発達障害の子は集団行動が苦手?【特徴・対応方法・大人・3歳】

保育の現場で、周囲の子供と同じように行動できない、じっとしていられない、自己中心的すぎるといった特徴を持つ子供に対して、困った経験がある保育士さんはいるのではないのでしょうか。そのような子供には、特徴や原因を理解して適切な対応を取ることが大切です。この記事では、集団行動が苦手な子供の特徴や、そのような子供への適切な対応方法を紹介します。また、発達障害との関連についても説明しますよ。保育に携わる方はもちろん、療育に携わる方もぜひ参考にしてみてくださいね。

集団行動が苦手な子供の特徴

じっとしていられない

まず、集団行動が苦手な子供の特徴を紹介します。集団行動が苦手な子供の特徴として挙げられるのが、じっとしていられないということです。例えば、静かに先生の話を聞く、並んで順番を待つ、座ってご飯を食べるなど、園生活では決まった場所で活動をする場面も多いですよね。集団行動が苦手な子供は、じっとしていられず、すぐにその場から動き出し離れてしまうことが多いという特徴があります。すぐに立ち上がろうとしてしまったり、衝動的に走り出してしまったり、落ち着きがないように見えることもあります。

1人で遊ぶことが多い

集団行動が苦手な子供は、1人で遊ぶことが多いという特徴もあります。友達と一緒に遊ぶには、ある程度のルールを理解したり、周りにペースを合わせて行動したりすることが必要ですよね。仲良く遊ぶためには良好なコミュニケーションも大切です。また、複数人で遊ぶときには、譲り合いの精神や相手の気持ちを考える思いやりも求められるでしょう。しかし、集団行動が苦手な子供は、ルールを理解したり、相手に合わせて行動することが苦手な傾向にあります。そのため、複数人で上手く遊ぶことができず、1人で遊ぶことが増えてしまうのです。

指示や声かけに反応しない

保育士からの指示や声かけに反応しないというのも、集団行動が苦手な子供の特徴です。集団行動をするためには、保育士が出す指示を理解して、その通りに動く必要がありますよね。指示通りに動けないということは、普段から保育士の声かけに反応できていない可能性があるでしょう。例えば、聴覚障害がある場合は、そもそも言葉の聞き取りが上手くいっていないかもしれません。また、知的障害の場合は、声は聞こえているものの意味が伝わっていない可能性があります。集団行動の場面に限らず、普段から保育士の指示が通らない子供の場合は、様々な原因が考えられますので、注意して見てあげるようにしましょう。

ルールを守れない

集団行動が苦手な子供の特徴として、ルールを守れないということも挙げられます。集団行動をするということは、みんなで一緒に行動するというルールを守るということです。そういったことができない場合、ルールを守ることが苦手な傾向にあるということです。例えば、保育士が話しているときは静かにする、朝の会のときは座って前を向く、廊下は走らないなど、保育園生活では様々なルールがありますよね。こういった普段の園生活のルールも守れないことが多々ある点も、集団行動が苦手な子供の特徴と言えるでしょう。

集団行動が苦手な子供は発達障害?

発達障害であるとは言い切れない

集団行動が苦手な子供に対して、発達障害なのでは?と心配になる保護者や保育士もいるのではないのでしょうか。結論から言うと、集団行動が苦手だからといって、必ずしも発達障害であるとは言い切れません。確かに、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供は、集団行動が苦手な傾向にあるとされています。一方で、ただ周りに合わせることが苦手だったり、マイペースだったりという特性を持つだけの子供もいます。どうしても子供の行動について心配が晴れない保護者を対応する場合は、言葉を選びながら、発達診断をしてくれる病院へ行くことも勧めてみましょう。

集団行動が苦手なのはなぜ?

