皆さんは癇癪(かんしゃく)という言葉をご存知ですか?保育園で癇癪を起こした子どもへの対処法がわからない、自分の子どもの癇癪に困っていてどこかに相談したいと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、子どもが癇癪を起こす原因や癇癪を起こした子どもと関わるときの注意点など、癇癪について詳しく解説します。子どもの癇癪とうまく付き合っていけるヒントがあるかもしれません。ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。
癇癪(かんしゃく)とは?
興奮して感情のコントロールが難しい状態
癇癪(かんしゃく)とは、何かをきっかけに興奮し、感情のコントロールが難しくなっている状態のことを指します。周囲の大人に何かを伝えたいときや、何かの欲求を満たしたいときに感情が爆発する点が癇癪の特徴です。そのため、成長につれて自分の欲求を言葉で相手に伝えられるようになると、癇癪を起こす頻度は減少する傾向ですよ。子どもが癇癪を起こしたときに見られる具体的な行動例としては、以下のようなことがあげられます。
- 床に転がって泣き叫ぶ
- ものを投げたり床や壁に打ち付けたりする
- 自分の頭を床や壁に打ち付ける
- 手や足をバタバタさせて暴れる
子どもが癇癪を起こす原因は?
生理的な反応
子どもが癇癪を起こす原因はいくつかあります。1つ目は、生理的な反応です。これは、言葉が未発達な0~1歳ごろの乳幼児によく見られる反応です。例えば「おなかが空いた」「オムツが濡れている」などの不快さを、泣くことによって伝えています。赤ちゃんが癇癪を起こして欲求を伝えることは、乳幼児期の反応として大切な行動と言えます。産後の保護者にとっては特に大変な時期ですが、赤ちゃんが泣くことにより訴えていることを汲み取り、必ず対応してあげましょう。
拒否したい
2つ目は、物事に対する拒否です。子どもが2~3歳ごろに迎えるイヤイヤ期には、周囲で起きている出来事や状況に対して「これはしたくない」「この場を避けたい」といった感情から、癇癪を起こすことがよくあります。この時期は、自分の意思や好みをはっきり示すようになり、要求が通らなかったり自分のこだわりに反することが起きると、「求めているものはこれじゃない」と泣いたり怒ったりする場面が増えるのです。イヤイヤ期に関しては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
欲求を伝えたい
3つ目は、自分の欲求を伝えたいという表れです。癇癪を起こして泣くことにより、自分はこれをしてほしいという欲求を伝えています。例えば、お菓子を買ってほしい、そのおもちゃがほしいなどの物的欲求があげられます。このような場合に、子どもが癇癪を起こすたびにその欲求に応えていると、泣き叫ぶことで自分の欲求を叶えてもらえると子どもは学習してしまいます。その結果、うまくいかないことがあるたびに癇癪を起こすようになるかもしれません。状況に応じて毅然とした態度で対処しましょう。
注目してほしい
4つ目は、大人に注目してほしいという欲求です。寂しい気持ちや大人にかまってほしいという気持ちから、癇癪を起こしてしまうことも多々あります。例えば、かまってほしい気持ちを言葉で伝えても注目してもらえなかったとき、泣き叫ぶことで大人がそばに来てくれたという経験をします。その経験を重ねることで、注目してほしいと思うたびに癇癪を起こすようになってしまうのです。こういった癇癪の発生を防ぐには、癇癪が発生する前に対応することが大切ですよ。子どもから言葉でアプローチがあったときには、必ず応えられるように心がけましょう。
発達障害との関連
5つ目は、発達障害との関連です。発達障害の特性が癇癪を起こす要因となることがあります。癇癪を起こす要因となる特性として、以下のような特性があげられます。
- 行動や興味のかたより
- 言葉の発達の遅れ
- 自分の気持ちを他者に伝えることが苦手
- 他者と自分の意図をすり合わせることが苦手
- 気持ちのコントロールが難しく、衝動性がある
子どもが癇癪を起こしたときの対処法
安全を確保する
では、子どもが癇癪を起こしてしまったとき、大人はどのように対処すれば良いのでしょうか。まず1番にすべきことは、安全を確保することです。癇癪を起こした子どもは、周辺にあるものを投げたり、床や壁に頭を打ち付けたりします。このような場面では、子どもの周りにあるものを移動させたり、クッションや枕を間に挟んだりして、子ども本人と周囲の人の安全を確保しましょう。療育における自傷と他害については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
無反応を徹底する
安全を確保した後は、子どもが自分自身で落ち着くまで無反応を徹底しましょう。癇癪を起こしている間の子どもは、さまざまな刺激に敏感になります。身近な人の声や手でも不快な刺激と捉えて癇癪が悪化してしまうことがあるため、近寄ったり声をかけたりしないようにしましょう。もし、声をかけたりものを与えたりして一時的に落ち着いたとしても、癇癪はより強化して繰り返される可能性が高いです。ただし、無反応でいることは、無視をすることではありません。子どもの命に係わる事態を防ぐ場合や子どもが落ち着けた場合に、すぐ声をかけられるように少し離れた場所から静かに子どもの様子を観察しておくことが大切ですよ。
癇癪を落ち着かせることができたら褒める
