子どもの双極性障害とは?【症状・原因・診断・治療法・接し方・サポート】

皆さんは、双極性障害という病気をご存知ですか?双極性障害は大人だけでなく、子どもも発症する可能性がある精神疾患です。近年では、学校や家庭での生活に支障をきたすほど気分の波が激しく、双極性障害を疑われる子どもたちが報告されており、早期発見と適切な治療が求められています。しかし、そうした症状は発達障害や子どもの成長の過程で起こる情緒不安定と見分けがつきにくく、見過ごされてしまうことも少なくありません。そこで今回の記事では、子どもの双極性障害の特徴や症状、対応方法について詳しく解説していきます。子どもの双極性障害についての知識を得たい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

子どもの双極性障害とは?

躁状態と抑うつ状態が繰り返し現れる心の病気

子どもの双極性障害とは、気分が高揚しすぎる躁状態と、気分が落ち込み無気力になる抑うつ状態が周期的に繰り返される心の病気です。単なる感情の起伏ではなく、日常生活や人間関係、学業に大きな悪影響を及ぼします。躁状態のときは活動的すぎたり怒りっぽくなったりする一方で、抑うつ状態では何事にも興味を示さず、自己否定的な思考になる傾向です。子ども自身もその変化に戸惑い、自分をコントロールするのが困難な状況が続きます。そうした子どもたちには、周囲の大人の理解とサポートが必要不可欠です。

発達障害や思春期の特徴と誤解されやすい病気

子どもの双極性障害は、気分の浮き沈みが激しく行動の変化も極端になるため、発達障害や思春期特有の反抗的な態度と誤解されることが少なくありません。特に、躁状態では落ち着きがなくなったり急に怒り出したりするため、ADHDや反抗挑戦性障害と混同されることもあります。また、抑うつ状態では無気力になりがちで、「思春期の一時的な気分の落ち込みだろう」と見過ごされることもありますよ。思い込みや誤解で見過ごすことなく、正しい理解と専門的な診断を受けることが、早期支援の第一歩となります。

子どもの双極性障害の症状は?

活動的でテンションが高く眠らないなどの躁の症状

子どもの双極性障害の1つ目の症状は、活動的でテンションが高く眠らないなどの躁の症状です。子どもの双極性障害の代表的な症状であり、通常よりも極端に活動的でテンションが異常に高くなる状態を指します。例えば、夜になっても眠ろうとせずに興奮して、話が止まりません。また、注意が散漫になり次々と行動を変えるなどの症状が見られますよ。一見、ただ元気があるだけのように見えますが、本人の意思とは関係なくコントロールが効かない状態です。周囲の大人がその症状に早く気づき、速やかに対応することが大切です。

無気力で自己評価が極端に下がるなどの抑うつの症状

子どもの双極性障害の2つ目の症状は、無気力で自己評価が極端に下がるなどの抑うつの症状です。抑うつは突然無気力になり、これまで楽しめていた遊びや学習にも興味を示さなくなることが特徴です。表情が暗くなったり学校に行きたがらなくなったり、極端に疲れやすくなることもありますよ。また「自分なんてダメだ」「誰にも必要とされていない」といった自己評価の低下が見られることもあります。抑うつは周囲の大人に気づかれず、ただの甘えや気分の問題と誤解されることが少なくありません。心が助けを求めているサインとして、丁寧に受け止めることが大切ですよ。

気分の波が激しく日常生活に支障をきたす

子どもの双極性障害の3つ目の症状は、気分の波が激しく日常生活に支障をきたすことです。例えば、朝はとても元気で明るく振る舞っていたかと思えば、午後になると突然イライラしたり落ち込んで泣き出したりなど、感情の起伏が激しいという特徴があります。このような一貫性のない行動や不安定な精神状態は、友だちとの関係や学校生活、家庭での日常生活にも悪影響を与えてしまいます。また、本人もコントロールできない自分自身に苦しんでいる場合が少なくありません。

日によって症状が大きく変化する

子どもの双極性障害の4つ目の症状は、日によって症状が大きく変化することです。例えば、昨日は朝からずっと元気で明るく過ごしていたのに今日は1日中ふさぎ込んでいる、といった状態です。こうした急な気分の変化は、周りが先を見越して対応することが難しいうえに、本人の努力や意志ではコントロールができません。また、日によって変化することから周囲の大人には「気分屋」「わがまま」と誤解されてしまうこともあります。子どもの心の状態を冷静に観察しながら、柔軟に対応していく姿勢が大切ですよ。

子どもの双極性障害の原因は?

