障害がある子供や発達に遅れがある子供に対して、遊びを通して治療を行う療育。療育の遊びには、子供1人1人に合わせた取り組みを通して、子供の成長を促進します。そこで今回は、療育の遊びならではの目的や、保育との違いについてご紹介します。また、室内や体を動かす場面など、いくつかの療育を取り入れた遊びも紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。遊びのアイデアやねらいを知ることで療育の現場で活かしてください。
そもそも療育とは?
治療と教育を掛け合わせたもの
そもそも療育というのは、身体に障害がある子供だけでなく発達障害のある子供の自立を促進し、サポートすることです。発達に障害のある子供は、”言葉がうまく出ない” ”人とコミュニケーションをとるのが難しい” ”支度に時間がかかってしまう”などといった、日常生活で困ってしまうこともあるでしょう。療育では、支援を通してその子自身が自立した社会生活を送れるようにすることを目的としています。療育は、治療と教育を掛け合わせて、少しでも生活がしやすいようにサポートしていきます。
18歳以下の子供を対象とした支援・サポート
療育の対象は、基本的に18歳以下の子供とされています。
・知的障害
・精神障害
・発達障害(グレーゾーンも含む)
これらのいずれかに該当する子供が療育の対象となります。受けられる療育も様々で、子供たちの特性に応じてアプローチを行なっていくことが大切でしょう。具体的には、身体障害のある子供には機能訓練、知的障害のある子供には認知機能を重点的にサポートするなどがあります。
4種類の療法がある
療育で行われる療法には、大きく分けて4種類あります。
1. 応用行動分析学:子供の行動から因果関係を分析し、問題となった行動の原因を見つけ課題解決のアプローチを行う。
2. TEACCH:ASD(自閉症スペクトラム症)の子供を対象とし、視覚的構造化やワークシステムなどを活用した支援プログラム。
3. 言語療法:コミュニケーション機能の障害に対するサポートを行う。子供だけでなく、家族に対してもコミュニケーションを図る方法についてサポートを行う。
4. SSS(ソーシャルスキルトレーニング):子供たちが様々なプログラムを通して、対人関係などといった社会生活に必要なスキルを学ぶ支援を目指す。
療育の遊びの目的は?
社会性やコミュニケーション能力の向上
療育の遊びは、個々の子供の社会的なスキルやコミュニケーション能力を向上させることを目指しています。子供たちは、主に5~10人のグループでの活動や他の子供との相互作用を通じて、コミュニケーションや協力、共有のスキルを発展させることができます。また、グループ内での役割分担やルールの理解、他者の視点や感情への理解を養うことも重要になってくるでしょう。集団で遊ぶことによって、模範となる人の行動や、集団に合わせることを学ぶことができます。
自己表現や創造性の発揮
子供たちが自己表現や創造性を発揮できる環境を提供します。障害のある子供は、苦手なことが多く、劣等感から自信をなくすことも多いでしょう。子供たちは、絵画、音楽、物語作りなどの創造的な活動を通じて、自己の感情や考えを表現することが期待できます。これにより、自己肯定感や自己認識の向上、問題解決能力や想像力の発展を促進させることが期待できるでしょう。子供の発達に合わせてより細やかな支援を行うことで、それぞれの個性を育てます。
心理的な問題やストレスの解消
療育に基づく遊びは、子供たちが心理的な問題やストレスを解消する手段としても利用されます。遊びを通じて子供たちは楽しみや喜びを感じ、リラックスやストレスの軽減が促されます。また、特定の療育遊びやゲームは、子供たちに対する認知行動療法や感情調整の手法としても活用されることも。子供たちの発達や成長を促進するだけでなく、社会的な環境でより良く適応し、健全な心理状態を維持するのに効果的です。
療育と保育の違い
それぞれの目的が異なる
療育と保育は、どちらも子供たちの発達や成長を支援していますが、目的が異なります。
療育の目的:特定の子供に対する発達や学習の支援に重点を置いている。子供たちの能力を最大限に引き出し、できるだけ自立し、学習し、社会的に生活できることを目指す。
保育の目的:幼児期から就学前の子供たちの日常的なケアや教育を提供していくこと。子供たちが安全で支えられた環境の中成長し、他の子供たちとの相互作用を通じて社会的なルールを学び、理解することで基本的な学習能力を養うこと。
支援方法や対象者の違い
療育と保育では、支援方法や対象者においても違いがあります。
支援方法の違い:療育は、一般的に特定の認知、言語、社会的なスキルの発達を促すために、子供たちそれぞれにあったプログラムを用います。行動療法や認知行動療法などといった専門的なアプローチが使用されます。一方、保育では、子供たちの基本的な生活スキルや社会的なスキルの発達を促し、遊びや経験を通して学習をサポートします。
対象者の違い:療育の対象者は、自閉症スペクトラム障害、知的障害、注意欠陥多動性障害などの、特定の障害や発達の遅れがある子供たちです。保育は、幼児期から就学前の全ての子供たちを対象としています。
身体を動かす療育遊び
1. ポッチャ
パラリンピックの正式種目としても知られるボール競技、ポッチャ。遊び方はシンプルで目的のボール目掛けて、別のボールを投げつけて遊びます。シンプルなのに楽しんで遊ぶことができるため、療育の現場でも取り入れられています。子供たちの興味を引き出すために、ボールにシールや絵を書くなど、ちょっとした工夫をしてみても良いですね。この遊びを通して、筋力の向上や、身体能力アップが期待されます。また、チームで行うことで、仲間との協力や駆け引きなど幅広い能力を養う効果があります。
2. カードめくり競争
カードめくり競争とは、子供たちが集中力や注意力を養いながらカードをめくり、素早くカードをめくるゲームです。
・表裏で柄や色が異なる2種類のカード(2~40枚ほどで人数によって調整する)
1. 2チームに分かれて、各チームが担当する絵柄や色を決める。
2. カードをランダムに並べる。
3. チームごとに1列に向かい合い、合図と同時に一斉にカードをめくっていく。
30~60秒ほどの時間で、相手チームのカードから自分のチームの絵柄にめくっていくゲームです。色や柄の識別、判断力を育てることができ、足腰の強化が期待できます。
3. ジェスチャーゲーム
ジェスチャーゲームは、子供たちが身体的な動作やジェスチャーを通じてコミュニケーションを取ることを促し、認知能力や社会的スキルの発達を支援します。
・マジックペン ・画用紙などの紙
1. スケッチブックにお題を書く。
2. 子供たちをチームに分けて、出題者を決める。
3. 他の子供たちから見えない位置にたち、出題者の子供にお題を伝える。
4. 出題者の子供は、体でお題を表現し、他の子供たちは何を表現しているのか答える。
5. 制限時間内に一番正解数が多かったチームの勝ち!
