皆さんは、療育には個別療育と集団療育の2つのスタイルがあることを知っていますか?子どもの特性や発達段階、成長させたい点に合わせて適した療育プログラムを選ぶことができます。この記事では、それぞれのメリットデメリットなど、個別療育と集団療育の違いについて詳しく解説します。個別療育と集団療育の双方についてしっかりと理解し、お子さんが1番成長できる環境選びに取り組んでみましょう!
個別療育とは?
子どもと指導員が1対1で行う療育

個別療育とは、子どもと指導員が1対1で関わりながら行う療育スタイルのことです。子どもの発達段階や特性に応じて1人1人に合わせたプログラムを作成します。そのため、特定のスキルを重点的に伸ばしたり課題の改善を図ったりすることができるでしょう。周囲の刺激が少なく集中しやすい環境で取り組めるため、初めて療育を受ける子どもや、人との関わりに不安がある子どもでも安心して療育に通うことができそうですね。プログラムの内容は途中で見直しや調整が可能なため、成長に合わせて無理なく進められるのも大きな魅力です。
集団療育とは?
複数人の子どもと一緒に行う療育

集団療育とは、複数人のグループで他の子どもと関わりながら行う療育スタイルのことです。一般的には、5~10人のグループで行うことが多いようです。2~4人で行う集団療育を小集団療育と呼ぶこともあるそうですよ。集団療育では、他の子どもとの関わりを通してコミュニケーションスキルや社会性を育てることがねらいとされています。対人スキルを身につけるだけでなく、社会で暮らしていくためのルールを学ぶ機会にもなりますよ。
個別療育のメリット
子どもごとに合わせた支援ができる

個別療育の1番のメリットは、子どもごとに合わせた支援ができることです。前述したように、個別療育では指導員と子どもが1対1でプログラムに取り組むため、1人1人の特性や発達段階に適したプログラムで療育を行うことができます。苦手な活動でもその子に合わせたレベル設定を行うため、多くの成功体験を積み、子どもの自信に繋げることもできるでしょう。成功を重ねて自信を持つことで、子どもたちも楽しく療育に通えそうですね。
プログラムを臨機応変に変更できる
また、プログラムを臨機応変に変更できることも個別療育のメリットの1つです。集団で療育を受けていると、プログラムについていけず遅れてしまうことも考えられます。遅れてしまった場合でも、他の子はどんどん先に進んでいきます。しかし個別療育であれば、その子の成長度合いに合わせてプログラムを変更しながら療育を進めていくことができますよ。療育を始めた当初では見えていなかった苦手にも、対応することができそうですね。また、その日の気分や体調によって活動内容を変更することも可能です。
得意分野を伸ばすことができる

個別療育の場合、幅広い活動内容や療育のねらいに対応できます。そのため、その子の得意分野を伸ばすための療育を行うことが可能ですよ。例えば、工作が得意な子どもには道具の使い方を発展させたり、音楽に興味のある子どもにはリズム遊びや楽器活動を取り入れたりと、その子の関心や強みに合わせた支援ができるでしょう。得意なことに取り組むことで自信を持ちやすくなり、自己肯定感の向上にもつながります。今後の成長の土台にもなってくれそうですね。
個別療育のデメリット
集団のルールを学ぶ機会が少ない

一方で、個別療育にはデメリットもあります。個別療育の現場では1人の指導員としか関わることがないため、集団のルールを学ぶ機会が少ないと言えるでしょう。発達障害を持つ子どもたちの中には、集団行動が苦手な子どもが多くいます。しかし、社会の中で生きていくためには集団でのルールを体得することが欠かせません。個別療育のみでは他の子どもと関わることがないため、集団の中で生きていくための術を身につけることは難しい傾向です。
担当の指導員によって差が出る
担当の指導員によって差が出てしまうことも、個別療育のデメリットと言えます。指導員によって子どもへの関わり方や支援の進め方には違いがあり、その子に合わない方法では十分な効果が得られない可能性もあるでしょう。特に個別療育では1対1の関係性が重要になるため、指導員との相性が子どものやる気や安心感に大きく影響します。継続的に療育の質を保つためには、子どもの特性を理解し、信頼関係を築ける指導員を見つけることが大切ですよ。
施設の空きが出にくい

個別療育では指導員1人につき子ども1人がつくため、1つの施設で1日に受け入れられる子どもの数には限りがあります。そのため、施設の空きが出にくく予約が取りづらいといえるでしょう。いざ療育を始めようと思っても施設の空きがなく、施設の見学すらできないこともあるようです。その子にとって適したタイミングで療育を始められるよう、施設に関しての情報収集は早めに始めておきましょう。療育を受けることができる施設については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
集団療育のメリット
対人関係を学ぶことができる

集団療育のメリットとして、対人関係を実践しながら学べるという点があげられます。他の子どもたちとの関わりを通して、あいさつを待ったりや順番を待ったり、自分の気持ちを伝えたりといった基本的なコミュニケーションスキルを身につけていきます。また、集団の中で自分の意見を主張するだけでなく、他の人の意見に耳を傾け、協調する力も養われるでしょう。大人との1対1の関わりだけでは得られない、子ども同士のやり取りから学ぶ経験は、社会性の土台を築くうえで非常に重要です。
他の子どもたちからの刺激を受けられる
他の子どもたちからの刺激を受けながら成長できることも、集団療育のメリットです。子どもたちは、周囲の大人や同年代の子の行動を見て自然と真似をし、新たな言葉や行動を学んでいきます。特に同じ年齢の仲間が頑張っている姿を見ることで、「自分もやってみよう」と思えるきっかけにつながるでしょう。また、集団の中で周りに引っ張られることで、1人では難しかった活動にも前向きに取り組めるようになります。そうした経験が、挑戦する意欲や自信につながり、大きな成長を促してくれますよ。
人と関わる楽しさを感じられる

