突然ですが、IQという言葉を聞いたことはありますか?IQという言葉を耳にするけど、詳しくは理解していない方が多いと思います。実は、IQは発達障害にも大きく関わっています。療育や保育の現場でも非常に重要な情報というわけですね。今回は、発達障害とIQに焦点を当てていきます。さまざまな種類の発達障害とIQの関係性にも触れていきますよ。ぜひこの記事を読んで、発達障害とIQに関する知識を深めて、子どもたちとの接し方にも活かしてみてくださいね。
IQとは?
知能指数を意味する言葉

IQはIntelligence Quotientの略で、知能指数を意味する言葉です。知能指数は、知能を数値で表しているもので知能検査の表示として用いられています。IQは人間の知能全てを表すわけではなく、あくまでもいくつかの側面から評価するものです。記憶力や問題解決能力など、目に見えない能力を数値化することによって、個々人のIQを知ることができますよ。IQはビジネスの場をはじめとしたさまざまな分野で広く活用されています。
IQ70未満が知的障害の目安とされる
保育の現場において、IQ(知能指数)は子どもの発達の特性を理解するためのひとつの指標となります。一般的に、IQ70未満が知的障害(軽度知的発達症)の診断やサポートを検討する際のおおむねの目安とされています。軽度知的障害は、食事や着替え等の日常生活のスキルには支障がありません。軽度知的障害の特徴は以下のとおりです。
・複数人でいるのが苦手
・感情のコントロールが苦手
・マルチタスクが苦手
・新しいことを覚えるのに時間がかかる
発達障害とIQの関係
発達障害があるとIQにばらつきが出やすい
発達障害とIQの1つ目の関係は、発達障害があるとIQにばらつきが出やすい点です。一般的な知能検査では、複数の視点から知能を測定します。発達障害がある場合、平均値が高くても、個別の項目を見ると「言葉の理解は優れているのに先を動かす作業は極端に苦手」といった偏りが見られることが少なくありません。この数値のばらつきこそが園生活の中で生じる、出来ることと出来ないことの激しいギャップの正体です。保育の現場では、総合的な数値だけで判断せず、どの部分が得意でどこに生きづらさを抱えているのか、検査の内訳に注目して環境を整えていくことが大切です。
IQが低いから発達障害になるわけではない
発達障害とIQの関係を考える上で、非常に重要なのがIQが低いから発達障害になるわけではないという点です。これらは全く異なる概念であり、因果関係はありません。IQは知的な発達や学習のスピードを測る指標であるのに対し、発達障害は生まれつきの脳の認知や情報の受け取り方の偏りによって生じるものです。そのため、IQが平均より高くても自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害の特性を持つ子どもはたくさんいます。逆に、IQが低くても発達障害の特性に当てはまらない子もいます。
IQが高いと発達障害は見逃されやすい

発達障害とIQの関係において、特に保育の現場で注意したいのが、IQが高いと発達障害の特性が見逃されやすいという点です。これは、知能の高さによって自身の困りごとをある程度カバーできてしまうために起こります。例えば、コミュニケーションに難しさを抱えていても、高い記憶力を使って大人のセリフを真似ることで、表面的にはうまく適応しているように見えることがありますよ。しかし、本人は周囲に合わせるために人一倍のエネルギーを使っており、頭の中では強い不安や生きづらさを抱えていることが少なくありません。そのため、集団行動ができていたり、学習面で優秀だったりしても、友達の気持ちを汲み取るのが極端に苦手といったサインを見落とさないことが大切です。
発達障害と知的障害の違い
知的障害は発達障害の枠組みの中に含まれる

知的障害は発達障害の枠組みの中に含まれます。アメリカ精神医学会のDSM-5によると、知的障害のことを知的能力障害と呼び、神経発達症群や神経発達障害群の中に位置づけられています。 また、知的障害と発達障害が併存する場合もあります。目の前の子どもの困りごとが、知的な発達のゆったりさによるものなのか、脳の機能的な特性によるものなのか、あるいはその両方が影響し合っているのかを丁寧に見極め、一人ひとりに合ったシームレスな支援へと繋げていきましょう。
発達障害の診断で使われるIQテストとは?
WISC-Ⅳ

