障がい児保育における環境構成は、子ども一人ひとりの特性やニーズに応じた支援を行うために非常に重要な要素です。適切な環境を整えることで、子どもたちは安心して学び、成長することができます。視覚的、聴覚的、身体的な配慮を含む多様な支援は、障がいを持つ子どもたちが自立した生活を送るための基盤を築いていきますよ。この記事では、障がい児保育における環境構成のポイントや、環境構成のコツなどを紹介しています。障がい児保育について気になっている保育士さんは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
障がい児保育とは?
障がいのある子どもをサポートしながら保育すること
障がい児保育とは、障害を持つ子どもをサポートしながら行う保育の総称です。障がい児保育では、子どもたちの障がいの種類や程度に合わせ、精神的・身体的なケアが行われます。また、社会性を身につけるための教育や、自立に向けた支援も行われますよ。障がい児保育は障がい児だけでなく、障害のない子どもたちが障がい児と交流することで、多様性の尊重や相互理解について学べるというメリットもあります。
加配保育士が設置される
障がい児保育の現場には加配保育士が配置されます。加配保育士とは、障がい児や外国籍の子どもなど特別な支援を必要とする子どもたちの保育の質を高めるため配置される専門職員のことです。加配保育士と通常の保育士との違いは、その専門性にあると言えるでしょう。加配保育士に求められることは、子どもの特性を理解し、適切な支援計画を立てることです。加配保育士が立てた計画を他の保育士に共有し、協力しながら障がい児保育を行います。
障がい児保育における環境構成とは?
児童発達支援ガイドラインに基づき環境を整えること
障がい児保育における環境構成とは、厚生労働省が発表している児童発達支援ガイドラインに基づき環境を整えることです。ガイドラインによると、障がい児支援の基本理念として次の5つが挙げられていますよ。
②合理的配慮の提供
③家族支援の提供
➃地域社会への参加・包摂(インクルージョン)の推進
⑤事業所や関係機関と連携した切れ目のない支援の提供
https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/shisaku/guideline_tebiki#h2_free1
これら5つの理念を踏まえたうえで、子どもの発達全般や障害の特性、行動の特性等を理解して、適切な支援ができるようにしましょう。また、家族や地域社会にも働きかけながら、環境構成を行うことが大切です。
障がい児保育の環境構成のポイント
場所ごとに何の活動をするか明確にする
障がい児保育の環境構成を作成する上でのポイントは、この場所は何の活動をする場所なのかを明確に設定することです。例えば、静かなスペースでは絵本を読んだり折り紙をしたり、リラックスできる活動や個別支援を行います。遊びのエリアでは鬼ごっこなどの活発な自由遊びや、周りの子どもたちとの交流を促すような活動をすると良いでしょう。特に感覚過敏の子どもなどは、落ち着いた空間があることで安心して過ごすことができ、おすすめです。
活動の見通しを立てる
活動の見通しを立てることで、次に何をするのかを子どもたちが予測できるようにしてあげましょう。具体的には、絵カードやスケジュールボードなど、目で見て予定が理解できるようなツールを使うのがおすすめです。特に、自閉スペクトラム症(asd)や注意欠陥・多動性障害(adhd)などの障がいがある子どもの場合、見通しを立てることに対して苦手意識が強いと言われています。次に何をするか理解しやすくなるように丁寧にサポートしてあげましょう。
パーテーションで感覚過敏への配慮
感覚過敏を持つ子どもは、音や光などの視覚的刺激に敏感なため、一般的には些細な刺激でもストレスになることがあります。具体的には、人の話し声や蛍光灯の光、時計の針の音までも刺激になってしまいます。こうした感覚過敏の子どもへの配慮として、パーテーションを用意して落ち着ける空間を作ることが推奨されています。また、パニックになってしまったときにパーテーションの中に入れば落ち着けるという対処方法が分かっていれば、適切なタイミングでストレスや不安を軽減することができますよ。
障がい児保育を構成する4つの環境
①人的環境
障がい児保育における人的環境とは、子どもたちを取り巻く人々のことです。障がい児保育の現場では、主に加配保育士や特別支援の専門家たち、医療スタッフや保護者が連携することで人的環境が構成されています。保護者との面談を行ったり、定期的なミーティングで情報共有を欠かさないことが大切ですよ。障がい児保育における人的環境は、子どもたちの健全な発達には欠かせない要素と言えるでしょう。また、子どもたちが自分のペースで学びながら成長できる基盤を作るためにも、非常に大切な役割を担っていますよ。
②自然環境
障がい児保育における自然環境とは、子どもたちが自然と触れ合える環境を整備することです。自然環境の持つ役割は、子どもたちをリラックスさせたり、他者とのコミュニケーションの場を作り出したりすることです。また、自然環境はストレスを軽減する効果もありますよ。例えば風や音、草花の触感などが感覚過敏を持つ子どもたちにとっては癒しとなる場合があります。こうした自然環境は、子どもたちの自己表現や探求心を育む機会の場にもなるでしょう。さらに、自然との触れ合いが心の安定を促進するため、障がい児保育において重要な役割を果たしますよ。
③社会的環境
障がい児保育における社会的環境とは、障がい児が地域や社会とつながるための環境を整えることです。社会的環境を整えることで、子どもたちが多様な人々と関わる機会を得られるほか、障がいを持った子どもたちを地域の人が受容しやすくなるといったメリットがあります。具体的な方法としては、地域で開催されるイベントに参加したり、地域の方を保育園で開催するイベントに招いたりすることなどが挙げられます。
