母子分離不安とは?【特徴・原因・幼稚園・保育園・対応・小学生・治し方】

子どもが保護者と離れることに強い不安を感じることを母子分離不安と言います。これは、子どもが小さいときによく見られる現象で、特に珍しいものではありません。しかし、母子分離不安によって引き起こされる問題が原因で、日常生活に支障をきたす場合があります。今回の記事では、母子分離不安がある子どもの特徴や原因、適切な対応などを紹介します。子どもの母子分離不安について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

母子分離不安とは

子どもが保護者と離れることに不安を感じること

母子分離不安とは、子どもが保護者と離れる際に強い不安や恐怖を感じる状態を指します。特に乳幼児期や幼少期に多く見られ、保護者との絆が深いために生じる自然な反応です。一般的には、保護者が離れる場面で泣いたり、離れることに拒絶的な態度を示したりすることが特徴です。こういった場面では、保護者が子どもに安心感を与える対応や、徐々に分離の練習をすることが効果的とされていますよ。母子分離不安は成長とともに減少することが多いですが、長期間続く場合や日常生活に支障をきたす場合は、専門家の助けを求めることが推奨されます。

母子分離不安と愛着障害の違い

保護者との関係によって原因が異なる

母子分離不安と愛着障害は、一見同じような状態であると思われがちですが、それぞれ保護者との関係性によって原因が異なります。母子分離不安は、通常は発達過程の一部で、子どもが一時的に保護者と離れることに対して不安を感じる状態です。保護者と健全な愛着関係が築かれている場合でも、特定の年齢で見られることがあります。一方、愛着障害は、幼少期に保護者からの安定した愛情やケアが不足した場合に発生し、子どもが他者との信頼関係を築くことが困難になる障害です。したがって、母子分離不安とは違い、愛着障害の原因は保護者との不安定な関係に起因します。

愛着障害についての詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください。

母子分離不安が多くみられる時期

乳児期

母子分離不安が多く見られる時期は、主に乳児期の生後6ヶ月から2歳頃にかけてです。この時期の赤ちゃんは、保護者との絆(愛着)が形成され、保護者を安全基地として認識するようになります。乳児は、保護者がそばにいることで安心感を得ますが、離れると強い不安を感じることがあります。これは、乳児が成長し自分と他者の区別ができるようになったことで、保護者と離れることに対し不安を感じるからです。このような理由から、分離不安は発達段階として正常な反応と言えるでしょう。また、この時期の分離不安は発達の一環であり、適切な対応を通じて次第に軽減されます。

母子分離不安がある子どもの特徴

常に保護者のそばにいたがる

母子分離不安がある子どもは、常に保護者のそばにいたがるという特徴があります。例えば、家の中でも保護者の視界から外れると不安を感じ、後を追ったり抱っこを求めたりすることが多いです。また、保育園や幼稚園への登園時に、保護者と離れることに対して強い抵抗を示し、泣いたり固まったりすることもあります。このような行動は、子どもが保護者を安全基地と認識し、安心感を得るために近くにいたいという欲求から来るものです。母子分離不安は、年齢と共に次第に和らぐ傾向がありますが、適切なサポートが重要ですよ。

寝つきが悪くなる

母子分離不安がある子どもは、寝つきが悪くなるのもよく見られる特徴の一つです。この分離不安は特に夜間に強く現れやすく、子どもが一人で寝る際に、保護者から離れることへの恐怖心や不安感を強く引き起こします。そのため、子どもは眠りにつくことを避けようとしたり、夜中に何度も目を覚まして保護者の元に行こうとしたりします。また、眠る前に保護者と長く一緒にいたがる、ベッドタイムの儀式が延びるなどの行動も見られますよ。こうした行動は、安心感を得ようとする子どもの自然な反応であり、母子分離不安の一部として優しく受け止めてあげましょう。

1人で行動するのを嫌がる

母子分離不安がある子どもは、1人で行動するのを強く嫌がる特徴があります。分離不安がある子どもは、保護者と離れることに強い不安を感じ、保護者が見えなくなると泣いたり、しがみついたりすることがよくあります。特に幼稚園や保育園に行く場面などで、他の子どもと一緒に遊んだり、1人で活動することに抵抗を示すことが多いですよ。また、家庭では保護者がそばにいないと落ち着かず、1人での遊びや自立した行動が難しいことがあります。このため、日常生活においても保護者に強く依存し、自信を持って新しいことに挑戦するのを避ける傾向があります。