遺伝的要因

子どもの双極性障害の1つ目の原因は、遺伝的要因です。家族や親戚など、血縁のある方の中に双極性障害を発症した方がいる場合、その体質を受け継ぎ、発症するリスクが高まる可能性があるのです。遺伝的な要因を懸念する場合は早期からその可能性を念頭に置き、慎重に子どもを観察することが大切ですよ。些細な気分の変化や行動の変化も見逃さず、気になることがあれば専門医に相談しましょう。早期発見と適切な支援につなげることができます。

神経伝達物質のドーパミンやセロトニンの異常

子どもの双極性障害の2つ目の原因は、神経伝達物質のドーパミンやセロトニンの異常です。これらの神経伝達物質は、私たちの気分や意欲、睡眠欲や食欲など、様々な精神機能の調節に重要な役割を果たしています。例えば、ドーパミンは快感や意欲、興奮などに関わる神経伝達物質で、躁状態の際には過剰に働いている可能性があります。一方、セロトニンは精神安定作用や幸福感に関わる物質で、抑うつ状態の際にはその機能が低下していると考えられていますよ。双極性障害の子どもの場合、これらの物質の分泌や機能に何らかの偏りが生じることで、極端な気分の波、すなわち躁状態と抑うつ状態を引き起こしやすくなると考えられています。

家庭や学校でのストレスやトラウマ

子どもの双極性障害の3つ目の原因は、家庭や学校でのストレスやトラウマです。大人に比べて子どもはストレスへの耐性が未熟なため、過酷な環境に置かれると心身に非常に大きな負担がかかります。子どもの頃に受けたストレスやトラウマは、脳の発達や機能に長期的な影響を与えることが知られています。特に、感情のコントロールやストレス反応に関わる脳の領域に悪影響が生じやすく、それが気分の波の調節不全につながることも考えられていますよ。例えば以下のような事柄は、子どもの精神的な安定を大きく揺るがし、双極性障害の発症リスクを高める可能性があります。

・家庭内不和
・虐待
・ネグレクト
・いじめ
・学業不振
・友人関係のトラブル

子どもの双極性障害を診断するには?

児童精神科での診察

子どもの双極性障害を診断するには、児童精神科での診察が必要です。特に、子どもの精神的な問題は、発達段階や年齢によって症状の現れ方が異なり、他の精神疾患との鑑別が難しい場合も少なくありません。そのため、自己判断やインターネットの情報だけで決めつけることは非常に危険です。必ず児童精神科を受診し、専門医の意見を聞きましょう。児童精神科では、双極性障害と似たような症状を示す他の疾患、例えば注意欠陥・多動性障害(ADHD)や不安症、うつ病などとの鑑別を行うために、様々な角度から検討を行います。必要に応じて心理検査や知能検査などを実施し、子どもの認知機能や情緒面の特徴を把握することもありますよ。

DSM-5などの基準を活用して判断する

子どもが双極性障害かどうかは、DSM-5などの基準を活用して診断します。DSM-5では、双極性障害を診断するための具体的な症状や期間、重症度などが明確に定義されています。児童精神科医はこれらの基準に照らし合わせながら、子どもの症状を多角的に評価し、慎重に診断を進めていきます。DSM-5といった国際的な診断基準を熟知し、子どもの年齢や発達段階、具体的な症状を詳細に評価することで、正確な診断を目指しますよ。

参考:https://works.litalico.jp/column/system/034/

発達障害との違いを時間をかけて見極める

子どもが双極性障害かどうかを診断する際には、発達障害との違いを時間をかけて見極めます。特にADHDやASDは、幼少期から症状が現れることが多く、気分の変動や行動の特性が双極性障害と似ている場合があるため、安易な診断は誤診につながる可能性があります。例えば、ADHDの子どもは「落ち着きがない」「感情の起伏が激しい」と見られることがあります。また、ASDの子どもの中には、特定の状況で強いこだわりや過敏さを示すことがあり、それが気分の不安定さや癇癪のように見えることもありますよ。これらの症状は、双極性障害の躁状態やうつ状態に一部重なるため、短期間の観察だけでは区別が難しいことがあります。

子どもの双極性障害の治療法は?

