耳が不自由な人や声を出すのが難しい人が言葉の代わりに使うのが手話。手話には検定があり、自分の手話の能力を知ることができます。この記事では、手話検定の試験内容や勉強方法など、手話検定について詳しく解説します。一見、保育とあまり関係がないように思えますが、保育士が手話検定を活かすことのできる場面は多くあります。手話に興味のある保育士さんはぜひこの記事を参考に、手話検定の取得を目指してみてくださいね。
手話検定とは?
手話を用いたコミュニケーション能力を測る試験
手話検定とは、手話を用いたコミュニケーション能力を測ることができる試験です。手話検定は一般的に複数のレベルに分かれており、初級から上級まで段階的に難易度が設定されています。手話検定を受験することで、自分の手話能力がどの程度かを確認し、客観的に評価することができます。また検定に合格することで、手話を用いた職業やボランティア活動に役立てることができ、手話を必要とする場面での対応力を向上させることができるでしょう。
2種類の手話検定
全国手話検定試験
手話検定には2つの種類があります。1つ目は全国手話検定試験です。全国手話検定試験では手話に関する知識の筆記試験に加え、面接官と手話で会話をする実技試験も行います。聴覚障害のある人と手話を使って、どの程度のコミュニケーションができるのかを測ることが目的です。手話技能検定に比べ難易度は低いとされているため、手話を初めて勉強する人は全国手話検定試験から挑戦してみると良いでしょう。
手話技能検定
もう1つの手話検定は、手話技能検定です。手話技能検定では手話を1つの言語としてとらえているため、手話の言語としての技能力を測ることが目的とされています。7級では記述式の筆記試験、6~3級では四肢択一式(マークシート)の筆記試験、2~1級では実技試験を行います。全国手話検定試験に比べると難易度が高いため、手話を本格的にしっかり学びたい人や自分の手話の実力を測りたい人向けと言えるでしょう。一方で、7~1級の幅広いレベルの試験が行われているため、自分に合ったレベルに挑戦することができます。
各級のレベルや試験内容は?【全国手話検定試験】
5級・4級・3級が初級~中級
全国手話検定では、5~3級の試験が初級~中級レベルとされています。各級の試験内容は以下の通りです。
- あいさつに加え、名前や仕事、家族などの自己紹介を中心に簡単な会話ができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約6ヶ月のレベル
- 出題範囲の単語数:300~400(あいさつや簡単な動詞・形容詞の単語など)
- 出来事や思い出、予定などの日常生活の身近な話題について会話ができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約1年のレベル
- 出題範囲の単語数:800~900(1年間や1週間といった具体的な数字を含んだ単語や季節の行事に関わる単語など)
- 子供や健康、職場のことなど社会生活の体験の話題で会話ができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約1年半のレベル
- 出題範囲の単語数:1200~1400(さまざまなテーマの名詞など)
2級・準1級・1級が上級
また、2~1級が上級レベルとされています。各級の試験内容は以下の通りです。
- 仕事や公的な場で社会生活全般について簡単に会話ができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めてから約2年のレベル
- 出題範囲の単語数:約2100(公的な会話に使用する単語など)
- 社会生活のあらゆる場面や一部専門的な場面に関わるテーマで会話ができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約2年半のレベル
- 出題範囲の単語数:約2600(医療に関する専門的な単語など)
- 手話を用いたコミュニケーションに全く問題がないレベル
- 学習期間の目安:手話を始めて約3年のレベル
- 出題範囲の単語数:約3500(社会問題や時事問題に関する専門的な単語など)
各級のレベルや試験内容は?【手話技能検定】
7級・6級・5級が初級
手話技能検定では、7~5級が初級とされています。7級では紙面に書かれた指文字を読み取る試験が、6~5級では映像から読み取る試験が行われます。各級の試験内容は以下の通りです。
- 指文字の基本形を利用した表現や読み取りができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約1か月(8時間)のレベル
- 出題範囲の単語数:動きのない指文字(五十音)
- 簡単なあいさつや日常会話の単語を読み取ることができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約3ヶ月(24時間)のレベル
- 出題範囲の単語数:動きのある指文字(濁点や長音など)に加え、約100の単語(あいさつや千の位までの数字、曜日や家族に関する簡単な名詞など)
- あいさつや自己紹介に加え、趣味など相手に簡単な質問をすることができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約6ヶ月(40時間)のレベル
- 出題範囲の単語数:約200(食べ物や場所、家族構成といった日常生活に関する基本単語など)
- 出題範囲の例文数:約30(「これは何ですか?」といった簡単な質問と応答など)
4級・3級が中級
また、4~3級が中級とされています。試験方法は6~5級と同様で、映像の読み取りを行います。各級の試験内容は以下の通りです。
- 接客の会話や数字の入った会話ができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約1年(80時間)のレベル
- 出題範囲の単語数:約500(保育園や喫茶店といった場所に関する単語など)
- 出題範囲の例文数:約100(「歩いて15分位です」といった数字を用いた表現など)
- 道案内や社会・学校生活、手話サークルでの会話ができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約2年(160時間)のレベル
- 出題範囲の単語数:約1000(キログラムや~秒、~日といった単位など)
- 出題範囲の例文数:約300(「2つ目の信号の左側にあります」といった道案内の表現など)
2級・1級が上級
さらに、2~1級が上級。6~3級と異なり、受験者自らが手話で表現することが求められます。試験では、試験前に通達されたテーマで手話スピーチをする課題文と、その場で与えられたテーマに合わせ即興で手話スピーチをするインプロンプトスピーチを行います。各級の試験内容は以下の通りです。
- 病院や学校生活といった日常生活や仕事場での会話ができる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約3年(240時間)のレベル
- 出題範囲の単語数:約2000(憲法や日本の省庁といった難易度の高い単語など)
- 出題範囲の例文数:制限なし
- あらゆる場面で高度で具体的な会話を自由にできる程度
- 学習期間の目安:手話を始めて約3年(240時間)以上のレベル
- 出題範囲の単語数:制限なし
- 出題範囲の例文数:制限なし
手話検定の勉強方法は?