感覚過敏がある

集団行動が苦手なのはなぜなのか、その原因について見ていきましょう。まず初めに挙げられるのが、感覚過敏があるということです。感覚過敏とは、音や光などに対して一般的に受ける感覚よりも、過剰に刺激を受けてしまうことを言います。例えば、一般的には自然な状態と感じる太陽の光や部屋の照明、周りの人が話す声などでも過剰な刺激を受けてしまい、ストレスが溜まってしまいます。感覚過敏がある子供の場合、保育園で子供たちが話す声や先生の呼びかける大きな声、外の光などが極端に苦手だと感じているかもしれません。そのような子供は、人知れず苦痛を伴う場面が多いため、みんなと同じように行動できず、集団行動が苦手になってしまうことがあります。

感情のコントロールが上手くできない

集団行動が苦手な原因として、感情のコントロールが上手くできないということも考えられます。集団行動をするためには、自分がその時やりたいことを我慢して周りに合わせることが必要ですよね。一般的に、子供は年齢が上がるにつれて少しずつ、自分の感情をコントロールできるように成長していきます。一方で、自分の感情を上手くコントロールできずにいるままだと、自分の感情を最優先させてしまい、周りに合わせることができません。そのため、集団行動も苦手になってしまうのです。

周りに興味がない

周りに興味がないというのも、集団行動が苦手な原因として考えられます。一般的には、3歳ごろになると意識的に友達と一緒に遊ぶようになり、4歳ごろになると他人の感情や行動への興味も湧いてくると言われています。一方で、3~4歳ごろになっても、周りがどう動いているか、周りからどう見られているかに一切興味がない子供もいます。周りの動向に一切興味がない場合、周りに合わせて動くことは難しいですよね。また、自分自身の活動に集中するあまり、保育士からの呼びかけに気付けず、注意されるときもあるかもしれません。そういったことが重なると、子供自身が集団行動に対して苦手意識をもってしまうでしょう。

他の子に合わせる方法がわからない

集団行動が苦手な原因としては、他の子に合わせる方法が分からないということもあるでしょう。具体的には、周りの子供たちの様子に興味があり、みんなと一緒に行動したいと思ってはいるけど、どうしたら良いのか分からない状態のことです。例えば、じっとしていることが苦手だったり、反対に素早く行動することが苦手だったり、周りの子供と比べて自分にとって苦手な行動があると、どうしたら合わせられるのか分からなくなってしまいます。このような場合、みんなに合わせたいけど同じようにできないと、悩んでいる子供もいるかもしれませんね。

他の子と同じことをする理由がわからない

他の子と同じことをする理由がわからない場合も、集団行動が苦手になる原因の1つです。保育園では、多くの場面で集団行動をする必要がありますよね。例えば、みんなで一緒に外遊びに出かけたり、みんなで同じ時間にご飯やおやつを食べたりします。さらに、お昼寝の時間も決められている園がほとんどです。しかし、子供たちの中には、どうしてみんなと同じ時間に同じことをしなければならないのか、理解できていない子供もいるかもしれません。また、「自分の好きなときに好きなことをしたい!」という気持ちが強いために、周りに合わせることに苦手意識を持つ子供もいますよ。

言われている内容を理解していない

集団行動が苦手な子供の中には、そもそも言われている内容を理解していない子供もいるかもしれません。言葉の理解が遅い子供の場合、周りの友達が言っている言葉や、保育士が話している内容を理解できていない可能性があります。そのため、みんなと一緒に行動する意思はあるけれど、何を言っているのか理解できずに行動が遅れてしまったり、みんなと違うことをしてしまったりするのです。具体的には、言葉の理解が不安な外国籍の子供や、言語発達に遅れがある子供などに考えられる原因でしょう。

集団行動が苦手な子供への対応方法

少人数のグループ行動から始める

では、集団行動が苦手な子供に対して、どのように対応すれば良いのでしょうか。ここからは、集団行動が苦手な子供への対応方法について紹介していきます。1つ目に紹介するのは、少人数のグループ行動から始めるということです。保育園では、年齢によってクラスの人数が変わっていきます。3歳~4歳以上のクラスでは、20人以上で活動する場面も多々あるでしょう。集団行動が苦手な子供にとっては、20人で同じ行動をすることに対して非常にハードルが高いと感じるかもしれません。そういった時は無理をさせず、5人前後のグループ行動から始めるのがおすすめですよ。少人数のグループごとにコミュニケーションを取る時間を増やすことで、徐々に集団行動に慣れていくことが期待できます。

