なぜか子どもがずっと同じ行動を繰り返している、と感じた経験はありませんか?もしかしたら、特定の目的を持たずに同じ動作を繰り返す、常同行動かもしれません。常同行動が見られやすい子どもにはそれぞれ異なった原因があり、対処法も異なります。今回の記事では、子どもの常同行動について、常同行動が現れやすい子どもやなぜ行うのか、問題になる場面や治療法などを詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
子どもの常同行動とは?
目的を持たずに同じ動きを繰り返す行動

子どもの常同行動とは、特定の目的を持たずに同じ動作を繰り返す行動を指します。例えば、手を振る、体を揺らす、指を噛む、髪を触るなどがあり、発達過程で自然に見られることもあります。特に、自閉スペクトラム症などの発達障害のある子どもに現れることが多く、刺激を調整したり、不安を和らげたりする目的で無意識に行われることが多いです。過度な場合、生活や学習に影響を及ぼすこともあり、環境調整や適切な対応が求められますよ。
常同行動が現れやすい子どもとは?
発達の過程にある子ども

幼児期の子どもは、世界の仕組みを学ぶ過程で、同じ行動を繰り返すことがよくあります。
・決まったルーティンにこだわる
・特定の動作を何度も行う
などが見られます。これは、予測可能な環境を作ることで安心感を得たり、運動能力や認知スキルを発達させたりするための自然な行動です。また、模倣を通じて社会性を学ぶ段階でもあるため、身近な人の行動を繰り返すこともあります。成長とともに行動の幅が広がり、次第にこだわりは減っていくことが多いですよ。
ストレスや不安を感じている子ども

子どもは環境の変化や心理的なプレッシャーを受けると、不安を和らげるために常同行動を示すことがあります。
・髪を触る
・貧乏ゆすりをする
・同じ言葉を繰り返す
などの行動が見られます。これらは、心を落ち着かせたり、安心感を得たりするための自己調整の手段として自然に発生します。特に、新しい環境や人間関係のストレス、緊張感のある場面などで強く現れる傾向ですよ。子どもが抱えるストレスの原因を取り除いたり、安心できる環境を整えたりすることで、こうした行動が減少することが多いです。
自閉スペクトラム症の子ども

自閉スペクトラム症の子どもは、感覚刺激に対する敏感さやこだわりの強さから、常同行動がよく見られます。
・同じ言葉を繰り返す
・物を一定のパターンで並べる
・体を揺らす
などの行動があります。これらは、不安を軽減するためや、感覚の調整を行う目的で発生します。また、予測できない状況に対する適応が難しいため、決まったルールや習慣を守ることで安心感を得ようとすることもあります。周囲が子どもの特性を理解したうえで過度に制止せず、子どもに寄り添った対応をすることが重要です。
自閉症に見られる1つであるこだわり行動についての詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください!
ADHDの子ども
注意欠如・多動症(ADHD)の子どもは、多動性や衝動性が強いため、常に体を動かし続ける傾向があります。
・指をトントンと叩く>br> ・椅子の上で体を動かし続ける
・無意識に物を触る
などの行動が見られます。これらの行動は、エネルギーを発散したり、集中力を維持したりするための無意識な手段となることが多いです。特に、静かにしなければならない場面では、余計に動きが目立つかもしれませんね。子どもの行動を無理に抑え込むのではなく、適度に体を動かせる環境を作ることが、より良い対応につながります。
ADHDの子どもに対する療育についての詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください!
知的発達に遅れのある子ども
知的発達に遅れがある子どもは、新しい環境や状況に対する適応が難しく、同じ行動を繰り返すことで安心感を得ようとすることがあります。
・同じ言葉や動作を何度も繰り返す
・決まった行動パターンを崩さないようにする
などが見られますよ。これは、自分にとって理解しやすい世界を作るための手段であり、予測できる行動をとることで安心感を得るためです。周囲の人が丁寧に関わりながら子どもに適した環境を整えて、新しい経験にも無理なく適応できるように支援することが大切ですね。
なぜ子どもは常同行動を行うのか?
何かを訴えている

子どもは言葉で気持ちを表現することが難しいとき、常同行動を通じて訴えかけることがあります。例えば、欲求不満や不快感、注目を引きたい気持ちがある場合に、特定の動作を繰り返すことで周囲に気づいてもらおうとするのです。この行動を無視してしまうと、常同行動がさらに強く表れることがありますよ。子どもの様子をよく観察して、何を伝えようとしているのかを汲み取り理解することが大切です。適切に対応することで、常同行動が落ち着くこともあります。
ストレスや不安の軽減

