保育所等訪問支援とは?詳しい業務内容を解説【目的・対象者・訪問先・資格】

皆さんは、保育所等訪問支援という取り組みをご存知でしょうか。保育所等訪問支援とは、保育所や幼稚園、小学校などにおいて、健常児と共に集団生活を送る障がいを持つ子どもたちを支援するための取り組みです。この記事では、保育所等訪問支援の具体的な支援内容や対象者、必要な資格について詳しく解説します。「保育所等訪問支援は具体的にどのような支援なのか?」「この支援を行うためには特別な資格が必要?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

保育所等訪問支援とは?

集団生活の場に支援員が訪問して障がい児を支援する

保育所等訪問支援とは、集団生活の場に支援員が訪問して、障がい児を支援する取り組みです。この取り組みは、改正児童福祉法に基づき、平成24年に創設されました。具体的には、支援員が約2週間に1度の頻度で、障がいを持つ子どもが通う施設を訪れ、必要な支援や環境の整備を行います。例えば、発達に不安を抱える子どもが幼稚園で友達と遊ぶ際に、支援員がその子のそばでサポートを行うことがありますよ。一般的には、心的障がいや軽度知的障がい、グレーゾーンにいる子どもたちや不登校児に対して、集団生活における不安を軽減するための支援が提供されます。このように、保育所等訪問支援は、子どもたちが安心して集団生活を送るための重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

保育所等訪問支援の目的は?

子どもが安心して集団生活できるようにサポートする

厚生労働省の資料によれば、保育所等訪問支援の主な目的は、障がいを持つ方々の地域社会への参加を促進し、インクルージョンを実現することにあります。そのためには、幼少期から障がいを持つ子どもと健常児が共に生活し、互いの理解を深めることが非常に重要です。例えば、障がいを持つ子どもが幼稚園で友達と一緒に遊ぶ際、支援員がその場にいてサポートを行うことで、健常児も障がいについて学ぶ機会が得られます。しかし、障がいを持つ子どもが生活の中で困難や不自由を感じる状況では、健常児にとっても有意義な経験とは言えません。したがって、障がいを持つ子どもが安心して健常児と共に生活できるよう支援する取り組みや、保育士や教師に対する障がいへの理解を深めるための教育が求められています。このような背景から、保育所等訪問支援が注目されているのです。

保育所等訪問支援の対象者は?

18歳までの児童

保育所等訪問支援の対象者は、保育所や幼稚園、小学校などに在籍している18歳までの児童です。保育所等訪問支援は障がい者手帳の有無に関係なく、集団生活や周りの環境に適応するために専門的な支援が必要であれば、利用対象者となります。ただし、保育所等訪問支援を利用するためには、通所受給者証の取得が必要になりますよ。保育所等訪問支援を利用できる症状の例は、次の通りです。

・じっとしていることが難しい
・集団行動が苦手
・強いこだわりがある
・友達とのトラブルが多い
・不登校
・指示が伝わりにくい
・勉強についていけない

保育所等訪問支援の業務内容は?

障がい児を対象とした直接支援

保育所等訪問支援の1つ目の業務内容は、障がい児を対象とした直接支援です。訪問支援員が保育所などの訪問先へ赴いて、対象となる子どもの行動を観察し、困りごとや支援内容を見定めます。それをもとに、支援員がその場で訪問先の施設の教育活動の妨げにならないように配慮しながら、直接子どもに関わり、手助けをするのが直接支援です。支援の具体的な例は次の通りです。

・子どもに直接声掛けを行う
・子どもの困りごとに合わせて具体的なサポートをする

先生や関係者を対象とした間接支援

保育所等訪問支援の2つ目の業務内容は、訪問先の先生や関係者を対象にした間接支援です。子どもが安心して集団生活を送るためには、普段から子どもに接する先生や関係者が、子ども一人ひとりが抱える障がいの特性を理解して、子どもに寄り添った関わり方を学ぶことが重要です。そこで、訪問先の子どもが過ごしやすくなるように、支援員が先生や関係者に障がいを持つ子どもへの適切な対応方法を提案します。具体的な間接支援は次の通りです。