薬物療法

子どもの双極性障害の1つ目の治療法は、薬物療法です。脳内の神経伝達物質のアンバランスが気分の波を引き起こすと考えられているため、気分安定薬や抗精神病薬を用いてそのバランスを調整し、症状のコントロールを行います。子どもの体質や症状に合わせて、慎重に薬の種類や量を調整していきますよ。薬物療法は、子どもの症状を安定させるための重要な手段ですが、それだけで双極性障害が完全に治癒するわけではありません。心理療法や環境調整と並行して行うことで、より効果的な治療が期待できます。

心理療法

子どもの双極性障害に対する2つ目の治療法は、心理療法です。薬物療法が症状への直接的なアプローチであるのに対し、心理療法は、子ども自身が疾患を自覚して理解することで病気を受け入れ、行動パターンやストレスへの対処能力を向上させる目的で行います。心理療法の種類は多岐にわたりますが、子どもの年齢や発達段階、症状に合わせて適切な方法が選択されますよ。例えば、認知行動療法は思考と感情、行動の関連性を理解し、ネガティブな思考パターンを修正したり問題解決スキルを身につけたりするのに役立ちます。双極性障害は気分の波だけではなく、日常生活において様々な困難を伴うため、心理的なサポートは必要不可欠です。

家族療法

子どもの双極性障害に適応される3つ目の治療法は、家族療法です。家族療法は、治療の一環として子ども本人だけではなく家族全員が関わることで、家庭内のコミュニケーションを改善し、再発のリスクを減らすことを目的としています。家族療法では、子どもの症状や病気に対する正しい理解を家族全員が深め、どのようにサポートすれば良いのかを学びます。そして、過度な叱責や誤解を防ぎ、より良い関係性を築けるように促しますよ。家族全員が安心して支え合える環境を整えることで、子どもの安定につながるでしょう。

双極性障害の子どもにできるサポート

気分や行動の記録をつけることで傾向を把握する

双極性障害の子どもにできる1つ目のサポートは、気分や行動の記録をつけて症状の傾向を把握することです。具体的には下記の通りです。

・起床時の様子
・学校での様子
・食欲や睡眠の有無
・感情の起伏

ノートやアプリなどに記録しておくことで、気分の波や症状の傾向を把握しやすくなります。記録を続けることで、躁状態やうつ状態の前触れを早期に察知し、適切な対応や医師への相談がしやすくなりますよ。また、医療機関での診断や治療の際にも役立つ重要な情報源となります。

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このアプリは、アイコンをタップするだけで1日の気分を記録することができます。「楽しい」や「寂しい」といった直感的な感情や、その日に会った人もアイコンで入力することができますよ。また、気分に影響を与える活動が何なのかの確認もできます。

感情的にならずに落ち着いた対応を心がける

双極性障害の子どもにできる2つ目のサポートは、感情的にならずに落ち着いた対応を心がけることです。気分の波が激しい子どもは、些細なことでイライラしたり、急に落ち込んだりすることがあります。このとき、大人が一緒になって怒ったり慌てたりすると、子どもの不安や混乱がさらに大きくなってしまいます。たとえ子どもの言動が理解し難い場合でも、まずは冷静に話を聞き、子どもが安心できる態度で接することが大切ですよ。落ち着いた関わりは、子どもの情緒を安定させる大きな助けになります。

まとめ

子どもの双極性障害は理解と寄り添いが大切

いかがでしたか。今回は、子どもの双極性障害の症状や治療方法などについて解説しました。双極性障害とは、気分が高揚しすぎる躁状態と気分が落ち込み無気力になる抑うつ状態が、周期的に繰り返される心の病気です。ストレスや遺伝などが原因で発症することが多く、治療には薬物療法や心理療法が適応されます。子どもの双極性障害は、ただのわがままだと捉えられてしまうことが多い傾向です。しかし、周りの大人は、一過性なことだと受け流さずに、慎重に観察して専門医へ相談してみましょう。子どもの双極性障害への対応は、広い視野と深い理解が必要ですよ。