がすべての子どもに適しているとは限りません。説明が長すぎないか、一度に求めることが多くないか、課題の難易度が子どもの発達に合っているかなどを確認しながら進めることが大切です。また、子ども自身が練習する目的を理解できているかにも目を向けましょう。思うように取り組めないときは、無理に練習を続けず、説明を短くしたり、お手本をもう一度見せたりするなど、その子に合った方法へ柔軟に調整してみてくださいね。

できないことを否定的に捉えず次の行動につなげる

SSTでは、子どもが課題に取り組めたかどうかだけで判断せず、その経験を次にどう生かすかを一緒に考えることが大切です。コミュニケーションには1つの正解があるとは限らず、相手や場面によって適切な伝え方も変わります。うまくいかないときは、「こんな言い方もできそうだね」「別の方法も試してみようか」と声をかけ、子どもと一緒に考えてみましょう。できなかったことを繰り返し指摘するのは避けて、具体的な方法を伝え、もう一度挑戦できる機会をつくることが大切です。

SSTを始める前に取り組む目標を明確にする

SSTに取り組む際は、まず教材を選ぶのではなく、子どもが日常生活のどのような場面で困っているのかを把握することから始めましょう。例えば、友達との関わりに難しさがある場合でも、自分から声をかけられない、会話が一方的になりやすい、嫌なことへの断り方が分からないなど、理由は様々です。困りごとを具体的にすることで、練習すべきスキルや支援の方向性が明確になります。教材を選ぶときも、年齢だけで判断せず、子どもの特性や実際の課題、活動の目的に合っているかを確認することが大切ですよ。

SSTを行っている場所

病院・学校・児童発達支援事業所など

SSTは、病院や児童発達支援事業所、放課後等デイサービスだけでなく、学校教育の中でも取り入れられています。実際に、文部科学省の事業報告や国立特別支援教育総合研究所の実践事例では、自己紹介やコミュニケーション、意思の伝え方などを学ぶ取り組みが紹介されています。ただし、実施する場所によって内容や進め方は異なるため、子どもの困りごとや身につけたい力に合った支援を選ぶことが大切ですよ。まずは普段通っている学校などに相談し、必要に応じて専門機関も検討してみましょう。

まとめ

SSTで円滑なコミュニケーションを目指そう

SSTは、コミュニケーションや対人関係など、社会生活に必要なスキルを身につけるための支援方法です。ロールプレイングやゲーム、絵本、カード教材などを活用し、日常生活で起こりやすい場面を想定しながら練習してみましょう。大切なのは、子どもの特性や困りごとに合わせて内容を工夫し、1人ひとりのペースを尊重することです。学んだスキルを日常生活でも生かせるよう、子どもの気持ちに寄り添いながら支援してあげてくださいね。