ダウン症のある子どもには、発達や行動、コミュニケーションなどにさまざまな特徴がみられます。しかし、その特徴や成長のスピードは1人ひとり異なるため、ダウン症について正しく理解し、それぞれの個性に合わせて関わることが大切。また、心疾患などの合併症を伴う場合や、学習・生活面で支援が必要になることもあります。今回の記事では、ダウン症についてよく見られる行動や見られる合併症、ダウン症の子どもとの接し方について紹介します。ダウン症の子どもが受けられる支援も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
ダウン症とは?
染色体が通常よりも1本多いことによる疾患

ダウン症とは、21番染色体が通常2本あるところ3本存在する『21トリソミー』と呼ばれる染色体の変化によって起こる先天性の疾患です。通常より染色体が1本多いことで、身体や知的発達にさまざまな特徴がみられます。成長のスピードには個人差があり、心疾患や視力・聴力の問題などを伴う場合も。適切な医療や療育、周囲の支援を受けることで、1人ひとりのペースに合わせて成長し、日常生活や社会生活を送ることができます。
ダウン症によく見られる行動
マイペースに行動する
ダウン症のある子どもは、1つひとつの動作や物事を理解するまでに時間がかかることがあり、自分のペースで行動する姿がよく見られます。急かされると混乱したり、不安を感じたりする場合もあるため、周囲が時間に余裕を持って見守ることが大切。無理に急がせるのではなく、本人のペースを尊重しながら必要に応じて声をかけたり手助けをしたりすることで、子どもが安心して行動できる環境を整えられます。
言葉よりも表情やしぐさで気持ちを伝える
ダウン症のある子どもは、言葉の発達がゆっくりな場合が多く、自分の気持ちや要求を言葉だけで伝えることが難しいことがあります。そのため、笑顔や泣くこと、指差し、身ぶりなどの表情やしぐさを使って気持ちを表現する姿がよく見られます。周囲は言葉だけで判断せず、表情や行動にも目を向けながら気持ちをくみ取り、ゆっくり会話をすることで安心感や信頼関係を築くことにつながりますよ。
聴力が弱い傾向

ダウン症のある子どもは、中耳炎を繰り返しやすいことや耳の構造の特徴などから、聴力が低下しやすい傾向があります。そのため、呼びかけに気付きにくかったり、話の内容を聞き取りにくかったりすることがあります。聞こえにくさは言葉の発達にも影響するため、定期的に聴力を確認することが大切。また、話しかける際は正面から顔を見せ、ゆっくりはっきり話すことを心がけると伝わりやすくなるでしょう。
新しい環境や変化に戸惑う

ダウン症のある子どもは、慣れた環境や生活リズムを好むことが多く、初めての場所や急な予定変更などの環境の変化に戸惑うことがあります。不安から落ち着かなくなったり、普段どおりに行動できなくなったりする場合もあります。そのため、新しい活動を始める際には事前に写真や絵、言葉で説明したり、少しずつ慣れていけるような時間を設けたりすると安心して受け入れやすくなるでしょう。
生活スキルの習得までに時間を要する
ダウン症のある子どもは、食事や着替え、排泄などの生活スキルを身につけるまでに時間がかかることがあります。これは理解や身体の発達のペースに個人差があるためであり、決してできないわけではありません。1つひとつの動作を細かく分けて繰り返し練習し、できたことを具体的に褒めることで少しずつ自信につながります。焦らず継続的に支援し、本人の成長を温かく見守ることが大切ですよ。
ダウン症の子どもに見られる合併症
心疾患

ダウン症のある子どもは、生まれつき心臓に異常を伴う先天性心疾患を合併することが多く、約半数にみられるとされています。代表的なものには心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、房室中隔欠損症などが挙げられます。症状としては、
・哺乳量が少ない
・体重が増えにくい
・疲れやすい
などがみられるでしょう。重症度によっては手術が必要になることもありますが、早期発見と適切な治療によって良好な経過をたどる子どもも多くいます。
消化器疾患
ダウン症のある子どもは、先天性の消化器疾患を合併することがあり、十二指腸閉鎖や鎖肛、ヒルシュスプルング病などが代表的です。これらの病気では、生後すぐに嘔吐やお腹の張り、便が出ないなどの症状が現れることがあります。また、成長後も便秘や胃食道逆流症などの消化器症状が続く場合も。症状に応じて手術や薬物療法、食事管理などを行い、継続的な経過観察によって健康状態を維持することが大切です。
耳鼻科系疾患
ダウン症のある子どもは、耳や鼻、のどの構造的な特徴から耳鼻科系疾患を合併しやすい傾向があります。特に滲出性中耳炎や反復性中耳炎を起こしやすく、聴力の低下につながることがあります。また、鼻づまりや扁桃・アデノイドの肥大により、いびきや睡眠時無呼吸症候群を認める場合も。これらは言葉の発達や日常生活にも影響を及ぼすため、定期的な耳鼻科受診や聴力検査を受け、必要に応じた治療を行うことが重要です。
ダウン症の子どもとの接し方
1人ひとりの個性やペースを尊重する

