二次障害とは?【簡単に・ADHD・うつ・発達障害・予防・症状・例】

既に持っている障害が引き起こす、新たな問題を二次障害と呼びます。今回の記事ではこの二次障害について、症状の種類や直し方を紹介していきます。また近年特に、発達障害の二次障害について注目が集まっています。ADHDをはじめとした発達障害が、二次障害を引き起こすプロセスについても詳しく解説していきますよ。療育分野で働く方や、療育分野への転職を考える方にぴったりの内容となっていますのでぜひこの機会にチェックしておきましょう!

二次障害を簡単に説明すると?

障害が引き起こす新たな問題

二次障害とは、すでにもっている障害が引き起こす新たな問題のこと。障害によってもたらされる生活上の困難や、周囲の不適切な対応が二次障害を引き起こす要因となります。また二次障害として現れる症状は、元となる障害の種類や個人の性格によって異なります。例えばうつ病をはじめとした精神疾患として現れるケースもあれば、不登校等の問題行動として現れるケースもありますよ。以下では二次障害の種類について、詳しく紹介していきます。

二次障害の症状

内在化障害

うつ病

二次障害には、内在化障害と外在化障害の2つの種類があります。

  • 内在化障害
    苛立ちや葛藤が自分自身に向けられ、精神的または身体的な不調として現れたもの
  • 外在化障害
    苛立ちや葛藤が、他者に影響を与える言動や行動となって現れたもの

ここでは内在化障害に分類される二次障害の例を紹介していきますよ。初めに紹介する内在化障害はうつ病です。

うつ病とは
気分の落ち込みや意欲の低下、不安・イライラなどの精神的な症状がみられる病気。
うつ病の精神症状
・気分が落ち込む
・意欲がなくなる
・不安・焦り・イライラ感
・集中できない
・口数が少なくなる
うつ病の身体症状
・口数が少なくなる
・頭痛
・耳鳴り
・睡眠障害
・動悸
・めまい
・食欲不振
・便秘・下痢

適応障害

次に適応障害について紹介します。

適応障害とは
日常生活の中で起こった出来事や環境に対してうまく対処できず、心身に様々な症状が現れて社会生活に支障をきたす障害。またストレスの原因が明確であることが診断基準の一つであり、ストレス原因がなくなると症状は改善または消失する。
適応障害の症状(一部)
・ゆううつな気分
・不安感
・自律神経失調症状(頭痛・吐き気・めまいなど)

不安障害

続いて不安障害について紹介します。

不安障害とは
心配や不安が過度になることで、日常生活に影響が出る障害。精神的な不安から、こころと体に様々な不快な変化が起きる。

不安障害の例

  • パニック障害
    突然理由もなく激しい不安に襲われて、心臓がドキドキする、めまいがしてふらふらする、呼吸が苦しくなるといった状態となり、場合によっては死んでしまうのではないかという恐怖を覚える障害。
  • 社会不安障害
    人に注目されることや人前で恥ずかしい思いをすることが怖くなって、人と話すことだけでなく、人が多くいる場所(電車やバス、繁華街など)に、強い苦痛を感じる障害
  • 強迫性障害
    つまらないことだとわかっていてもある行為をやめられず、くりかえし同じことをしていないと不安でたまらなくなる障害
  • 全般性不安障害
    学校のことや家族・友達のこと、生活上のいろいろなことが気になり、極度に不安や心配になる状態が半年以上続く障害

強迫性障害

上記で紹介した不安障害の一つである、強迫性障害についてより詳しく紹介します。

強迫性障害とは
きわめて強い不安感や不快感をもち、それを打ち消すための行為を繰り返す障害。
強迫性障害の症状(一部)
不潔恐怖: 例体に汚れが付くことに対して極度の不快感があり、手洗い等を繰り返す。
確認行為: 鍵がかかっているかや、ガス栓が閉まっているかを何度も確認しないと気が済まない
儀礼行為: 自身がきめた手順で物事をすすめないと気が済まない