➃物的環境
障がい児保育における物的環境とは、障がい児が安心して生活しながら学ぶための設備や道具を指します。車いすの子どもにはバリアフリーの施設が必要であったり、視覚障害の子どもには点字が必要になるなど、保育対象の子どもによって必要な設備は異なります。そのため、一人ひとりに合わせて必要な道具や設備を整えることが大切です。また、その子にとって適切な設備や道具を揃えることで子ども自身でできることが増えていくため、自分の力だけで何かを達成できるという成功体験も増え、自信につながっていきますよ。
人的環境のポイント
保育士同士の関係を円滑に保つ
人的環境のポイントとして、保育士同士の関係を円滑に保つことが挙げられます。子どもたちにとって保育士は一番身近な大人の一人です。身近な大人のコミュニケーションを見て学ぶため、子どもたちの模範となるような態度を心がけるようにしましょう。日々の業務では、情報の共有や意見交換が欠かせません。オープンなコミュニケーションを心がけ、お互いの考えを理解し合うことが協力体制を強化します。また、ポジティブなフィードバックや感謝の気持ちを伝えることも、良好な人間関係を築く一助となりますよ。
自然環境のポイント
自然と触れ合える場所を用意する
自然環境を提供する際のポイントは、自然と触れ合える適切な場所を用意することです。最も手軽に用意できるのは畑です。保育園に庭などがあれば、子どもたちと一緒に作物を栽培してみてはいかがでしょうか。普段食べている作物を植えて、育てて、収穫するまでの流れを身をもって学ぶ良い機会になりますよ。作物の栽培が難しければ公園などに出かけるのも良いですね。庭や公園での活動を通じて、子どもたちは自由に動き回り、さまざまな素材や音、匂いに触れることができます。障がいのある子どもたちには、特に感覚を活かした遊びや活動が有効ですよ。保育士は、子どもたちが安全に自然と触れ合える環境を整えて支援することが大切です。
社会的環境のポイント
地域の人との関わりを持つ
社会的環境のポイントは地域の人と関わる機会を作ることです。地域の人々と交流することで、子どもたちは多様な価値観や社会的スキルを学ぶことができます。例えば、近隣の高齢者や商店主との関わりを通じて、親しみや感謝の気持ちを育むことができます。また、地域のイベントや活動に参加することで、子どもたちは社会に対する理解を深め、自己肯定感を高めることができますよ。保育士は、地域との連携を大切にして、子どもたちに安全で温かな環境を提供することが求められます。
物的環境のポイント
静と動のバランスがとれた居場所をつくる
物的環境を整えるポイントは、静と動のバランスが取れた居場所を作ることです。特に感覚過敏の子どもは、ずっと騒がしい空間にいるとストレスが溜まり疲れてしまいます。一方、動きが必要な子どもたちには、適度な運動ができるスペースや自由に身体を動かせる遊具を用意して、エネルギーを発散させてあげる必要があります。そのため、静と動を限られたスペース内でうまく調和させることで、子どもたちが安心して過ごせる環境が整いますよ。このときに配慮する点としては、遊ぶ場所と休む場所をしっかり区別することが挙げられます。
刺激になるものを極力減らす
感覚過敏の子どものために、刺激になるものを極力減らしてあげましょう。感覚過敏の子どもは視覚や聴覚、触覚など、あらゆる感覚から刺激を受け取ってしまいます。その中でも保育園で刺激になるものの例としては、蛍光灯の光や、子ども用のカラフルなおもちゃ、子どもたちの声などが挙げられます。保育園というたくさんの子どもたちであふれた環境では、これらの刺激を完全に取り除くことは難しいですよね。具体的にできる配慮として、静かにする場所と騒いでもいい場所をはっきり区別することが挙げられます。こうした配慮により、感覚過敏の子どもたちが安心できる空間を作ることができますよ。
環境構成の書き方のコツ
図を使って分かりやすく
環境構成を作成するときは、子どもたちにも理解しやすい情報となるように、図を使って説明するのが効果的です。まず、どの位置から見た図なのかわかりやすくするために、建物のドアやトイレなど、園内の設備を目印として書き込みます。また、園庭の図を描く場合は遊具などが目印になりますよ。次に、机や棚など、物的環境の配置を書き込みましょう。最後に保育士の配置を決めます。どこに保育士を配置すれば子どもたちを見守れるか、実際の場所と見比べて計画すると良いでしょう。
箇条書きで情報を足していく
環境構成を作成するときは、職員同士で案を出し合い、その都度箇条書きで情報をつけ足していくと良いでしょう。定期的なミーティングで情報交換を行い、新しい情報が出たらその都度書き足していきます。案を出し合う際は、人的環境や自然環境、社会的環境や物的環境のそれぞれの観点から意見を出し合います。また、環境構成に遊具や設備を書き込んでいる場合は、それぞれの遊具や設備ごとに注意点などを書いていくと見やすくなりますよ。
まとめ
障がい児の特性を理解して環境構成をしよう
いかがでしたか?障がい児保育の場面では、障がい児の特性を理解して、一人ひとりの個性に合った環境構成を心がけることが大切です。例えば、感覚過敏がある子どもには静かな場所や柔らかな光を提供し、過剰な刺激を避けられるスペースを用意しましょう。身体的な障がいがある場合には、医療的な連携が取れる環境づくりが必要です。また、視覚や聴覚の発達に配慮した教材や遊具を使用することで、学びや遊びを楽しくサポートすることができますよ。障がい児保育の環境構成の時は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。