療育の対象となる児童とは?効果や支援内容も紹介!【種類・例・施設・認知行動療法】

療育とは、発達に特性のある子どもたちがその子らしく成長していけるよう支援するための取り組みです。しかし、「どのような子どもが療育の対象になるのか?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。発達の遅れやコミュニケーションの難しさ、集団生活への不安など、子どもによって課題はさまざまです。そこで今回の記事では、療育の対象となる子どもや療育の効果、支援内容や療育の例を詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。

療育とは?

障がいのある子どもを支援する取り組み

療育とは、発達に特性や障がいのある子どもが、社会の中で自分らしく生活していけるように支援するための取り組みです。言葉の発達がゆっくりだったり、集団行動が苦手だったりと、子どもによって困りごとはさまざまです。療育では、専門家が一人ひとりの特性や成長段階に合わせたサポートを行い、日常生活のスキルや人との関わり方を学べるように促しますよ。発達に特性や障がいを抱える子どもの可能性を広げるための大切な支援が、療育なのです。

療育の効果

子どもの将来の自立につながる

療育は、障がいがある子どもの自立につながるとされています。身体的障がいや学習障がいなどがある子どもが、障がいを抱えていない子どもと同じような生活を送ることは簡単ではありません。みんなと同じようにできなかったり、それによって孤立してしまったりと、様々な課題を抱える子どもも多いです。療育ではそれぞれが持つ特性に合わせて支援を行うため、子どもの自立を効果的にサポートすることができます。また、早い段階から療育に通うことで、症状の改善がみられることもありますよ。

療育の対象となる子ども

身体的障がいを持つ子ども

療育の対象となる子どもは、身体的障がいを持つ子どもです。たとえば

・歩行や運動に制限のある子ども
・手先の細かい動きが苦手な子ども

など、それぞれの身体的な特性に応じた支援が必要です。療育では、理学療法や作業療法といった専門的なアプローチを通じて、日常生活での自立や社会参加を目指します。身体的な障がいを持つ子どもが、自分らしく成長し、生き生きと暮らしていくための土台作りが療育の重要な役割ですよ。

参考:児童福祉法第19条|e-Gov 電子政府の総合窓口

学習障がいを持つ子ども

学習障がいを持つ子どもも療育の対象になります。学習障がいとは、知的な発達に遅れはないものの、読む、書く、計算するといった特定の学習分野に困難を抱えている状態を指します。こうした子どもたちは、学校生活でつまずきやすく、自信を失ってしまうこともありますよ。療育では、個々の困難に応じた支援を行い、理解の仕方や学び方の工夫を通して、子どもが自分の力を発揮できるようにサポートをします。

自閉症の子ども

自閉症の子どもも療育の対象になります。自閉症スペクトラム障がい(ASD)を持つ子どもは、言葉でのやりとりが苦手だったり、人との関わり方に独自の傾向があったりします。このような特性は、日常生活や集団生活の中で困難を感じることがありますよ。療育では、このような特性を理解したうえで、一人ひとりに合った支援を行い、社会性やコミュニケーション能力を育てていきます。自閉症の子どもが安心して過ごし、自分らしく成長するために、療育は大きな力となります。

多動性障がいのある子ども

多動性障がいのある子どもも療育の対象になります。多動性障がい(ADHD)の子どもは、以下のような特徴があります。

・じっとしていることが難しい
・注意が散りやすい
・衝動的な行動をとってしまう

こうした特性は、家庭や保育園、学校生活においてトラブルや誤解を生むことも少なくありません。療育では、子どもの行動の背景を理解し、集中力を高めたり適切な自己表現を学んだりする支援を行いますよ。

療育の種類

集団療育

療育には大きく分けて2つの方法があり、そのひとつが集団療育です。集団療育とは、2人以上の子どもがグループで関わり合いながら、社会性やコミュニケーションの力を育んでいく支援方法です。たとえば、おままごとやリトミック遊びなどを通して順番を待ったり、友だちと協力したりといった経験を重ねることで、少しずつ人との関わり方を身につけていきます。保育現場でも、集団の中で自然と刺激を受けるこの方法はよく取り入れられています。ただし、対人関係に強い不安を感じる子どもにとっては、集団そのものが大きなストレスとなることもあるため、一人ひとりの特性に応じた配慮が大切ですよ。

