ワーキングメモリとは?子どもとの関わりについて解説!【低い・原因・鍛える・遊び】

子どもと一緒に生活していると「何度伝えても行動に移せない」「遊びの片づけを途中で忘れてしまう」といった場面に出会うことはありませんか?もしかすると、その背景には子どものワーキングメモリの育ちにくさが関係しているかもしれません。もしワーキングメモリの特性によって困りごとが見られるのであれば、早めに気づき、改善してあげたいですよね。この記事では、ワーキングメモリを育てるために理解しておきたいポイントを、分かりやすくお伝えしていきます。日々の関わりのヒントとして、ぜひ参考にしてみてくださいね。

ワーキングメモリとは?

作業に必要な情報を処理する能力

ワーキングメモリとは、作業に必要な情報を処理する能力のことです。ここでいう作業とは、計算や会話のことで、作業記憶と呼ばれることもあります。脳に入ってきた情報を一時的に保存するメモ帳のような役割ですね。子どもから大人まで年齢を問わず、日常生活のあらゆる場面でこのワーキングメモリを使って判断したり活動したりしていますよ。例えば、6+7+8という計算があったときに、6+7=13という計算をします。その後、6+7は忘れて、13+8=21と答えを出します。このように、単純な足し算の中でも「数字を足す」「必要無い数字を忘れる」という処理を行うのがワーキングメモリの働きなのです。

異なる4つの要素で構成される能力

ワーキングメモリは、異なる4つの要素で構成されています。4つの要素とその例は以下のとおりです。

音韻ループ
取引先からの電話で、内容を一時的に音声で記憶しながらメモをとる

視空間スケッチパッド
授業などで、黒板の図をノートに描く

エピソーディックバッファ
映画を見て映像とセリフを同時に処理し、物語として理解する

中央実行系
複数のタスクの中から必要な情報に注意を向ける

短期記憶とは違い情報を操作・加工する

ワーキングメモリと短期記憶は、どちらも短い時間だけ情報を保持する、という点では共通していますが、その本質的な役割には決定的な違いがあります。短期記憶は、外部から入ってきた情報をそのままの形で、数分程度キープしておくための場所。例えば、電話番号を一時的に覚えたり、買い物リストを店に着くまで記憶したりする行為がこれにあたります。対してワーキングメモリは、保持している情報を目的に合わせて操作や加工、整理する機能を指します。情報をただ置くのではなく、それを使って計算したり、文章の文脈を理解したり、優先順位をつけたりする実行機能がセットになっています。

ワーキングメモリが低い子どもの特徴

一度に複数の指示を覚えられない

ワーキングメモリが低い子どもの1つ目の特徴は、一度に複数の指示を覚えられないことです。ワーキングメモリは、入ってきた情報を整理して次の行動に移すための脳の作業台のような役割を果たしています。この作業台のスペースが限られている子どもの場合、複数の情報を同時に受け取ると、新しい情報が入るたびに古い情報が押し出されるように消えてしまいます。例えば「おもちゃを片付けて、服を着替えてから、手を洗って」と言われても、おもちゃを片付けた時点で次の指示を忘れて遊び始めてしまうことがあります。周囲の大人は「この子は言うことを聞かない」と捉えるのではなく、脳の特性によるものだと正しく理解することが大切ですよ。

ケアレスミスが多い

ワーキングメモリが低い子どもの2つ目の特徴は、ケアレスミスが多いという点です。ワーキングメモリは、情報の保持と操作を同時に行う機能です。ミスが頻発する背景には、脳内での情報のキャパオーバーが関係しています。例えば、計算の途中で繰り上がりの数字を一時的に覚えておくことができず、計算式は合っているのに答えを間違えてしまうなどです。対策として「解き終わったら見直しをしなさい」と指示することもありますよね。しかし、自分が書いた内容を脳内の正しい情報と照らし合わせる作業自体がワーキングメモリを酷使するため、間違いに気づく前に集中力が切れてしまうこともあるのです。

