感覚統合とは?【不器用・分類・特徴・原因・発達障害】

「お友達とよくぶつかる」「手先を使う遊びが苦手」など、日々の保育の中で気になる子どもたちの行動はありませんか?もしかしたら、それは本人の努力不足やわがままではなく、感覚統合が関係しているかもしれません。感覚統合とは、生活におけるさまざまな感覚を脳で分類し、整理することを言います。 この記事では、子どもの困りごとの背景にある感覚統合の仕組みや発達障害との関係、改善方法などを詳しく解説していきます。

感覚統合とは?

脳に入る情報をまとめること

感覚統合とは、脳に入る情報を整理したりまとめたりすることです。私たちは普段、目や耳からの情報だけでなく、体の傾きや力加減を感じる感覚など、多くの刺激を無意識に受け取っています。例えば、お友達とぶつからずに走る、先生の話に集中するといった日常の動きも、この機能のおかげで成り立っていますよ。 脳がこれらの情報を交通整理のようにまとめる(統合する)ことで、運動能力の向上や感情のコントロールなど、日常生活のあらゆる面で適応力が高まるのです。

感覚の分類

自覚しやすい感覚

私たちが普段の生活や保育の中で、最も意識するのが自覚しやすい感覚です。これは視覚や聴覚、触覚といった、いわゆる五感のことで、外の世界からダイレクトに脳へ伝わってきます。 保育の現場では、子どもたちの「まぶしい」や「うるさい」「チクチクして痛い」といった言葉やしぐさを通して、その変化や特徴に比較的早く気づくことができますよ。もし、特定の音を極端に怖がって耳をふさいだり、粘土の手触りを嫌がったりする子がいたら、それはこの感覚が過敏に働いているサインかもしれません。

自覚しにくい感覚

一方、私たちが普段ほとんど意識せずに処理しているのが、自覚しにくい感覚です。これには、自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を無意識に感じる感覚の 『固有受容覚』や、体の傾きやスピードを感じる『前庭覚』などがありますよ。 この感覚は目に見えないため、育ちにくさがあっても周囲からは気づかれにくく、不器用な子や乱暴な子と誤解されてしまいがちです。例えば、お友達に強くぶつかってしまう子は、悪気があるのではなく、自分の体と周囲との距離感がうまく掴めていない可能性があります。

感覚統合がうまくいかないとどうなる?

落ち着きがなくなる

感覚統合がうまくいかないと、落ち着きがなくなることがあります。なぜなら、脳に入ってくる様々な感覚情報をうまく整理できないと、脳内が常にパニック状態になり、自分の体をどうコントロールしてよいか分からなくなるからです。 例えば、揺れや傾きを感じる前庭覚が未熟な子は、自分の姿勢を保ち、脳を覚醒させるために、絶えず体を揺らしたり室内を動き回ったりします。 じっとできない姿を見かけた際は、わがままや集中力不足と決めつけず、感覚の交通整理がうまくいっていない可能性を考えてみましょう。

あらゆる感覚に過敏になる

感覚統合がうまくいかないと、あらゆる感覚に過敏になります。なぜなら、脳に入ってくる情報を適切にシャットアウトしたり受け流したりするフィルター機能がうまく働かず、すべての刺激がダイレクトに脳に届いてしまうからです。 そのため、衣服のチクチク感を痛みのレベルで嫌がったり、生活音を大音量のように感じて耳をふさいだりと、日常のささやかな刺激が耐え難い苦痛になってしまいますよ。 好き嫌いが多い子や、神経質と捉えず、脳が過剰に刺激を受け取っている過敏さのサインとして理解し、環境を調整していきましょう。

感覚刺激に対して鈍くなる

感覚統合がうまくいかないと、刺激に対して過敏になるのとは逆に、感覚への反応が極端に鈍くなることもあります。これは、脳に伝わる情報のボリュームを調整する機能がうまく働かず、必要な刺激をキャッチするためのセンサーの感度が低くなりすぎているからです。 例えば、自分の力加減がわからず、鉛筆で紙を破るほど強く書いたり、怪我をしてもあまり痛がらないなどが見られますよ。 おとなしい子や我慢強い子、乱暴な子と誤解せず、脳が刺激を必要としているサインとして、適切なアプローチを探ることが大切です。

