ヒヤリハットとは?療育現場で起こりやすい事例を解説!【ヒヤリハット・療育・事例・対策】

皆さんは『ヒヤリハット』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。言葉自体は知っていても、その意味や重要性まで理解している方は少ないかもしれません。 療育現場では、子どもの特性やその日の体調、感情の変化などにより、思いがけない行動が起こることが多々あります。そのため、小さな違和感や危険の芽に早く気づくことがとても重要です。本記事では、ヒヤリハットの基本的な意味から、療育現場で起こりやすい事例、事故を防ぐための対策までを分かりやすく解説していきます。ぜひご参考にしてくださいね。

ヒヤリハットとは?

事故には至らなかったが危険を感じた出来事

ヒヤリハットとは、結果として重大な事故には至らなかったものの、日常の中でヒヤリとした危険を感じた出来事を指します。 療育現場では、パニックによる飛び出しや他害行動、自傷行為につながりそうになるなど、予期せぬ場面が生じることも少なくありません。こうした出来事は、偶然大事に至らなかっただけの場合もあり、状況が重なれば重大な事故につながる可能性もあります。なぜ危険な状況が生じたのかを振り返り、原因を分析して再発防止につなげていくことが大切ですよ。

重大事故との関係(ハインリッヒの法則)

ハインリッヒの法則とは、一件の重大事故の背後には、表面化していない多くの小さな出来事が存在しているという考え方です。アメリカの損害保険会社で安全管理に携わっていたハインリッヒは、重大事故の前段階として、29件の軽微な事故が起きていると指摘しました。さらにその背景には、約300件ものヒヤリハットが積み重なっているという分析結果が。この法則は、偶然起きたように見える事故も、日常の小さな危険の見逃しが重なった結果であることを示しています。だからこそ、ヒヤリハットの段階で気づき、対策を講じることが重大事故の予防につながりますよ。

なぜ療育現場で重要なのか

重大事故を未然に防ぐために欠かせないから

療育現場では、子どもの特性や感情の変化により、行動が急激に変わる場面も少なくありません。一見すると問題なく終わった出来事でも、その背景には事故につながりかねない要因が潜んでいることがあります。こうした小さなヒヤリハットに気づかずにいると、同じ状況が繰り返された際に、より大きな事故へと発展する可能性も。重大事故を防ぐためには、結果だけを見るのではなく、事故に至らなかった段階で原因を振り返り、支援方法や環境を見直していくことが重要です。

一人ひとりの特性によって危険の形が変わるから

療育現場には、さまざまな特性をもつ子どもたちが通っています。誤飲の危険が高い子どもや突然走り出してしまう子どもなど、予測しにくい行動が起こることも少なくありません。また、重い食物アレルギーがある場合や、日常的な服薬管理が必要な場合など、注意すべきポイントが一人ひとり異なることも。そのため、同じ環境であっても危険の現れ方は子どもによって変わります。個々の特性を理解し、それぞれに合った支援や環境を整えることが、事故を防ぐうえで欠かせません。

子どもの特性から起こるヒヤリハット事例

パニック時の事故

子どもの特性から起こるヒヤリハットの中で代表的なものの一つが、パニック時の事故です。パニックになると、突然走り出す、施設内外でその場を離れるなど、命に関わる危険が生じることもあります。危険な場所へ向かう、自傷行為につながるといった行動が見られる場合も少なくありません。療育に通う子どもは感情のコントロールが難しく、不安や混乱が高まると衝動的になりやすい傾向も。だからこそ、目を離さず、職員同士で情報を共有しながら見守る体制づくりが重要ですよ。

他害行動(叩く・噛む・物を投げる)

次に代表的なものとして、他害行動が挙げられます。療育現場では、他の利用者や職員を叩いたり噛んだりしてケガを負わせてしまうケースがあります。また、他人に物を投げつける、床に物を叩きつけるといった衝動的な行動が見られることも少なくありません。感情のコントロールが難しいことから、本人に悪意がなくても他者を傷つけてしまう場合があります。また、特性の違いから利用者同士の関わりの中でトラブルが起こることも。そのため、必要に応じてグループを分けたり距離を取らせたりするなどの工夫が必要です。あわせて、日々の関わりの中で適切なコミュニケーションの方法を伝えていくことも大切になりますよ。