授業などに集中できない

ワーキングメモリが低い子どもの3つ目の特徴は、授業などに集中できない点です。授業は、先生の話を聞き、黒板の文字を目で追い、内容を理解しながらノートを取るという、非常に高度な情報の同時処理を求められる場です。先生の話の途中で、聞き慣れない言葉や理解に時間がかかる内容が出てくると、その処理にメモリを使い果たしてしまいます。その間に続く話が頭に入らなくなり、結果として「何を言っているのかわからない」状態になりますよ。「集中しなさい」と叱る代わりに「どのへんで分からなくなった?」と優しく声をかけ、情報の糸口を繋ぎ直してあげることが、子どもの学びを支える鍵となります。

注意しても改善されない

ワーキングメモリが低い子どもの4つ目の特徴は、注意しても改善されない点です。通常、人は「次はこうしよう」と注意されると、その情報を脳内に保持しながら行動を修正します。しかし、ワーキングメモリが低い場合、その指示内容自体が行動の最中に脳内から消えてしまいます。「廊下は走らない」と注意された直後でも、目の前に興味を引くものがあると、その瞬間に「走らない」という記憶が追い出され、体が動いてしまいます。「ダメでしょ」と言う代わりに、正しい行動をその場で一緒にやって見せるのがおすすめですよ。体で覚えることは、ワーキングメモリへの負担が少ない記憶方法です。

ワーキングメモリが高い子どもの特徴

複数の指示を理解できる

ワーキングメモリが高い子どもの1つ目の特徴は、複数の指示を理解できる点です。複数の指示を同時に与えられても、聞いた内容を頭の中で整理し、タスクを記憶したまま慌てることなく一つずつ処理していきます。例えば「上着を片づけてから手を洗い、そのあと席に座ろうね」と言う指示をしても、忘れずにすべての指示をこなすことができますよ。ワーキングメモリの高い子どもは、与えられた情報に自然と優先度をつけ、自分で考えながら行動することができます。こうした力は、集団生活の中での切り替えや活動の見通しにもつながり、日々の生活をスムーズに送る助けになっていきます。

読み書きや計算が得意

ワーキングメモリが高い子どもの2つ目の特徴は、読み書きや計算が得意な点です。文字を読むときには、前後の文章の内容を頭の中に保ちながら意味を理解する必要がありますし、書く場面では言葉の順序や表現を考えながら手を動かしますよね。また、計算においても、数字を一時的に記憶しつつ次の計算へ進む力が求められます。例えば、繰り上がりのある足し算でも途中で混乱せずに取り組める子は、ワーキングメモリがうまく働いていると言えるでしょう。このように、基礎的な学習がスムーズにできるため、勉強=楽しいというポジティブなイメージを持ちやすいのが最大の特徴です。

思考の切り替えが早い

ワーキングメモリが高い子どもの3つ目の特徴は、思考の切り替えが早い点です。ひとつの活動が終わったあとで、次に何をするのかを理解し、気持ちや行動をスムーズに切り替えることができます。例えば、自由遊びのあとに片づけをして、すぐに朝の会へ参加するといった流れも、混乱することなく素早く行動することができますよ。これは、今の状況と次の予定を頭の中で整理しながら行動できている証です。保育の現場では、活動の切り替えに時間がかかる子も多い中で、思考の切り替えが早いことは集団生活を送るうえで大きな強みになります。この力は、日々の経験を通して少しずつ育まれていくものなので、温かく見守りながら関わっていきたいですね。

忘れ物が少ない

ワーキングメモリが高い子どもの4つ目の特徴は、忘れ物が少ない点です。必要な持ち物やその日の予定を頭の中で整理しながら行動できるため「今日は何が必要か」「次に何をするのか」を自然と意識することができます。例えば、登園前に連絡帳やハンカチを自分で確認したり、外遊びの前に帽子を忘れずに持ってきたりすることができますよ。これは、やるべきことを一時的に記憶し、行動につなげられているからこそです。こうした力は、日々の積み重ねの中で育っていくため、できたことを認めながら見守っていきたいですね。