前述したように、発達障害を持つ子どもの中には他人との関わりが苦手な子がいます。他人との関わりが苦手な子どもたちにとって、療育を通して人と関わる楽しさを体感することはとても大切です。集団療育では、遊びや活動を通じて自然な形で他の子どもと関わる機会が得られますよ。一緒に笑ったり手を繋いだり、道具を貸し合ったりといった小さな関わりが楽しい記憶として残ることで、人と一緒に過ごすことへの安心感や喜びが育まれていくでしょう。
集団療育のデメリット
子ども同士の相性が大きく関わる

一方、集団療育のデメリットとしてあげられるのが、子ども同士の相性が大きく関わることです。例えば、子ども同士の相性があまり良くなく、活動中にトラブルが起きてしまうと、子どもは「療育に行きたくない!」と行き渋る可能性があります。他の人との関わりや療育自体に苦手意識を持ってしまうと、せっかく通った療育の効果も薄れてしまうかもしれません。集団療育を行う際は、子ども同士の関係性や集団内での様子を丁寧に見守りながら、1人1人が安心して過ごせる環境づくりが求められます。
強いストレスを感じることがある
また、対人関係によって強いストレスを感じてしまうこともあります。特に感覚が過敏な子どもや人とのやり取りが苦手な子どもにとっては、周囲の声や動き、予測できない他児の行動などが大きな負担になることがありますよ。無理に関わろうとすると不安や緊張が高まり、療育そのものに対して、疲れる場所や行きたくない場所と感じてしまうこともあるでしょう。子どもたちが安心して過ごせるよう、無理のない関わり方や環境調整が重要ですね。
療育プログラムの内容が合わないことがある

集団療育ではみんなで同時に同じプログラムに取り組むため、全員にピッタリのプログラムを提供することが難しくなります。人によっては療育プログラムの内容が合わないこともあるでしょう。そのため、プログラムの内容が難しすぎたり簡単すぎたりすると、子どもが集中できずに意欲をなくしてしまうことがあります。適切な刺激が体験できないことで、十分な療育効果が得られにくくなる可能性も。施設によって取り組む活動には特色があるため、子どもに合った活動内容であるかどうか、施設選びの際には必ず確認してくださいね。
個別療育・集団療育を選ぶときに着目すべき点は?
伸ばしたいスキル

個別療育と集団療育のどちらが子どもに適しているのか、選ぶときに着目すべき点が3つあります。1つ目は、伸ばしたいスキルです。具体的な課題やスキルに着目したい場合は個別療育、社会性やコミュニケーションに着目したい場合は集団療育がオススメです。成長させたいことや困りごとを児童発達支援の5領域に当てはめることで、個別療育と集団療育のどちらが良いのか選びやすくなりますよ。
- 健康・生活:着替えやトイレ、食事が1人でできない
- 運動・感覚:ハサミや箸、鉛筆など道具を使うことが苦手
- 認知・行動:大人の指示を聞いて行動することが難しい
- 言語・コミュニケーション:自分の気持ちや要求を言葉でうまく伝えられない
- 人間関係・社会性:順番やルールが守れない
児童発達支援の5領域について、詳しくは以下の記事も参考にしてみてくださいね。
感覚の敏感さ
2つ目は、感覚の過敏さです。感覚過敏がある子どもは周囲の刺激に強く反応しやすく、不安やパニック、集中困難などにつながることがあります。例えば、大勢の子どもが集まる場では音や動きが多く、落ち着かずに疲れてしまうこともあるでしょう。そうした場合は、静かな環境で一対一の関わりができる個別療育が向いているかもしれません。一方で、感覚刺激への慣れを目的として集団療育を取り入れるケースもあります。感覚の特性に合わせて、無理なく取り組める療育スタイルを選ぶことが大切ですよ。
将来考えている環境

3つ目は、将来考えている環境です。療育には、今の困りごとに対応するだけでなく、幼稚園や保育園、小学校など、これから過ごす集団生活の場にスムーズに適応できるよう支援する役割もあります。特に就学に向けては、座って話を聞いたり指示を理解して行動したり、他の子どもと協力したりすることが求められるでしょう。子どもが現在どのような段階にあり、将来の環境のためにはどのようなスキルが必要なのかを考えて、適した療育スタイルを選びましょう。
状況 | オススメの 療育スタイル |
---|---|
現在は集団が難しいが、将来的には慣れさせたい | 最初は個別 → 徐々に集団に移行 |
対人関係や指示理解が比較的スムーズ | 集団療育中心でスキルを実践的に育てる |
感覚や行動に大きな苦手がある | 個別療育で土台を整える |
まとめ
個別療育・集団療育は子どもの特性に合わせて選ぼう

いかがでしたか?今回は、個別療育と集団療育それぞれのメリットデメリット、療育スタイルを選ぶときに着目すべき点について詳しく解説しました。療育スタイルを選ぶときに1番重要なことは、子どもの特性を十分に理解し、それに合わせた選択を取ることです。その子にとって無理なく取り組める環境や関わり方を選ぶことで、療育の効果も高まりやすくなるでしょう。家庭と支援者が連携し、子どもの成長を一緒に支えていくことが大切ですよ。