HSCとは?【特徴・悩み・対応・子ども・HSP・発達障害】

皆さんはHSPやHSCという言葉を知っていますか?近年、SNSなどでこの言葉を目にすることが増えたのではないでしょうか。この記事では、HSCの子どもの特徴やHSCの子どもへの適切な対応など、HSCについて詳しく解説します。HSCの子どもの割合は5人に1人とも言われています。そのため、日常生活において悩みや生きづらさを感じている子どもは多く、身近にいると考えられますよね。そのような子どもたちがより快適に園生活を送れるよう、正しい知識を身につけましょう!

HSCとは?

人一倍敏感な気質を持った子ども

HSCとは、Highly Sensitive Childの頭文字を取った言葉で、人一倍敏感な気質を持った子どものことを指しています。HSP(Highly Sensitive Person)が大人を指す言葉であるのに対し、HSCはその子ども版と言えるでしょう。HSCの子どもは繊細な感性を持っているため、他人を思いやった行動を取ることができます。一方で、刺激に敏感でストレスを感じやすいという面も持っています。

HSCは生まれつきの気質・特性

HSCは生まれつきの気質や特性です。適応障害や不安障害と混同されやすいですが、病気や障害とは別物と言われています。そのため、「HSCである」と病院で診断することはできません。HSCはあくまでもその子ども特有の生まれ持った性格のため治す必要はなく、本人や周りの人がうまく付き合っていくことが大切です。また、発達障害を持つ子どもと似たような行動を取ることもありますよ。しかし、その行動が発生する原因や脳の機能については、発達障害を持つ子どもと全く異なります。

HSCの4つの特徴

深く処理する

HSCの概念を提唱したアーロン博士によると、HSCの子どもには4つの大きな特徴があります。1つ目は、深く処理すること(Depth of processing)です。1つの物事や情報に対して他の子どもよりも深く考えてしまい、行動に移すまでに時間がかかってしまいます。社交辞令や冗談に対しても深く考えてしまうため、疲れを感じやすくなるでしょう。その一方で、物事を深堀りすることによって、より細かな情報を得ることができるとも言えます。

過剰に刺激を受けやすい

2つ目は、過剰に刺激を受けやすいこと(Overstimulation)です。視覚や聴覚、触覚や嗅覚、味覚などにおいて外部からの刺激を受けやすく、人混みや気温の変化、物の肌触りに対して過剰に反応してしまいます。しかし、こうした刺激の受けやすさは、芸術や音楽に対する感受性の高さにつながるため、鑑賞した作品に深く感動することができます。また、深く感じるだけではなく、自身が芸術的な表現をする際にも、その感受性を活かすことができるでしょう。

全体的に感情の反応が強く特に共感力が高い

3つ目は、全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高いこと(Emotional response and empathy)です。ポジティブな感情とネガティブな感情の両方に反応しやすく、高い共感性や同調性を持っています。ドラマや小説の登場人物に感情移入しやすかったり、他の子どもが怒られている場面を見ると自分が怒られているように感じてしまったりする傾向です。一方で、こうした高い共感力は他の子どもの視線や表情、些細な仕草からその子どもの感情を読み取ることができるとも言えますよ。

ささいな刺激を察知する

4つ目は、ささいな刺激を察知すること(Sensitivity to subtleties)です。具体的には、物の些細な移動や人の外見の変化、普段と異なるにおいなどに気が付きやすいことが挙げられるでしょう。この特徴があると、集中すべき場面でも些細なことが気になり集中力を欠いてしまうことが多々あります。また、一見何もしていないように見えても、本人はあらゆる刺激を処理するためにたくさんのエネルギーを消費しています。その影響により、日頃から疲れを感じやすい傾向です。今回紹介したHSCの4つの特徴は、それぞれの頭文字を取りDOES(ダズ)とも呼ばれていますよ。

HSCの子どもが抱えやすい悩みは?

大人に本音を言えない

HSCの子どもが抱えやすい悩みとして、大人に本音を言えないということが挙げられます。前述しているように、HSCの子どもは、周囲の人の気持ちや場の空気に反応しやすいという特徴を持っています。そのため、周りの人の気持ちや相手から自分がどのように思われているのかを無意識的に考える傾向です。そして、周りの人の気持ちを優先することで、自分の気持ちを無視してしまうことがあるのです。このように、自分がしたい行動よりも大人が望む行動を選択することで、本音を言えない場面が生じてしまうようですね。

自分の気持ちを言葉にするのが難しい

また、自分の気持ちを言葉にするのが難しいという悩みを持つ子どもも多いようです。HSCの子どもたちは、日常のさまざまな刺激を一般の人よりも強く、または多く受け取る傾向があります。そのため、一度に大量の情報が押し寄せ、整理が追いつかなくなることも少なくありません。結果として、自分の気持ちがどこにあるのか、何を感じているのかがわからなくなり、言葉にするのが難しくなってしまうのです。また、感じ取る情報が多すぎると、自分自身の感情と外部の影響を区別するのが困難になることもあるようですね。このような特性から、HSCの子どもたちは気持ちを表現することに悩みを抱えやすいのです。