ジェスチャーゲームは、積極的にコミュニケーションをとる必要があり、表現力や観察力を発揮する必要があります。療育の現場では、言語理解力の促進にもつなげることができるでしょう。
室内でできる療育遊び
1. おはじき
室内で簡単に遊びことのできるおはじき。療育の遊びとしても活用され、子供や発達に障害を持つ子の機能向上を支援する遊びとしても用いられます。
目的:おはじきを通して、身体の運動や日常生活で必要な動作の学習、集中力を育む。
1. 観察してみたり、触ってみたりおはじきそのものを楽しむ遊び方。ツヤツヤしていて綺麗にコーティングされているおはじきの感触を知ったり、音を出してみたり子供と一緒に楽しみましょう。
2. おはじきをつまんだり、スプーンで救って容器に入れる遊び方。指先の間隔が刺激され、脳の活性化につながります。
注意点:おはじきは口に入るほどの小さなものなので、誤飲に注意しましょう。
2. 連想ゲーム
1つのお題からイメージを膨らませ、単語を繋げていく連想ゲーム。”お正月”や”運動会”などのお題から、自由に連想を膨らませていく言葉遊びです。
お題:くだもの→りんご→赤色→すっぱい→レモン→黄色→信号→車→タイヤ→まわる→時計→数字→宝くじ→当たる→嬉しい→プレゼント→誕生日→パーティー
このように、言葉のネットワークを広げていきます。連想ゲームは、単語やアイデアを関連づけていくことで脳が活性化され、思考力や言語能力を向上させることができるでしょう。また、いくつかのアイデアや視点を結びつけていくことで、新しい関連性やストーリーを作り出すことで、想像力と創造性を刺激することができます。
3. 感触遊び
食感や感覚への意識を育て、力の調節能力を身につける目的がある感触遊び。室内外問わず遊ぶことができます。
・ねんど
・スライム
・ビー玉
屋外の遊び
・砂遊び
・泥遊び
・木の実拾い
・動物と触れ合う
素材や材料に触れることで感覚を鍛えることができ、手指の運動発達を促進できます。保育園の遊びのアイデアにも取り入れられるだけでなく、療育においても効果的な遊びですね。
ゲーム感覚で楽しめる療育遊び
1. ボール遊び
ボール遊びは、さまざまな種類のボールや使い方次第で、いろんな遊びに発展させることができます。ボールを追いかけたりキャッチしたりすることで、子供の運動能力が向上し、筋力やバランス感覚も発展させることができるでしょう。
・ボールプール
・ボール投げ
バランスボールやボール投げは、グループで遊びことができ、ボールプールでは、中に入って遊ぶことで感覚が刺激されます。異なる大きさや数、色のボールを用意すると良いですね。
2. すごろくゲーム
すごろくゲームは、サイコロで出た数を数えたり、サイコロの目の数だけコマを進めていく遊びです。
1. 社会性を育てる
遊びのルールを学ぶ経験は、子どもの協調性や社会性を養うことにつながるでしょう。
2. 数字の概念を理解できる
サイコロで出た目の数だけコマを進めるという基本的なルールがすごろくにあるため、ゲームを通して数字に対する理解を深めることができます。
3. 数字や文字を学べる
”2マス進む”や”一回休み”といった指示を読むことは、数字や文字の学習につながります。
3. 目隠しボックス
感覚を使って箱の中身を当てる目隠しボックス。
・見えないものを感触だけで想像する
・形や素材の違いを指先で感じることができる
このように、遊びを通して子供たちができるようになるポイントがあります。「飴を3個とってください」「丸いお菓子が欲しいな」などと声をかけながら、遊ぶことも良いでしょう。想像力を育むことができ、指先を使うことによって脳への刺激につながり、療育の遊びとして有効的です。
まとめ
遊びに療育を取り入れて子供の成長を育もう
療育では、たくさんの種類のゲームや遊びのアイデアがあります。どれを取り入れたらいいか分からないという時は、それぞれの子供の発達に応じた遊びを取り入れていくことが大切でしょう。遊びが子供にマッチしていると、コミュニケーション力や協調性といった子供たちの成長を感じ取ることができます。療育を通して、子供たちを支え自立した日常生活や社会生活を送れるようにサポートしていきましょう。