発達障害の診断で使われる1つ目のIQテストは、WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)です。5歳から16歳11カ月までの児童を対象としている知能検査です。この検査では、10個の基本検査を実施して4つの指標と全体的な知能を算出しますよ。
知覚推理指標:視覚的な情報を把握し、論理的に推理、解決する力
ワーキングメモリ指標:聞いた情報を記憶し、頭の中で処理、操作する力
処理速度指標:目で見た情報を素早く正確に処理し、作業をこなす力
これらの指標を分析することで、複数の視点から子どもの知的な発達のバランス(凸凹)を詳しく調べることができます。
参考:https://www.saccess55.co.jp/untitled121.html
WAIS-Ⅳ

発達障害の診断で使われる2つ目のIQテストは、WAIS-Ⅳ(ウェイス・フォー)です。こちらは主に16歳から90歳11カ月までの成人を対象とした検査であるため、保育園に通う子どもたちが直接受けることはありません。しかし、園に通う子どもの保護者の方が、自身の生きづらさや子育ての難しさをきっかけに大人になってから診断を受ける際、このWAIS-Ⅳがよく用いられます。検査では、言葉の理解力や記憶力、作業のスピードといった多様な側面から知能を測定し、個人の得意と苦手のバランスを詳しく分析します。保護者自身がこの検査を通じて自分の脳の特性を知ることは、自身のストレスコントロールだけでなく、心の余裕を持って子育てに向き合うための大きなヒントになりますよ。
参考:https://j-shinrikensa.jp/column/wais4/
田中ビネー
発達障害の診断で使われる3つ目のIQテストは、田中ビネーです。保育の現場では、WISC(ウィスク)と並んで非常によく活用されている、馴染みの深いテストの一つです。日本人向けに作成された方式で、検査内容に日本文化や生活様式なども含まれているのが特徴と言えるでしょう。知能の発達状態を把握して、課題解決の方法を導き出すことを可能にします。年齢によって検査方法が異なることも特徴で、精神年齢を算出して実年齢との差で発達状態を測定します。
参考:https://www.taken.co.jp/vinv.html
IQによる知的障害の分類
【IQ50~70程度】軽度知的障害

保育の現場において、子どもの発達をサポートする上での一つの指標となるのが軽度知的障害という基準です。一般的に、知能検査におけるIQの数値が50〜70程度であり、日常生活や集団行動における適応の難しさが見られる場合に、この軽度知的障害の目安とされています。園生活の中では
・友達とのルールのある遊びを理解するのにサポートが必要
・冗談や皮肉を真に受けてしまう
といった様子として現れることがあります。しかし、一見すると周囲と同じように過ごせていることも多く、周囲がその困りごとに気づきにくく、本人が無意識のうちに無理を重ねてしまうケースも少なくありません。
【IQ20~35程度】重度知的障害
保育の現場において、より専門的で手厚いサポートを必要とする基準の一つが重度知的障害です。一般的に、知能検査におけるIQの数値が20〜35程度であり、日常生活の多くの場面で全面的な介助や配慮が必要な状態がおおむねの目安とされています。簡単な挨拶などはできますが、言葉による意思疎通は難しく、食事や排泄、着替えといった身の回りの動作において介助者の手助けが不可欠ですよ。
【IQ20以下】最重度知的障害
IQが20未満または発達段階が概ね3歳以下は、最重度知的障害と判定される最も重いレベルの知的障害です。言葉による意思疎通や身辺自立の獲得は非常に難しく、感情や意思の表出はわずかな表情の変化、体の動き、声のトーンなどを通して行われます。また、親を認識することが難しい場合もありますよ。 食事や排泄、入浴など日常生活のほぼすべての場面において、終日、全面的な介助や見守りが必要です。
ASDの人のIQの特徴
動作性のIQが低い

ASDのIQの1つ目の特徴は、動作性のIQが低い点です。中でもアスペルガー症候群の人に多く見られる特徴です。これは。言葉を扱う力(言語性IQ)に比べて、目で見た情報を処理して手先を動かす力や、空間を捉える力(動作性IQ)が弱いことを意味します。例えば、園生活の中で、おしゃべりはとても上手なのに、着替えや工作になると極端に時間がかかるといった具体的なギャップが現れます。そのため保育の現場では、言葉の流暢さだけで何でもできると判断せず、実際の行動面での困りごとに気づくことが重要です。
特性が影響して数値に偏りが出る
ASDのIQの2つ目の特徴は、特性が影響して数値に偏りが出ることです。IQが平均的な人もいれば、知的障害(IQ70未満)を伴う人、またはギフテッドのように極めて高いIQを持つ人もいます。検査では各項目の数値に大きなアンバランスさが見られるのが特徴です。 例えば、言語理解や知覚推理の数値が非常に高い一方で、処理速度の数値が極端に低いといったようなことがありますよ。これにより、口頭での理解は高いのに、板書などの作業が遅いといった現象が起こります。
ADHDの人のIQの特徴
ワーキングメモリの指標が低い

