ABA療育で役立つ資格とは?【効果・手順・目的・ABAセラピスト】

障害のある子供や発達に問題を抱えた子供には、1人ひとりの発達状況や特性に応じた療育を行うことが求められます。療育におけるアプローチ法には多くの種類があり、提供される内容も施設によって様々。その中で今回取り上げるのは、ABA療育についてです。この記事ではABA療育の手順や目的、役立つ資格などを紹介します。ABA療育をまだ詳しく知らない方は、ぜひ参考にしてみてください。

ABA療育とは?

子供の早期療育に活用されるサポートのひとつ

ABA療育とは、発達障害またはその傾向があるとされる子供に対して、早期療育に活用される心理社会的(心理・コミュニケーションなど)なサポートのひとつ。ある行動のきっかけと結果を分析して、適切な行動に改善するためのアプローチを行います。ABA療育は発達障害の中でも、自閉症スペクトラム障害の特性がある子供に対して、特に効果があるとされている療育です。障害のある子供が笑顔で自分らしく育つのはもちろん、保護者が子供への理解を深めることにも役立ちますよ。

家で出来る療育についてはこちらの記事を参考にしてみてください!

ABA療育の手順

①行動分析を行う

ABA療育は複雑な分析や条件付けのもと行われますが、ここでは基本的な手順を紹介します。まず初めにABA療育では、行動分析を行います。そこで良く用いられるのが、ABC分析という方法。ABC分析では以下の内容を分析します。

・先行事象(Antecedent) 対象行動が起こる前の状況や行動
・行動(Behavior) 対象行動
・結果(Consequence) 行動によって得た事象

行動のみに着目せず、前後の事象を分析することで環境要因にも目を向けることができ、その対象行動が起こった根本的な理由を理解することに繋がります。

②好ましい行動を強化する

次に、対象行動が好ましい行動だった場合は、その行動を自発的に繰り返すことができるよう強化します。強化するために用いるのは、強化子というもの。強化子とは、簡単に言うと報酬です。子供は褒められると喜びを感じ、もう一度同じ行動をすることがありますよね。強化子は好ましい行動の自発確率を高めるもの。ご褒美の物をあげるだけでなく、褒めるなどといった声掛けでも強化子になります。つまり、子供が求めている強化子を与え、その行動を自発的に繰り返しさせることで、好ましい行動を強化していくのです。

③望まない行動を消去する

一方で、望まない行動が起きた場合には、その対象行動を減らすために消去します。こちらは先程とは反対に、子供が求めた結果にならなかったという状況を作り出して、その行動を繰り返し起こさないようにします。例えば、注目されたいという要求を持っている子供のいたずらに対して、極力視線を向けないようにするなど、望まない行動の繰り返しを防ぎます。なお、叱るなどの精神的な苦痛を与えるのではなく、対象行動を起こしても意味が無いと、子供自身に感じさせることが重要ですよ。望まない行動を消去する際には、より慎重な行動分析を心掛けましょう。

ABA療育の目的

強いこだわりを減らす

ABA療育は、自閉症スペクトラム障害の子供などに多く見られる、こだわりの強さを抑えるという目的で活用されることがあります。ABA療育によって子供の出来ることやお気に入りのもの、好きなことなどを増やしていきます。その際、子供は全てに対して同じ強さの執着やこだわりを持つことは難しいでしょう。これにより多方向にこだわりが分散され、日常生活や社会に対する変化への臨機応変な対応力を身に付けることに繋げていくのです。

問題行動を減らす

問題行動には、必ずきっかけとなる要因があると言われています。そのきっかけを基に問題行動を減らすという目的でも、ABA療育は活用されます。まず、問題行動を起こす要因をABA療育の理論に基づいて分析して見つけ出し、その要因を取り除きながら解消していきます。そして、日常生活の中でその要因に至らないように配慮しながら、問題行動を減らしていきますよ。ABA療育を通して問題行動を減らすということは、療育において大きなメリットと言えますね。

コミュニケーション能力を高める

ABA療育では、コミュニケーション能力を高めるという目的も含まれています。ABA療育は、子供が好ましい行動を起こして希望する結果が得られるようにする際、行動をコミュニケーションに変えて言葉による意思表示をすることを目指します。それにより、望む行動を自発的に起こすことが出来るようになると期待されています。コミュニケーションをとることが苦手とされる発達障害児ですが、ABA療育を通して克服していく子供もいるようですよ。

保護者が子供の障害への理解を深める

ABA療育は、障害のある子供を持つ保護者が、子供への理解を深めるという目的でも活用されます。発達障害児の問題行動は、大人が予想もしない行動だったり、どうしてそのような行動を取ったのか理解に苦しむことが多いです。ABA療育では、子供の行動のきっかけや要因を考え、細かく分析していきます。きっかけや要因を知ることで、保護者や家族は子供への理解を深めることに繋がり、日常生活における子育ての工夫がしやすくなるでしょう。

ABA療育の効果を高めるポイント

エラーレストレーニングを心掛ける

ABA療育は、大きな効果が期待できるアプローチ法でしたね。しかし、より効果的に行うためにはポイントをしっかりと抑えることが重要です。ここでは、ABA療育の効果を高めるポイントをいくつか紹介します。まずはエラーレストレーニングを心掛けるということです。エラーレストレーニングとは、誤りや失敗をさせない学習方法という意味を持ちます。最初から十分な手助けをしたうえで、子供に成功体験として経験させます。多くの場合、望まない行動は繰り返すことで強化されてしまうそうです。そのため、望まない行動(失敗)をエラーレストレーニングで最初から減らしていき、ABA療育における効果を高めていくのです。

