子どもの摂食障害は、年齢や発達段階に関係なく、深刻な健康問題として注目されています。近年、ストレスや社会的な環境変化、家族の問題などが影響し、幼い子どもや思春期の子どもたちにも摂食障害の兆候が見られることが増えています。摂食障害は単に食事に関する問題だけではありません。心身の健康や発達にもに大きな悪影響を与える可能性があるため、早期の発見と適切な対応が重要です。この記事では、子どもの摂食障害の症状や原因、発達に及ぼす悪影響や入院目安について紹介していきます。
子どもの摂食障害の症状
食べ物に全く関心を示さない

子どもの摂食障害には、食べ物に全く関心を示さないという症状が見られることがあります。例えば、ARFIDと呼ばれる制限的摂食障害では、食事に対する興味や関心が非常に少なく、食べることに対して無関心になることがあります。食べ物の味や食感に強い嫌悪感を抱いているわけではありません。単純に食べ物に対する興味が著しく欠如しているのです。また、食べ物に対する無関心の原因に抑うつ症状や心理的ストレスが影響している場合、子どもは自身のエネルギーや関心を食べ物に向けられず、食事に対して無関心になることもあるようです。
食べ物を吐き出す

子どもが食べ物を吐き出すことも、摂食障害の症状として挙げられます。特に神経性過食症の場合や、拒食症の初期段階では、食べ物を吐き出す行動が現れる傾向です。この行動は、食べることに対する強い不安や恐怖、体重増加に対する過度な心配などが原因とされており、無意識的に食べ物を吐き出してしまうのです。また、食事自体に強いストレスを感じている場合も、食べ物をうまく飲み込めずに吐き出してしまうことが少なくありません。
特定の食べ物しか食べない

極端に特定の食べ物しか食べないという症状が現れる場合もあります。例えば、特定の食材や味、色、食感に強いこだわりがあり、それ以外の食べ物には手をつけない、あるいは食べられないという状態が見られます。単に好き嫌いだけの問題ではなく、成長や健康に悪影響を与えるほど栄養が偏った食事しか取れない状態が続くのが、摂食障害の症状です。この症状が長引くと、体重の減少や発育の遅れ、体調不良などを引き起こして健康に問題が生じる可能性がありますよ。
食べ物ではない物を食べる

子どもの摂食障害の症状として、土や石、髪の毛や紙、クレヨンなど食べ物ではない物を食べる症状が見られることがあります。これは異食症と呼ばれ、発達障害や栄養不足が原因で起こるとされています。1~2歳くらいまでの子どもは、さまざまな物を手で触ったり口に入れたりして確認することがよくありますよね。しかし異食行動が頻繁に見られたり、2歳を過ぎても異食行動が続く場合は注意が必要です。身体に悪影響を与える可能性が高いため、医療機関に相談するようにしましょう。
過剰な量を食べる

過剰な量を食べる過食症も、幼少期の摂食障害としてあてはまります。過食症とは、短期間に大量の食べ物を摂取し、その後強い罪悪感や不安を感じる状態を指します。大人に多い摂食障害の症状の1つですが、子どもにも見られることがありますよ。例えば、両親の喧嘩や家庭環境に対する不安を打ち消すために、食べ物に依存する場合があります。また、親が食べ物に対して過剰に制限を加えたり、ご褒美として過度に食べ物を利用することで、過食症を引き起こすこともあります。体重の急激な増加が見られたり、食べ物への強い執着によって他の活動が後回しになる状態が続いたりする場合は注意しましょう。
子どもが摂食障害になる原因
過度なダイエット

子どもが摂食障害を発症する原因には、過度なダイエットや食事制限が挙げられます。子どもや若者がダイエットを始める背景には、社会的な圧力や美的基準に対する過剰な意識が影響することが多いです。近年は、テレビやSNSなどでスリムな体型が美しさの基準として強調されることが多いですよね。これは、子どもが体型に対して過度に敏感になりやすい環境と言えます。スリムが美しいという概念を強く意識するあまり、食事を制限したり食べ物に強い罪悪感を感じたりする状況が続くと、拒食症や過食症に繋がることがあります。また、子どもに対して保護者が容姿を批評する発言をしたり、家庭内でダイエットが当たり前の習慣になっていたりする場合も、注意が必要ですよ。
食事に関するトラウマ

食事に関するトラウマが摂食障害の原因になることもあります。特に、虐待やネグレクトを受けた過去がある子どもが摂食障害になることは少なくありません。例えば、食事が十分に与えられなかったり、強制的かつ暴力的に食事が与えられていたりする場合、食べ物に対して強い恐怖や罪悪感を抱くことがあります。日常的に虐待が行われていなくても、食事に関するネガティブな出来事が摂食障害のきっかけになることがあるのです。
環境へのストレス
家庭や学校など、子どもが過ごす生活環境で抱えるストレスが原因となり、摂食障害を発症することもあります。例えば、両親の喧嘩や離婚、経済的な問題や家族間での過度なプレッシャーなど、食事に直接関係しない場合でも家庭環境のストレスは摂食障害になるリスクを高めます。また、学校でのいじめや友達との不和などによって苦悩した際に、食事でストレスを発散しようとして摂食障害になってしまう子どももいますよ。
摂食障害が引き起こす発達への悪影響
低身長症

ここからは摂食障害が引き起こす発達への悪影響を紹介していきます。摂食障害の中でも特に拒食症が長期間続くと、成長に必要なエネルギーが得られないため、発育や身長の伸びに深刻な影響を与えることがあります。成長期の子どもや若者は、十分な栄養が体に供給されることで心身が健やかに発達しますよね。しかし、摂食障害の影響によりカルシウムやタンパク質、ビタミンDなどの骨の成長に必要な栄養素が不足すると成長ホルモンの分泌が妨げられてしまい、身長の伸びが止まってしまう恐れがあるのです。こうしたことから、摂食障害の子どもは低身長症を発症するリスクがあると言われています。
骨粗鬆症