落ち着いて過ごせるスペースを作る

集団行動が苦手な子供がいる場合は、落ち着いて過ごせるスペースを作るのもおすすめです。特に、感覚過敏な子供や、感情のコントロールが上手くできない子供がいる場合に取り組むと良いでしょう。保育園では、ほとんどの時間で集団行動を求められます。集団行動が苦手な子供にとっては、常に周りに沢山の人がいて、ストレスを感じている場合もあるでしょう。そのようなときに、静かに落ち着いて過ごせるスペースをクラス内に作るなど、環境を整えてあげることで、集団行動に対する過度なストレスの軽減に繋がりますよ。

イラストやジェスチャーで指示を伝える

集団行動が苦手な子供に対しては、イラストやジェスチャーで指示を出してみるのもおすすめです。集団行動が苦手な理由が、言葉の理解の問題である場合、特に効果がみられるでしょう。言葉が上手く伝わらなくても、イラストであれば言葉よりも簡単に意思疎通が図れますよね。例えば、座る、外に行く、本を読む、静かにするなど、保育園で出される指示は、ほとんどが簡単な言葉や絵で表現できるものです。それらのイラストカードを使って指示を出すことで、ゲーム感覚で集団行動に取り組むことができますよ。

集団行動が苦手な子供への保育園の適切な対応

長期的に見守る姿勢

集団行動が苦手な子供に対する保育園としての適切な対応について説明していきます。集団行動が苦手な子供がいた場合、大切なのは長期的に見守る姿勢です。先程説明した通り、一言で集団行動が苦手と言ってもその原因は様々です。生まれつきの特性の問題もあれば、発達段階の一時的な問題かもしれません。保育園に通う0歳~5歳は、成長の過程も子供一人ひとりによって異なります。今は集団行動が苦手でも、成長するにつれて問題なくできるようになることもありますよ。そのため、短期的な目先の問題に囚われすぎず、子供の長期的な成長を考えて見守る姿勢も、常に持って対応しましょう。

保護者と細やかな連携

集団行動が苦手な子供においては、保護者との細やかな連携も大切です。保育園で適切な対応を取るためにも、家庭での様子を詳しく聞いておくことが重要ですよ。例えば、家でも落ち着きがないか、声かけに反応しないことがあるかどうかなどを聞いてみましょう。場合によっては、保育園での環境が原因となっていることもあります。集団行動が苦手な原因を見つけるためにも、保護者との連絡は欠かさず行いましょう。

大人になったら集団行動がスムーズになる?

発達障害の場合は大人になっても苦手

そもそも、子供は大人に比べて集団行動が苦手な傾向にあります。なぜなら、自分の感情のコントロールや周りを見て合わせるという行動は、集団で日々生活をしながら成長していく中で、徐々に身に着く力だからです。そのため、保育園に通っている時に集団行動が苦手でも、大人になったら自然と改善されることも十分に考えられますよ。一方で、発達障害の特性によって集団行動が苦手になっている場合は、大人になってからも苦手なままであることが多く、社会生活で苦労する可能性が高いです。そのため、子供の行動に心配事がある保護者は、発達診断ができる病院で早めに診断を受け、早期から適した環境を提供することが、長期的な視点で見ても子供のためかもしれませんね。

まとめ

様々な理由から発達障害の人は集団行動が苦手な傾向

ここまで、集団行動が苦手な子供について、その特徴や原因、対応方法について紹介してきました。集団行動が苦手な子供は、落ち着きが無かったり、指示が通りにくかったり、1人で黙々と遊んだりすることが多い傾向にあります。その原因は様々で、生まれつきの特性が原因のこともあれば、言葉の問題や感覚過敏の場合もあります。何が原因なのかを見極めるためにも、日頃から子供の様子を観察して保護者との連携を欠かさないようにしましょう。場合によっては、発達障害が原因で集団行動ができない子供もいます。長期的な視点で見守り、適切な対応ができると良いですね。