動画を利用する
手話検定に合格するための勉強方法にはさまざまなものがあります。そのうちの1つが、動画を利用することです。手話の勉強を始める際、もっとも手軽に使いやすいのが動画でしょう。自分の好きなタイミングで繰り返し何度も見ることができるため、自分のペースで勉強を進めることができます。手話読み取り用DVDを利用するほか、YouTubeにも幅広いレベルの手話動画がたくさんあります。自分が勉強しやすい動画をぜひ探してみてくださいね。
講習会やサークルに参加する
また、講習会やサークルに参加することも有効な勉強方法です。実際に使われている手話に触れることで、動画では確認することが難しい細かい手や指の動きを覚えることができるでしょう。講習会やサークルはさまざまな地域で行われています。各自治体の福祉課に問い合わせることで、講習会やサークルの情報を入手することが可能です。お住いの地域の情報を探し、ぜひ講習会やサークルに参加してみてくださいね。
手話ニュースを視聴する
手話ニュースを視聴することは、実用的な手話を学ぶ上で非常に効果的です。特にニュースでは、日常生活や社会で実際に使われている手話表現を学ぶことができるため、教材動画では得られないリアルなコミュニケーションスキルが身に付くでしょう。ただし、手話ニュースで使用される手話は、すでに手話に慣れている人向けのため、スピードが速いことが多く、初心者には難しいと感じられるかもしれません。手話ニュースは、基礎をしっかり身に付けた上級者にとって、より実践的な学習手段と言えるでしょう。
通信教育講座を受講する
現在、多くの企業が手話を学ぶための通信教育講座を提供しています。プロの指導を受けることで、正確で丁寧な手話のスキルが習得でき、実際のコミュニケーションにおいても自信を持って手話を使うことができるでしょう。さらに、多くの講座では初心者から上級者までいくつかのレベルに分かれており、自分の現在のスキルや目標に合わせて、最適なカリキュラムを選ぶことが可能です。これにより、効果的かつ効率的な学習が期待できるでしょう。
学習本やテキストを利用する
市販されている手話学習本やテキストは、手話を学びたいと考えている初心者にとって非常に役立つツールです。これらの教材は、手話未経験者でも学習を始めやすく、基礎から応用まで幅広い内容をカバーしているため、自分のレベルや目的に応じて選ぶことができますよ。また、市販の教材は手軽に入手でき、自分のペースで無理なく学習を進めることができる点も大きな魅力です。忙しい日常の中でも時間を見つけて少しずつ手話の知識を深めていけるため、継続的な学習が可能となり、着実にスキルを向上させることができるでしょう。
試験範囲を集中的に学習する
手話検定を受験する直前には、試験範囲を集中的に学習しましょう。全国手話検定試験、手話技能検定ともにホームページで試験内容や出題範囲の単語一覧などが公開されています。試験内容が随時更新されたり、単語が追加や削除されたりすることがあるため、こまめな確認が必要です。2つの手話検定の試験内容や出題単語一覧は以下のページから確認できます。ぜひチェックしてみてくださいね。
全国手話検定試験 試験内容ページ
手話技能検定 試験内容ページ
保育士が手話検定を活かせる場面は?
ろう者の保護者や子供とコミュニケーションを取るとき
保育士が手話検定を取得し、そのスキルを活かすことのできる場面はいくつかあります。1つ目は、ろう者の保護者や子供とコミュニケーションを取るときです。保育士にとって、保護者とのコミュニケーションはとても大切なものです。保護者の耳が不自由な場合でも、直接会話ができるとより信頼関係を築くことができるでしょう。また、保護者がろう者であるという子供の中には、幼少期は声で話すことよりも手話で会話する方が得意な子もいるようです。手話を学んでいれば、そのような子供とも円滑なコミュニケーションを取ることができるでしょう。
子供たちに合図を出すとき
2つ目は、子供たちに合図を出すときです。身近に手話を使う人がいない場合でも、子供たちに視覚的な合図として利用することができます。例えば、絵本の読み聞かせの前に”はじまり”の手話を使うことで、これから始まることを視覚的に伝えたり、遊びの時間が終わる際に”おしまい”の手話を合図として使うことができます。言葉だけでなく視覚的にわかりやすい手話を取り入れることで、子供たちの注意を引きやすくなり、集中力を高める効果が期待できるでしょう。また、手話を使った合図は、子供たちが遊びながら自然に手話に親しむきっかけにもなります。
転職するとき
3つ目は、転職するときです。手話のスキルを活かすことができる仕事は多くあります。転職先の面接当日までに手話検定を合格した実績があれば、自身に手話のスキルがあることが証明できますよ。手話を使う仕事には以下のようなものがあります。
- 手話通訳士
- 福祉・介護職員
- 特別支援学校の職員
- 医療スタッフ
- 行政職員
まとめ
手話検定を取得してスキルアップしよう!
いかがでしたか?今回は、手話検定の試験内容や保育士が手話検定を活かせる場面など、手話検定について詳しく解説しました。手話は、耳の不自由な方々が日常生活を送るうえで欠かせない大切なコミュニケーションの手段。また、手話検定を取得することで、自分自身のスキルを高めることもできます。キャリアを考え、何か新しいスキルを身につけたいと考えている方は、手話検定の受験を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?