皆さんは、児童発達支援施設で働く保育士の仕事にどのようなイメージを持っていますか?児童発達支援とは、障害のある子どもに対してサポートを行う福祉サービスです。児童発達支援施設では保育園よりも少人数の子どもと関わるため、一人ひとりに向き合うことができますよ。今回の記事では、児童発達支援施設の種類や仕事内容、やりがいなどを紹介していきます。ぜひ、今後のキャリア形成の参考にしてみてくださいね。
児童発達支援とは
障害のある子どものサポートを行う

児童発達支援とは主に、障害のある未就学児を対象に、日常生活の基本的な動作やコミュニケーションの力を育てるための支援を行う福祉サービスを指します。また、厚生労働省の児童発達支援では以下のように定められています。
「児童発達支援は、児童福祉法第6条の2の2第2項の規定に基づき障害のある子どもに対し、児童発達支援センター等において日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供するものである。」
具体的には身体障害や知的障害、発達障害のある子どもが対象です。通所する際には必ずしも障害手帳が必要というわけではありません。児童相談所や医師に療育が必要と診断された場合でも利用することが可能です。
児童発達支援施設の種類
児童発達支援事業所
児童発達支援事業所は、障害のある未就学児を対象に、慣れ親しんだ地域で療育サービスを提供する施設です。基本的には通所型で、個別の支援計画に基づき遊びや学習、運動などを通して社会性やコミュニケーション能力を伸ばすための活動が行われます。保護者との連携も重視されており、子どもだけでなく家庭を支える役割も担っていますよ。児童発達支援事業所は保育園や幼稚園と並行して利用することが可能です。また、子どもの発達段階や課題に対して柔軟に応じ、子どもに寄り添った支援を提供しています。
児童発達支援センター
児童発達支援センターは児童発達支援事業所と同様のサービスに加え、より専門性の高い支援や地域の中核的な支援機関としての役割を担う施設です。児童発達支援センターは大きく分けて福祉型と医療型があり、それぞれ以下のような特徴があります。
福祉型児童発達支援センターは、医療的な処置を必要としない子どもを対象とした施設で、主に日常生活に必要な力や社会性を育てる支援を行います。保育士や児童指導員、心理士などの専門スタッフが、個々の発達段階に合わせた活動を通じて、子どもの成長を支援します。また、保護者への支援や地域の保育施設との連携も行い、家庭や地域全体で子どもを支える体制を築いていきますよ。
・医療型
医療型児童発達支援センターは、医療的ケアや治療を必要とする子どもを対象とし、医師や看護師、理学療法士や作業療法士など、医療の専門職が支援にあたります。発達の支援に加えて、診察やリハビリなどの医療サービスを受けられる点が特徴です。
放課後等デイサービス

放課後等デイサービスは、小学生から高校生までの障害のある子どもたちを対象に、学校の授業が終わった後や長期休暇中に利用できる福祉施設です。放課後の時間を有効に活用しながら、子どもたちの自立や社会性を育てるための活動が行われます。例えば、集団活動や学習支援、生活訓練や創作活動などを通じて、子どもが自分らしく成長できるようサポートします。また、保護者の就労支援や家庭の負担軽減にもつながる存在として、多くの家庭にとって心強い支えとなっていますよ。
児童発達支援施設での仕事内容
本人支援

児童発達支援施設では、まず中心となるのが子ども本人への支援です。一人ひとりの発達段階や特性に合わせて、日常生活動作(ADL)の練習や言葉のやりとり、集団での過ごし方など、基本的な生活スキルや社会性を育てる支援を行います。遊びや創作活動を通じて「楽しい!」という気持ちを引き出しながら、子どもの可能性を伸ばすことを目的としていますよ。また、発達の記録や観察をもとに個別支援計画を作成し、継続的かつ丁寧に関わることで、子どもが安心して通える環境を整えます。
移行支援
子どもが次のステップへ進むための移行支援を行うことも、児童発達支援施設の大切な役割です。例えば、保育園や幼稚園への入園、小学校への入学など、子どもが新しい環境でもスムーズに適応できるように、必要な準備やサポートを行います。具体的には、子どもの支援計画の見直しや関係機関との連携を図ることが挙げられます。こうした準備やサポートにより、無理のない移行が実現できるのです。また、移行先の施設との情報共有や、子どもの状態についての報告と引き継ぎも行われ、切れ目のない支援体制が築かれています。
家族支援

子どもの発達を支えるうえで、家族への支援も非常に重要です。児童発達支援施設では保護者との面談や家庭訪問、子育て相談などを通して、子どもの成長や課題について共に考え支え合う関係を築いていきます。保護者が抱える不安や悩みを丁寧に聞き取り、必要に応じて支援機関を紹介したり、日常生活での関わり方のアドバイスを行ったりしますよ。また、保護者同士の交流の場をつくることで、同じような立場の人たちとつながり、孤立感を減らすことも目指しています。
地域支援
児童発達支援施設は、地域における発達支援の拠点としての役割も担っています。保育園や幼稚園、学校との連携を通じて、地域全体で子どもを見守る仕組みを築いていきます。また、発達に課題を抱える子どもについて理解を深めてもらうために、地域住民や関係者向けに講演会や研修会を行うこともありますよ。地域支援では、発達支援の専門性を活かしながら、地域の子どもたちがよりよく育っていけるような環境づくりを目指しています。
児童発達支援施設で働く職種
児童発達支援管理責任者
児童発達支援管理責任者は、施設全体のサービス提供の中核を担う職種です。利用する子ども一人ひとりのアセスメントをもとに、個別支援計画を作成し、保護者やスタッフと連携しながら管理と指導をします。また、スタッフの育成や関係機関との連絡調整なども行いますよ。児童発達支援管理責任者は児童発達支援施設で必ず1名以上配置されています。児童発達支援施設の運営や支援の質を高めるうえで、欠かせない存在と言えるでしょう。
保育士

