ADHDの子どもに合った療育とは?【原因・特徴・目的・ペアレントトレーニング】

落ち着きがなかったり忘れ物が多い子どもを育てていると、この先の生活が心配になりますよね。ただ、その要因はしつけや性格の問題ではないかも知れません。近年、そのような行動を取る子どもがADHDと診断されるケースがあるのです。ADHDは特性によるものなので、叱るだけでは解決しない場合も。今回の記事では、そんなADHDの子どもに対して行う療育について解説します。ADHDについての理解を深めて、一人ひとりに合った育て方を叶える一助となれば幸いです。

ADHDとは

不注意や多動性などの症状を持つ発達障害

ADHDは『注意欠陥・多動性障害』と呼ばれる発達障害ですが、一度はその名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。この障害には『不注意・多動性・衝動性』という3つの代表的な特性が存在します。その現れ方や度合いは人によって千差万別ですが、実はどれも脳の前頭葉の活動の偏りから生じているのです。脳内の神経伝達物質の放出と結合がうまく結びつきにくいため、情報伝達が十分に行えないことが主な原因だと言われています。子どもに落ち着きのない様子や忘れ物の多発が見られても、本人の努力不足ではないと言えるでしょう。

ADHDの種類

不注意の傾向が強い

ADHDには、多動性や衝動性の症状があまり見られない代わりに、不注意の傾向がとても強く現れるタイプが存在します。このタイプの子どもは非常に気が散りやすく、集中力を保つのが苦手な傾向にありますよ。ただ、自分の好きなことに取り組んでいる最中は、周りから話しかけられても全く気づかないほど没頭します。そのため、本人に悪気は一切なくても、周囲から無視をしたのだと誤解されてしまうことも多いのです。

多動性や衝動性の傾向が強い

ADHDには不注意の症状はそれほど目立たないものの、多動性や衝動性の傾向が前面に出てくるタイプが存在します。このタイプの子どもは、まるでエンジンが常にかかっているかのように、絶えず体を動かしていないと気分が落ち着きません。また、感情や欲求をその場でコントロールすることが苦手なため、思ったままに行動してしまいがちです。そのため、学校などのルールがある集団生活においては、周囲と衝突したり困難が生じたりする場面が多々見受けられます。

全てが混在している

これまでに挙げた不注意や多動性、そして衝動性の特徴が、どれも均等に現れるのが『混合型』と呼ばれるタイプ。集中することが難しいうえに、授業中などにじっと座っていられなかったり、うっかりミスを連発してしまったりするでしょう。さらに、自分の感情や突発的な行動のコントロールも難しいため、日常のあらゆる場面で本人が一番生きづらさを抱えているのです。だからこそ、このタイプには適切な環境調整と、周囲からの支援の力が特に欠かせないと言えます。

ADHDの原因

生まれた時からの脳の機能障害

ADHDの本質には、生まれつき脳の一部の働きに偏りがあることが深く関係していると指摘されています。その中でも、特に重要視されているのが『前頭前野』と呼ばれる部位の存在。前頭前野は思考や判断、注意の持続、さらには感情の抑制など、私たちが社会生活を送る上での基盤となる役割を担ってくれています。ADHDを抱える人はこの部位の働きがうまく調整されないため、不注意や多動、衝動的な行動に繋がってしまうと言えるのです。

ノルアドレナリンやドーパミンなどの働きが弱い

一歩踏み込んだ原因として、脳内の神経伝達物質の働きが弱いことが深く関係していると言われています。神経伝達物質とは脳の中でさまざまな情報を伝える重要な物質であり、代表的なものにドーパミンやノルアドレナリンがありますよね。これらは私たちが集中力を保ったり、やる気を出したりする際に深く関わっている脳内物質。ADHDを抱える人は、これらの働きが弱いために必要な情報が脳全体へ伝わりきっていない状態と言えるのです。

遺伝的要因

ADHDは遺伝の影響を比較的受けやすい障害であると、多くの研究から指摘されています。そのため、もし家族の中にADHDの特性を持つ人がいる場合、他の人にも同じような特性が現れる可能性は高くなると言われているのです。ただし、特定の遺伝子がひとつだけ悪さをしているわけではなく、複数の遺伝子が複雑に影響し合っていると言えるでしょう。そのため、『親がADHDだから子どもも必ず発症する』という単純なものでは決してないのです。

環境的要因

遺伝や脳の機能といった生まれつきの要素だけでなく、育っていく周囲の環境も症状の現れ方に少なからず影響を与えます。ただ、ここで誤解してほしくないのは、保護者の厳しいしつけや育て方が発症の直接的な原因になるわけではない、という点です。成長の過程における生活環境や人間関係のストレスなどが、特性をより悪化させてしまうケースがあるのです。環境はあくまでも、本人が生まれ持った特性が、どの程度表面化しやすいかを左右する境界線と言えるでしょう。

ADHDの子どもによくある特徴

多動性

ADHDを抱える子どもたちの間では、多動性の特徴が目立つケースがしばしば見られます。この多動性というのは、自分の意志で身体を動かさずにじっとしていることが非常に困難。周囲から見るとふざけているように思われがちですが、本人がどれだけ落ち着こうと努力していても、身体が自然と動いてしまうのです。そのため、椅子に座っていても常に身体を動かしてしまったり、授業中に突然席を立って歩き回ったりしてしまいます。