自己肯定感を持ちにくい

自己肯定感を持ちにくいことも、HSCの子どもが抱えやすい悩みの1つです。HSCの子どもは、環境にうまくなじめなかったり、適切な休息が取れずにストレスを溜め込んでしまったりすると「自分は周囲の人よりも劣っているのではないか」と、深く考え込んでしまうことがあります。このような自己評価の低さは、自己肯定感の低下につながります。自己評価が低いゆえに、周囲からの誉め言葉を素直に受け取れなくなってしまうこともあるでしょう。また、失敗を極端に恐れるあまり、新しいことに挑戦することを避ける傾向も見られますよ。その結果、自信を育む機会を失い、さらに自己評価が下がるという悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。

環境になじみにくい

さらに、HSCの子どもが抱えやすい悩みとして、新たな環境になじみにくいことも挙げられます。HSCの子どもでなくても、子どもは新しい環境で緊張を緩和するために、周囲の状況を把握して多くの情報を取り入れようとしますよね。特に学校や保育施設などは、日々さまざまな出来事が起こり、予測できない刺激が多い場所です。刺激に敏感なHSCの子どもにとって学校や保育施設は、負担がより大きく感じる場所と言えます。また、急な予定変更や想定外の出来事を柔軟に対応するのが難しくなることもありますよ。その結果、強い不安を感じたり、パニックになったりすることも少なくありません。

疲れやすい

疲れを感じやすいことも、HSCの子どもの悩みの1つです。前述しているように、HSCの子どもは周囲の刺激を人よりも強く、または多く受け取り、それらを深く考え処理しようとします。そのため、日常生活の中で常に多くの情報に対応しようとして、無意識のうちに心が疲れてしまうのです。さらに、HSCの子どもは共感性が高いため、自分が直接関わっていない出来事であっても、まるで自分のことのように感じて感情を大きく動かされることがあります。このように、多くの刺激や感情にさらされることで、HSCの子どもは疲れを感じやすくなるのです。

HSCの子どもへの適切な対応は?

過度な刺激を避ける

では、HSCの子どもにはどのように接するべきなのでしょうか。適切な対応の1つ目は、HSCの子どもから過度な刺激を避けることです。大きな音や強い光、急激な気温の変化などを避け、外部からの刺激をなるべく減らしてあげましょう。具体的な対処法としては、落ち着いた色の家具やおもちゃ、照明を使用する、スピーカーの音量を低めに設定するなどが挙げられます。また、その子どもにとって苦痛となるものを事前に把握しておき、なるべく避けるように配慮することも大切ですよ。

安心できる場所を提供する

2つ目は、安心できる場所を提供することです。HSCの子どもにとって、学校や保育園、幼稚園などのような多くの人と長時間過ごす環境は、大きな負担になることがあります。例えば、周囲の話し声や騒がしさ、予測できない出来事が次々と起こる状況に強く影響を受け、心が疲れてしまうことも少なくありません。そのため、家庭の中では安心して過ごせる場所を確保することが重要です。自分の気持ちが落ち着き、リラックスできる空間があることで、外で受けた刺激を整理してエネルギーを回復することができるでしょう。

子どものペースややり方を尊重する

3つ目は、子どものペースややり方を尊重することです。HSCの子どもは、周囲の状況に合わせようと無意識に頑張りすぎてしまう傾向です。そのため、「自分のペースややり方でいいんだよ」と積極的に伝えていくことで、子どもたちは「無理をしなくてもいいんだな」と安心することができるでしょう。子どもが信用する周囲の大人が子どものペースを尊重することは、子どもが「ありのままでいいんだ」と実感するために必要な心がけです。

子どもの気持ちを言葉にしてあげる

4つ目は、子どもの気持ちを言葉にしてあげることです。前述しているように、HSCの子どもは周囲に気を遣ったり、自分の感情がわからなくなってしまったりして、自身の気持ちを言葉にすることに難しさを感じています。そのため、周囲の大人が子どもの気持ちに寄り添い、代弁してあげましょう。複雑化している子どもの感情を汲み取りながら大人が言語化することで、HSCの子どもは自分の気持ちを整理して再認識することができますよ。

子どもの気持ちに共感する

5つ目は、子どもの気持ちに共感することです。HSCの子どもは繊細で感受性が強いため、日々さまざまな感情を抱えています。しかし、自分の感じていることをうまく表現できなかったり、周囲に理解してもらえないと感じたりして、不安や孤独を抱えることも少なくありません。そのため、周りの大人が子どもの気持ちに寄り添い、「そうだったんだね」「つらかったね」と共感を示してあげることが大切です。大人が子どもの気持ちを受け止め共感することで、HSCの子どもは「自分の気持ちはわかってもらえるんだ」と安心することができるでしょう。

休んでもいいことを伝える

6つ目は、休んでもいいことを伝えることです。HSCの子どもは周囲の期待に応えようとしたり、周りのペースに合わせようと頑張りすぎたりして、知らないうちに心や体に大きな負担を抱えてしまうことがあります。そのため、「疲れたら休んでもいいんだよ」と優しく伝えることで、子どもが自分の状態に気づき、安心して休むことができるようになるでしょう。無理をせず、自分のペースで休息を取ることが大切だと理解することで、HSCの子どもが心身のバランスを保ちやすくなります。

まとめ

HSCの特徴を理解し適した対応をしよう

いかがでしたか?今回は、HSCの子どもの特徴やHSCの子どもへの適切な対応法など、HSCについて詳しく解説しました。HSCとは、人一倍刺激を受け取りやすく、敏感な子どものことです。こうした性格の子どもたちは、日常生活においてさまざまな悩みを抱えていると言われています。HSCの特徴や悩みに寄り添いながら適切な対応を取ることで、より多くの子どもたちが安心して生活できる環境を作ることができそうですね。