個別療育

療育のもう一つの方法に個別療育があります。これは、集団療育とは違い、基本的に支援者と子どもが1対1で関わるスタイルです。たとえば、言葉の発達がゆっくりな子どもに対しては、発語を促す遊びや絵カードを使ったやりとりなど、その子のペースや特性に合わせた支援ができます。周囲の目を気にせず安心した環境で過ごせるため、ストレスも少なく、落ち着いて取り組めることが多いですよ。ただし、他の子どもと関わる場面が少なくなるため、集団生活で必要なやりとりや相手の気持ちをくみ取る練習がしにくくなることも。子どもの性格や特性を見極めながら、個別療育と集団活動をバランスよく取り入れたいですね。

療育の支援内容

生活面の支援

療育の支援内容には、日常生活に関するサポートも含まれています。たとえば、スプーンを上手に使えなかったり、自分で洋服を着るのが難しかったりする子どももいますよね。中には、歯磨きを嫌がってなかなか習慣化できない子どももいます。こうした生活の基本となる動作を無理なく少しずつ身につけられるように、支援者が丁寧に寄り添いながらサポートしていきます。療育を通じて、子ども自身が「自分でできた!」という達成感を積み重ねることができるため、自立への大切な一歩につながりますよ。どんな小さなことでも、子どもにとっては大きな成長なのです。

運動機能を改善する支援

療育では、運動機能の発達をサポートする支援も大切な役割のひとつです。身体に障がいがある子どもだけでなく、発達に特性がある子どもの中には、

・走る
・跳ぶ
・バランスを取る

などの基本的な動きがうまくできない子どもも少なくありません。たとえば、縄跳びのリズムがつかめず苦手意識を持ってしまったり、ボールをキャッチするのが難しかったりするケースがあります。そうした子どもたちには、楽しく遊びながら運動機能を育てられるような療育プログラムが取り入れられていますよ。さらに、みんなで体を動かすことでストレスを発散できたり、協調性も自然と学ぶことができるのです。楽しみながら心も体も育つ支援が行われています。

コミュニケーションの支援

コミュニケーションの支援は、療育の中でもとても重要な取り組みのひとつ。療育に通う子どもたちの中には、人と関わることが苦手だったり、自分の気持ちをうまく言葉にできなかったりする子どももいます。たとえば、あいさつをすることができない、会話が一方通行になってしまうなどの特徴があげられます。そういった子どもたちに対して、療育では日常の中で少しずつ言葉のやりとりを練習する機会を設けていますよ。あいさつや簡単なやりとりを繰り返し行うことで、自然と表情や気持ちの変化にも気づけるようになっていきます。

療育の例

応用行動分析

療育にはさまざまなアプローチがありますが、そのひとつに応用行動分析という方法があります。これは、子どもの行動の背景にある理由を丁寧に分析し、望ましい行動が増えるように支援していく手法です。たとえば、自閉スペクトラム症の子どもが落ち着いて座れたときに「すごいね!よく座れたね」と声をかけたり、好きなおもちゃで遊ぶ時間をあげたりすることで、その行動を繰り返したくなるように促します。逆に、かんしゃくを起こした際にはすぐに反応せず、静かになったタイミングで関わるなど、どうすれば良いことが起こるかを学んでいくのです。

TEACCH

TEACCHも、療育の方法のひとつとして広く取り入れられています。TEACCHとは、Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped Childrenの略で、アメリカ・ノースカロライナ州で生まれた支援プログラムです。この方法の特徴は、障がいをできないことではなく、その子の個性や文化として受け入れ、尊重しようとする考え方に基づいている点です。たとえば、見通しを持ちやすくするために絵カードやスケジュール表を使って活動内容を視覚的に伝えるなど、子どもが安心して過ごせる工夫がたくさんありますよ。

