通級指導教室とは?【形態・指導内容・申請方法・対象者】

通級指導教室とは、どのような教室か知っていますか?なかには「通級指導教室という言葉を初めて聞いた」という方もいるかも知れません。この記事では、通級指導教室がどのような制度なのかや通級指導教室に通うまでの流れ、詳しい指導内容などを解説していきます。「通級指導教室って聞いたことがあるけど、どんな教室なの?」このような疑問をお持ちの方は、是非この記事を参考にしてみてくださいね。

通級指導教室とは?

学習や生活で困難がある子どもが受けられる制度

通級指導教室は、軽度の障がいやグレーゾーンの学習や生活に困難を抱える子どもたちが、通常の授業とは別に特別な支援を受けるための制度です。この教室は、個々の子どもの特性に応じた指導や支援が行われる特別支援教育の1つです。通級指導教室は、すべての学校に設置されているわけではありません。設置されていない学校に在籍している場合は、設置されている他校の通級指導教室に通うこともありますよ。

通級指導教室を受けられる対象は?

通常学級のクラスに在籍している子ども

通級指導教室を受けられる子どもの対象は、通常学級のクラスに在籍している子どもです。通級指導教室は、通常学級に在籍しながらも、学習や生活の上で困難を抱える子どもたちに対して支援を行います。例えば、学習障がいや発達障がい、注意欠陥多動性障がい(ADHD)などの子どもたちが該当します。通級指導教室では、子どもたちの特性に応じたサポートを提供しますよ。これにより、子どもたちは自分のペースで学び、成長することができる環境が整えられています。

通級指導教室に通うための流れは?

①自治体へ連絡して必要な書類や手順を確認する

通級指導教室は、希望したら誰でも通うことができるわけではありません。通うためには、手順通りに申請を行い、審査を受ける必要があるのです。通級指導教室に申請する手順は、自治体によって異なるため、事前に問い合わせておくと、申請をスムーズに進めることができますよ。問い合わせは、市役所の学校教育課などの学校に関する課に連絡を入れましょう。その際に、必要な書類やどのような手順で申請するべきなのかを問い合わせてください。

②面談を行う

通級指導教室に通うためには審査があり、その審査を受けるための書類がいくつか必要です。基本的に、次の書類が必須です。

・発達検査の結果
・申請書
・診断書

通級指導教室は多くの場合、親子面談を行います。この面談の際に書類が必要な場合があるので、面談までには上記の書類を用意しておきましょう。面談では以下を聞かれることが多いです。

・生活面で困っていることや困難なこと
・障がいの特性
・障がいの診断名
・子どもの様子

③教育委員会による審査で判定される

面談や書類の提出が終わったら、教育委員会による審査が行われます。この審査によって、通級指導教室に通う必要があると認められた場合には、通級指導教室に通うことが決定され、通知が来ます。以上が通級指導教室に通うための大まかな流れです。自治体によっては、他に幼稚園や保育園からのレポートや調査票など、発達障がいについて詳しく書く必要がある書類の提出が求められる場合もありますよ。通級指導教室に申請する際には、申請に必要な書類や大まかな流れを事前に問い合わせておきましょう。

通級指導教室の形態

自校通級

自校通級とは、在籍する学校に設置された通級指導教室に通う形態のことです。自校通級は、対象となる子どもがほとんどの授業を通常のクラスで受け、一部の特別な指導を、在籍している学校に設置されている通級指導教室で受けます。自校通級のメリットは、通学している学校で一部の時間に指導を受けるので、対象の子どもが通級指導教室に移動する負担が少なくなる点です。一方で、通級指導を受けている事を周りの友達に知られたくないと考えている子どもにとっては、指導の時間帯を工夫するなど、心理的負担への配慮が必要ですよ。

参考:https://www.center.shizuoka-c.ed.jp/files/kyosyoku/tokushi/tokushituukyuu6.pdf

他校通級

他校通級とは、他の学校に設置された通級指導教室に通う形態のことです。他校通級は、ほとんどの授業を通常のクラスで受け、一部の特別な指導を、在籍している学校とは別の学校に設置されている通級指導教室に通って受ける形態です。他校通級のメリットは、通級指導教室が設置されていない学校に在籍していても、通級指導を受けることができる点です。一方で、他校通級は他校に通うため、子どもにとっては、慣れない環境による心理的な抵抗感などに配慮してあげる必要がありますよ。

巡回による指導

巡回による指導とは、通級指導担当が他の学校に設置された施設に出向いて、指導を行う形態のことです。巡回による指導では、担当の教員が対象となる子どもが在籍する学校を訪問するため、子どもは自校で特別指導を受けます。巡回による指導のメリットは、通級指導教室が設置されていない学校に在籍していても、自校で通級指導を受けることができる点です。巡回による指導は、担当の職員が学校を移動するため、他の2つの形態と比べると担当できる生徒数が少なくなる可能性がありますよ。

通級指導教室の子どもの特性ごとの指導内容

言語障がい

言語障がいの子どもに対する基本的な指導内容は、言語機能の状態の改善です。言語障がいは、できることとできないことが個人によって異なるため、障がいの状態をしっかりと把握してから指導を行いますよ。言語機能は対人関係に直接的に関わってくるため、コミュニケーション能力を高めることが大切です。継続的な発音や発語の訓練が重要なため、子どもの家族との連携や医療機関との連携は欠かせません。具体的な指導内容の例は次の通りです。

