音楽療法とは?【療育・音楽療法士・やり方・種類・資格・認知症・歴史】

リラックス効果があったり、認知力を向上させたり、様々な効果がある音楽。イライラしている時や疲れている時に音楽を聴いて心を落ち着かせた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。リハビリテーションの現場でも、音楽療法として音楽が活用されています。この記事では、音楽療法の効果や種類、実践方法などを紹介していきます。音楽療法士についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

音楽療法とは

音楽の働きを用いて障害の改善を目指す療法

音楽療法とは、音楽の働きを用いて障害の改善を目指す療法です。音楽には、自律神経に作用して心を落ち着かせたり、集中力を高めたりする効果があります。また、好きな曲を歌ったり楽器を演奏したりする行為には、運動効果や体力維持の効果が期待できるでしょう。このように、音楽には様々な効果がありますが、音楽が持つそれらの働きをリハビリテーションで活かす行いを、音楽療法と言います。

様々なリハビリの現場で行われている

音楽療法は、様々なリハビリの現場で行われています。例えば、認知症の患者に音楽療法を行いリラックスさせることで、症状の進行を遅らせることができます。また、歌を歌いながら楽器を演奏するなど、2つのことを同時に行うことで認知症の予防にもつながると言われています。身体障害のある人が楽器の演奏を行うことで、身体機能の改善を目指すこともありますよ。そして、音楽療法は、療育の現場にも取り入れられています。音楽を通じて感情表現の練習を行ったり、手先の運動機能を改善したりする狙いがあります。

音楽療法の歴史

20世紀のアメリカで効用が認められた

音楽療法は、20世紀のアメリカで効用が認められた療法です。20世紀というと、第一次世界大戦と第二次世界大戦という大きな戦争があった時代ですよね。それぞれの大戦後のアメリカでは、退役軍人の間で音楽療法の効果が確認されました。その後、正式に専門科目としての教育課程が決められたり、音楽療法連合が設立されたりしました。日本での歴史はまだ浅く、1980年代~90年代に研究機関や協会が設立されました。そして1997年に音楽療法士の資格ができ、音楽療法のプロフェッショナルが活躍できる現場は広がり続けています。

身体面への効果

運動機能の向上

ここからは、音楽療法の効果について紹介していきます。まず初めに紹介するのは身体面への効果についてです。身体面の効果としては、運動機能の向上が挙げられます。例えば、歌を歌うと心肺機能や循環器機能が活性化されますよね。楽器を演奏すると、普段は使わない筋肉を動かすことになります。また、音楽に合わせて体を動かすだけでもリハビリには有効です。楽しみながら運動機能を向上させることができますよ。

痛みの緩和

音楽療法は、痛みの緩和にも効果があります。音楽を聴くと、副交感神経が刺激されてリラックスすることができます。音楽を聴いて心を落ち着かせた経験がある人も多いですよね。心身共にリラックスすることで、痛みの感じ方を和らげることができるのです。また、音楽に意識を集中させることで、痛みを感じにくくさせるという効果もあります。自分の好きな音楽を聴くことで、より高い効果を実感することができますよ。

睡眠の質の向上

睡眠の質の向上も、音楽療法によって期待できる効果の1つです。音楽を聴くと副交感神経が刺激されてリラックスできると説明しました。これは睡眠の質にも良い影響をもたらします。リラックスすることで、脳からα波が出て眠気を誘いやすくなるのです。クラシック音楽など、ゆったりとしていて静かな音楽を聴くのがおすすめですよ。寝ている間にずっと音楽が流れていなくても大丈夫です。寝付くまでの10~20分間に大きすぎない音で聞くと良いでしょう。

精神面への効果

ストレス軽減

ここでは、音楽療法の精神面への効果を紹介していきます。音楽療法が精神面に与える効果としては、ストレス軽減が挙げられます。実際に、音楽を聴いてストレスが軽減された経験がある人も多いですよね。音楽には脳に様々な刺激を与える力があり、自立神経を整えることができます。精神障害を抱えた方へのリハビリに有効なのはもちろん、感情のコントロールが苦手な発達障害の人にとっても、有効な療法であると言えるでしょう。

感情表現の機会の創出

音楽療法は、感情表現の機会を創出することができます。感情表現の機会になるのは音楽を聴くときだけではなく、歌ったり踊ったり演奏するときも感情表現の機会と言えるでしょう。リハビリや療育を受けている人の中には、感情表現が上手くできない人もいます。普段の会話では自分の気持ちを上手く伝えることができなくても、音楽に合わせて歌ったり体を動かしたりすることで、感情を表現しやすくなりますよ。歌を歌うときは、自然と声の高さを変えたり深い呼吸を行ったり口を大きく開けたりしますよね。そのような行動が普段の表情の変化、話し方の変化の練習にもなります。

社会面への効果

コミュニケーションの促進

音楽療法には、社会面への効果もあります。例えば、コミュニケーションを促進する効果です。発語が難しい障害を持っている人や発達障害の人は、他者とのコミュニケーションに悩みを抱えている人も多いですよね。音楽は、言葉だけの会話よりも簡単に他者とのコミュニケーションを取ることができます。そのため、音楽は世界共通の言語と呼ばれることもありますよ。話すのが苦手でも、歌やリズムを通じてやり取りをすることで、他者との楽しい時間を過ごすことができるでしょう。