SST

SSTも、療育の中で行われる大切な取り組みのひとつです。SSTはSocial Skills Trainingの略で、子どもが社会の中で円滑に生活していくために必要な力を身につけることを目的としています。たとえば、

・あいさつをする
・人の話を聞く
・困ったときに助けを求める

などです。療育に通っている子どもの中には、こうした基本的なやりとりに戸惑いや不安を感じる子どもも多くいますよね。SSTでは、こんなときどうする?という場面を一緒に考えたり、実際にごっこ遊びのようなロールプレイを通して練習したりすることで、少しずつ自信をつけていきます。

認知行動療法

療育の方法のひとつに認知行動療法(CBT)があります。CBTとはCognitive Behavioral Therapyの略で、子どもが感じるストレスや不安の原因を探り、それに伴う思考や行動のパターンを丁寧に見直していく支援法です。たとえば、友だちに無視されたと感じて落ち込んだ場合、その出来事をどのように受け取ったのか、どんな行動につながったのかを一緒に整理していきます。こうしたプロセスを通じて、たまたま気づかなかっただけかもしれないといった前向きな捉え方ができるようになることもあります。さらに、日常生活の中で小さな成功体験を積み重ねることで、自信や柔軟な考え方が育まれやすくなるのです。

その他

その他にも、次のような療育が行われますよ。

箱庭療法
砂が入った箱の中にミニチュアを並べることで、言語化するのが難しい自分の内面を表現させる療法

音楽療法
心を癒したり、体をリラックスさせたりする効果がある音楽の特性を生かした療法

言語療法
言語聴覚士(ST)が言葉を聞いて理解することや言葉を話す、文字を読んで理解することや文字を書くなどの訓練を行う

運動療法
有酸素運動、無酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチなどを行う療法

感覚統合療法
作業療法士(OT)感覚機能の未熟さや苦手な部分を伸ばしていく療法

ポーテージプログラム
家族が中心となって、発達に応じたアプローチを日常生活の中で指導するプログラム

療育を受けられる場所

通所支援型施設

療育を受ける場所のひとつとして、通所支援型施設があります。これは、子どもが自宅から定期的に通い、必要な支援を受けるスタイルの施設です。代表的なものに

・児童発達支援
・放課後等デイサービス
・保育所等訪問支援
・医療型児童発達支援

などがありますよ。言葉の発達がゆっくりな子どもが午前中に通ってコミュニケーションを学んだり、小学生が学校帰りに通って集団生活に必要なルールやマナーを練習したりします。それぞれの子どもの特性やペースに合わせて、個別療育や集団活動が丁寧に組まれているのも大きな魅力です。

入所支援型施設

療育を受けられる場所のひとつに、入所支援型施設があります。こちらは、ご家庭での生活が難しい子どもが、一定期間施設に入所して支援を受ける形になります。都道府県が主体となっているサービスで、障がいの種類に合わせて

・福祉型障がい入所施設
・医療型障がい児入所施設

の2種類が設置されています。施設では、看病や介護サービスの他に、着替えや食事といった基本的な生活習慣を身につけたり、集団の中での過ごし方を学んだりする機会が用意されています。看護師や保育士、心理士などの専門職が連携し、子どもたち一人ひとりの状態に寄り添いながら、心と体の発達を丁寧に支援しています。

まとめ

療育の対象を知り早期療育につなげよう

いかがでしたか?今回は、療育の概要や対象となる子どもたち、そして療育の種類についてお伝えしてきました。療育の対象は発達に特性のある子どもたちです。たとえば、落ち着きがなかったり、言葉の発達がゆっくりだったりする子どもも含まれます。実際に子どもがとった行動で、保護者が「これって障がいなのかな?」と迷われることも少なくありません。そうしたときは、保健センターや発達支援の専門機関などに相談してみましょう。早期に療育を受けることで、子どもの得意なことが伸びたり、苦手なことが少しずつ改善したりすることがありますよ。まずは、どんな子どもが療育の対象となるのかを知ることから始めていきましょう。