ワーキングメモリが低い子どもの原因

遺伝的要因によるもの

ワーキングメモリが低い子どもの1つ目の原因は、遺伝的要因によるものです。ワーキングメモリは、30%〜40%の割合で遺伝的要因が影響しているとされています。ただし、遺伝が原因だからといって悲観する必要はありません。関わり方や環境の工夫によって、子どもは少しずつワーキングメモリの能力を伸ばしていくことができます。大切なのは特性を理解し、その子に合った支え方を見つけてあげることですよ。

参考:脳力の学校

発達障害によるもの

ワーキングメモリが低い子どもの2つ目の原因は、発達障害によるものです。特にADHDやLDの人は、脳の一時的な情報処理、記憶スペースであるワーキングメモリが低い傾向にあります。一方で、ASDの子どもの場合は、特定の情報の保持は得意でも、それを柔軟に操作することに難しさを感じることがありますよ。ここで注意していただきたいのが、ワーキングメモリが低いからと言って、発達障害があるとは限らない点です。

参考:天神│発達障害

寝不足やストレスによる一時的な低下

ワーキングメモリが低い子どもの3つ目の原因は、寝不足やストレスによる一時的な低下です。もともとワーキングメモリの能力が高くても、次のようなことが原因で、集中できない姿が見られる場合があります。

・夜更かしが続いて十分な睡眠が取れていない
・朝ごはんを食べられない
・外遊びの時間が少なく体を動かす機会が減る

さらに、友だち関係や環境の変化などによる精神的な疲れが重なると、情報を覚えたり整理したりする力が一時的に弱まることもありますよ。子どもは大人よりも気持ちを言葉にしてくれることが多い一方で、なかには不安や悩みを胸の内にしまい込んでしまう子もいます。

子どものワーキングメモリを測る方法

ワーキングメモリ機能を測定するテストを受ける

子どものワーキングメモリを測る1つ目の方法は、ワーキングメモリ機能を測定するテストを受けることです。このテストは、専門機関や心理士が行うことが多く、年齢や発達段階に合わせた課題を通して、情報を覚えながら操作する力を丁寧に確認していきます。例えば、最初に単語を覚えて、その後関係ない質問をしたあと、最初に覚えた単語を覚えているかを聞く、といったテスト内容です。結果を参考にすることで、その子がどんな場面でつまずきやすいのかを理解しやすくなります。数値だけにとらわれず、日常の姿とあわせて受け止めることが大切ですよ。

参考:クロワッサンONLINE

知能検査を受ける

子どものワーキングメモリを測る2つ目の方法は、知能検査を受けることです。1つ目の方法として挙げたワーキングメモリ単体のテストが特定の記憶機能に焦点を当てたテストでした。それに対して知能検査は、言葉の理解力、視覚的な推理力、処理スピードなど、脳のさまざまな認知機能のバランス(認知特性)を詳しく調べることができます。日本で広く使われているWISC-V(ウィスク5)やK-ABCIIといった検査は、単にワーキングメモリの数値を出すだけでなく、他の能力と比べてどうなのかを明らかにできる点が最大のメリットです。

子どものワーキングメモリを鍛える方法

ゲーム

後出しジャンケン

子どものワーキングメモリを鍛える1つ目のゲームは、後出しジャンケンです。視覚情報として相手の手を認識し処理する力や、勝てる手を判断する力が求められ、情報処理能力や判断力のトレーニングとして効果的ですよ。慣れてきたら「負けて」や「勝って」などの指示を音情報で加えたり「勝った後に負けて」などと連続して指示を出したりしてみましょう。「後出しじゃんけん、じゃんけんポン(先生や親が出す)、ポン(子どもが出す)」の掛け声で楽しみながら鍛えられるといいですね。