子どもが自分自身で癇癪を落ち着かせることができたら、すぐに褒めてあげることが重要です。自分で落ち着くことができたという成功体験を褒めてあげると、子どもは安心感を感じることができます。「1人で落ち着くことができたね」など、良かった部分を具体的に褒めてあげると良いでしょう。褒められて安心感を感じた経験を繰り返すことで、癇癪以外にも自分の感情を伝える手段があると学習できます。しかし、大人が褒めることを後回しにしてしまうと、癇癪を起こしたけど自分で落ち着けたという経験を子どもは忘れてしまいます。その場ですぐに褒めてあげることを欠かさないようにしましょう。
癇癪を起こした子どもと関わるときの注意点
叱らない
癇癪を起こした子どもと関わるときには、注意すべきことがいくつかあります。1つ目は、決して叱らないということです。癇癪を起こしている最中に大人が声を荒げて叱ってしまうと子どもへの刺激となり、余計に子どもの癇癪が増幅されてしまいます。また、子どもが落ち着いたあとで叱るのもやめましょう。なぜなら、癇癪を起こしたことに対して叱られると、またネガティブな感情になってしまうからです。このネガティブな感情がきっかけとなり、再度癇癪を起こす可能性が高まります。
もので釣らない
2つ目は、もので釣らないということです。もので釣ることによりその場は落ち着かせることができるかもしれません。しかし、癇癪を起こせばものがもらえるということを子どもが学び、ほしいものがある度に癇癪を起こすようになってしまいます。前述したように、癇癪は繰り返すことで強化されます。癇癪がより強くなってしまうことを防ぐためにも、もので釣ることは決してしないようにしましょう。
ごまかさない
3つ目は、ごまかさないということです。何かしらの方法でその場の癇癪をごまかすことができたとしても、後からその感情を思い出して突然癇癪を起こすことがあります。保護者にとって、子どもの癇癪と真正面から向き合うことは非常に大変で根気と体力が必要です。しかし、冷静に向き合うことで今後の癇癪を減らすことができるかもしれません。その場しのぎにごまかしたり子どもの意識を他に向けさせたりせず、子どもが癇癪を起す原因は何なのかを探し解決に導いていきましょう。
癇癪を予防するには?
癇癪の原因を知る
子どもの癇癪を予防するための方法として、癇癪の原因を知ることがあげられます。子どもが癇癪を起こすときは、あるものが原因になっていたり、あることがきっかけになっていたりします。癇癪の原因を知り、その原因を取り除いたり触れないようにすることで、癇癪を事前に予防することができるでしょう。例えば、癇癪を起こしたきっかけや癇癪の継続時間、そのほか気が付いたことなどをメモしておきます。そのメモの内容から傾向を考えて、過去に癇癪を起こした同じ場面や場所などで参考にします。こうした取り組みの積み重ねにより、癇癪の原因となったものを見つけることができるかもしれません。
見通しを立てる
先の予定の見通しを立てて子どもに伝えることも、子どもの癇癪を予防する対応と言えます。子どもが次の行動を把握しておくことで、子どもは気持ちの切り替えがしやすくなり、癇癪を起こしにくくなります。また、先の予定を理解していれば、心に余裕を持つこともできるでしょう。例えばタイマー機能を使うなど、その子に合った方法で行動の切り替えを促しましょう。自分の判断で行動の切り替えができた!という成功経験の繰り返しは、子どもの気持ちを安定させることにも繋がりますよ。また、言葉だけで伝えることが難しいという子どもに対しては、絵カードの活用も有効的です。絵カードについては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
ルールやパターンを決める
子どもと一緒にルールやパターンを決めておくことも、子どもの癇癪を予防するためには大切なことです。怒ってしまったときやイライラしてしまったとき、悲しいことがあったときにはこうしよう、というルールやパターンを事前に決めておくことで、気持ちを落ち着かせるきっかけを促すことができます。例えば「怒ってしまったときは紙をグシャグシャにする」「イライラしてしまったときは深呼吸を5回する」など、子どもにとって取り入れやすい行動から始めてみましょう。このように行動をパターン化することで、リラックスでき、緊張から解放されやすくなります。
子どもの癇癪に悩んだときの相談先
子育て支援センター
子どもの癇癪に悩んだときは、1人で抱え込まずに専門の施設へ相談しに行ってみましょう。相談先としてあげられる施設の1つ目は、子育て支援センターです。子育て支援センターとは、厚生労働省が行っている地域子育て支援拠点事業の一種で、子どもを持つ家庭を地域で支援する施設です。育児の経験や子どもに関する知識を持つ職員が常駐しているため、子どもの癇癪に関しても親身に聞いてもらうことができるでしょう。
児童相談所
2つ目は、児童相談所です。児童相談所とは、児童福祉法に基づいて設置されている行政機関です。児童相談所と聞くと、虐待などの問題を扱っている施設というイメージが強い方が多いかもしれません。しかし、児童相談所では18歳未満の子どもに関する幅広い相談を受け付けているため、癇癪に関しても相談することができます。全国の児童相談所の一覧は、こども家庭庁のページから確認することができますよ。児童相談所に関しては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
まとめ
子どもの癇癪とうまく付き合っていこう
いかがでしたか?今回は、子どもが癇癪を起こしたときの対処法や癇癪を予防する方法など、子どもの癇癪について解説しました。癇癪を起こすことは、子どもの成長にとって大切なことですが、大人にとっては苦しく感じることもあるでしょう。今回紹介した対処法などを活用したり専門施設に相談したりすることで、子どもの癇癪が緩和することが期待できます。時には息抜きをしながら、子どもの癇癪とうまく付き合っていけると良いですね。