・言葉の発音や発語の訓練
・構音器官(下顎、舌、唇、軟口蓋)の運動
・音の認知の訓練
・流暢に話すための訓練
・日常生活における基本的な言葉の使い方や言い方の訓練

自閉症

自閉症スペクトラムの中でも知的な遅れがある自閉症の子どもは、通級指導教室の対象になります。自閉症スペクトラムは、こだわりが強くコミュニケーションや集団行動が苦手という特性があります。このような特性が、学習面にも影響してしまうこともあるため、生活面のコミュニケーションスキルの他に、学習面の指導も必要になる場合が多いですよ。自閉症の子どもに対しての具体的な指導内容の例は次の通りです。

・技能や学習面の個別指導
・コミュニケーションを学ぶためのグループ指導
・音楽や運動の指導
・社会的なルールの指導

アスペルガー症候群

現在は自閉症スペクトラムに含まれていますが、知的な遅れは見られないが、対人関係などに特性があるアスペルガー症候群の子どもも通級指導教室の対象になります。対人関係が困難な子どもや社会性が不足している子ども、こだわりが強い子どもなど個人差が大きいため、それぞれに適した指導を行いますよ。具体的な指導の内容の例は次の通りです。

・コミュニケーション能力を高めるためのグループ指導
・ソーシャルスキルのトレーニング
・ルールやマナーに関する訓練

弱視・難聴

弱視や難聴の子どもの通級指導教室では、必要な道具の装着方法や視覚や聴覚の認知指導などを行います。学習において、視覚機能や聴覚機能は必要不可欠なため、これらの機能を使って学習する授業があった際は、補充的な指導を行います。弱視や難聴の子どもへの具体的な指導内容の例は次の通りです。

・視覚補助具や補聴器などの器具の装着指導
・視覚認知の指導
・聞き取りに関する指導
・難聴の生徒に対する言語指導

情緒障がい

情緒の現れ方に偏りがあり、自分で感情をコントロールすることが難しい情緒障がいは、特性によって指導内容に違いがあります。家などでは普通に話せるが、特定の場所で1ヶ月以上話せなくなる場面緘黙症等の場合は、カウンセリングなどを中心に行います。情緒障がいは心理的な要因が多いため、子どもに合わせた段階的な指導を行う必要がありますよ。具体的な指導内容の例は次の通りです。

・カウンセリング
・具体的な場面を想定した場面指導
・自信をつけるための訓練

LD

知的に遅れはないが、聞くことや書くこと、計算するなどの学習が、年齢に対して著しく理解が難しい学習障がいの子どもも通級指導教室で指導します。主に、学習における子どもの苦手な分野の理解や、子どものペースで学習するための指導を行います。学習障がいは個々によって、苦手な分野が異なるため、その子に適した指導案を用意しますよ。具体的な指導内容の例は次の通りです。

・聞くのが苦手な子どもへの指導➡興味のある題材から話を聞いて理解する
・話すのが苦手な子どもへの指導➡相手に話を伝える方法を学ぶ
・読むのが苦手な子どもへの指導➡文字を拡大して、わかりやすくした文章を読む読解指導
・計算が苦手な子どもへの指導➡計算の指導

ADHD

注意力を維持するのが苦手だったり、自分の気持ちを我慢できずに行動してしまうADHDの子どもは、自分の欲求をコントロールするための指導を行います。ADHDの子どもも対人関係が苦手な傾向があるため、ソーシャルスキルのトレーニングを合わせて行うこともありますよ。具体的な指導内容の例は次の通りです。

・不注意になってしまう原因を探す
・注意力を鍛えるための訓練
・欲求や感情をコントロールする訓練
・集中して行動する訓練

肢体不自由

体の一部が動かしにくかったり、全く動かない肢体不自由の子どもの場合は、意欲的に体を動かしたり体を自然と動かせる指導を中心に行います。肢体不自由の子どもの場合は、家庭と連携して家でも体のケアを行えるように配慮をしますよ。具体的な指導の内容の例は次の通りです。必要な場合は、学習機器を活用した指導なども臨機応変に対応します。

・音楽や運動をする指導
・体の動きを改善し、向上させる指導

病弱及び身体虚弱

体が弱く入院することが多い子どもや、体調面のサポートが必要な病弱及び身体虚弱な子どもは、体調面に配慮しながら指導を行います。入院などで学習に遅れがある場合は、その学習内容を子どものペースに合わせてサポートする必要があります。病弱及び身体虚弱な子どもには、家庭や医療機関と連携しながら支援を行いますよ。

・体力の回復や向上を目的とした指導
・学習面での遅れを補うための学習指導

まとめ

通級指導教室が必要な子どもに寄り添った指導を行っている!

いかがでしたでしょうか?今回は通級指導教室について詳しく解説していきました。通級指導教室は、発達障がい等の軽度の障がいがある子どもが、苦手な分野に関して指導や支援を受けられる制度です。通級指導教室には、自分が通っている学校に通級指導教室がある自校通級や他校に赴く他校通級、担当者が巡回する巡回通級などがありますよ。通級指導教室の教員は特別な免許が必須ではありませんが、子どもの障がいに応じた教室であることを理解したうえで、子どもに寄り添った適切な指導力が必要です。この記事を参考に、様々な障がいを持つ子どもの特性や対応策を学び、通級指導教室への理解を深めてくださいね。