軽度知的障害とは?原因や特徴を解説!【問題点・診断方法・改善・相談】

軽度知的障害とはどんな障害なのかをご存じですか?軽度知的障害は知的障害の85%を占めると言われています。中には障害に気づかれずに大人になり、生活に困難を抱えている方もいらっしゃいます。そこでこの記事では、軽度知的障害の原因や症状、改善方法などを解説していきます。「軽度知的障害ってどんな症状の障害なの?」「治療方法はあるの?」などの疑問をお持ちの方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

軽度知的障害とは?

知的障害を4段階に分類したうちの1つ

軽度知的障害とは、知的障害を4段階に分類したうちの1つです。知的障害の分類は、知的機能の障害と日常生活能力の兼ね合いによって分類されます。主な分類は次の通りです。

軽度  IQ51~70程度
中等度 IQ36~50程度
重度  IQ21~35程度
最重度 IQ20程度

軽度知的障害は日常生活において、次のような場面で生き辛さや困難を感じるケースが多いです。

・会話や文章を理解すること
・記憶すること
・段取りをつけること
・その場の空気を読むこと

知的障害の原因は?

内的原因

知的障害の1つ目の原因は、内的原因です。内的原因には、生まれる前の病気が知的障害の原因になる病理的要因と、脳の麻痺や発達不全が知的障害の原因になる生理的要因が含まれます。病理的要因とは、次のようなものがあげられます。

・ダウン症
・脳性まひ
・てんかん
・多因子性疾患

生理的要因には次のようなものがあげられます。

・脳の麻痺
・脳の発達不全
・代謝異常

ここで挙げたものは、必ずしも知的障害を伴うわけではありません。

外的原因

知的障害の2つ目の原因は、外的原因です。外的要因とは、出生前後に起こった事故や成育環境などの外的な要因が、知的障害の原因になることを指します。具体的には、次のようなものがあげられます。

・母体を通じた感染症
・妊娠中の薬物の大量摂取
・妊娠中のアルコールの大量摂取
・出産時や出産後の頭部の外傷
・栄養失調
・幼児期からの虐待
・ネグレクト

上記の中で、出産時のトラブルによる頭部外傷が原因になるものは、環境要因とも呼びます。

軽度知的障害の特徴は?

乳幼児や学齢期の特徴(0~15歳)

軽度知的障害の乳幼児や学齢期の特徴は次の通りです。

乳幼児
・話す言葉の数が少ない
・運動能力に遅れがある
・真似をするのが苦手
など

学齢期
・頭をぶつけるなどの自傷行為
・こだわりが強い
・多動
・パニックになりやすい
・計算をするのが苦手
・文字を理解するのが苦手
・友達との距離感をとるのが苦手
など

このように、乳幼児や学齢期の子どもは、言葉の遅れや学習の苦手さが大きく目立つと言われています。

青年期の特徴(16~19歳)

軽度知的障害の青年期の特徴は次の通りです。

・計画を立てて行動するのが苦手
・記憶するのが苦手
・自分で物事を決断するのが苦手
・お金に関するトラブルに陥りがち
・マルチタスクをこなすのが苦手

学業や仕事においては、複雑な指示を理解するのに苦労したり、抽象的な概念の把握を難しく感じたりすることもあります。しかし、適切な支援や指導があれば、社会的な自立を促し少しずつ達成できる可能性がありますよ。

大人の場合(20歳以上)

軽度知的障害の大人の特徴は次の通りです。

・物事を覚えるのに時間がかかる
・忘れっぽい
・仕事上での困りごとが増える
・相手の気持ちを汲むのが苦手
・同僚や上司と人間関係を築くのが苦手
など

一方で、自分の身の回りのことは自分ですることができるため、周りにはある程度仕事もできている人のように見えてしまいます。このようなことから、職場や日常生活で苦手意識がある分野を周りに理解されずに、人知れず悩んだり生きづらさを感じたりする方も多いようです。

