統合保育とは?【メリット・デメリット・工夫・インクルーシブ保育・違い・健常児・障がい児・保育士】

皆さんは、統合保育という言葉を知っていますか?統合保育は近年注目が高まっている保育方法の1つです。この記事では、健常児と障がい児双方から見た統合保育のメリット・デメリットや統合保育に必要な工夫など、統合保育について詳しく解説します。子供に新たな刺激を与えたいと考える障がい児を持つ保護者の方や、障がい児保育に興味のある保育士の方は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。

統合保育とは?

健常児と障がい児を一緒に保育すること

統合保育とは、健常児と障がい児が同じ環境で一緒に活動する保育のことです。主に、市区町村が指定した保育所や民間の保育所が自主的に行う取り組みです。しかし、障がい児保育には特別な準備が必要なことが多く、限られたごく一部の場所でしか統合保育が行われていないのが現状でしょう。ただし、全国的に発達障がいなどの障がい児が増えていることに伴い、今後、障がい児の受け入れを行う保育所は増えていくと予想されています。

インクルーシブ保育との違い

統合保育に似た概念として、インクルーシブ保育という取り組みがあります。インクルーシブ保育とは、障がいの有無に関わらず年齢や国籍などが異なるすべての子供が、それぞれに必要な支援を受けながら共に過ごす保育のことを指します。統合保育では、特に障がいのある子供に対して特別な支援を行い、通常の保育に取り込むことを目的としていますよ。一方、インクルーシブ保育では、特別な支援を前提とせず、あらゆる子供が自然に共生できる環境を整えることが重視されています。例えば、外国籍の子供が日本語を学びながら、様々な国の文化を共有できる場を作ることもインクルーシブ保育の一環と言えるでしょう。

統合保育のメリット【健常児】

福祉の心を養える

統合保育には様々なメリットがあり、健常児と障がい児の双方に利益があります。健常児にとってのメリット1つ目は、福祉の心を養えることです。日常で障がい児と接することによって、他の人に対する思いやりの心を育むことができますよ。障がいを持つ人との関わり方について、大人が言葉で説明するのは難しいですが、実際にその環境で生活することによって、自然とその関わり方を身に付けることができるでしょう。

偏見を持ちにくくなる

健常児にとってのメリット2つ目は、他人への偏見を持ちにくくなることです。幼少期から様々な人と関わることで、自分と他者の違いを理解し、その違いを否定することなく個性として尊重できるようになります。この経験により、多様性を理解し、異なる意見や価値観を認める心を育むことが可能ですよ。また、みんなで協力して取り組む活動を取り入れることで、社会性を身に付けることもできるでしょう。

統合保育のデメリット【健常児】

保育士が障がい児にかかりきりになってしまう

メリットがある一方、デメリットもあります。健常児にとってのデメリット1つ目は、保育士が障がい児にかかりきりになってしまうことです。保育園に通っている子供たちは甘えたい盛りの年齢の子供たち。しかし、障がいを持つ子供が健常児の子供たちと一緒に生活するためには、保育士による特別な支援が欠かせません。その結果、加配保育士がついていたとしても、他の保育士が障がい児の子供にかかりきりになってしまい、健常児の子供たちが寂しい思いをしてしまうことがあるかもしれません。

活動に物足りなさを感じてしまう

健常児にとってのデメリット2つ目は、活動に物足りなさを感じてしまう可能性があることです。統合保育では、障がいを持つ子供に合わせた活動やペースで進めることがあります。そのため、健常児にとっては物足りなく感じて十分に楽しめなかったり、成長の機会が不足していると感じたりする場合があります。このような状況を防ぐためには、保育士が全員のニーズをバランスよく取り入れたレクリエーションやプログラムを工夫することが重要でしょう。健常児も障がい児も共に楽しみ、成長できる環境を作ることが求められますよ。