ADHDの人のIQの特徴1つ目は、ワーキングメモリの指標が低い点です。これは、一時的に頭の中で情報を留め置きながら処理する力が弱いことを意味します。例えば、園生活の中で
・さっきまでやっていた片付けを忘れて、別のことに気を取られてしまう
といった具体的な行動の難しさとして現れます。そのため保育の現場では、子どもが意図的に話を聞いていないと誤解せず、ワーキングメモリの弱さを補う工夫が大切です。
実力よりIQが低く測定されがち
ADHDの人のIQの特徴2つ目は、実力よりIQが低く測定されがちな点です。これは、ADHDの特性である不注意や衝動性が検査中に影響を及ぼしやすいためです。例えば、本当は答えが分かっていても、周囲のちょっとした音に気を取られて集中が切れたりすることがあります。他にも、問題を最後まで読まずに焦って答えてしまったりすることで、本来持っている知的な能力が数値に正しく反映されないケースが多々ありますよ。そのため保育現場では、検査結果の数値だけを見て「この子は理解力が低い」と決めつけないことが重要です。
SLDの人のIQの特徴
IQには問題がない場合が多い

SLDのある子どものIQには、全体的な数値には問題はなく、平均的、またはそれ以上である場合が多いという大きな特徴があります。SLDは、読み書きや計算するといった特定の学業的スキルの習得に限定して困難が生じる発達障害だからです。そのため、言葉の理解力や論理的な思考力など、全体的なIQには遅れが見られないことがほとんどです。例えば、園生活の中で、おしゃべりや日常のルール理解はバッチリなのに、自分の名前の文字を読むことだけが極端に苦手といった部分的なギャップが現れますよ。
子どものIQを上げる方法
遊びをたくさん取り入れる

子どものIQを上げる1つ目の方法は、遊びをたくさん取り入れることです。なぜなら、乳幼児期の遊びは脳全体をバランスよく刺激し、思考力や集中力、問題解決能力といった知的な基盤を自然と鍛えるからです。例えば、ブロック遊びでは空間認識能力や論理的思考力が養われ、ごっこ遊びでは言葉の理解力や想像力が豊かになりますよ。机に向かう勉強とは違い、子ども自身が「楽しい!」と夢中になる体験こそが、脳の神経回路を最も活性化させます。そのため保育の現場では、子どもが自発的に熱中できる遊びの環境を整えることが大切です。
読み聞かせや音読を行う
子どものIQを上げる2つ目の方法は、読み聞かせや音読を行うことです。絵本を通して豊かな言葉に触れることは、脳の言語領域を強力に刺激し、語彙力や理解力といった知的な基礎を引き上げるからです。保育士の温かい声で行う読み聞かせは、子どもの想像力を広げるだけでなく、文章の先を予測する思考力も育てます。さらに、子ども自身が声に出す音読は、脳のワーキングメモリを鍛えることにも直結しますよ。そのため保育の現場では、毎日の活動に絵本の時間を心地よく取り入れることが大切です。
積極的なコミュニケーション

子どものIQを上げる3つ目の方法は、積極的にコミュニケーションを取ることです。なぜなら、対話は子どもの脳を刺激し、論理的思考力や言葉を紡ぎ出す力を飛躍的に伸ばすからです。例えば、子どもが「これ何?」と聞いてきた際に単に答えを教えるだけでなく「○○君は何だと思う?」と問いかけて対話を広げることで、自分で考える力が鍛えられますよ。また、自分の気持ちを言葉で伝える経験そのものが、言語性IQの向上に直結します。日々の何気ないおしゃべりや共感的なやり取りの積み重ねが、コミュニケーション能力やIQを大きく育てていきます。
まとめ
発達障害とIQの関係性を知ろう
今回は発達障害とIQについて詳しく解説していきました。 発達障害がある場合、総合的なIQの数値だけでは見えない、得意と苦手の大きなばらつき(凸凹)が生じやすいのが特徴です。ADHDの特性による不注意や、ASDの強いこだわりなどが影響して、本人の本当の実力よりも検査の数値が低く測定されてしまうケースも少なくありません。逆にIQが高いことで、本人が抱える生きづらさや困りごとが周囲に見落とされてしまうこともあります。 この記事を参考に、知的障害や発達障害の特性を正しく理解し、一人ひとりの歩みに寄り添った温かい丁寧な援助へと繋げていきましょう。