孤立の防止

音楽療法を行うことで、孤立を防止することもできますよ。高齢者や発達障害の人は、社会的な関わりが制限されてしまうことから孤立に陥りやすい傾向にあります。一方で、音楽は人との関わりを作り出してくれるものです。歌や楽器の演奏は1人でもできますが、複数人で行うことで様々な曲に挑戦できますよね。複数人で音楽を奏でるためには、相手と息を合わせる必要があります。音楽療法に複数人で取り組むことで、社会性を身に付けることにもつながるでしょう。

音楽療法の種類

音楽を聴く(受動的音楽療法)

ここからは音楽療法の種類について紹介していきます。音楽療法には、受動的音楽療法と呼ばれる音楽を聴く療法と、能動的音楽療法という音楽を奏でる療法の2種類があります。まず初めに受動的音楽療法について見ていきましょう。受動的音楽療法は、対象者に音楽を聴かせて行う療法です。その人の好みや状態に合った曲を流すことで、気持ちをリラックスさせることが主な効果だと言えるでしょう。音楽を聴かせることで行う療法なので、身体を動かすことができない人に向けても、アプローチすることができますよ。

音楽を奏でる(能動的音楽療法)

次に紹介するのが、音楽を奏でる能動的音楽療法についてです。能動的音楽療法は、音楽を聴く受動的音楽療法とは違って、自分自身で音楽を奏でて行う療法です。具体的には、歌を歌ったり楽器を演奏したりすることが挙げられるでしょう。受動的音楽療法よりも実践のハードルは高いですが、より多くの効果が期待できます。指先の動きや体幹のリハビリにもなるのはもちろん、コミュニケーション力や感情表現など、社会性を身に付けることにもつながりますよ。

音楽療法の実践例

合唱を行う

それでは、音楽療法は実際にどのように実践されているのでしょうか。最も気軽に取り組める療法が、合唱を行うということです。合唱は、声が出せる人であれば特別な技術や運動能力が無くても簡単に行うことができます。複数人で取り組むことができるため、コミュニケーションの促進にも効果的ですよ。認知症のリハビリや高齢者施設でのレクリエーションとして取り入れられることも多いです。音楽療法の合唱として使える音源を載せておくので、ぜひ参考にしてみてください。

簡単な楽器を演奏する

音楽療法を実践する場合、簡単な楽器を演奏するのも効果的です。楽器の演奏は、運動機能の向上や孤立の防止に特に効果的な方法ですよ。タンバリンやマラカスなどは簡単に音が出せるので、楽器の演奏経験がない人でも取り組むことができるでしょう。比較的大きな音が出るので、発達障害の人が感情をコントロールするのにも効果的だとされています。指先をトレーニングしたい場合には、ピアノやハーモニカなどの鍵盤楽器がおすすめです。また、ハンドベルや鈴などは複数人で演奏する場合にも適した楽器です。音楽に合わせて周りと協力して演奏することで、コミュニケーション力の向上や脳の活性化にもつながるでしょう。

音楽療法はどこで受けれられる?

病院や福祉施設で受けることができる

「音楽療法に興味はあるけど、どこで受けられるの?」そんな疑問を持っている人もいますよね。音楽療法は、病院や福祉施設で受けることができます。音楽療法は、音を出しながら行う療法なので、どこでもできる療法ではありません。歌ったり楽器を演奏したりする能動的音楽療法を行う場合は、広さがある防音室が必要になることもあるでしょう。中には音楽を聴かせる受動的音楽療法のみを行っている施設もあります。どんな音楽療法を受けたいかを考えて、適切な設備や環境が整っている施設を選びましょう。

音楽療法士とは?

音楽療法を行うプロフェッショナル

音楽療法を行うにあたっては、音楽療法士と呼ばれる音楽療法を行うプロフェッショナルがいます。医療施設や福祉施設、教育現場で音楽療法を行う際に、専門的な知識やスキルを持って働くのが音楽療法士です。主な仕事内容は、自分自身で楽器を演奏して患者に音楽を聴かせたり、楽器を一緒に演奏する際に指導したりすることです。ただ楽器を演奏するだけではなく、音楽療法の効果を最大限発揮できるように、対象者へのコミュニケーション力や傾聴力も求められますよ。

音楽療法士になるには資格を取るのがおすすめ

音楽療法士になるには、民間の資格に合格することです。音楽療法士の資格は民間資格のため、実際には資格を取らなくても音楽療法士として働くことはできます。一方で、必要なスキルや知識を身に付けるためには資格を取得するのがおすすめです。もっとも代表的な音楽療法士の資格は、日本音楽療法学会が認定する資格です。講習会や認定校で学んでから試験を受けることで資格を取得することができますよ。

まとめ

音楽療法にはリハビリに有効な様々な効果がある

いかがでしたか。音楽療法についてその効果や実践例、受けられる場所などについて説明してきました。音楽療法は、音楽が持つ様々な力を用いてリハビリを促進する療法です。音楽にはリラックス効果やストレス軽減など数多くの効能があります。音楽を聴くだけの受動的音楽療法の他、実際に音楽を奏でる能動的音楽療法を行うことで、コミュニケーション力の向上や運動機能の向上にもつながりますよ。音楽療法に本格的に携わりたいと思ったら、音楽療法士の資格を取るのもおすすめです。現在、音楽療法を行える施設は限られていますが、今後は多くの施設で音楽療法を受けることができるようになると良いですね。