不器用になる

感覚統合がうまくいかないと、不器用になることもあります。なぜなら、自分の体の位置や力加減を無意識に測る固有受容覚や前庭覚などの感覚がうまく整理できず、脳が自分の体を正確にコントロールできないからです。そのため、ハサミや折り紙などの細かい作業が苦手だったり、縄跳びやスキップのように手足を別々に動かす複雑な動作でぎこちなさが見られたりしますよ。「練習が足りない」と無理にやらせるのではなく、体の使い方の不器用さの背景にある、感覚の育ちをサポートする視点を持つことが大切です。

言葉が遅れる

感覚統合がうまくいかないと、言葉に遅れが見られます。言葉を話すためには、相手の声を聞く聴覚や、舌や唇を正確に動かす固有受容覚など、複数の感覚を脳で高度に連動させる必要があるからです。例えば、自分の体の感覚が掴めず口元のコントロールが苦手な子は発音が不明瞭になりやすく、周囲の雑音をうまく遮断できない子は言葉を聞き取ることに集中できません。 言葉が遅いと感じたときは、聞く力や口の動きを支える『感覚統合』の土台からアプローチしていく視点を持ってみましょう。

人間関係が苦手になる

感覚統合がうまくいかないと、人間関係が苦手になることもあります。他者の表情や声のトーンを読み取ることや、お友達との適切な距離感を保つなどの感覚処理がスムーズにいかないからです。例えば、優しく触ったつもりが乱暴になってしまったり、 遊びの中で友達と決めたルールや決まりを理解することが難しかったりして、トラブルに発展してしまいます。「意地悪な子」「協調性がない子」と誤解せず、関係づくりの難しさの背景にある、感覚処理の生きづらさに気づいてサポートしていきましょう。

自分の行動をコントロールできない

感覚統合がうまくいかないと、自分の行動をコントロールできないこともあります。なぜなら、脳に入ってくる周囲の刺激や自分の体からのサインを適切に処理できないと、心身の覚醒レベルが乱れ、常にいらいらや不安を感じてしまうことがあるからです。そのため、急な予定変更に対処できずにパニックを起こしたり、順番待ちなどの我慢が難しく激しいかんしゃくを起こしたりと、感情の制御が効かない姿として現れますよ。このような時は安易に叱るのではなく、行動のコントロールの難しさの背景にある生きづらさに寄り添っていきましょう。

自信がなくなる

感覚統合がうまくいかない状態が続くと、子どもが自分に対する自信を失ってしまうことがあります。なぜなら「お友達と同じようにできない」「いつも先生に注意される」といった経験が重なることで「自分はダメな子なんだ」と自己否定感を強めてしまうからです。例えば、本人は一生懸命がんばっているのにうまくいかず、遅れてしまったり、工作を失敗して投げ出したりする姿となって現れますよ。やる気がないと捉えるのではなく、自信喪失の背景にある生きづらさに共感し、成功体験を意図的に作って自信を育んでいきましょう。

感覚統合がうまくいかない原因は?

完全には解明されていない

感覚統合がうまくいかない原因については、現代の医学や科学の分野でもまだ完全には解明されていません。脳の発達や神経系の仕組みは非常に複雑であり、遺伝的な要因や妊娠・出産期の環境など、複数の要素が原因であるという説があります。例えば、以下のような個人の要因があげられますが、特定は困難です。

・生まれつき特定の感覚に対するセンサーの感度が高すぎる
・脳の情報を伝えるネットワークがつながりにくい

原因探しをするのではなく、目の前の子どもの困りごとに寄り添う支援を大切にしていきましょう。

参考:https://credo-coltd.com/basic-knowledge/

感覚統合と発達障害の関係とは?