食欲が落ちる

母子分離不安がある子どもは、保護者と離れることに対して強い不安やストレスを感じ、食欲が落ちることがあります。なぜなら、分離によるストレスは、子どもの自律神経に影響を与え、食欲を抑制することがあるからです。食事の時間になると不安が高まり、食べることに集中できず、好きだった食べ物にも興味を示さなくなる場合があります。また、食事中に泣いたり、食べるのを拒否する行動が見られることもあります。このような食欲の低下は、分離不安が原因となる一時的なものが多いので、子どもが安心感を取り戻せれば徐々に改善される可能性が高いでしょう。

子どもが母子分離不安になる原因

子ども特有の性質

子どもが母子分離不安を経験する主な原因の1つは、発達段階における依存性と安全への強い欲求です。特に幼児期の子どもは、保護者を安全基地と認識しており、存在そのものから安心感を受け取っています。このため、保護者と離れることは心理的に不安を引き起こしやすいのです。また、子どもは未知の状況に対して不安や恐怖心を感じやすい性質を持ち、保護者の不在がそれを増幅させることがあります。さらに、子どもは自己調整能力がまだ発達途上であり、不安を自分でコントロールすることが難しいため、分離不安が強く現れます。こうした特性が、母子分離不安を引き起こす背景と言えるでしょう。

子どもが保護者と関わる時間が少ない

子どもが母子分離不安を感じる原因の一つに、保護者と過ごす時間が少ないことが挙げられます。特に幼少期は、子どもにとって保護者との関係が安心感の基盤となります。この時期に十分な時間を保護者と一緒に過ごせなかった場合、子どもは恐怖心や孤独感を抱きやすくなり、保護者と離れる際に強い不安を感じることがありますよ。また、保護者との絆が弱まると、子どもは自分の安全や愛情に対する信頼が揺らぎ、分離不安が生じやすくなります。一緒に過ごす時間が少なくなってしまう要因に、保護者の仕事の都合や日々の忙しい生活が影響することが多いとされています。たとえ短い時間だったとしても、日常生活の中で質の高い時間を子どもと共有することが重要と言えるでしょう。

自分で考えて行動する経験が少ない

子どもが母子分離不安を感じる原因の一つとして、自分で考えて行動する経験が少ないことが挙げられます。保護者が過保護に接し、子どもが自分で物事の選択や決定を行う機会を与えられていないと、子どもは自己効力感を十分に育てられません。その結果、保護者がいない環境に直面した際に、自己判断や問題解決が困難となり、不安が高まるのです。自主性や自立心を育てるためには、日常生活の中で子どもに小さな選択や責任を持たせ、成功体験を積ませることが重要です。これにより、子どもは安心して徐々に保護者と離れることができるようになるでしょう。

保育施設や小学校でのストレス

母子分離不安は、子どもが保育施設や小学校で保護者と離れる際に感じる強い不安や恐れです。この不安は、環境の変化や新しい人間関係への適応が原因となることがあります。保育施設や小学校でのストレスには、新しい集団生活への不安、友達や先生との関係構築の難しさ、家庭とのギャップなどが含まれます。また、子どもが自立する過程で保護者との心理的な距離が急に広がると、さらなる不安を引き起こす要因になります。これらの要因が相互に作用した場合、子どもの心に強いストレスを与え、母子分離不安を悪化させることにつながるでしょう。

急な環境の変化

子どもが母子分離不安を感じる原因の一つに、急な環境の変化も挙げられます。例えば、引っ越しや保育施設への入園、両親の仕事の都合による生活リズムの変更などが当てはまります。これらの変化が起こると、子どもが安心感を得ていた日常が崩れてしまいます。また、環境の変化に対応する時間が十分に与えられないと、子どもは自分の周りに何が起きているか理解しきれません。その結果、特に母親の存在が心理的な安定の中心である場合、母親と離れることへの恐怖や不安が増幅されることになるのです。

母子分離不安がある子どもへの適切な対応とは?