逆さ言葉

子どものワーキングメモリを鍛える2つ目のゲームは、逆さ言葉です。出されたお題の単語を後ろから順番に言うというシンプルな遊びですが、脳内では非常に高度な処理が行われていますよ。情報の保持と情報の操作を同時に行うことから、ワーキングメモリの強化に最適なゲームといえます。

保持: 言われた単語(例:ひまわり)を頭の中にイメージとして留めておく
操作: そのイメージを後ろから順に一文字ずつ取り出し、り・わ・ま・ひと並べ替える

ただ言葉を繰り返すだけの復唱(短期記憶)とは違い、頭の中で情報をひっくり返す作業が必要になるため、ワーキングメモリを司る前頭前野がフル回転します。

神経衰弱

子どものワーキングメモリを鍛える3つ目のゲームは、神経衰弱です。神経衰弱は単純な記憶力ゲームに思えますが、ワーキングメモリの『情報を一時的に保持し、必要に応じて書き換える』という機能を効率よく刺激する要素が詰まっています。神経衰弱では次のような能力が必要です。

情報の保持と照合:カードの数字と場所を脳内にキープする
情報の更新:カードがその場から消えるたびに記憶を最新の状態に更新
集中力の持続:相手のターンでもどこに何があるかを注視し続ける

子どもの年齢に合わせて、カードの枚数を減らしたりキャラクターカードを使ったりするのがおすすめですよ。

日常の活動

読み聞かせをする

ワーキングメモリを鍛える1つ目の日常の活動は、読み聞かせをすることです。登場人物が誰だったかを思い出したり「このあとどうなるのかな?」とお話の展開を想像したりする時間は、ワーキングメモリを使う良い機会になります。例えば「さっき出てきた動物さんは何をしていたかな?」とやさしく声をかけるだけでも、子どもは記憶をたどろうと一生懸命になりますよ。繰り返し楽しむ中で少しずつ短期記憶や想像する力が伸びていきます。保育園でのお昼寝前、ご家庭での夕食後や就寝前など、落ち着いた時間に無理なく取り入れてみてくださいね。

外遊びをする

ワーキングメモリを鍛える2つ目の日常の活動は、外遊びをすることです。室内での遊びに比べて、屋外には予測不可能な刺激や変化が満ち溢れています。これらに対応しようと脳がフル回転することで、情報を処理する力が自然と養われていきますよ。科学的にも、有酸素運動は脳の神経成長因子を活性化させ、学習機能や記憶機能を向上させることが証明されています。デジタル画面の中だけでは得られない五感への刺激と全身運動の組み合わせが、脳の作業台をより広く、使いやすくしてくれるのです。鬼ごっこやかくれんぼ、自然観察などを取り入れてみましょう。

生活習慣を整える

ワーキングメモリを鍛える3つ目の日常の活動は、生活習慣を整えることです。高度な脳トレや遊びを取り入れても、脳自体のコンディションが悪ければワーキングメモリはその真価を発揮することができません。土台となる体が整って初めて、情報の処理能力はスムーズに動き出します。普段から質の高い睡眠や朝食など、規則正しい生活を心がけましょう。生活習慣を整えることは、いわば脳の土壌を耕す作業です。土壌が豊かであれば、その上で取り組むゲームや学習の効果は数倍にも跳ね上がります。トレーニングを増やす前に、しっかり食べてしっかり眠る、という基本に立ち返ってみることがワーキングメモリ向上の最短ルートになるかもしれません。

まとめ

子どものワーキングメモリについて理解しよう

今回は、ワーキングメモリについて解説していきました。ワーキングメモリの働きが弱いと「言われたことをすぐに忘れてしまう」「周りについていけない」と感じる場面が増え、自信をなくしてしまうことも少なくありません。その結果「どうせできない」と自己肯定感が下がってしまうケースも見られます。ワーキングメモリの育ち方には個人差がありますが、遊びや日常の関わりを通して少しずつ伸ばすことができます。保育の現場やご家庭で「もしかして困っているのかな?」と早めに気づき、声かけや環境を工夫してあげましょう。子どもの成長を後押しする大きな支えになりますよ。