統合保育のメリット【障がい児】

健常児からの刺激を受けることができる

障がい児にとって、統合保育がもたらすメリットの1つは、健常児からの良い刺激を受けられる点です。例えば、健常児が様々な活動に意欲的に取り組み、できることが増えていく姿を身近で見ることで、障がい児もその成長に触発され、新しいことに挑戦しようとする気持ちが芽生えやすくなります。このような環境は、障がい児の自己成長を促すうえで大変効果的です。また、健常児との日々の交流を通じて、社会的スキルやコミュニケーション能力を自然に学ぶこともできるため、統合保育は障がい児にとって非常に価値のある経験となるでしょう。

自己肯定感を向上させることができる

障がい児にとってのメリットの2つ目は、自己肯定感を向上させる点です。健常児と同じ環境で日々の生活を送り、共に活動に取り組むことで「自分もできるんだ」という自信が自然に芽生えるでしょう。例えば、運動会で共に走ったり、工作の時間で作品を作り上げたりする経験が、障がい児に「自分は他の子供たちと変わらない」と思わせ、自己肯定感を高めることにつながります。また、こうした成功体験を仲間と共有することで、他者との絆や連帯感が深まり、集団の一員としての役割を実感できるため、精神的な成長にも大きく影響するでしょう。

統合保育のデメリット【障がい児】

劣等感を感じることがある

障がい児にとっての統合保育のデメリットの1つ目は、劣等感を抱いてしまう可能性がある点です。保育士や保育園から様々な支援を受けられるとはいえ、健常児と同じペースや方法で行動することが難しい場面も少なくありません。例えば、運動会での競技やお絵描きの時間など、健常児が自然にこなすことが障がい児には困難に感じられる場合があります。こうした場面で、障がい児が「自分はできない」と劣等感を抱かないよう、保育士が適切にフォローし、個々のペースに合わせた支援を行うことが重要です。障がい児の自信を守るためにも、健常児との違いを過度に意識させない環境づくりが欠かせません。

孤立してしまう可能性がある

障がい児にとってのデメリット2つ目は、孤立してしまう可能性がある点です。健常児と同じように活動することが難しい場面に直面すると、その違いが際立ち、友達の輪に入れず孤独を感じることがあるかもしれません。例えば、グループで行う運動やゲームなどで、障がい児が思うように参加できない場合、疎外感や無力感を抱くことが考えられます。そのため、障がい児も健常児と一緒に楽しめるよう、活動内容を工夫することが重要です。全員が平等に参加できて協力し合える環境を提供することで、障がい児が孤立することなく、健全で社会的なつながりを築く機会を増やせるでしょう。

統合保育に必要な工夫

物理的環境の整備

健常児と障がい児の双方が成長できるような統合保育を行うには、様々な工夫が必要です。1つ目の工夫は、物理的環境の整備です。身体障がいがある子供たちが不自由なく生活できるよう、物理的環境の整備は欠かせません。例えば、車いすを利用している子供がいたら段差にスロープを設置したり、医療的ケアが必要な子供がいたら医療設備を用意したりすることが考えられます。また、物理的環境の整備が不十分だと、本人のみだけでなく周りの子供たちに危険が及ぶこともあります。車いすに乗っている子供が段差につまづいて転倒し、近くにいた子供が巻き込まれてしまうことがあるかもしれません。考えられる危険はできるだけ排除して、すべての子供たちの安全面に配慮した環境作りを目指しましょう。

コミュニケーションの促進

2つ目は、コミュニケーションの促進です。子供同士の自然な交流を通じて健常児が障がいについて理解を深めることにより、障がい児の孤立を防ぐことができます。そのためには、健常児と障がい児が積極的に話し合い、協力する環境を整えましょう。お互いの違いを受け入れる姿勢が育まれ、共に成長していくことが期待できますよ。また、保育士の工夫も重要です。特定のグループだけで固まらず、健常児と障がい児が一緒に活動できるよう、グループ分けや遊びの内容に配慮することが求められます。これにより、子供たちのコミュニケーションがさらに活発になり、自然な関係づくりが進むでしょう。

