発達心理学とは?発達段階についても解説!【保育・幼児・発達段階・資格】

子どもの成長に関わる仕事をするうえで、発達心理学は学んでおきたい学問です。子どもの心や体がどのように発達するのかを理解しておくことで、その時期に合った関わりや支援ができるようになります。今回の記事では、発達心理学と児童心理学の違いや研究例、おおまかな発達段階について紹介していきます。また、発達心理学に関連する資格や発達心理学を活かせる仕事についても解説していますよ。子どもと関わる仕事を希望している方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

発達心理学とは

心身の成長と変化していく過程を研究する学問

発達心理学とは、人間の一生にわたる心身の成長や変化の過程を科学的に研究する学問です。誕生から老年期に至るまで、身体的・認知的・情緒的・社会的な側面が、どのように発達していくのか明らかにすることを目的としています。例えば、乳児が言葉を覚えたり、思春期に自己意識が高まったり、高齢期に記憶力が衰えたりするといった、年齢に伴う変化やその背景にある要因を分析します。発達には個人差があるため、遺伝や環境、家庭や社会の影響など多角的な視点からの理解が求められますよ。また、発達上の問題や障害への理解を深めて支援の在り方を考えることも、発達心理学の重要な役割です。

発達心理学と児童心理学の違い

研究対象としている発達段階が違う

発達心理学と児童心理学では、研究対象としている発達段階が違います。発達心理学は、子どもから老人まで全ての発達段階が研究対象です。一方、児童心理学で研究対象としている発達段階は児童期のみ。ここで言う児童期は、出生直後から小学生くらいまでを指します。また、発達心理学には下位領域に位置づけられる分野がいくつかあり、児童心理学はこの下位領域の1つとして捉えられるのが一般的です。発達心理学の下位領域には、児童心理学の他にも青年心理学や老人心理学などといった領域がありますよ。

発達心理学の研究例【エリクソン・ピアジェ】

エリクソンの心理社会的発達理論

発達心理学の有名な研究の1つに、エリクソンの提唱した心理社会的発達理論があります。この理論は心の発達過程を8つの段階に分け、それぞれの段階における心の特徴や、発達課題についてまとめたものです。加えて、各段階で直面する葛藤があり、これを心理社会的危機として提示しています。実は、生涯発達心理学の先駆けとなったのもこの研究です。成人期や壮年期、そして老人期までもが発達段階の一部であるという見方は、主に心理社会的発達理論によって発達心理学に取り入れられました。

ピアジェの認知発達理論

ピアジェの認知発達理論は、子どもの思考の発達を4つの段階に分けて論じたものです。具体的には、下記のように発達段階が分けられていますよ。4つのうち3つの段階の名前に入っている操作という言葉は、論理的な思考という意味を持っています。年齢に応じて新たな視点を獲得し、子どもの思考が徐々に秩序立ったものになっていく過程を理解することができますよ。

認知発達理論における発達段階の分類


1.感覚運動期(0~2歳)

2.前操作期(2~7歳)

3.具体的操作期(7~12歳)

4.形式的操作期(11~15歳)

発達心理学におけるおおまかな発達段階

子ども期

子ども期は、生まれてから思春期頃までを指します。人が成長していく発達段階において、とても大切な時期です。体が大きくなるだけでなく、歩く・話す・考える・気持ちを表すなど、心と体の様々な能力が発達していきます。例えば、赤ちゃんが物を見て手を伸ばしたり、幼児が友達と遊びながらルールを覚えたりするのも、この時期の特徴ですよ。また、家族や先生、友だちとの関わりを通して、人との付き合い方を学んでいきます。子どもの発達は個人差があります。周りの大人は、子どもたち1人ひとりのペースを見極め、子どもに合ったサポートを提供しましょう。

