障害児の療育の種類とは?【種類・方法・対象年齢・指導領域・プログラム】

障害のある子供に対して、自立や社会参加を目指した支援のことを療育といいます。障害児に対する療育といっても、方法や種類は様々で、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。今回は、障害児に対する療育についての方法や種類、指導領域などを解説していきます。療育の分野で現在働いている方や、療育の分野にこれから転職したい方は、是非この記事を通して療育について更に理解を深めてくださいね。

障害児に対する療育とは

自立や社会参加を目指した支援

障害児に対する療育とは、障害のある子供に対して自立や社会参加を目指した支援のことです。発達障害を含め身体障害、知的障害、精神障害のいずれかに該当する障害がある子供が療育の対象となります。障害は、個人差が大きいものなので1人1人の発達状態に応じた療育を提供していくことが必要となります。以下ではそれぞれの障害に合わせて療育の種類を解説しているので是非参考にしてください。

障害児に対する療育の対象年齢は?

18歳以下の児童が対象

療育の対象年齢は主に施設によって異なりますが、全体的に見ると、18歳以下の児童が対象となります。児童福祉法における障害児の療育施設は障害児通所支援型と障害児入所支援型の2つが存在します。
障害児通所支援型とその対象年齢は以下の通りです。

・児童発達支援:対象年齢0~6歳
・放課後等デイサービス:対象年齢6~18歳
・保育所等訪問支援:対象年齢0~18歳

障害児入所支援型とその対象年齢は以下の通りです。

・福祉型障害児入所施設:対象年齢0~18歳
・医療型障害児入所施設:対象年齢0~18歳

通所施設や入所施設の種類は、障害の程度と対象年齢に合わせて適切に選ぶ必要がありますね。

障害児に対する療育の方法

個別療育

障害児に対する療育の方法には、個別療育と集団療育の2つがあります。個別療育とは、子供とスタッフが1対1となって療育を行う方法です。プログラムの内容はそれぞれの子供の障害や年齢によって様々ですが、人との関わり方や社会生活におけるルールを身につける前のトレーニングに取り組みます。子供の性格や特性、ニーズに合わせた指導が行えるのがメリットです。また、個別での指導なので成功体験がより多く得られるのも魅力です。

集団療育

集団療育とは、4~5人程の複数人の子供が一緒に療育を受ける方法です。他の子供達を友達として認識し、関わることによって社会性や協調性を身につけることが出来るのがメリットです。さらに、競争や共同作業によって対抗心や協力心を培うことも出来るでしょう。
他人と行動するとパニックになってしまう子供は個別療育、他のお友達と遊ぶのが好きな子供は集団療育と、1人1人の障害の程度や特性、性格に合わせて選択するようにしましょう。

障害児に対する療育の指導領域

健康と生活

次に、障害児に対する療育の指導領域についてです。療育には5つの指導領域が存在し、様々なアプローチを行っています。1つ目の指導領域は、健康と生活です。発達障害によっては強いこだわりや自分だけのルールがあったり、感覚が過敏なことで歯磨きやお風呂といった日々の生活習慣を行うのが難しい場合があります。発達障害が日々の生活に悪影響を与える場合に、健康な身体や心を育て、自立した生活を送れるように基本的な生活リズム作りの支援を行います。

運動と感覚

2つ目の指導領域は、運動と感覚です。この領域では、子供が思い通りに身体を動かして不自由なく日常生活が送れるように支援を行います。障害のある子供の場合、運動や動作のコントロールが困難なことが多いです。そのため、日常生活での困り事に繋がったりしてしまいます。例えば、子供達を見ていて、他の子供と比べて軍を抜けて運動が出来なかったり、じっとしていられず集中力が無い子供が気になった経験はありませんか。場合によっては療育が必要になることもあるので、注意深く見守ってあげましょう。

認知と行動

3つ目の指導領域は、認知と行動です。この領域では、発達障害を持つ人の行動を認知行動療法でアプローチして支援を行います。障害のある子供は先生からの指示が通りにくかったり、自分のこだわりが強いため状況判断が苦手だったりと、認知と行動の面で苦戦することがあります。また、発達障害には認知の歪みといって好ましくないような考え方のパターンが10個存在しています。療育では、それらの考え方の癖やそれに伴う行動をアプローチして支援します。

言語とコミュニケーション

4つ目の指導領域は、言語とコミュニケーションです。この領域では、積極的な会話を通して語彙を増やすことや話すことが出来るようになるように支援を行います。また、表情や相槌などのコミュニケーションスキルの習得も目指します。言語やコミュニケーションに不自由を抱えてしまうと、言葉の理解不足により先生の指示が分からなかったり、表出言語が乏しいため思ったことが上手く伝えられず意思疎通につまづいたりしてしまいます。そのため、対人関係で上手く行かず社会での孤立に繋がるというケースも少なくありません。