保育士の研修とスキルアップ

3つ目は、保育士の研修とスキルアップです。障がいを持つ子供の保育をする際は特別な知識が必要になります。すべての子供が安心して生活できるように、保育士のスキルは欠かせません。統合保育を行う際は、障がい児の受け入れをする前に、保育士に対して園で研修を行いましょう。また、保育士だけでなく、子供の主治医や児童指導員、理学療法士や作業療法士など、専門的な知識を持った人たちと連携してチームで保育ができると良いですね。

統合保育における保育士の役割

すべての子供たちが平等に経験できるようにする

統合保育において、保育士は大きな役割を担っています。統合保育における保育士の役割1つ目は、すべての子供たちが平等に経験できるようにすることです。例えば、運動遊びでの負担を軽減するためサポートを加えたり、ルールを調整することで、全員が楽しめるようにすることができます。このように、健常児、障がい児に関わらず、すべての子供が経験を積める機会を平等に準備しましょう。統合保育の目的は、健常児と障がい児が同じ環境で生活することで互いに刺激を与えあい、共に成長することです。目的を達成するためにも、保育士はどちらかに偏ることなく、みんなで成長できる環境を提供しましょう。

子供たちが自立できるような働きかけをする

2つ目の役割は、子供たちが自立心を育めるようにサポートすることです。例えば、ただ何かを与えるだけでなく、「次はどうしたらいいかな?」といった声掛けを通じて、自ら考え行動するきっかけを与えましょう。子供たちが困っている時も、すぐに解決してあげるのではなく、少しずつ手助けをしながら、自分でできる部分を見つけさせることが重要です。具体的には、子供が靴を履くのに時間がかかっている場合、「どちらの足から始めると良いかな?」と問いかけることで、自ら行動する機会を作ることができますよ。さらに、健常児と障がい児が互いに協力し合う場面を設けることで、統合保育ならではの相互成長が期待できるでしょう。このような支援を通じて、子供たちは共に学び合いながら、自立する力を自然と養うことができるのです。

個別の支援を提供する

3つ目は、個別の支援を提供することです。健常児と障がい児が同じように生活するとはいえ、障がい児に対しては適切な支援が必要です。また、障がい児と一括りに言っても、身体障がいや知的障がい、発達障がいなど様々な種類があります。そのため、その子供によって必要な支援は異なります。子供たちが安心して生活できるよう、一人ひとりに適した支援を行いましょう。どのような支援が必要なのか事前に主治医から聞いておくことも大切です。発達障がいについて詳しくは以下の記事を参考にしてみてくださいね。

保護者との連携をとる

4つ目の役割は、保護者との連携を深めることです。特に障がい児の保護者とは、細やかなコミュニケーションを取ることが大切です。例えば、その子供がどのようなサポートを必要としているのか、どのような行動パターンや特性があるのかを事前に把握しておくことで、より適切なケアを提供できます。また、障がい児の中には、感情や希望を言葉で伝えるのが難しい子供もいます。保護者であれば、その子の行動を観察し、背後にある意図や感情を理解できる場合が多いです。例えば、「子供が机を叩き始めたときは、疲れているサイン」という情報を保護者から共有してもらうことで、保育士は適切な対応がしやすくなりますよ。このように、保護者と連携を取ることで、スムーズな保育を実現し、子供にとって安心できる環境を提供することができるでしょう。

まとめ

統合保育で健常児と障がい児の双方の成長を促そう!

いかがでしたか?今回は、統合保育を行うメリット・デメリットや統合保育における保育士の役割など、統合保育について詳しく解説しました。統合保育は、健常児と障がい児が一緒に生活することで互いに協力し、刺激を与えあい、共に成長していくことが目的です。そのためには、保育士のサポートが欠かせません。様々な保育の方法を考え、子供たちみんなが安心して成長できる環境を作ることができると良いですね。