みなさんは、重症心身障害児という言葉を聞いたことがありますか?重症心身障害児とは、心身ともに重度の障害を持つ児童のことを指します。障害を持つ人のための事業所は数多くありますが、ここでは重症心身障害児のための事業所について説明していきますよ。一般的な療育施設とは異なる特徴も多くあります。自分の身の回りに重症心身障害児がいる場合や、療育施設で働いている人はぜひ参考にしてみてください。
重症心身障害児事業所とは
重度の身体的かつ知的な障害を持つ児童のための施設
重症心身障害児事業所とは、重度の身体的かつ知的な障害を持つ児童のための事業所です。一言で障害児と言っても、それぞれの児童が持つ障害の種類や程度は様々ですよね。体の一部または全体に不自由がある身体的障害もあれば、身体には問題はないものの脳に障害があって発達に遅れがあることもあります。重症心身障害児は、様々な障害の中でも特に深刻な身体的かつ知的な障害を持っています。普段の生活でもサポートが必須であることは想像できますよね。重症心身障害児事業所は、そんな児童のために様々な療育サービスを提供する場となっています。
放課後デイサービス(重度心身外)との違い
通える基準が異なる
重症心身障害児事業所は、一般的に放課後デイサービスと呼ばれることもあります。放課後デイサービスには重症心身型と重症心身外の2種類があり、重症心身型の放課後デイサービスが重症心身障害児事業所にあたりますよ。ここでは、放課後デイサービスの重症心身外との違いを説明していきます。初めに挙げられるのが、通える施設の基準が異なるということです。重症心身障害児事業所に通うには、各自治体から重症心身障害児の認定を受けている必要があります。一方で、放課後デイサービスの重症心身外に通うためには、それらの認定は必要ありません。療育手帳を持っていなくても、医師からの意見書があれば通うことが可能ですよ。通うための基準が重症心身障害児事業所の方が厳しいということですね。
施設の数が重度心身外より少ない
重症心身障害児事業所と重症心身外の放課後デイサービスでは施設の数にも違いがあります。重症心身外の放課後デイサービスの方が、重症心身障害児事業所よりも施設数は多いとされていますよ。重症心身型の放課後デイサービスでは、心身共に重度の障害を持つ児童が通うと説明しましたよね。従って、重症心身外の放課後デイサービスよりも多くの人員やより包括的なサービス内容が求められます。それらを十分に満たす事業所を数多く作るのは、簡単ではありません。また、重度の心身障害を持つ児童よりも、軽度の発達障害を持つ児童の方が数が多いとされています。より多くの児童を受け入れることができる重症心身外の事業所は、今後も数を伸ばしていくことでしょう。
より専門的なケアを行える人が働いている
重症心身障害児事業所では、重症心身外の放課後デイサービスに比べてより専門的なケアを行える人が働いています。身体的かつ知的に重度の障害がある児童を預かるためには、高度なスキルをもった専門人材が求められるからです。特に大きな違いは、医療や看護の知識を持った人材が配置されているという点でしょう。重症心身障害児は普段の生活でもサポートを必要とする場合が多いので、専門的な医療ケアを行える人が働いていることがほとんどですよ。
重症心身障害児事業所の特徴
医療的な側面がある
重症心身障害児事業所の特徴の1つは、医療的な側面があるという点です。重症心身障害児事業所に通う児童には、医療的なケアを必要とする児童も多く通います。具体的には、呼吸障害や摂食障害、骨粗鬆症などが挙げられるでしょう。これらの児童を預かるためには、医療サービスを提供できる環境が必要ですよね。痰を吸引する必要があったり、栄養を効果的に摂取するための注入などが必要な場合もあります。一般的な重症心身外の事業所ではこれらの医療ケアは行われません。医療的な側面を持つのは重症心身障害児事業所の特徴だと言えるでしょう。
生活サポートが必須の児童が多い
重症心身障害児事業所には、生活サポートが必須の児童が多く通います。自分で歩行することができなかったり、摂食障害や排せつ障害を持っていたりする児童も少なくありません。自分で生活していくために必要な最低限の動作が困難なため、ほとんどの時間でサポートが必要だと言えるでしょう。一般的な療育の事業所では、食事や歩行などの基本的な行動は自分で行うことができる子供も多くいます。全面的な生活サポートが必要であるという点が、特徴的だと言えますね。
様々な技術・知識を持ったスタッフが働いてる
重症心身障害児事業所では、様々な技術と知識を持ったスタッフが働いています。重度の障害を持つ子供たちを支えるためには、多様なスキルが必要ですよね。身体的な障害をカバーするための医療ケアはもちろん、知的な障害に対応するためのケアも欠かせません。医療や療育の専門知識を持つスタッフがそれぞれの分野で全面的にサポートするのが特徴です。看護師や児童指導員だけでなく、理学療法士などが働いていることもありますよ。
重症心身障害児事業所に通うメリット
生活支援と療育を同時に受けることができる
重症心身障害児事業所に通う一番のメリットは、生活支援と療育を同時に受けることができるという点です。一般的な重症心外の事業所では、療育サービスのみを提供していることがほとんどです。入浴補助やリハビリテーションなどは行っていないところも多く、生活支援としては不十分だと言えるかもしれません。一方で、医療施設での生活や訪問看護では、療育サービスを受けるのは難しいでしょう。社会的なつながりの中で、他者と関わりながら医療ケアも行えるのが重症心身障害児事業所のメリットだと言えます。