発達障害の症状と関りがある

感覚統合の育ちにくさは、ASDやADHDといった発達障害の症状と深い関わりがありますよ。例えば、ASDの特定の音を激しく嫌がる過敏さや、ADHDのじっと座っていられない多動性の背景には、感覚統合の偏りが大きく影響している場合があるのです。発達障害という枠組みだけでなく感覚の生きづらさという視点からも捉えることで、より具体的で効果的な支援につなげることができます。このように、感覚統合を理解することは、発達障害への理解や症状の緩和につながっていくでしょう。

発達障害の療育法として利用される

感覚統合療法は、発達障害を持つ子どもたちの療育法として利用される場合があります。 発達障害による生きづらさの原因の1つである感覚過敏や感覚遮断などの問題に対して、直接アプローチすることで行動の安定や発達が促されるからです。 感覚統合療法では、子どもの感覚統合を高め、行動や社会的スキルの発達を促進することが期待されます。発達障害を持つ子どもにとって、適切な感覚刺激を行い、行動や反応を学べることが重要になるでしょう。専門家やセラピストは、発達障害によるさまざまな症状やニーズに沿って、感覚統合療法を行う必要があります。

感覚統合を改善するには

感覚統合療法を受ける

感覚統合の偏りや問題を根本から改善していく1つ目の方法は、専門機関で感覚統合療法を受けることです。感覚統合療法とは、アメリカの作業療法士アン・ジーン・エアーズ(A. Jean Ayres)博士が提唱したリハビリテーションの一種です。この療法では、単に運動神経を良くする訓練ではなく、本人が「楽しい!」と感じる遊びを通して脳に適切な感覚刺激を与え、脳の交通整理(情報処理)をスムーズに行えるようにすることを目指します。

自宅で遊びを取り入れる

感覚統合の問題を改善する2つ目の方法は、自宅で遊びを取り入れることです。なぜなら、脳の発達を促すためには、特別な訓練をたまに行うよりも、自宅という安心できる環境で、毎日楽しく継続して感覚刺激に触れる方が効果的だからです。例えば、布団の上でのいもむしゴロゴロ転がりや、親子での押し相撲、手先を使うシール貼りなど、自宅にある身近な物を使った遊びが脳への豊かな刺激になりますよ。無理なく取り組めるよう、園での様子と合わせて、自宅でも楽しくできる簡単な遊びのアイデアを提案し、一緒に支えていきましょう。

感覚統合に問題があると感じたら

Webのチェックシートで調べる

子どもの感覚統合に問題があると感じたら、まずはWeb上のチェックシートを活用して調べてみるのがおすすめです。 客観的な設問に答えることで、主観や思い込みを排除し、その子が抱える生きづらさや感覚の偏りを具体的に整理できるからです。 例えば、音への過敏さや姿勢の保ちにくさなど、園での気になる行動にチェックを入れていくことで、脳のどの感覚にサポートが必要なのかが可視化されますよ。「ちょっと気になるな」と悩んだ際は一人で抱え込まず、Webのチェックシートを現状把握や気づきのヒントとして活用してみましょう。

チェックシート:https://worldkids.jp/checklist

感覚統合の検査を受けてみる

子どもの感覚統合に課題があると感じた場合は、専門機関で感覚統合の検査を受けてみるのもおすすめです。 検査を受けることで、本人の感覚の過敏さや鈍麻さ、体の動かし方のクセなどがデータとして可視化され、より明確な支援方法が分かります。例えば「JMAP(日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査)」などを通して、脳の情報処理の特性が分かれば、保育現場や家庭でどのような環境構成や声かけをすべきかが具体的に定まります。園内だけで判断が難しいときは、保護者へ一つの選択肢として検査の存在を提案し、専門的な視点を取り入れたより良いサポートへ繋げていきましょう。

参考:https://si-japan.net/kensa/

まとめ

感覚統合を高めて成功体験を増やそう!

今回は、感覚統合について詳しく解説しました。感覚統合とは、脳が外からの情報を整理し、適切に反応するための大切な機能です。これがうまくいかないと、感情のコントロールが難しかったり、過敏さや不器用さゆえに園生活で苦労したりすることがあります。 大切なのは、子どもの困りごとの背景にある感覚の特性を理解し、遊びや適切なアプローチを通じて脳の交通整理をサポートすることですよ。 感覚が整えば、子どもたちは自信を取り戻し、自分らしく輝けるはずです。 この記事を参考に「できた!」という小さな成功体験を積み重ね、子どもたちの可能性を一緒に広げましょう。