療育で使える絵カードとは?【おすすめ・手作り・イラスト・使い方・遊び・コミュニケーション・発達障害・視覚支援】

みなさんは、絵カードがどのようなカードなのかご存知でしょうか?絵カードは、物や出来事を簡単な絵で表現したカードです。保育の現場でも多く活用されている絵カードですが、療育でも効果的に使うことができます。この記事では、療育における絵カードの活用シーン例や、使用する絵カードを選ぶときのポイントなど、絵カードについて詳しく解説します。子供たちとのコミュニケーションに課題を感じている方や、何か新しい療育の方法を取り入れてみたいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。

絵カードとは?

物や出来事を絵や写真で表した視覚的支援ツール

絵カードとは、日常生活で関わる物や出来事が簡単なイラストや写真で描かれたカードのことを指します。発達に障害を抱える子供たちの中には、言葉の理解や表現に課題を抱えている子供もいます。そのような子供たちにとって絵カードは、他者とコミュニケーションを取るための視覚的支援ツールとして活用されています。あらゆる場面で子供たちとの会話に絵カードを用いることで、より円滑にコミュニケーションを取ることができるでしょう。

絵カードを用いるのに向いている子供は?

言葉の理解や表現が苦手な子供

発達に障害を抱えている子供たちの個性や特性は一人ひとり異なります。では、どのような特性を持つ子供に絵カードが有効なのでしょうか。絵カードを用いるのに向いている子供の特徴1つ目は、言葉の理解や表現が苦手な子供です。言葉の理解が苦手でも、目で見える情報の理解は得意という子供がいます。そのような子供たちは、絵カードを使うことで、言葉や文章を使わなくても他者との意思疎通を図ることができるでしょう。なぜなら、自分の意図や欲求に合った絵カードを相手に伝える事で、視覚的に表現することができるからです。

先の予定がわからない状況や急な予定変更が苦手な子供

絵カードを用いるのに向いている子供の特徴2つ目は、先の予定がわからない状況や急な予定変更が苦手な子供です。例えば、ホワイトボードなどに絵カードを用いて1日の予定や状況を視覚化することで、子供の不安を軽減しながら適切な指示をスムーズに伝えることができます。このとき、どこに行くのか誰に会うのか、何をするのかを明確に伝えましょう。そうすることで、子供たちの不安な気持ちを和らげることができ、普段と違う状況でも落ち着いて過ごすことができますよ。また、絵カードを予定順に並べておくことで、子供へ視覚的に予定の順番を伝えるときに役立ちます。

絵カードの活用シーン

子供が自分の欲求を伝える練習をするとき

絵カードを活用できるシーンの1つ目は、子供が自分の欲求を伝える練習をするときです。子供たちは自分の気持ちに沿った絵カードを相手に提示することで、言葉を使わずに自分の欲求を伝えることができます。例えば、普段から言葉で相手に何かを伝えることや自己主張が苦手な子供でも、絵カードでなら意思を相手に伝えることが安易になる可能性があります。また、絵カードを使って自分の意思を相手に伝える経験を重ねることで、言葉を用いて相手に伝えることができるようになるかもしれません。このような場面での注意点は、子供たちが絵カードで示した欲求を、大人が拒否しないようにすることです。一度拒否してしまうと、子供たちのコミュニケーションへの積極性を失ってしまう恐れがあります。どんなときも、子供たちとしっかり向き合うことを大切にしましょう。

相手の指示を聞く練習をするとき

2つ目は、子供が相手の指示を聞く練習をするときです。療育の現場では、先生や保護者が絵カードを用いてやってほしいことを示し、子供がそれに応えるというトレーニングをすることがあります。普段からこのトレーニングに取り組んでおけば、緊急時に指示を伝えやすくなるでしょう。言葉の発達具合によって、さまざまなトレーニング方法があります。

