子どもが話しているときに、言葉を繰り返したり音を引き伸ばしたり、うまく声が出なくなったりする様子を見て不安を感じたことはありませんか。それは吃音症と呼ばれる症状かもしれません。吃音は決して珍しいものではなく、特に幼児期に多く見られる発話の特性の一つ。しかし、周囲の理解が十分でないと、子どもが自信を失ったり、話すことを避けるようになったりすることもあります。今回の記事では、吃音症の原因や症状の特徴、そして子どもへの適切な接し方などについてわかりやすく解説します。正しい理解を深め、子どもが安心して話せる環境づくりにつなげていきましょう。
吃音症とは
滑らかに発声できない症状のこと

吃音症とは、話そうとするときに言葉がスムーズに出にくくなる症状のことを指します。具体的には、最初の音を何度も繰り返してしまう、音が引き伸ばされる、言葉が詰まって声が出なくなるといった特徴がありますよ。本人はきちんと話そうとしているにもかかわらず、自分の意思とは関係なく発声が止まったり、繰り返したりしてしまうのが大きな特徴です。また、いつも吃音になるわけではなく、すらすら話せるときと話せないときがある人もいます。
吃音症の原因
体質的要因
吃音症の原因の一つとして、体質的な要因が挙げられます。近年の研究では、吃音には遺伝的な傾向があることが示されており、家族に吃音のある人がいる場合、発症の可能性がやや高まるといわれています。また、脳内で言語を処理する働きや、発声に関わる神経の伝達の仕組みが影響している可能性も指摘されていますよ。これは本人の努力や気持ちの問題ではなく、生まれ持った特性の一つと考えられています。そのため、話し方の癖や甘えといった誤解を持たず、体質的な背景があることを理解することが重要です。
発達的要因
吃音症は、特に2〜5歳頃の言語発達が著しい時期に多く見られます。この時期は語彙が急速に増え、自分の気持ちや考えを伝えようとする一方で、発声や言語処理の能力がまだ十分に追いついていないことがあります。その結果、言葉がうまくつながらず、繰り返しや詰まりが生じることがありますよ。多くの場合は成長とともに自然に改善しますが、言語発達の過程で一時的にバランスが崩れることが吃音につながると考えられています。子どもの発達段階を踏まえ、焦らず見守る姿勢が大切です。
環境要因

家庭や園・学校などの環境も、吃音の出やすさに影響を与えることがあります。例えば、急かされる場面が多い、話すことに強いプレッシャーを感じる、叱責や否定的な反応が多いといった環境では、緊張や不安が高まり症状が強くなることがあります。ただし、環境が直接の原因というよりも、もともとの体質や発達的要因に影響を与え、症状を強める要素として働くことが多いとされていますよ。安心して話せる環境を整え、ゆっくりと耳を傾ける姿勢が、子どもの負担を軽減することにつながります。
吃音症の分類
発達性吃音
発達性吃音は、幼児期から学童期にかけて発症することが多い吃音のタイプです。特に2〜5歳頃の言語発達が著しい時期に見られることが多いです。語彙や表現力が急速に伸びる一方で、発話をコントロールする機能が追いつかないことが背景にあると考えられていますよ。最初の音を繰り返す、音を引き伸ばす、言葉が詰まるといった症状がみられます。多くは成長とともに自然に軽減しますが、一部は思春期以降まで続くこともあります。本人の努力不足ではなく、脳の言語処理や神経の働きなど複数の要因が関係しているとされていますよ。
獲得性吃音
獲得性吃音は、それまで問題なく話せていた人がある出来事をきっかけに吃音の症状を示すようになるタイプです。脳卒中や頭部外傷などの脳の損傷が原因となる神経原性吃音と、強い心理的ストレスや心的外傷体験が関係するとされる心因性吃音に分けられることがあります。発症年齢はさまざまで、成人してから現れる場合もありますよ。突然症状が出ることが多いため、原因の特定や専門的な評価が重要になります。
吃音症の症状
①繰り返し(連発)

吃音症の症状は3つに分けられます。その一つに、繰り返し(連発)があります。これは発そうとした言葉の一音を何度も発声してしまう症状で、例えば「おはよう」と言おうとすると「お、お、お、おはよう」のようになってしまうのです。吃音を発症し始めたときによくみられる症状であり、本人には自覚がないこともありますよ。まずはこの連発の症状が発症して、次に難発の症状に移行していくというパターンが多いようです。
②引き伸ばし(伸発)
引き伸ばし(伸発)という症状があります。これは発そうとした言葉の一部を引き伸ばしてしまう症状で、例えば「おはよう」と言おうとしたとき、「おーーーはよう」となってしまいます。この症状も吃音の症状が出始めた最初の方で起こり、その後難発へと移行していきますよ。また、この伸発の症状も、連発の症状と同じように本人に自覚がないことがあります。また、この伸発の症状は連発と同時にでることもあります。この場合は「こ、こ、こーーんにちは」のように、混ざり合ってさらに発音が困難になりますよ。
③間が開く(難発)
難発とは、言いたい言葉があってもつかえてしまい、無声の状態になってしまう症状のこと。例えば「おはよう」と言いたくても初めの1音が出てこないので、「………おはよう」となってしまいます。難発が起きている間は、本来発音中は開いているはずの声帯が閉じた状態になっています。吃音は、連発や伸発から始まり難発に進んで行くので、成人で吃音に悩む方は難発の症状に苦しむことが多いですよ。
吃音症のチェックリスト
言葉の繰り返しや引き伸ばしなど