人間関係と社会性

5つ目の指導領域は、人間関係と社会性です。この領域では、社会のルールや人間関係の構築の仕方を習得し、社会性を身につけていけるように支援を行います。障害児は、健常児が当たり前のように守れている日常生活における社会ルールを、理解はしていてもそれを適切に守ることが難しい場合があります。これにより対人関係で苦労し強いストレスから別の問題(2次障害)へと繋がりかねません。

障害児に対する療育プログラムの種類

①応用行動分析学

最後に、障害児に対する療育プログラムの種類を8つ紹介します。障害児に対する療育の方法には、個別療育と集団療育の2つがあると紹介しましたが、その中で行われる療育プログラムの種類も様々です。ひとつひとつ説明していくので、是非この機会にさらに療育について詳しくなりましょう!初めに、応用行動分析学についてです。応用行動分析学とは簡単に言うと、心理学の一種です。行動を起こす背景には個人とそれを取り巻く環境の相互作用が存在しているという考え方のもと、その行動を起こす前後の環境を分析して障害児の問題行動を防ぎ、改善へと導きます。応用行動分析学におけるこの考え方は、障害児の療育において基盤の考え方の1つとなっています。

②TEACCH

TEACCHとは、自閉スペクトラム症の本人とその家族に向けた、生涯支援プログラムです。このプログラムは、自閉症の子供の診断と評価から療育プログラムを通して障害児とその家族をサポートし、就労支援まで行います。子供の療育だけにとどまらず、その家族に向けた支援と大人になってからの就労支援まで携わることがこのプログラムの特徴の1つです。またこのプログラムは、自閉症が持つ特性を肯定的に捉えながらも、自閉症の人々に物事の捉え方が一般の人とは異なるという態度で向き合うことを大切にしていますよ。

③感覚統合療法

感覚統合療法とは、自閉症や学習障害を含む発達障害のある子供に向けたリハビリテーションの1つです。まず感覚統合とは、複数の感覚を調整したりまとめたりする脳の機能のことを指します。発達障害の場合、この感覚統合に問題があることが多く、支援が必要となります。このプログラムでは子供の学習や行動、社会的発達を脳の感覚間の統合という見方で分析して、治療的な介入を行います。

④SST

SSTとは、ソーシャルスキルトレーニングといい様々なプログラムを通して社会で必要なスキルや円滑な対人関係を学ぶ支援のことです。他の子供とコミュニケーションを取ることが難しかったり、自分の思い通りにいかないとパニックになってしまう子供を対象としています。その場の状況に応じた、適切な振る舞いや行動、社会生活をしていくためのサポートを実施。ロールプレイタイプの遊びを用いてトレーニングを行うと、周囲の人の感情や行動を学習することで、ソーシャルスキルを身に付けることができます。

⑤言語療法

言語療法とは、言語において不自由があり、社会生活に支障をきたす場合に用いられる治療法です。主に言語聴覚士が担当し、言葉の理解や発声、文字の読み書きなどの訓練を行います。また、家族に対しても適切なコミュニケーション方法などを指導しサポートすることもあります。さらに、呂律が回らず発語がはっきりしないといった症状がある場合は、口腔の体操や音読練習などを行い、症状の改善を図ります。

⑥マカトン法

マカトン法とは、言葉やコミュニケーション、精神の発達に遅れがある人のために開発されたイギリスの言語指導法です。イギリスで考え出された手話法を使用したコミュニケーション法で、手の動きによるサインと絵文字のような線画(シンボル)を組み合わせて示すのが特徴です。サインとシンボルは誰でも使いやすいようにシンプルなものになっています。マカトン法は話し言葉よりも簡単に気持ちを表現することが出来るので、コミュニケーションの意欲を向上させることが期待出来るでしょう。

⑦運動療法

運動療法とは、運動を通して障害や疾患の予防と改善を目指すプログラムです。骨折や腰痛などの整形疾患だけでなく、発達性強調運動障害という発達障害の支援でも活用されています。内容は、有酸素運動や無酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチなど複数の種類があります。子供の運動療法では特に、バランスを取ったり良い姿勢を保ったり、全身を大きく使うような粗大運動と手や指先を使った細かな動作をする微細運動が重視されています。

⑧ポーテージプログラム

ポーテージプログラムとは、それぞれの子供の発達状態に応じたアプローチを行います。また、家庭における日常生活の中でも指導をするといった個別プログラムかつ家庭中心プログラムです。チェックリストや発達経過表、マニュアル・活動カードの3つのツールを活用したり、先述した応用行動分析学も用いながらアプローチしていきます。指導過程を具体的に記録して目標の達成を目指していくのが特徴です。

まとめ

療育の方法や種類を理解して障害のある子供を適切にサポートしよう!

ここまで、障害児の療育についてその方法や種類から主な療育プログラムまで紹介してきました。療育の内容は、子供1人1人の障害の重症度や、発達状態に応じて大きく異なってきます。そのため、療育について理解し、詳しく知識を持っておくことが障害児への適切な対応に繋がります。障害児に対するサポートは悩むことが多く難しい分野であるかもしれません。今回の記事を、その悩みの解決の手助けとして役立て、療育についての理解を深めていってくださいね。