成人期

成人期は、学生生活を終えて社会に出てから65歳頃までの時期です。この時期は、自分らしく生きながら仕事や家庭の中で責任を果たすことが大きなテーマになります。この時期は就職や結婚、子育てなど、人生において重要な選択をする場面が多く、自分の役割や人とのつながりも変わっていきます。友人やパートナーとの深い関係を築くことや、次の世代のために何かを取り組むことも大切になりますよ。しかし、仕事や家庭のストレスで悩んだり、思い通りにいかずに迷うといった発達課題も現れます。そんなときは、自分の気持ちに目を向けたり、周りと助け合ったりしながらバランスをとることが大切です。

老人期

老人期は、65歳以降の時期を指します。仕事を引退したあとに人生を振り返ったり、これからの生き方を考えたりする時期です。体力や記憶力が少しずつ衰えることもありますが、今までに積み重ねてきた経験や知識が大きな力になります。この時期は、自分の人生はどうだったか、やり残したことはあるかなどを見つめ直すことが多くなります。また、家族や地域の人との関わりが元気のもとになるため、人とのつながりを持つことがとても大切です。趣味やボランティアを通して社会に関わることで、心も豊かになり前向きに過ごせるでしょう。老人期は、人生のまとめの時期であると同時に、まだまだ新しい挑戦ができる時期でもあります。

発達心理学から見た乳時期・幼児期の発達

知覚の発達

乳児は、生まれたときから視覚や聴覚、触覚などの基本的な知覚を持っています。生後間もなくの視覚は、ぼんやりとしか見えていません。生後数か月で人の顔を見分けたり、動くものを目で追ったりできるようになります。また、音にも敏感で、保護者の声や心地よい音に反応することがわかっていますよ。幼児期になると、色や形、大きさの違いを見分けられるようになり、周囲の世界をよりはっきりと理解できるようになります。知覚の発達は、見る・聞く・触るといった体験を通して進みます。日常の中で経験する遊びや生活が影響を与えるので、安全に配慮しながら様々な活動を取り入れてみましょう。

言葉の発達

乳児は生後すぐに泣いたり声を出したりして、周りの人と関わろうとします。生後数か月で「あー」「うー」などの音を出すようになり、1歳前後になると「ママ」「ワンワン」などの単語を話し始めます。その後、2歳ごろには2語文(例:「ママ きた」)を話すようになり、語彙も急速に増えていきますよ。幼児期になると、会話のやりとりができるようになり、自分の気持ちや考えを言葉で伝える力が育ちます。周りの大人がたくさん話しかけたり、絵本を読んだりすることで、子どもの言葉の発達はさらに促されます。

感情の発達

生後間もない乳児は、快・不快という単純な感情しか持ちませんが、成長とともに喜びや悲しみ、怒り、驚きなどの様々な感情を表すようになります。生後6か月ごろには、笑顔を見せたり人見知りをしたりして、他人との関わりを通して感情の幅が広がっていきますよ。幼児期には、自分の気持ちを言葉で表現し、他人の気持ちを少しずつ理解できるようになります。しかし、感情のコントロールはまだ難しく、頻繁に癇癪を起こすこともあります。大人が子どもの気持ちを受け止めて、子どもが安心できる環境をつくることが、健やかな感情の発達につながるでしょう。

愛着形成

愛着とは、子どもが特定の大人との間に築く、強い信頼と愛情です。乳児は、お世話をしてくれる親や養育者と過ごす中で「この人は自分を守ってくれる」と実感し、安心と信頼を得ます。安定した愛着があることで、子どもは心の土台が育ち、のびのびと外の世界に興味を持てるようになるのです。一方で、親や養育者からお世話を放棄されると、不安や不信感が強くなり健やかな愛着が形成されず心の土台が育ちません。乳児期に適切な愛着形成を行うことは、子どもの心の発達において非常に重要です。抱っこや笑顔、優しい声かけなど、日常で行える暖かいふれあいで愛着形成を促しましょう。