子どもが感じている不安に寄り添う

母子分離不安を抱える子どもへの適切な対応として、まずは、子どもが感じている不安に寄り添うことが挙げられます。子どもは保護者から離れることで強い不安や恐怖を感じているため、その感情を否定せず、理解しようとする姿勢が重要です。例えば、子どもが泣いたり、不安を訴えたりする際には「怖いよね」「寂しいね」と、子どもの気持ちに共感しながら声をかけることで、子どもは自分の感情が認められていると感じて、安心感を得られます。また、無理に分離を強制せずに、少しずつ離れる時間を増やすなど、子どものペースに合わせた対応を心掛けることも効果的です。不安な気持ちを共有しながら子どもとの信頼関係を強化することで、子どもは徐々に安心して保護者から離れられるようになりますよ。

親子で一緒に過ごす時間を増やす

母子分離不安がある子どもへの適切な対応として、親子で一緒に過ごす時間を増やすことも効果的です。子どもが不安を感じる理由の一つは、安心できる保護者との絆が弱まる恐れです。そのため、意識的に親子で過ごす時間を増やすことで、子どもは保護者の存在に対する安心感を再確認できます。例えば、1日のスケジュールに一緒に遊ぶ時間や、リラックスできるルーチンを設けると良いでしょう。特に子どもがリラックスできる活動を一緒にすることで、保護者との結びつきを強め、不安の軽減につながります。また、安心できる時間を増やすことで、保護者と離れる際の不安も徐々に和らいでいきます。

保護者が子どもから離れる時間を段階的に増やす

母子分離不安を感じる子どもに対して、保護者が行う適切な対応の一つは、子どもから離れる時間を段階的に増やす方法です。例えば、最初は短時間だけ保護者と離れ、徐々にその時間を延ばしていきます。そうすることで、子どもは少しずつ保護者がいない環境に慣れることができます。この方法を取り入れる際は、最初に慣れた環境で少しだけ離れ、次第に新しい環境でも同様に練習していきます。そして、保護者は必ず戻るという安心感を子どもに与えるため、離れる前には戻る時間を丁寧に伝え、約束通りに戻ることが重要です。また、子どものペースに合わせて焦らず進めることも大切ですよ。子どもが安心できる小さなステップを積み重ねることで、分離不安を徐々に軽減させることが期待できます。

母子分離不安について相談できる場所

子ども家庭支援センター

子ども家庭支援センターは、母子分離不安など子どもに関する様々な悩みを相談できる公的な施設です。主に子育て中の家庭を対象に、専門の相談員や心理士が子どもの発達や行動に関する相談を受け付けており、相談内容には母子分離不安に関する悩みも含まれます。センターでは、保護者が不安を解消し、適切なサポートを得られるよう、専門的なアドバイスや具体的な対処法を提供します。また、必要に応じて他の専門機関との連携も行いますよ。多くの地域で利用が可能で、事前予約や電話での相談も受け付けています。

児童相談所

母子分離不安の問題を相談できる場所の一つに、児童相談所があります。児童相談所は、18歳未満の子どもに関する様々な問題を相談できる公的機関で、母子分離不安に対する支援も行っています。主に、専門の相談員が子どもの心理状態や保護者の不安に対して適切なアドバイスを提供しており、必要に応じて心理カウンセラーや医療機関との連携も対応可能です。また、家庭での具体的な対応策についても適切な助言を得られるため、保護者は、子どもの不安を軽減するためのサポート方法を学び実践することができるでしょう。

児童相談所についての詳しい内容は、下記の記事を参考にしてみてください。

児童相談所とは?役割や相談の流れを解説【相談内容・職員・機能・役割】

まとめ

子どもの不安に寄り添って少しずつ不安を取り除いてあげよう

いかがでしたか。今回の記事では、母子分離不安についての特徴や原因、適切な対応方法などを紹介しました。母子分離不安は、乳幼児期や幼少期の子どもが、保護者と離れることに強い不安を感じる状態のことです。こうした不安を感じている子どもには、保護者が子どもの気持ちに寄り添い、段階的に対策してあげることが重要です。また、必要な場合は1人で抱え込まずに、母子分離不安について相談できる施設を利用するなどして、子どものペースに合わせて少しずつ不安を取り除いてあげましょう。