もし子どもが吃音症かもしれないと感じたら、次のチェックリストを参考にしてみましょう。あくまで目安ではありますが、当てはまる項目が5つ以上ある場合は、一度かかりつけ医や小児科などの専門機関に相談してみると安心です。
・言葉の引き延ばしがある
・言葉のつまり(難発)がある
・話しているときに緊張が見られる
・体を動かしながら話す
・顔をしかめながら話す
・話す場面を避けているように見える
・うまく話せないことを恥ずかしく感じているように見える
・発音が苦手な音がある
・相手によって言葉が出にくいことがある
・1日の中、または1週間の中で話しやすいときと話しにくいときの差がある
・他者から発音や話し方について指摘されたことがある
・近親者に吃音の経験がある人がいる
・吃音症状が出始めたきっかけがある
・単語の途中で言葉が止まることがある
吃音症の治し方
子どもの7~8割は発症後3年で自然治癒する
吃音症は治療法や原因が詳しくわかっていない病気ではありますが、心配しすぎることはありません。なぜなら、吃音症の子どもの7割から8割は自然治癒するからです。これは、子どもの吃音症のほとんどが発達性吃音と言われているためです。発達性吃音とは、子どもの認知能力や言語能力が急速に発達し、流暢に話そうとするときに言葉を探したり言い直したりすることが原因であるとも言われていますよ。そのため子どもの成長とともに自然治癒していくのです。
子どもが話しやすい環境を整える

吃音症を治すには話しやすい環境を整えることが重要です。吃音症で病院に行く子どもの4分の1は不登校とも言われています。環境によって吃音の症状が現れている可能性があるので、一度見直してみてくださいね。例えば、保育園の中に吃音症の子どもが喋っているときにからかってくる子どもはいませんか?もしそのような子どもがいれば、保育士から個別に指導をしましょう。また、子どもが褒められたと感じる機会を増やすことも効果的です。
言語聴覚士による話し方のトレーニングを受ける

吃音症を治すために、言語聴覚士によるトレーニングを受けることも有効です。実際に言語聴覚士によって行われる訓練方法の1つである、DCMについて紹介します。この訓練方法は、吃音症の子どもと関わる大人が意図的にわかりやすい言葉を使って会話するというものですよ。例えば、何か質問をするときは「今朝は何を食べたの?」と聞くより、「今朝はご飯とパンどっちを食べたの?」と、選択肢を作るように意識します。選択肢があった方が、質問された子どもは頭の中で文章を組み立てることが容易になり、話しやすくなります。
吃音症の子どもへの接し方
ゆっくり短文で話す

吃音症のある子どもと関わるときは、周囲の大人がゆっくりと落ち着いたペースで、できるだけ短い文章で話すことが大切です。大人が早口で長い説明をすると、子どもは早く答えなければと焦りを感じやすくなり、症状が強まることがあります。反対に、ゆったりとした話し方は安心感を与え、自然と子どもの発話のペースも整いやすくなりますよ。また、質問も一度にいくつも重ねるのではなく、一つずつ簡潔に伝えるようにしましょう。
話を遮らず最後まで聞く
子どもが言葉に詰まったり繰り返したりしても、途中で言葉を補ったり、代わりに言い直したりせず、最後まで静かに耳を傾けることが重要です。善意から助けようとして言葉を先回りすると、自分では話せないと感じさせてしまうことがあります。沈黙があっても焦らず待つ姿勢は、子どもの安心感と自己肯定感を守りますよ。また、話し終えたあとには内容に目を向けて返答し、きちんと伝わったという経験を積ませることが大切です。
吃音症の子どもにやってはいけないこと
からかうこと
吃音のある子どもに対して話し方をまねしたり、面白がって笑ったりすることは絶対にしてはいけません。たとえ軽い冗談のつもりであっても、本人にとっては深い傷となり、話すこと=恥ずかしいことという意識を強めてしまいます。その結果、人前で話すことを避けるようになったり、自信を失ったりすることがあります。周囲の大人や友だちが正しい理解を持ち、からかいを見過ごさずに止めることが大切ですよ。
プレッシャーをかけること

「ゆっくり話しなさい」「ちゃんと言いなさい」といった言葉は、一見すると励ましのように聞こえますが、子どもにとっては大きなプレッシャーになることがあります。吃音は本人の意思でコントロールできるものではないため、指摘されるほど緊張が高まり、かえって症状が強くなることがあります。また、人前での発表を無理に強いる、急いで答えるよう求めるといった対応も負担を増やしますよ。大切なのは、うまく話すことを求めるのではなく、安心して話せる環境を整えること。焦らせず、結果ではなく気持ちや努力を認める関わりが、子どもの心の安定につながります。
まとめ
吃音症の子どもが自信を持って話せるようにサポートしよう

いかがでしたか。吃音症のある子どもにとって大切なのは、うまく話すことよりも安心して話せることです。周囲が症状を正しく理解し、急かさず、からかわず、最後まで丁寧に耳を傾ける姿勢を持つことで、子どもは少しずつ自信を育んでいきます。話し方ではなく、伝えようとしている内容や気持ちを受け止めることが、自己肯定感を支える土台になりますよ。家庭や園が連携し、子どもが安心できる環境を整えることも重要です。焦らず見守りながら、成功体験を積み重ねていくことで、子どもは話すことへの前向きな気持ちを取り戻していきます。