軽度知的障害の問題点

幼少期での早期発見が難しい

軽度知的障害の1つ目の問題点は、幼少期での早期発見が難しいことです。軽度の場合、知的な発達の遅れが他の発達段階と比べて顕著に現れにくいため、親や保育者が異変に気づくまでに時間がかかることがあります。例えば、言葉や運動能力の発達が少し遅れていても、成長の個人差として捉えられがちです。また、幼少期の人間関係の問題は、単なる控えめな性格や活発な性格と誤解されることも少なくありません。その結果、必要な支援が遅れ、子どもの潜在能力が十分に引き出せないことがあります。早期に発見するためには、症状の知識と理解、定期的な発達チェックが重要です。

抽象的な概念が理解しにくい

軽度知的障害の2つ目の問題点は、抽象的な概念が理解しにくい点です。例えば、数学の抽象的な計算や、時間や空間の概念、社会的なルールや慣習など、目に見えないものや複雑なアイデアを理解することに困難を感じることが多々あります。これにより、学校や日常生活の中で、他者とのコミュニケーションに誤解が生じやすい傾向です。具体的には、時間を守ることや、相手の気持ちを察するといった社会的なスキルが苦手であることがあげられるでしょう。このような問題は、意図せず集団生活で混乱が生じやすく、周囲との関わりでストレスを感じることがあります。そのため、抽象的な概念を理解するための具体的な説明や、視覚的なサポートを周りから得ることが重要です。

二次障害を発症しやすい

軽度知的障害の3つ目の問題点は、二次障害を発症しやすい点です。軽度知的障害の子どもたちは、学習やコミュニケーションに困難を感じることで、自信を失ったり、ストレスを抱えやすくなります。その結果、うつ病や不安障害などの二次的な障害が発生するリスクが高まります。例えば、学校での失敗体験や友人関係でのトラブルが重なることで、自己評価が低下し、社会的な孤立感を強めることがあります。このようなことを避けるためにも、周囲が早めに子どもの特性に気づき、その子どもに合った学習環境を整えてあげるようにしましょう。

軽度知的障害の診断方法は?

問診を行う

軽度知的障害の1つ目の診断方法は、問診を行うことです。問診では、次のようなことが聞かれます。

・生まれてから今までの言葉の発達
・家庭での様子
・保育園や幼稚園、学校での様子
・1歳半検診や3歳半検診での様子
・保護者から見て気になる点
・生活の中で困っていること

このような問診の他にも、子どもを別の場所で遊ばせてその様子を観察する、行動観察を行うことがあります。大人の場合は、本人や家族からヒアリングを行います。18歳未満で知的障害があったことがわかる資料が必要なため、学校の通知表やテストの成績などを用意しておきましょう。

知能検査を行う

軽度知的障害の2つ目の診断方法は、知能検査を行うことです。知能検査には様々な方法があり、子どもの年齢によって使い分けられます。

・田中ビネー知能検査 V(ファイブ)2歳~成人まで検査可能
知能指数や精神年齢がわかる検査

・WISC-V(ウィスク・ファイブ)5歳~16歳11ヶ月まで検査可能
出された問題への回答結果によって子どもの知的機能を数値化する

・WAIS-IV(ウェイス・フォー)16歳~90歳11ヶ月まで検査可能
全体的な知的能力や記憶力、処理能力などの測定をとらえる検査

軽度知的障害を改善するには

精神科訪問看護を利用する

軽度知的障害を改善する1つ目の方法は、精神科訪問看護を利用することです。精神科訪問看護では、専門の看護師や医療スタッフが自宅を訪問し、個別のサポートを提供します。このサービスを利用することで、子どもの発達状況に合わせた適切なケアを受けることができます。また、家庭内での問題を改善するためのアドバイスも得られるため、日常生活における悩みの軽減にもつながるでしょう。訪問看護によって、子どもの成長を見守りつつ、専門的な支援を継続的に受けることができるため、軽度知的障害の改善につながる可能性がありますよ。

療育を受ける

軽度知的障害を改善する2つ目の方法は、療育を受けることです。療育とは、障害のある子どもの特性に合った支援を提供して、自立した社会生活を送れるようにサポートをする取り組みのことです。運動能力やコミュニケーションスキルの向上を目的とし、様々なプログラムや活動が行われます。例えば、日常生活に必要なスキルを身につけるために、手先の器用さを育む作業や、社会性やコミュニケーション能力を高めるためのグループ活動が取り入れられます。このような活動を通して、軽度知的障害の特性を改善することができますよ。

