理学療法士について耳にしたことはあるけれど、実際に何をしているのかはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。理学療法士は、リハビリテーションの専門家として、医療や福祉、教育など幅広い分野で活躍しています。本記事では、理学療法士と作業療法士の違いや理学療法士の仕事内容、向いている人の特徴などを詳しく紹介します。人を支える仕事に興味がある方や進路選びに迷っている方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
理学療法士とは
リハビリテーションの専門職

理学療法士は、運動療法や物理療法を用いて機能回復を支援するリハビリテーションの専門職。歩行訓練や関節の可動域訓練、筋力強化など、運動機能の改善を目的としたリハビリを行います。病院やクリニックだけでなく、介護施設や訪問リハビリ、スポーツ現場など幅広い場で活躍していますよ。医師の指示のもと、患者一人ひとりの状態に合わせたプログラムを提供します。理学療法士は、身体の動きに関する専門的な知識と技術を駆使して、患者ができる限り自立した生活を送れるようにサポートをする重要な役割を担っています。
理学療法士と作業療法士の違い
リハビリを行う動作の種類が違う

理学療法士と作業療法士はどちらもリハビリテーションの専門職ですが、リハビリテーションの対象とする動作に違いがあります。理学療法士が座る、立つといった基本的な動作をリハビリ対象とする一方で、作業療法士が対象とするのは入浴や食事といった、より複雑な動作です。略称も異なり、理学療法士はPT(Physical Therapist)、作業療法士はOT(Occupational Therapist)と略されます。病院内などの現場では、こちらの呼び方が用いられることが多くありますよ。
理学療法士になるには
1.大学・短大・専門学校などを卒業

理学療法士になるためには、まず理学療法士の養成校で学び、国家試験の受験資格を得る必要があります。具体的には、以下の4種類の養成校がありますよ。
・短期大学
・専門学校
・特別支援学校(視覚障害者が対象)
また、既に作業療法士の資格を保持している方の場合は、養成校で2年以上学ぶと国家資格の受験資格を得ることができます。
2.国家試験に合格
理学療法士になるためには学校卒業に加えて、理学療法士国家試験を受験し合格する必要があります。また、理学療法士の国家試験は筆記試験と口述試験及び実技試験から構成されていますよ。令和7年度の試験内容は、以下のようになっています。
1.筆記試験 | ア・一般問題 解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法 イ・実地問題 運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法 |
2.口述試験及び実技試験 | 重度視力障害者に対して、筆記試験の実地問題に代えて次の科目について行う。運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び理学療法 |
国家資格の難易度
約89.6%

2025年の国家試験合格率は89.6%でした。過去5年間の合格率は、79~89%で推移しており、年々上がっています。学校を卒業し試験対策を行っていれば、合格の可能性が高い試験であると言えるでしょう。理学療法士国家資格における、過去5年間の合格率は以下のようになっています。
第57回(2022年) 79.6%
第57回(2023年) 87.4%
第59回(2024年) 89.3%
第60回(2025年) 89.6%
理学療法士の主な仕事内容
物理療法を行う

物理療法は、理学療法士がリハビリテーションのために用いる主な治療法の1つ。電気や熱、重さなどを用いた物理療法があります。物理療法は機能改善のほかにもリラクゼーションの効果があり、回復の見込みが立たない患者や、治療が長期にわたると考えられる患者の精神的ケアとしても用いられます。具体的には以下の治療法がありますよ。
温熱療法
水治療法
マッサージ療法
運動療法を行う
理学療法士が補助するリハビリテーションには、運動療法もあります。日常生活に必要不可欠な動作のための訓練が運動療法の中心になります。
関節の動きを改善させるための訓練です。
2.基本動作訓練
寝返り、起き上がりや歩行など、生活するうえで必要不可欠な動作を行えるようにするための訓練です。
3.筋力増強訓練
筋肉に負荷をかけることで、筋力の増強を図ります。理学療法士が負荷をかける場合と、おもりなどの道具を使って負荷をかける場合があります。
4.持続力増強訓練
寝たきりだった患者さんを対象に、長時間座ったり歩いたりする訓練です。
5.協調性訓練
中枢神経障害の患者に対して、正常な運動パターンの促進を行う訓練です。
他の専門職との連携
理学療法士は、医師、作業療法士、言語聴覚士や介護職員など、多職種と連携して患者のリハビリテーションを支えます。例えば、医師の診断に基づいてリハビリ計画を立てたり、作業療法士と協力して生活機能の改善を図ったりします。このように、多職種と密に連携することで、患者を多角的に支援し、最適な回復を目指すことができますよ。チーム医療のなかで自分の役割を果たしながら連携を深めることも、理学療法士の大切な仕事の1つです。
その他
理学療法士の仕事は治療だけにとどまらず、患者や家族への生活指導や介助方法の説明なども含まれます。また、予防的な取り組みとして、運動指導や健康講座の開催、高齢者施設での転倒予防教室の実施など、地域での活動も増えています。さらに、症例の記録や評価、リハビリ計画の見直しといった書類作成・管理も重要な業務ですよ。近年では、介護保険制度や地域包括ケアのなかでの役割も拡大しており、理学療法士の活躍の場は病院に限らず、在宅医療や地域福祉の分野へも広がっています。
理学療法士が活躍する施設
主な活躍の場は医療機関や福祉施設