保育士は、個別支援計画に基づき、子どもたち一人ひとりに適した療育を行う専門職です。児童発達支援施設では、遊びや集団活動、基本的な生活習慣の指導を通じて、子どもの心身の成長を促します。また、発達に課題のある子ども一人ひとりの特性に合わせた関わりと、きめ細かな配慮が必要不可欠です。さらに、保護者との連携も大切な業務のひとつであり、信頼関係を築いていきながら子どもたちの支援を行いますよ。
児童指導員
児童指導員は保育士と同じように、個別支援計画に基づきながら子どもたち一人ひとりに適した療育を行う専門職です。指導や育成計画の立案、生活環境の整備、保護者や学校・関係機関との連携など、幅広い役割を担います。また、学習やスポーツを通じて社会性を育む支援も行い、他職種と連携して療育プログラムの企画や実施にも関わりますよ。児童発達支援施設において児童指導員は、子どもたちが安心して成長できる環境を整えるうえで重要な存在です。施設によっては子どもの送迎が業務に含まれる場合もあります。
機能訓練担当職員
機能訓練担当職員は、発達に課題のある子どもたちに対して身体の動きや言語などの機能訓練を行う専門職です。機能訓練担当職員の対象は、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などの国家資格保有者および心理指導担当職員です。日々の活動にリハビリ要素を組み込み、遊びながら体を動かしたり言葉を発したりする中で、子どもの可能性を引き出します。他の職種とも連携しながら、日常生活に必要な力を育てて自立への一歩をサポートしますよ。医学的な視点を取り入れた支援が求められる、非常に専門性の高い職種です。
嘱託医・看護師

嘱託医および看護師は、児童発達支援施設で子どもたちの健康と安全を守る大切な役割を担います。嘱託医は定期的に施設を巡回し、健康診断や医療的な助言を行い、子どもや職員が安心して活動できるように支援します。看護師は医療的ケアが必要な子どもに対して、日々の体調管理や服薬、緊急時の対応などを行いますよ。また、職員への衛生指導や感染症対策の立案などにも携わります。児童発達支援センターでは1名以上の嘱託医を配置する必要があります。う意図があるためだと思われます。
保育士が児童発達支援施設で感じるやりがい
子どもたち一人ひとりと丁寧に向き合える
児童発達支援施設では、少人数制で支援が行われるため、子どもたち一人ひとりにしっかりと向き合うことができます。発達のスピードや特性がそれぞれ異なる子どもたちに対して、個別に合った関わりを考えながら支援する中で、小さな成長の変化に気づくことができます。日々の関わりの中で、できなかったことができるようになった瞬間や、笑顔が増えていく様子を間近で見ることができるのは、大きなやりがいですよね。子どもたちとの信頼関係が深まるごとに、自分の存在が子どもの安心感につながっていることを実感できます。
療育の知識や経験を身につけられる
児童発達支援施設では発達障害や言語、運動に課題を持つ子どもたちに対して支援を行うため、保育士も療育に関する専門知識や技術を身につけることができます。療育プログラムの立案や個別支援計画の作成に関わる機会も多く、日々の実践を通じて支援の引き出しが増えていきます。さらに、理学療法士や言語聴覚士などの他職種と連携することで、多角的な視点から子どもを支える力も育まれますよ。こうした経験は、保育士としての専門性を深める機会になるでしょう。
保護者との信頼関係を築ける

保育士は、子どもだけでなく保護者とも密接に関わります。発達に課題のある子どもを育てる保護者は、不安や悩みを抱えていることが多く、保育士の声かけや日々のコミュニケーションが心の支えになることも少なくありません。子どもの成長を一緒に喜び合いながら信頼関係を築いていく中で、「先生に出会えてよかった」と言ってもらえる瞬間は、保育士にとって大きな励みになります。家庭との連携を通じて、より効果的な支援ができることもこの仕事の魅力の1つです。
経験を積むことでキャリアアップできる
児童発達支援施設での経験は、保育士としての専門性や視野を大きく広げることができます。療育や個別支援計画に関わることで実務経験を積み、将来的には児童発達支援管理責任者などの上位職へのステップアップも目指せます。また、心理学や特別支援教育など、関連する分野の資格取得にも役立つ経験が多いため、保育の枠を超えて幅広いキャリアパスを描くことができますよ。成長を実感しながら働ける環境が整っている点も、保育士にとって大きなやりがいとなります。
まとめ
児童発達支援を通して保育士としての能力を高めよう

いかがでしたか。児童発達支援施設での保育士は、発達に特性のある子どもたち一人ひとりと向き合いながら、丁寧な支援を行います。個別支援計画に基づいた関わりや、多職種との連携を通じて、保育士としての視野やスキルを大きく広げることができます。また、療育の知識や実践経験は、今後のキャリアアップにもつながりますよ。子どもの成長を支えるやりがいを感じながら、自分自身も学び成長していくことができます。これらを踏まえて児童発達支援施設の仕事にもチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。