言葉が未発達な子供の場合
リンゴや服、リモコンなど、”モノ”の絵カードを提示し、描いてあるものを持ってきてもらう。
ある程度の言葉が理解できる子供の場合
歯を磨くや椅子に座る、服を着るなど、”モノと行動”が描かれた絵カードを提示し、描いてある行動を取ってもらう。

手順や段取りを理解する練習をするとき

3つ目は、手順や段取りを理解する練習をするときです。言葉の発達に課題がある子供が、物事の手順や段取りを言葉だけの説明で理解するのは難しいことです。前述したように絵カードを用いることで、手順や段取り通りにカードを並べ替えることができるので、視覚的にわかりやすく子供たちに伝えられます。次にすべき行動が理解できると、子供たちは安心感を感じることができるでしょう。特に、毎日のルーティーンを絵カードにするのがおすすめです。また、やるべき活動が終わったらカードを所定の場所に片付けるなどの工夫をすると、子供たちはよりわかりやすいですよ。

想像力を高める練習をするとき

4つ目は、想像力を高める練習をするときです。これは番外編的なものになりますが、ASD特性のある子供の場合、想像力に課題があることがあります。療育の現場では、絵本を使って想像力を高めるトレーニングをすることがありますが、絵カードを活用することもありますよ。具体的な活用方法は以下の通りです。

  1. ”いつ・だれが・どこで・何をした”のカードをそれぞれ3~4枚程度用意する
  2. くじびきのように1枚ずつ選ぶ
  3. 選んだカードを使って物語を作る

絵カードを選ぶときのポイント

装飾が少ないシンプルなもの

絵カードを選ぶ際には、いくつかポイントがあります。1つ目は、装飾が少ないシンプルなものを選ぶことです。発達に課題を抱えている子供は、1つの物事から多くの情報を取り入れやすい傾向があります。具体的には、絵に描かれている人物が着ている服の色が気になったり、メインの文字以外の情報を大きく受け取ってしまったりすることです。そのため、カードの絵に使われている色はできるだけ少なく、メインの文字が大きく書かれたものを選ぶようにしまょう。

発達の具合に合ったテーマのもの

2つ目は、発達の具合に合ったテーマの絵カードを選ぶことです。市販されている絵カードは、食べ物や動物、日用品などのテーマごとにセットになって販売されていることが多い傾向です。中には、子供の発達具合によっては理解するのが難しいテーマを扱った絵カードもあるでしょう。そのため、使いたい題材のカードが入っているか、対象の子供が理解できる内容の絵カードであるかどうかを購入前に確認すると良いですね。

用途に沿った素材のもの

3つ目は、用途に沿った素材のものを選ぶことです。子供が直接触れて使う場合には、ラミネート加工された丈夫なものを選ぶと良いでしょう。また、イラストを印刷したり自分で絵を描いて絵カードを作る際は、マグネットシートを使うのもおすすめです。その日の予定を壁やホワイトボードなどに貼っておくことで、子供たちが確認したいタイミングでいつでも見ることができます。子供のペースで簡単に確認できることで、子供たちの不安感をより軽減させることができるでしょう。

市販されているおすすめ絵カード

生活道具カード

絵カードにはさまざまなものがあり、多くの種類の製品が販売されています。その中でも今回おすすめするのは、『くもんの生活図鑑カード 生活道具カード』です。この製品には、コップや冷蔵庫、テーブルなど、身の回りにある生活道具が写真で載っています。実物に近い写真で確認できるため、子供たちはイメージしやすくなるでしょう。収録されている内容も、日常生活で触れるものばかりのため、とても使いやすいカードとなっています。『くもんの生活図鑑カード』シリーズは他にも、果物や野菜、動物など、さまざまなテーマがあるので、必要な絵カードを探してみてくださいね。