不注意

ADHDの子どもたちが日常で直面する大きな特性のひとつに、不注意が挙げられるでしょう。単なる『うっかり』ではなく、ひとつの物事に注意を向け続けることが難しいため、生活の中で困りごとが生じてしまう状態を指します。例えば、相手の話を最後まで集中して聞けなかったり、忘れ物やなくしものが頻繁に発生したりするのです。彼らは周囲の音や動きといった些細な刺激にとても影響を受けやすく、少しの変化でも注意が逸れてしまうと言われています。

衝動性

ADHDを持つ子どもたちの行動を語る上で、外せないのが衝動性という特性でしょう。これは、頭の中に思い浮かんだ事柄を深く吟味する前に、すぐ行動へ移してしまう状態を指します。思いついたアイデアを頭の中で一歩立ち止まって整理することが難しいため、時に善悪の判断よりも先に身体が動いてしまうことも。具体的には、大人が話している最中に遮って発言したり、順番待ちが苦手だったりします。悪気はなくても、つい反射的に反応してしまうのです。

ADHDの子どもに療育を行う目的

子どもの特性を理解して適切な発達を促す

ADHDの子どもの特性をしっかり理解し、その子に合った適切な発達を促してあげることが療育の大きな目的です。日常生活に支障をきたしがちな不注意や多動、衝動性を、本人が少しずつ自己コントロールできるように療育を通じて育んでいきます。そのためには、一人ひとりの特性に合わせて生活環境を整えることが重要。例えば、静かな学習スペースを用意したり、スケジュールを可視化したりする工夫などが有効ですね。

ADHDの子どもに合う療育

脳の働きを活性化させる運動療法

運動には脳の働きを刺激して活性化させる効果があり、特に集中力の維持や、衝動のコントロール力を高める上で有効です。思い切り身体を動かすことはストレスの発散にもなり、結果として日々の情緒の安定にも直結するでしょう。この運動療法は子ども自身が純粋に楽しみながら取り組めるため、無理なく継続しやすい点も魅力です。ダンスやボール遊びを通じて、友達との社会性や協調性を自然と育む貴重な機会になりますよ。

7つの感覚から入る情報を整える訓練

人間が持つ五感に、体の位置を掴む『固有受容覚』とバランスを司る『前庭覚』を加えた7つの感覚があることを知っていますか?感覚統合訓練とは、これら7つの感覚から脳に入ってくる情報を適切に処理して、整理するためのアプローチです。例えば、マットや人工芝、プチプチを床に並べてその上を裸足で歩くといった工夫が挙げられるでしょう。さらに、不安定な場所を歩く訓練を重ねることは、ADHDの子どものバランス感覚を心地よく養うことにも繋がりますよ。

生活に必要なスキルを身につけるトレーニング

ADHDを抱える子どもには、社会生活で必要なスキルを身につける『SST(ソーシャルスキルトレーニング)』が効果的。このトレーニングは、ロールプレイやゲーム形式を取り入れながら進めるため、子どもたちが退屈せず楽しんで学べるでしょう。特性である衝動的な行動や不注意のせいで、周囲との対人関係に困難を抱えやすいことがADHDの子どもの特徴です。SSTを通じて、場面に応じた適切な反応や行動パターンを学んでいきます。継続によって、自信や自己肯定感が育つはずですよ。

怒りの感情をコントロールする練習

感情のコントロールに悩むADHDの子どもにとって、アンガーマネジメントは非常に効果的な療育として挙げられるでしょう。彼らは突発的な怒りや悔しさといった感情が湧き上がると、頭で考えるより先にすぐ態度や行動に出やすい特性を持っています。そこで、怒りを感じた際には一度その場から離れたり、深呼吸をしたり、水を飲んだりする具体的な対策を練習していきますよ。これを日々繰り返すうちに、自分自身で怒りを落ち着かせ、他の適切な行動へと変えられるようになるのです。

ADHDの子どもを持つ保護者に効果的な訓練

ペアレントトレーニング

ADHDの支援において、子ども本人へのアプローチだけでなく、その保護者が訓練を受ける方法があるのを知っていますか?これは『ペアレントトレーニング』と呼ばれ、関わり方を通して子どもの行動を変容させることを目的としています。具体的には、増やしたい良い行動はしっかり褒め、減らしたい困った行動はあえて無視し、危険な行動だけを叱るのです。保護者がこの効果的な褒め方や注意の仕方をマスターすれば、子どもの行動を適切に変えていけるでしょう。

まとめ

ADHDの子どもに合わせた療育でのびのびと育てよう

いかがでしたか?今回の記事では、ADHDの子どもについてご紹介し、療育の目的や効果的な方法について解説しました。ADHDには日常生活に支障をきたす特性がありますが、本人の努力不足ではないことが理解できたのではないでしょうか。一人ひとり特性の現れ方が違うため、本人に合わせた療育を実施したいですよね。ADHDの子どもに効果的な療育を行い、のびのびと育てることを心がけましょう。