摂食障害の子どもは、骨粗鬆症になる可能性も高いと言われています。摂食障害になると、発達に必要な栄養をバランス良く食事で摂取することが困難です。特に、カルシウムやビタミンDなど、骨の成長に必要な栄養素を食事で十分に得ることができません。そのため、骨密度が低下して骨がもろくなる骨粗鬆症を発症するリスクが高まるのです。拒食症などによって体重が急激に減少した場合も骨の密度が減少するため、将来的に骨折のリスクも高まってしまうでしょう。
無月経

摂食障害が引き起こす重大な悪影響として、月経が停止する無月経も挙げられます。特に、思春期の女子が摂食障害を発症した場合に現れやすい症状です。拒食症や過度なダイエットが原因で栄養状態が悪化すると、体がエネルギー不足を感じてしまい、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下します。エストロゲンの分泌が低下することにより月経が止まってしまうのです。こうした無月経が続くと、骨密度の低下や骨粗鬆症のリスクが高まるだけでなく、発育や生殖機能に深刻な悪影響を与えるでしょう。
子どもの摂食障害はどうやって気づく?
食べ方の変化

摂食障害の深刻化を防ぐためには早期発見が大切です。では、どのようなきっかけで子どもの摂食障害に気づくことができるのでしょうか。子どもの摂食障害に気づくきっかけとして、子どもの食べ方の変化が挙げられます。例えば、極端に食事の量が増減したり、食べる時間が短くなったりした場合は特に注意しましょう。また、食べ物を非常に細かく切ったり、食べる順番に絶対的なルール設けたりなど、食べ方に対して過剰なこだわりを見せる場合も、摂食障害の兆候である可能性が考えられます。
体重の変化

摂食障害の兆候としては、体重の急激な増減も挙げられます。服のサイズや体型に急激な変化が見られたら、拒食症や過食症の傾向がないか確認しましょう。適切な栄養バランスで食事を摂っている場合、成長期の子どもは徐々に体重が増えていきます。一方で、過食と食事制限を繰り返している場合は体重が安定しません。体重が頻繁に増減し、日々の変動が大きい場合は摂食障害が疑われます。また、摂食障害以外の原因が体重変動に影響を与えている可能性もあるので、子どもの普段の様子を見た上で早めに医療機関を受診しましょう。
子どもが摂食障害になったら入院が必要?
標準体重より著しく低い場合は入院の必要がある

摂食障害は深刻な健康問題を引き起こす可能性があるため、早期に医療機関での診断と治療を受けることが重要です。医療機関を受診した際、緊急に入院が必要なのかどうかは子どもの状態によって異なります。一般的にはBMIが16未満など、健康に深刻な悪影響を与えるほど著しく体重が低い場合は、入院が必要になることが多いです。体重が1ヶ月以内に20%以上減少する場合も、命に関わるリスクが高くなるため緊急の入院が必要になることがあります。また、家庭環境に問題があり自宅での治療が困難な場合や、摂食障害を治すための精神的なサポートが必要な場合も、入院での治療を促されることがありますよ。
子どもの摂食障害が治るきっかけ
進学

子どもの摂食障害は、何かしらのきっかけで治ることもあります。ここでは、子どもの摂食障害が治るきっかけとして代表的なものを紹介します。まず初めに挙げられるのが、進学のタイミングです。進学して新しい環境に適応するまでの過程が、子どもにとってポジティブな変化になることがあります。例えば、新しい学校生活での友人関係や学業の達成感が、自信を取り戻す手助けになるかもしれません。こうした経験は、摂食障害の改善に繋がる可能性があるのです。また、摂食障害が改善しなくても、進学をきっかけに専門的な治療を受けることを決意するケースもありますよ。
引越

次に挙げられるのが、引越のタイミングです。住む家も場所も変わる引越では、周囲の環境が一新されますよね。例えば、家庭内のストレスや過去の出来事が引越によって精神的にリセットされることがあります。新しい生活環境で精神的な回復が促されることで、摂食障害が改善に向かうこともあるでしょう。一方で、引越が大きなストレスになる子どももいます。引越による環境の変化よって摂食障害が悪化する可能性もあるので、子どもの気持ちに寄り添うことが必要不可欠ですよ。
治療
摂食障害の治療を受けることは、子どもの摂食障害を治すために最も確実な方法です。子どもが積極的に治療を受けられるように、親身になってサポートを行いましょう。摂食障害の治療は、専門的なカウンセリングや医療の介入によって進められます。心理的な要因や身体的な健康を回復させるために行われる認知行動療法や家族療法は、高い効果が期待できますよ。医師や専門家の適切なサポートを受けることができ、子どもに寄り添ってくれる医療機関と出会えることが理想的ですね。
まとめ
子どもの異変を見逃さず摂食障害の深刻化を防ごう
ここまで、子どもの摂食障害の症状や原因、発達に与える影響などについて説明してきました。日常的に抱えるストレスや周囲の環境によって、子どもでも摂食障害になる可能性は十分にあります。子どもの摂食障害は低身長症や無月経などの症状を引き起こすことがあるため、深刻化する前の早期発見が必要不可欠です。子どもの食べ方や体重の変化に極端な異変を感じたら、速やかに医療機関へ相談するようにしましょう。進学や引越などのタイミングで治ることもありますが、健康被害が大きいと判断した場合は医師や専門家からの治療を受けることが大切ですよ。