重症心身障害児事業所の1日の流れ【児童の過ごし方】
通所と健康チェック
ここからは、重症心身障害児事業所に通う児童の1日の流れを紹介します。初めに行うのは通所です。午前中の10時前後に施設に行く児童が多いでしょう。個別の送迎を行っている施設がほとんどですが、場合によっては保護者が送り迎えをするところもありますよ。無事に施設に着いたら、健康チェックを行います。重症心身障害児は、身体に重度の障害を持つ人も多いです。それぞれで必要な健康面での配慮や医療ケアを適切に行うためにも、毎日の健康チェックは欠かせません。
運動やリハビリ
通所と健康チェックが終わったら、運動やリハビリを行います。重症心身障害児事業所のメリットとして、療育と医療ケアの両方を受けることができると説明しましたよね。そのため、事業所では身体の障害に効果的なリハビリを行います。理学療法士などがいる場合も多いので、適切な医療ケアを受けることができますよ。また、運動は日々の体力づくりだけでなく、療育の効果も期待できます。運動を通して他人とのコミュニケーションを図ることで、メンタル面でのケアにもつながりますよ。
集団での活動
それぞれのリハビリや運動が終わると、集団での活動に移ります。どんな活動を行うかは、施設やスケジュールによって異なるでしょう。身体を動かせる児童が多い場合はみんなで外遊びや散歩に出かけることもあるかもしれません。室内で音楽に触れたり、図画工作を行ったりするのも良いですね。通所する他の児童と関わることで、コミュニケーション力を育んだり、社会性を身に着けたりすることにもつながります。
お昼休み
午前中の活動を終えたら、お昼休みに入ります。重症心身障害児事業所に通う子供たちの中には、自分で食事ができない子供も少なくありません。スタッフが補助をしながら食事を口に運んでいきます。また、中には注入による食事な必要な子供もいるでしょう。一般的な療育施設では、昼食を提供しているところは多くありません。一方で、重症心身障害児は食べられるものが限られていることからも、昼食を用意してくれる施設もありますよ。
入浴
食事が終わったら、午後には入浴を行います。事業所に通う重症心身障害の子供たちは、入浴をするのにも様々なことに気を付けなければいけません。自分で十分に身体を動かせないため、スタッフの補助は必須です。身体に大きな負担がかからないように、また、身に着ける医療機器が濡れないように気を配る必要がありますよ。椅子やリフト、ベビーバスなどを利用しながら身体を綺麗にしていきます。
重症心身障害児事業所の1日の流れ【働き方】
送迎や情報収集
ここからは、児童ではなく事業所で働くスタッフの1日の流れを説明します。重症心身障害児事業所で働くスタッフは、出勤するとまずはその日に必要な情報収集を行います。誰が出勤するのか、誰が通所するのか、それぞれの子供と接するときに注意しなければならないことは何かなど、確認することは多岐に渡るでしょう。通所する児童の様子も毎日変化するため、適切なケアを提供するためには朝の情報チェックは欠かせません。また、担当によってはその時間に利用者の送迎を行うこともあります。通所する児童の家を周り、事業所まで送り届けるのが仕事です。
施設の環境整備
施設の環境整備も、重症心身障害児事業所で働くスタッフにとっての大切な仕事です。重症心身障害児事業所は、一般的な療育の事業所と異なり、医療施設的な側面もある事業所だと説明しました。そのため、施設の環境整備もより重要な仕事の1つとなってきます。通所する児童に合わせた医療器具がそろっているか、活動の準備はできているか、児童が安全かつ快適に過ごせる環境整備をしっかり行いましょう。
食事補助や入浴補助
児童が通所したら、活動を行ったり、食事や入浴の補助を行ったりします。特に、重症心身障害児は食事や入浴などの基本的な行動を行うのも難しい場合が多いです。子供の様子に合わせて食事の量を調節したり、口まで食事を運んだりすることでサポートを行いますよ。また、口で食事をすることができない場合には、管やチューブを使って胃に食事を注入します。入浴も、障害を持つ子供にとってはサポートが必要です。身体が小さな児童の場合はベビーバスなどを使って入浴を行いますよ。身体が大きな児童の場合は、ストレッチャーを使うこともあります。
看護記録の記入、送迎
1日の活動や食事、入浴補助が終わったら、その日の看護記録の記入を行います。看護記録の記入は、子供たちの健康を守り適切なケアを行うためにとても大切なものです。その日に行った活動や食事の内容、健康状態などを記入しましょう。重症心身障害児事業所に通う子供たちは、それぞれ異なる障害を持っています。それぞれの子供の障害に適切に対応していくためにも、毎日の看護記録は欠かせません。帰りの時間になったら、送迎の仕事も行います。それぞれの家庭に子供たちを安全に送り届けましょう。
まとめ
重症心身障害児事業所を利用して療育のサービスを受けよう
ここまで、重症心身障害児事業所について、一般的な療育施設との違いや活動内容を紹介してきました。重症心身障害児事業所に通う子供たちは、数ある障害の中でも特に重い障害を持った子供たちです。歩行や食事、入浴なども、周りのサポートが必須です。そのような子供たちが少しでも快適に生活できるようにするために、重症心身障害児事業所は大切な役割を担っていると言えるでしょう。医療ケアも行う重症心身障害児事業所では、それぞれの子供の障害に合わせて療育を行います。専門的な知識ももちろん必要ですが、子どもの状態をよく理解することも大切ですよ。事業所の違いや特徴を理解して、重症心身障害児のサポートを適切に行いましょう。