子どもはストレスや不安を感じたとき、常同行動を行うことがあります。同じ動作を繰り返すことで気持ちを落ち着かせて、安心感を得ようとするのです。例えば、指を噛む、体を揺らすなどの行動が、環境の変化やプレッシャーを感じた際に現れることが多い傾向ですよ。このような行動をとる背景を理解して、安心できる環境を整えることが重要です。また、過度に注意すると逆効果になることもあるため、無理にやめさせる必要はありません。
退屈やエネルギーの発散
子どもは退屈を感じたり、余ったエネルギーを発散したりするために常同行動を行うことがあります。遊びや運動が不足していると、無意識に手足を動かすことが増えます。例えば、長時間机に向かっているときや刺激が少ない環境では、特に顕著に現れる傾向です。この場合の常同行動は、脳を活性化させたり集中力を維持したりするために、無意識に行っていると考えられています。そのため、適切に発散できる環境を作ることで軽減することができますよ。適度に体を動かす機会を作り、日常的に遊びや運動を取り入れてみましょう。
習慣としての定着
子どもの常同行動が特に明確な理由がなくても続く場合は、それが単なる習慣になっている可能性があります。例えば、寝る前に特定の動きをする、食事中に特定のリズムでスプーンを動かすなど、無意識のうちに行動が固定化することがありますよ。この場合、最初は不安の軽減や興味から始まった行動でも、繰り返すうちに日常の一部となり、特に理由がなくても続けていることが多いです。このように習慣化した常同行動は、成長とともに自然と治まる傾向です。そのため、無理にやめさせる必要はありません。
子どもの常同行動が問題になる場面
日常生活に支障をきたしている

子どもの常同行動が問題になると、日常生活の基本的な活動に支障をきたすことがあります。例えば、繰り返し行う行動に集中しすぎることで食事や睡眠、学校生活などに影響を及ぼし、生活リズムが乱れる場合がありますよ。これにより、他の活動に必要な時間やエネルギーが奪われ、成長や学習の機会が減少してしまうことが考えられます。こうした日常生活における問題行動が長期的に続けば、家庭内の秩序も乱れ、生活全体が不安定になる可能性があります。
社会性や対人関係に影響を与えている

常同行動は、子どもの社会性や対人関係にも大きな影響を与えることがあります。例えば、常同行動が適さない場面でもやめられない場合、周りの子どもたちから不審がられてしまい円滑にコミュニケーションが取れなくなる可能性があります。その結果、友達との関係が思うようにいかないことがありますよ。また、集団生活に適応できない場合が増え、学校や遊びの場で孤立してしまうこともあります。このような影響が続くと、自己肯定感の低下や社会的スキルの成長が遅れる可能性があるため、早期から大人の介入が必要です。
他者や本人に危害や損害を及ぼしている
常同行動が強くなると、子どもや周囲の人に危害や損害を及ぼすことがあります。例えば、過度の興奮から無意識に物を壊したり、人にぶつかったりすることで他人を傷つける場合があります。また、自傷行為や強い刺激を求める行動があると、自分自身の安全が危うくなることもあります。これらの行動が頻繁に見られると、家族や周囲の人々にとってもストレスや不安の原因となるので、問題行動の早期対応が求められます。
子どもの常同行動の治療法
環境の調整

子どもの常同行動の治療法として、環境の調整が挙げられます。まず、静かで落ち着いた場所を提供して過剰な刺激を避けることで、子どもが集中しやすい環境を作ります。また、規則正しい生活リズムを保ち、予測可能な日常を提供することも効果的です。さらに、子どもが安心できるルーチンを作り、突然の変更を避けることで、ストレスを軽減して常同行動の頻度を減少させることができます。こうした環境の整備は、行動改善に向けた第一歩となりますよ。
置き換え行動
置き換え行動は、子どもの常同行動を改善するために有効な治療法の一つです。この方法では、子どもが繰り返し行う問題行動の代わりに、適切で社会的に受け入れられる行動を教えます。例えば、物を叩く代わりに手を組む、過剰な歩き回りをする代わりに絵を描くことに置き換えるなど、子どもの興味や能力に応じた行動を提案します。置き換え行動を通じて、子どもは自分の欲求を満たしながら他者との関わり方を学び、社会適応力を高めることができますよ。
行動療法
行動療法は、子どもの常同行動に対する効果的な治療法の一つです。この治療法では、望ましくない行動を減少させるために、報酬や罰を使って行動を変えることを目指します。具体的には、子どもが適切な行動を取った場合には褒めたり報酬を与えたりします。逆に不適切な行動を取った場合には、注意を引かないようにしたり、罰を与えたりします。この行動療法は、子どもの理解度や環境に合わせて柔軟に行えるため、個別対応が可能であり効果的と言えるでしょう。
感覚統合療法
感覚統合療法は、子どもの常同行動を改善するために使用される治療法の一つです。この治療法は、感覚入力(視覚、聴覚、触覚、運動感覚など)を調整し、脳が適切に処理できるようにサポートします。感覚過敏や感覚鈍麻が関係する常同行動の問題を軽減する働きがあり、子どもの行動や情緒の安定を促します。また、社会適応能力を高めることができますよ。感覚統合療法は、遊びを通じて行われます。子どもにとって負担が少ない環境で、楽しみながら参加できますね。
まとめ
子どもの常同行動には落ち着いて対処しよう

いかがでしたか。今回の記事では、常同行動が現れやすい子どもの特徴や常同行動をする理由、問題になる場面や治療法などを解説しました。子どもが同じ動作ばかり繰り返しているのを見て、すぐにやめさせたり叱ったりしてしまいそうになるかもしれません。しかし、常同行動をする子どもたちには、一人ひとりに理由があります。周りの人たちは、その理由を理解したうえで落ち着いて対処をしましょう。子どもの特性に合わせて、今回ご紹介した治療法をぜひ実践してみてくださいね。