人間関係の発達

乳児は、親や身近な人とのやりとりから人間関係を学び始めます。目を合わせたり、笑いかけたりする中で他人との関わりは楽しいものだと感じるようになります。1歳を過ぎると他の子どもにも興味を持ち始め、近くで遊ぶ並行遊びが見られるようになりますよ。幼児期になると友達との関係が深まります。ルールを守ったり順番を待ったりするなど、社会的な関係の基礎が育つのもこの時期です。時には友達とケンカもしますが、そうした経験を通じて思いやりや協力する気持ちが育まれていきます。

発達心理学に関連する資格

臨床発達心理士

臨床発達心理士は、子どもから大人までの発達に関わる困りごとを支援する専門家です。主に発達障害、学習や行動の問題、情緒面での悩みなどに対して、心理的な評価や支援を行います。臨床発達心理士を取得するには、まず大学で心理学や教育学を学びます。そして、実務経験を積んだ上で指定の研修を受講して試験を合格する必要があります。支援先となる施設は保育園や学校、病院、相談機関など多岐にわたり、発達の段階に応じた支援を行いますよ。臨床発達心理士の仕事は子どもと関わることも多いので、保護者や教師との連携が欠かせません。また、発達の理解と丁寧な関わりが求められます。

公認心理師

公認心理師は、日本で初めて国家資格として認められた心理職で、医療や福祉、教育、司法など幅広い分野で活躍できます。この資格を取得するには、大学や大学院で心理学の決められた科目を学び、国家試験に合格する必要がありますよ。主な仕事内容は心理検査やカウンセリング、心理教育、関係機関との連携など多岐にわたり、人の心や行動に関する深い理解が求められます。また、発達心理学を重視しながら思春期の発達支援に携わる機会も多いです。発達心理学の知識を活かし、子どもから高齢者までの心の成長を支える役割を担っています。

発達心理学を活かせる仕事

療育施設

療育施設とは、障害を抱える子どもたちを対象に、生活スキルや社会性を養う支援をする施設です。療育施設では、発達心理学の知識を活かして、子ども一人ひとりの成長段階や特性に合わせた支援が行われます。例えば、言葉がうまく話せない、友達と関われないなどの課題に対しては、遊びや運動、コミュニケーションの練習などを通じて支援をします。また、臨床発達心理士や保育士、作業療法士などの専門職員がチームとなり、子どもたちだけでなく保護者への支援も行いますよ。

教育施設

教育施設では、保育園や幼稚園、小学校などで発達心理学の知識がとても役立ちます。子どもたちは一人ひとり成長のペースが異なり、得意なことや苦手なことも様々です。発達心理学を学んでいると、子どもが今どの段階にいて、どんなサポートが必要なのかを理解しやすくなりますよ。例えば、言葉が遅れている子にどう関わるか、集団での遊びに入れない子をどうサポートするかなど、実際に見かける場面で役立つ知識がたくさんあります。教師や保育士がこの知識を持っていることで、子どもたちが安心してのびのびと過ごせる環境が作れるでしょう。

発達心理学を保育に生かすには

発達段階に応じて関わり方を変える

子どもは年齢や個性によって、心や体の成長ペースが異なります。発達心理学を学ぶことで、子どもが今どの段階にいるのかを理解し、子どもに合わせた関わり方ができるようになります。例えば、言葉でうまく気持ちを伝えられない子には、表情やしぐさから気持ちを読み取って対応することが必要です。また、自立心が芽生えてくる時期の子には、「自分で何でもやりたい!」という気持ちを尊重しながら見守ることで、自信や自己肯定感を育むことができますよ。発達段階に合った声かけや遊びの工夫をすることで、子どもは安心感を得ながら自分のペースで成長できるでしょう。

まとめ

発達心理学を理解して保育に活かそう!

いかがでしたか。発達心理学は、子どもの心や体がどのように成長していくのかを理解するための大切な学問です。発達心理学の知識を保育に活かすことで、一人ひとりの子どもの発達段階や個性に合わせた関わりができるようになります。また、子どもたちだけではなく保護者への適切な声かけや支援にも役立ちますよ。子どもと関わる仕事を希望する方は、発達心理学で学べる知識を身につけて子どもを深く理解しておきましょう。