感覚特性によるケガ(つまずき・ぶつかり)

次に代表的なものとして、感覚特性によるケガが挙げられます。子どもの特性によっては、周囲への注意が向きにくく、視野が狭くなることもあります。その結果、家具の角に頭や体をぶつける、床の物につまずいて転びそうになる場面が見られることも。実際には大きなケガに至らなくても、状況次第では命に関わる事故につながる恐れもあります。だからこそ、日頃から環境を整え、危険になり得る物がないか事前に確認しておくことが大切ですね。

転倒・転落

転倒・転落は、療育現場で起こりやすいヒヤリハットの一つです。子ども同士で遊んでいる際に周囲への注意が向きにくく、ぶつかって転びそうになる場面や、物につまずいて転倒しかけるケースが見られます。これは感覚特性によるケガと共通する面も。また、危険への認識が十分でないことで、高い場所に登ろうとして転落しそうになるなど、重大な事故につながりかねない状況もあります。大きなケガに至らなかったとしても、同じ場面が重なれば深刻な事故になる恐れもあるのです。転落の危険がある場所には近づけない、必ず職員が付き添うなどの工夫が重要ですよ。

誤飲・誤嚥(ごえん)

誤飲とは、飲食物ではない物を誤って飲み込んでしまうことで、誤嚥(ごえん)は飲食物が誤って気道に入ってしまう状態を指します。特に乳幼児期の子どもに多いとされていますが、療育現場でも興味本位から小さな物を口に入れてしまう場面が見られます。また、食事中に飲み込んだ物が気道に入り、窒息につながりそうになるなど、ヒヤリとする状況が発生することも。実際には大きな事故に至らなかったとしても、状況次第では重大な事故につながっていた可能性があります。そのため、子どもの手の届く場所に小さくて誤飲の恐れがある物を置かないことや、常に職員が近くで見守る体制を整えることが重要となるでしょう。

食物アレルギー・アナフィラキシー

食物アレルギーやアナフィラキシーは、療育現場において命に関わる危険性を含むヒヤリハットの一つです。アナフィラキシーとは、特定の食物などに対して全身に強いアレルギー反応が起こる状態を指します。療育現場には、重い食物アレルギーをもつ子どもが通っていることもあり、自身で危険を十分に認識できていない場合も少なくありません。誤って原因となる食物を口にしてしまうと、呼吸困難や意識障害などを引き起こす恐れも。重大な事故を防ぐために職員と保護者が情報を共有し、子どもが口にする物には細心の注意を払いましょう。

やけど

次に注意したいのが、やけどによるヒヤリハットです。療育現場では周囲への注意が向きにくい子どもが多く、職員が熱い飲み物を運ぶ際にぶつかりそうになることがあります。また、スキンシップの中で思わぬ接触が起こるケースも見られます。例えば、危険への認識が十分でないことで、暖房器具や熱いスープに触れてしまいそうになる場面も。大きなやけどに至らなかったとしても、状況次第では深刻な事故につながる可能性が考えられます。そのため、子どもへの声かけに加え、危険な物に近づけない環境づくりが重要となるでしょう。

服薬管理(服薬漏れ・薬の取違い)

服薬管理は、療育現場ならではのヒヤリハットの一つです。療育に通う子どもの中には、日常的に服薬が必要な場合もあり、職員が保護者から薬を預かって適切に管理する必要があります。しかし、情報共有が十分でないと、服薬のし忘れや回数・量の間違い、別の子どもの薬を渡してしまいそうになるなどのヒヤリとする事例が起こりやすくなります。実際には事故に至らなかったとしても、状況次第では健康被害につながる可能性も。そのため、職員同士で服薬情報をこまめに共有し、保護者と連携を取りながら慎重に対応することが重要ですよ。