・運動会や発表会への参加方法や教材の提案
・教材作成の手助け
・先生や関係者に対する具体的な助言

環境整備

保育所等訪問支援の3つ目の業務内容は、環境整備です。集団生活を送る子どもたちの中には、自身の特性を理解されずに困難を抱えるケースが多く見受けられます。こうした子どもたちを支援するために、保育所等訪問支援では、専門的な知識を活用し、子どもが快適に過ごせる環境を整える取り組みを行っています。例えば、視覚的にわかりやすい指示やルールを掲示することや、感覚過敏を持つ子どもに配慮して、音や光の調整を行うことが挙げられます。また、教室内に色分けされたサインを設置することで、子どもたちが自分の行動を理解しやすくすることができます。このような環境整備を通じて、子どもたちがより快適に過ごせるよう支援することが、保育所等訪問支援の重要な役割と言えるでしょう。

保育所等訪問支援の訪問先は?

園や学校

保育所等訪問支援の訪問先の1つ目として、保育園や幼稚園、または学校などの教育現場が挙げられます。具体的な対象施設は次の通りです。

・保育所
・幼稚園
・認定こども園
・小学校
・中学校
・高等学校
・特別支援学校

ここでは、専門の支援員が子どもの発達や行動に対する個別支援を行ったり、保育士や教員に対して適切なアドバイスをしたりします。これにより、子どもが安心して園や学校生活を送れる環境が整いますよ。

入所施設

保育所等訪問支援の訪問先の2つ目は、入所施設です。入所施設は、特別な支援が必要な子どもたちが長期的に生活する場所であるため、日常生活や学習面での支援が求められます。具体的な対象施設は次の通りです。

・乳児院
・児童養護施設
・児童心理治療施設
・児童自立支援施設

訪問支援の支援員は、こうした施設に足を運び、個別のニーズに応じたケアや指導を提供します。また、施設職員とも密に連携し、子どもたちが安心して生活できるような環境作りを行いますよ。

自治体が認めた施設

保育所等訪問支援の訪問先の2つ目は、自治体が認めた施設です。これらの施設は、発達支援や療育が必要な子どもたちを受け入れるために、自治体によって指定された特定の支援機関です。具体的な対象施設は次の通りです。

・フリースクール
・児童発達支援
・放課後等デイサービス
・学童

訪問支援の支援員は、こうした施設を訪問し、子ども一人ひとりのニーズに合わせた支援を行います。また、施設職員とも協力し、支援の質を向上させるための助言や指導を行いますよ。

保育所等訪問支援で働く支援員の資格

児童指導員

保育所等訪問支援で働く支援員が取得している資格の1つ目は、児童指導員です。児童指導員は、子どもに直接関わり、健全な育成を支援します。具体的には、子どもの生活指導計画の作成や家庭的な援助、保護者との面談などが挙げられます。児童指導員になるには、児童指導員任用資格という資格を取得する必要がありますよ。任用資格の要件は全部で6種類あり、いずれかの要件を満たしたうえで、地方公務員試験や各施設の採用試験に合格する必要があります。児童指導員について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。

保育士

保育所等訪問支援で働く支援員が取得している資格の2つ目は、保育士です。保育士とは、子どもの保育や保護者への保育指導を行う国家資格です。保育士の仕事は、子どもの日々の記録や直接関わることだけではなく、保護者や関係機関との連携など、多岐にわたりますよ。保育士試験の受験資格は、最終学歴ごとに細かく定められており、その中の1つでも満たしていれば受験することが可能です。保育士について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。