家族や周囲からの支援

軽度知的障害を改善するためには、家族や周囲の人からの支援も大切です。家族が子どもの特性を理解し、無理のない範囲でサポートを行うことで、子どもは安心して生活し、新しいことに挑戦する意欲を高めることができますよ。また、日常生活の中で自主性を促す声かけや、成功体験を増やす工夫も欠かせません。さらに、入学前から軽度知的障害が判明している子どもの場合は、教育面でのサポートを視野に入れて、特別支援学級など適切な支援環境が整えられている学校を選ぶことが望ましいです。このような周囲の理解とサポートが軽度知的障害を改善し、子どもの可能性を広げる大きな力となりますよ。

軽度知的障害を持つ子どもについて相談できる施設

保健センター

軽度知的障害を持つ子どもについて相談できる施設1つ目は、保健センターです。保健センターとは、地域住民に対して母子健康事業や成人・老人保健事業などの様々な保険サービスを提供する施設のことです。子どもの発達などについては、次のようなサービスを受けることができますよ。

・家庭訪問
・保健指導
・保健調査
・健康教育
・精神保健
・食育

「子どもの発達が心配だな」「これって知的障害なのかな?」などの心配事がある方は、保健センターに相談してみるのも良いかもしれません。

子ども家庭支援センター

軽度知的障害を持つ子どもについて相談できる施設2つ目は、子ども家庭支援センターです。子ども家庭支援センターとは、妊産婦や子ども、子育て世帯へ一体的に相談支援を行う機関のことです。子ども家庭支援センターでは、次のようなサービスを受けることができます。

・子どもに関する相談
・妊婦や乳幼児の健康保持、増進に関する包括的な支援
・家庭支援事業
・支援内容の組み立て

子ども家庭支援センターは妊産婦や子ども、子育て世帯を対象に医療や福祉、保育や教育など多方面からの支援を行ってくれます。「子どもが軽度知的障害かも?」と思ったら、子ども家庭支援センターに相談するのも良いですよ。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/001127396.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/001283333.pdf

児童相談所

軽度知的障害を持つ子どもについて相談できる施設3つ目は、児童相談所です。児童相談所とは、18歳未満の子どもに関する相談や通告などを受け付け、問題を解決していく専門の相談機関です。児童相談所では次のようなサービスを受けることができます。

・養護相談
・児童虐待相談
・保健相談
・障害相談
・非行相談
・調査、診断
・措置業務

児童相談所は、子どもへの虐待や子どもの非行に関する相談がメインだと思う方が多いと思いますが、障害に関する相談も受け付けています。

児童相談所についてはコチラ↓

児童発達支援センター

軽度知的障害を持つ子どもについて相談できる施設4つ目は、児童発達支援センターです。児童発達支援センターとは、障害のある未就学児を対象に専門的な療育支援を提供する施設です。児童発達支援センターでは、次のようなサービスを受けることができます。

・子どもの療育
・保護者面談
・地域支援
・機能訓練
・個別指導

児童発達支援センターは、障害を持つ未就学児や家族への支援を専門的に行う施設です。子どもが「軽度知的障害かも」と思ったら、児童発達支援センターに相談してみるのも良いですよ。

児童発達支援センターについてはコチラ↓

まとめ

軽度知的障害を早期に発見して適切な支援を行おう!

いかがでしたか。今回は、軽度知的障害について詳しく解説していきました。軽度知的障害とは、IQが51〜70程度で、日常生活に支障をきたしてしまう知的障害です。知的障害の中でも課題点が周囲の人に伝わりにくいため、幼少期には大人に気付かれにくい障害でもあります。軽度知的障害の子どもには、言葉が遅かったり運動能力に遅れがあったりといった特徴がみられます。この記事を参考に、軽度知的障害の特徴について詳しく知り、適切な支援を早期に行えるようにしましょう。