療育現場のヒヤリハットを防ぐための解決策

職員同士の情報共有と役割分担

療育現場のヒヤリハットを防ぐためには、職員同士の情報共有と役割分担が欠かせません。特定の職員だけが子どもの情報を把握している状態では、シフト変更や役割交代の際に引き継ぎが不十分となり、思わぬ見落としにつながる恐れがあります。そのため、子ども一人ひとりの特性や注意点を職員全体で共有し、誰が対応しても適切な支援ができる体制を整えておくことが重要です。また、役割分担をあらかじめ明確にしておくことで、「誰かがやるだろう」という意識を防ぎ、各自が責任をもって行動しやすくなるでしょう。こうした取り組みの積み重ねが、ヒヤリハットの防止につながっていくのです。

保護者との情報共有と連携

保護者との情報共有と連携は、ヒヤリハットを防ぐうえで療育現場において重要な要素です。子どもの特性や注意点、家庭での様子、服薬情報やアレルギーの有無、落ち着きやすい対応方法などは、保護者からの情報が大きな手がかりになります。何か起きた際には状況を正確に伝え、今後の対応について事前に話し合っておくことが大切ですよ。また、保護者から得た情報を記録として残し、ミーティングで職員全体に共有しましょう。こうした連携が支援のばらつきを防ぎ、ヒヤリハットの防止に役立ちます。

一人ひとりの特性を踏まえた支援計画の共有

療育現場では、一人ひとりの特性を踏まえた支援計画の共有が、ヒヤリハットを防ぐうえで欠かせません。子どもによって苦手なことやパニックになりやすい場面、注意すべきポイントは大きく異なります。そのため、個別の支援計画を事前に立て、職員全体で話し合いながら共有しておくことが重要となるでしょう。職員間の認識ズレを防ぐことで支援の見通しが立ち、混乱が起こりやすい場面を避けて配慮した関わりがしやすくなります。こうした共有が、見通しのある支援と事故予防の両立につながっていきますよ。

環境整備とマニュアル化

ヒヤリハットを防ぐためには、環境整備とマニュアル化が重要です。子どもが過ごす空間では、転倒につながる物や誤飲の恐れがある物が床や手の届く場所にないか、転落の危険がある箇所はないかを事前に確認しておく必要があります。こうした日常的な安全チェックが、予期せぬヒヤリハットの予防につながっていきますよ。また、ヒヤリハットが起きた際の対応をあらかじめマニュアル化しておくことも大切です。万が一の場面でも落ち着いて行動できるよう、内容を把握し、訓練やイメージトレーニングを行っておきましょう。

過去事例の共有

実際に起こったヒヤリハット事例を職員全体で共有することも重要です。事例を振り返る際は、出来事の報告だけで終わらせない視点が求められます。いつ起きやすいか、誰に起きやすいか、どこで起きやすいかを整理してみましょう。昼食時や職員交代時、特定の子どもや場面に偏りがないかを確認することも必要です。こうした振り返りによって、見落とされやすい傾向や潜在的なリスクが見えてきますよ。気づきを職員間で共有し、再発防止策を検討していきましょう。

ヒヤリハット報告書の役割と現場での活かし方

気づきを共有して再発防止につなげる

ヒヤリハット報告書は、現場で感じた小さな『ヒヤリ』を共有し、再発防止につなげるための大切なツールです。危なかった出来事を記録として残すことで、似たような状況や共通する原因に気づきやすくなります。報告書をもとに職員間で振り返りを行えば、注意すべき場面や見落とされがちな危険が明確になりますよ。こうした積み重ねが安全意識を高め、結果として重大な事故を未然に防ぐことにつながります。ヒヤリハット報告書は、誰かの責任を追及するためのものではなく、より安全な療育環境をつくるために活用していきたいものですね。

まとめ

子どもの特性に寄り添い安全な療育環境をつくろう

いかがでしたか?本記事では、ヒヤリハットの意味から療育現場で起こりやすい事例、予防のための対策などを解説しました。これまであまり意識してこなかった方も、日常のヒヤリとした小さな出来事に目を向けるきっかけになれば幸いです。療育現場では子どもの特性によって予期せぬ行動が起こりやすく、ヒヤリハットのリスクも高まります。だからこそ、職員一人ひとりの気づきとチームワークを大切にしながら、安全な療育環境を整えていきましょう。