ダウン症のある子どもは、発達のスピードや得意なこと、苦手なことに大きな個人差があります。そのため、ほかの子どもと比較するのではなく、1人ひとりの個性や成長のペースを尊重することが大切。無理に急がせたり過度な期待をしたりすると、不安や自信の低下につながることがあります。本人の『できること』を大切にしながら、その子に合った方法で見守り、必要な支援を行うことで安心して成長できる環境をつくることができるでしょう。
分かりやすい言葉でゆっくり伝える
ダウン症のある子どもは、長い文章や複雑な説明では内容を理解しにくいことがあります。そのため、短く分かりやすい言葉を使い、1つずつゆっくり伝えることが大切。また、話すだけでなく、イラストや写真、実際に見本を見せながら説明すると、より理解しやすくなりますよ。子どもが理解するまで待つ姿勢を持ち、焦らず繰り返し伝えることで安心感が生まれ、自信を持って行動できるようになります。
できたことを具体的に褒めて自信に繋げる

ダウン症のある子どもは、新しいことを身につけるまでに時間がかかる場合がありますが、小さな成功体験を積み重ねることが大きな自信につながります。「すごいね」と漠然と褒めるだけではなく、「1人で靴が履けたね」「最後まで頑張れたね」など、できたことを具体的に伝えることが効果的です。努力や過程も認めながら褒めることで、挑戦する意欲や自己肯定感を育み、次の成長につなげることができるでしょう。
褒め方についての詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください。
安心できる環境を整える
ダウン症のある子どもは、慣れた環境や決まった生活リズムの中で安心して過ごしやすい傾向があります。そのため、急な予定変更をできるだけ避けたり、1日の流れを事前に伝えたりするなど、不安を軽減できる環境づくりが重要です。また、落ち着いて過ごせる空間を用意し、困ったときに相談できる大人が近くにいることで安心感が高まるでしょう。安心できる環境は、子どもが自分らしく力を発揮するための土台となります。
コミュニケーションの時間を大切にする

ダウン症のある子どもと接するときは、日頃から十分にコミュニケーションを取ることが大切。言葉だけでなく、表情や視線、身ぶりなども大切な意思表示の手段であるため、子どもの様子をよく観察しながら関わる必要があります。子どもの話を最後まで聞き、気持ちに共感しながら応答することで安心感が生まれます。信頼関係が深まることで、自分の気持ちを表現しやすくなり、社会性やコミュニケーション能力の発達にもつながるでしょう。
状況に合わせて適切なサポートをする
ダウン症のある子どもに必要な支援は、年齢や発達段階、その日の体調や環境によって異なります。そのため、常に同じ方法で関わるのではなく、子どもの様子を見ながら必要な場面だけ適切にサポートすることが重要。困っているときには手助けをし、自分でできることは見守ることで、自立する力を育てることができます。1人ひとりに合った柔軟な支援を行うことが、安心して成長できる環境づくりにつながります。
知的障害があるダウン症の子どもが受けられる支援
特別支援教育
ダウン症のある子どもで知的障害を伴う場合は、1人ひとりの発達段階や特性に応じた特別支援教育を受けることができます。特別支援学校や特別支援学級、通常学級での通級指導など、子どもの状況に合わせた教育の場が用意されています。学習面だけでなく、コミュニケーション能力や生活習慣、社会性を身につけることも重視されており、子どもの得意なことを伸ばしながら苦手な部分を支援しますよ。本人が安心して学び、自立した生活を目指せるよう、多職種や家庭と連携しながら支援が行われています。
特別支援教育についての詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください。
療育
療育とは、障害のある子どもや発達に支援が必要な子どもが、その子らしく成長できるよう専門的な支援を行う取り組みです。ダウン症のある子どもに対しては、言葉の発達を促す言語訓練や、体の動きを育てる理学療法・作業療法、遊びを通したコミュニケーション支援などが行われます。また、保護者への相談支援や家庭での関わり方の助言も療育の重要な役割。子どもの発達段階に合わせた継続的な支援を受けることで、日常生活や集団生活に必要な力を少しずつ身につけることが期待されます。
療育についての詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください。
まとめ
ダウン症について正しく学び適切なサポートをしよう!

いかがでしたか?今回の記事では、ダウン症についてよく見られる行動や見られる合併症、ダウン症の子どもとの接し方について紹介しました。ダウン症のある子どもは、発達やコミュニケーションの特徴、合併症などから、日常生活のさまざまな場面でサポートが必要になることがあります。一方で、できることや得意なこと、成長のペースは1人ひとり異なります。そのため、周囲がダウン症について正しく理解し、本人の個性やペースを尊重しながら関わることが大切。特別支援教育や療育なども活用し、家庭や教育・医療機関などが連携しながら、その子らしい成長や自立を支えていきましょう。