コロロメソッドで学ぶ動作のことば学習カード

他には、『ココロメソッドで学ぶ動作のことば学習カード』もおすすめです。この絵カードには、ごはんを食べる、字を書くなど、日常の動作が100種類収録されています。100種類の動作が収録されているため、日常にみられる大半の動作はこの絵カードでカバーできるでしょう。日常の動作に絵カードを用いることは、子供たちに行動の指示を出すときに有効です。イラストがシンプルなので、発達に課題のある子供たちでも理解しやすいでしょう。

手作り絵カードの材料と作り方

材料と道具

ここからは、手作りで絵カードを作る際に必要な材料と道具、作り方を紹介します。今回紹介するのは、1つにまとめられるリング式のラミネート加工された絵カードの作り方です。必要な材料と道具は以下の通りです。

  • 使用する絵の素材
  • ラミネートフィルム(A7サイズがおすすめ)
  • カードリング
  • プリンター・A4コピー用紙(コンビニの印刷でもOK)
  • ラミネーター
  • 穴あけパンチ
  • カッター
  • カッターマット
  • 定規
絵の素材は、絵カード用のイラストが載った書籍やインターネットに掲載されている絵カード用イラスト、手書きイラストなどが使用できます。

作り方

  1. 使いたいイラストをコピー用紙に印刷する。A4用紙に8つのイラストをコピーすると、A7サイズのラミネートフィルムにぴったりです。(手書きのイラストでもOK!)
  2. コピーしたイラスト用紙を適切なサイズにカットする。(手のひらサイズがおすすめ)
  3. ②をラミネートフィルムにセットし、温めたラミネーターで加工する。
  4. 左上に穴あけパンチで穴を開ける。
  5. ジャンルごとなどに分け、カードリングに通して完成!
今回紹介した作り方では④~⑤でカードリングを使い、リング式の絵カードを作りました。他にも、絵カードの裏にマジックテープやマグネットシールを貼るなど、さまざまな工夫が可能ですよ。

絵カード遊びのアイデア

動物カード遊び

最後に、絵カードを使った遊びのアイデアを紹介します。1つ目は、動物カード遊びです。このカード遊びは、絵カードに描かれたお題の動物をまねて、身体で表現し合うゲームです。動作の例としては、ゾウだったら長い鼻に見立てた腕をぶらぶらしながら歩いたり、ゴリラだったら胸を叩いてドラミングのまねをしたり、お題の動物の特徴を捉えて表現します。また、動物の仕草だけでなく、鳴き声をまねしてみるのも良いでしょう。

絵カードかるた

2つ目は、絵カードかるたです。このゲームでは、絵カードと文字カードがセットになった製品を使います。床に絵カードを並べ、大人が文字カードに書かれた物や動作の名前を読み上げ、読み上げた内容に応じた絵カードを一番早く取った子供が勝利です。ただ単に名前を読み上げるだけでなく、「これは部屋をきれいにするときに使います」「床のごみを吸い取ります」など、対象の物の特徴をクイズのように伝え、子供が答えを導き出しながら絵カードを探すのも楽しく盛り上がるでしょう。

シルエット当てゲーム

3つ目は、シルエット当てゲームです。このゲームでは、絵カードの裏面にそのシルエットが描かれたカードを使います。子供たちはシルエットから形のヒントを得て、それが何なのかを当てていきます。例えば、ハサミやライオンなど、形に特徴のあるものをお題にすると、子供たちでも簡単に取り組むことができ楽しめるでしょう。子供たちの年齢や発達の具合によって難易度を工夫してみてくださいね。

まとめ

子供たちとのコミュニケーションに絵カードを活用しよう!

いかがでしたか?今回は、療育で絵カードを用いると有効な子供の特徴や、絵カードの作り方など、療育で使う絵カードについて詳しく解説しました。絵カードには、子供たちが物や動作の名前を覚えられるだけでなく、子供たちの意思表示や、予定されている行事への不安軽減など、さまざまな効果があります。また、市販されている絵カードの種類も豊富なので、多くの場面で役に立つでしょう。ぜひ、子供の療育や成長の手助けに絵カードを使ってみてくださいね。