理学療法士の主な活躍の場は、医療機関や福祉施設です。なかでも医療機関で働く人が多く、理学療法士全体の60%以上が医療機関で働いています。そして医療機関の次に多い就業先は、福祉施設。具体的な福祉施設としては、地域包括支援センターや身体障害者福祉施設があげられます。医療機関と福祉施設で働く理学療法士が大多数を占めますが、それ以外の活躍の場も幅広くなっています。わずかではありますが、スポーツ分野におけるジムやアスリート育成施設や、企業の開発部門、そして教育・研究機関で活躍する理学療法士もいますよ。
保育施設でも活躍

中には保育の分野で活躍する理学療法士もいます。静岡市にあるぺんぎん保育園では、理学療法士が以下のような取り組みを行っていますよ。
・転びやすい子供に対する体幹トレーニングの指導(よじ登り、ジャンプをして両足でしっかり踏ん張る等)
普段の遊びの中で不足しがちな動きを理学療法士が見つけ出し、遊びの中に取り入れる工夫を行います。こういった取り組みは、子供たちの筋肉発達の偏りなどの予防に繋がります。
理学療法士の年収
平均年収は約433万円

令和5年賃金構造基本統計調査によると、理学療法士の平均年収は約433万円で、平均月収は約30.1万円です。ほかの職業と同様に経験年数とともに年収も上がっていきます。また、資格手当や役職手当によって、さらに年収アップも期待できますよ。以下のような資格を取ることで、資格手当をもらえる可能性があります。
・専門理学療法士
・心臓リハビリテーション指導士
・呼吸療法認定士
・認知症ケア専門士
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&stat_infid=000040163741
理学療法士に向いている人
コミュニケーション能力がある人

リハビリテーションを行う際には、患者さんとのコミュニケーションが必要不可欠です。そのためコミュニケーション能力がある人は、理学療法士に向いています。リハビリテーションは障害があることや、障害が予測されることが前提となるため、患者はネガティブな感情を抱くことも多いでしょう。そういったリハビリテーションの現場で理学療法士に求められることは、患者に対して積極的かつ適切なコミュニケーションをとることです。そうすることで、患者さんの精神的安定や、適切なリハビリテーションの促進に繋がりますよ。 良好なコミュニケーションをとり、患者との暖かい関係を築けることは、理学療法士に必要な適性の1つと言えるでしょう。
観察力や洞察力がある人
理学療法士は、患者の動作や姿勢、筋肉の緊張状態などを細かく観察し、わずかな変化を見逃さずに評価する必要があります。例えば、歩行の癖や日常生活動作のなかに潜む問題点を発見するには、高い観察力と、それをもとに患者の状態や課題を推測する洞察力が求められます。また、表面的な情報だけでなく、患者の表情や会話のトーンから心理的な変化を察知し、リハビリの方法や声かけを柔軟に調整する力も重要。これらの能力があれば、より的確な支援や信頼関係の構築につながりますよ。
心身ともに健康な人
理学療法士の仕事は、患者を支えるだけでなく、自らも身体を使って動作の補助やリハビリの指導を行うため、一定の体力が必要。長時間の立ち仕事や患者の体を支えたり持ち上げたりする場面も多いため、日頃から自分の体をケアして健康を維持する姿勢が求められます。また、患者と長期的に向き合い、思うように回復しない状況にも冷静に対応するためには、メンタルの安定も欠かせません。理学療法士自身が心身ともに健康であることで、患者に対して前向きなエネルギーを届け、信頼される存在になれるのです。
理学療法士がやりがいを感じる瞬間
自分の成長を感じたとき

理学療法士として日々の業務を重ねるなかで、自分自身のスキルや知識の向上を実感できる瞬間は、大きなやりがいにつながります。例えば、以前は見抜けなかった患者の動作の問題点に気づき、適切なリハビリプランを立てられるようになったとき、自分の成長を実感できるでしょう。また、先輩や医師との連携がスムーズになったり、患者との信頼関係を築けるようになると専門職としての自信も深まりますよ。
患者さんの身体機能が回復したとき
患者の身体機能が回復し、以前のように動けるようになった姿を目にしたときにも、やりがいを感じることができます。例えば、寝たきりだった人が歩けるようになったり、手が上がらなかった人が自分で食事を摂れるようになったときに大きなやりがいにつながります。患者本人やその家族から感謝の言葉をもらうことも多く、この仕事をしていて良かったと強く感じることもあるでしょう。理学療法士としての関わりが患者の人生にポジティブな影響を与えたと実感できることが、日々の努力を支える大きな原動力となります。
まとめ
理学療法士を将来の選択肢に入れてみよう

いかがでしたか?理学療法士は、リハビリテーションの専門職として、ケガや病気で身体機能が低下した人々の回復を支える重要な職業です。物理療法や運動療法を通して患者のできることを増やし、医師やほかの専門職と連携しながらチーム医療の一員として活躍します。そして、病院や福祉施設だけでなく、保育や地域の現場でも力を発揮できますよ。人と関わる仕事がしたい人、自分の成長を実感しながら働きたい人にとって、理学療法士は非常にやりがいのある職業です。将来の選択肢として、ぜひ理学療法士を入れてみて業です。将来の選択肢として、ぜひ理学療法士を入れてみてくださいね。