丁寧な説明を行う

次に、丁寧な説明を行うということです。ここで言う説明とはプロンプトといって、ある動作をするよう促すものを指します。障害児にとって好ましい行動を定着させるために1番効果的なのは、成功体験を積むこと。その成功体験は、必ずしも自発的にしなければならないわけではありません。その動作を促す丁寧なプロンプトを通して、徐々に自発的に好ましい行動を起こすことが出来るようになります。子供のペースに合わせて、好ましい動作を促すようにしていきましょう。

スモールステップを意識する

スモールステップを意識することも、ABA療育の効果を高めるポイントとして重要です。スモールステップとは、最終目標までの段階を細かく設定し、容易に出来ることから達成していくという方法です。障害のある子供は、それぞれの特性によって苦手とする行動が異なります。1人ひとりの子供に合わせて、細分化を心掛けることが大切。スモールステップを意識しながら行い、より高度なABA療育を実現しましょう。

ABAセラピストに向いている人

子供の特性や変化を見抜く観察力がある

ABA(応用行動分析学)の理論を基にしたセラピーを、発達障害の子供に提供するのがABAセラピスト。ABAセラピストは発達障害の子供の行動を細かく分析し、1人ひとりのニーズに合わせた個別指導を行います。ここでは、そんなABAセラピストに向いている人を紹介します。まずは、子供の特性や変化を見抜く観察力がある人。障害を持つ子供は、1人ひとり特性が異なります。そのため、子供に寄り添った療育を提供する必要があります。1人の子供としっかりと向き合い、その特性や変化を見抜く観察力がある人は、ABAセラピストに向いていると言えるでしょう。発達障害のセラピストとして勉強した専門知識だけでなく、子供の個性や特性を尊重して問題を改善することが大切ですよ。

子供との対話を継続する忍耐力がある

また、子供との対話を継続する忍耐力がある人もABAセラピストに向いています。ABAセラピストは、コミュニケーションが苦手な子供と直接関わる仕事です。子供の個性や変化に気づき、それに基づいた療育を提供するためにもコミュニケーションは欠かせません。思い通りにコミュニケーションが取れなくても挫折することなく、対話を続けていく忍耐力のある人が、ABAセラピストに向いていると言えるでしょう。

ABA療育に役立つ資格

ABA国際資格

最後にABA療育に役立つ資格を紹介します。ABAセラピストとして働くうえで、取得必須の資格というものはありません。しかし、取得すると役立つ資格はいくつかあります。1つ目はABA国際資格。アメリカで設立されたBACB(行動分析士認定協会)が認定する国際資格で、以下の4つのレベルが設けられています。

BCBA-D(協会認定行動分析士・博士)
BCBA(協会認定行動分析士・修士)
BCaBA(協会認定準行動分析士)
RBT(登録行動テクニシャン)

ABA国際資格のなかで、1番レベルが高い資格がBCBA-D。その次がBCBAで、その下のレベルに当たるのがBCaBAです。また、家庭教師レベルとしてRBTがあります。各レベルに応じて教育学や心理学、行動分析学の修士号が必要です。ABA国際資格は、試験資格の要件を満たすために海外に留学する必要があるなど、日本人が取得するには難易度が高いと予想されます。取得を目指す場合は、各レベルの試験資格の要件をしっかりと確認しましょう。

認定ABAセラピスト

2つ目は認定ABAセラピスト。Together合同会社が認定する資格で、BACBの試験とは異なり、筆記試験も含めて全て日本語で受験可能な点が特徴です。難易度はBACB認定の国際資格であるRBT(登録行動テクニシャン)と同程度なので、ABAを初めて学ぶ方が最初に目指す資格としておすすめ。また、認定ABAセラピストの在籍する事業所では、様々なサポートが受けられるTogether提携事業所として登録することが出来るそうですよ。

初級ABAセラピスト

3つ目は初級ABAセラピスト。特定非営利法人ADDSが認定する資格です。ABAの基礎的な理論を理解したうえで、療育の専門家や管理者は、子供の発達に合わせて構成した計画に沿って指導を行います。その際に十分な知識と技能を有することを証明するものが、初級ABAセラピストの資格です。指導とは、ABAに基づいた個別指導のことを指します。資格は養成研修や認定試験、フォローアップ研修を経て認定され、認定後は特定非営利法人ADDSの認定セラピストとして活動することが出来ますよ。

ABA療育支援員

4つ目はABA療育支援員。自閉症などの発達障害を持つ子どもに対するABA療育に従事する人たちのために、NPO法人つみきの会が独自に認定する資格です。取得は、NPO法人つみきの会が主催する養成講座を受講し、筆記と実技試験に合格すると仮認定されます。その後、所定の講習会に参加し二次試験に合格すると、ABA療育支援員として正式に認定されますよ。ABAに関する一般的な知識だけでなく、ABAセラピーの基礎スキルを身につけた、人材の育成も目的としています。資格認定されると各地の定例会や講習会に参加することができ、さらに、指導も受けることができるそうですよ。

まとめ

ABA療育に役立つ資格を取得して療育の質を高めよう!

いかがでしたか。今回の記事ではABA療育の手順や目的、役立つ資格などを紹介しました。ABA療育は1人ひとりの子供の行動分析を行い、それに伴ったアプローチをすることで、問題行動の改善に効果的な療育です。大きな効果が期待できるアプローチ法ですが、ここで紹介したABA療育の効果を高めるポイントを意識すると、より効果的に行うことが出来ますよ。また、ABAセラピストとして働くうえで取得しなければならない資格はありませんが、取得すると役立つ資格はいくつかあります。今回紹介した資格も含め、ぜひABA療育に役立つ資格を取得して、療育の質を高めていきましょう!