理学療法士

保育所等訪問支援で働く支援員が取得している資格の3つ目は、理学療法士です。理学療法士は、怪我や病気などにより身体に障がいがある人や、障がいの発生が予想される人に対し、運動療法や物理療法を行います。理学療法士の主な仕事は、検査測定や評価、記録作成や住宅環境の整備など、体の動作に関わる事のサポートです。理学療法士になるためには、理学療法士国家資格を取得する必要がありますよ。この試験の受験資格を得るためには、専門の養成校で3年以上学んだ後、決められた過程を終了する必要があります。理学療法士について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。

作業療法士

保育所等訪問支援で働く支援員が取得している資格の4つ目は、作業療法士です。作業療法士は、心身に障がいを持つ人に対して、心と身体のリハビリを行います。主な仕事内容は、食事や入浴、料理などの日常生活に大切な応用的動作の訓練や、社会参加を目的とした精神的なケアなどです。作業療法士になるためには、作業療法士国家試験に合格する必要があります。その受験資格を取得するためには、文部科学大臣か厚生労働大臣が指定した養成施設で3年以上学ぶ必要がありますよ。作業療法士について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。

心理担当職員

保育所等訪問支援で働く支援員が取得している資格の5つ目は、心理担当職員です。心理担当職員は、障がいを持つ子どもに対して、心理学の知識に基づいた指導や助言を行います。主な仕事内容は、心身に障がいや課題がある子どもに対して、日常生活の問題についての個別指導や、集団行動における課題の改善につながる提案などです。心理担当職員になるために取得しなければいけない資格はありません。しかし、学校教育法の規定により、大学の学部で心理学を専修するなどの条件を満たす必要がありますよ。心理担当職員について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。

その他

保育所等訪問支援で働くことができる資格は、他にもたくさんあります。例えば次のような資格です。

児童発達支援管理責任者:障がいのある子どもに対する療育や支援を推進しているリーダー

サービス管理責任者:障がいを抱える人に対し、支援を提供できるようにサービスの内容や品質を管理する

言語療法士:言葉によるコミュニケーションに問題がある方に専門的なサービスを提供する

保育所等訪問支援の支援員になるためには、資格だけではなく、障がいに関する知識や経験、対応力などが求められますよ。

保育所等訪問支援事業所の数は?

令和2年時点で843施設

保育所等訪問支援を実施している事業所の数は少なく、令和3年の資料によると985施設で利用者数は1月の平均で8894名となっています。保育所等訪問支援が創設された平成24年から増加傾向ではありますが、児童発達支援や放課後等デイサービスと比較すると、小規模であると言えるでしょう。

施設数1月平均利用者数
保育所等訪問支援9858,894
児童発達支援7,722118,850
放課後デイサービス15,408243,454

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000824134.pdf

保育所等訪問支援事業所で働く人の給与は?

保有資格や経験年収によって変動する

保育所等訪問支援の給与や待遇は、保有する資格や経験によって変動します。それぞれの資格の給与の目安を紹介します。

・児童指導員
平均年収343万円
月給21~29万円

・保育士
平均年収330万円
月給21~28万円

・理学療法士
平均年収371万円
月給22~31万円

・作業療法士
平均年収364万円
月給21~30万円

・心理担当職員
平均年収361万円
月給21~30万円

・児童発達支援管理責任者
平均年収420万円
月給25〜30万円

これらの平均年収から推定すると、保育所等訪問支援で働く支援員の平均年収は約350万円ほどになります。

参考:求人ボックス | 給料ナビ

まとめ

新しい形の療育で障がいを持っている子どもを支援しよう!

いかがでしたか。今回は、保育所等訪問支援について詳しく解説しました。保育所等訪問支援とは、集団生活の場に支援員が訪問して、障がい児を支援する取り組みです。改正児童福祉法によって平成24年に創設されました。障がいや課題を抱えている子どもと、健常児が共に生活することで、お互いの理解を深め合うという新しい形の療育ですよ。障がいを持つ方の地域参加を目指すこれからの社会では、保育所等訪問支援は欠かせない支援と言えるでしょう。