依存症

最後に紹介する内在化障害は、依存症です。

依存症とは
特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態になること。特定の行為を繰り返すことで脳の回路が変化し、自分の意志ではやめられなくなってしまうコントロール障害。
物質への依存
・アルコール
・たばこ
・薬物
行為・プロセスへの依存
・ギャンブル
・パチンコ
・買い物
・盗癖
・性

外在化障害

反社会的行動

続いて苛立ちや葛藤が他者向けられる外在化障害について触れていきます。初めに紹介するのは反社会的行動です。

反社会的行動とは
ストレスが法律や習慣といった社会規範に大きく反した行為となって現れること。
反社会行動の例
・窃盗
・暴力
・家出・放浪
・(未成年の)飲酒・喫煙
・不純異性交遊

窃盗や暴力といった反社会的行動は、個人の性格が原因であると考えられがちです。しかしながら性格のほかに、障害を抱えることによるストレスが要因となっている可能性があります。

反抗挑戦性障害

続いて紹介する外在化障害は、反抗挑戦性障害です。

反抗挑戦性障害とは
否定的、反抗的、不服従の行為を繰り返し起こす病気。多くの場合、権威のある人物が対象になる。
反抗挑戦性障害の症状
・他人と口論する
・挑発的な行動をする
・すぐにカッとなることが多い
・積極的に規則や指示に逆らう
・わざと人を困らせる
・自分のミスを人のせいにする
・頭に血が上り、怒りっぽく、すぐイライラする
・意地悪

反抗挑戦性障害は反抗的な行動の頻度や内容、継続期間などを加味したうえで医師によって診断されます。反抗期との区別が難しいので、反抗的な行動が続いた際には専門家に相談しましょう。

子供の二次障害はいつから見られる?

早い場合は1歳から見られる

子供の2次障害は、早い場合には1歳から見られます。二次障害は、障害を持つ人であれば誰しもがなりうるもの。先天性の障害をもつ子供の場合は、1歳で二次障害の症状が現れる場合もあるようです。しかしながら乳幼児期の子供は個人差が大きく、二次障害を特定するのは困難です。また二次障害である場合、まずはその原因となる一次障害を明らかにし治療を進める必要があります。心配事がある場合は、まず専門家へ受診するようにしましょう。

発達障害が二次障害を引き起こすプロセス

ADHDは問題行動が起因に

近年発達障害が注目される中、発達障害から生じる二次障害に関心が寄せられています。ここからは発達障害が二次障害を引き起こすプロセスについて解説していますよ。

初めに解説するADHDは、不注意や多動性・衝動性を主な症状とする発達障害です。集中を保てない、思いついたままに行動してしまうといったADHDの症状は、社会生活への適応を困難にします。学校や仕事場で繰り返し注意や叱責をうけ、認められていないと感じる経験を重ねることが、二次障害を引き起こす要因となります。

自閉症は人間関係の困難が起因に

自閉症(自閉スペクトラム症)の子供は、相手の表情を読み取ったり、自分の考えを表現したりすることが苦手であるという特徴を持っています。このため他者とコミュニケーションをとることが難しく、学校や職場において孤立してしまったり、いじめられたりする経験をもつことが多いようです。このようにコミュニケーションの困難による人間関係のストレスが、自閉症の二次障害を引き起こす要因となります。

学習障害は繰り返しの失敗経験が起因に

学習障害を持つ子供は、読み書きや計算といった一部の学習能力に極端な発達の遅れが生じます。一方で全般的な知能の発達には遅れが見られないのも学習障害の特徴の一つ。このため学習障害による学習の遅れついても、努力不足や甘えととらえられてしまうことがあります。本人は努力しているのにもかかわらず失敗を重ねる経験がストレスへとつながり、二次障害を引き起こす要因になります。

二次障害は治らない?

治る可能性もある

多くの二次障害は、治る可能性があります。というのも、二次障害は発達障害のような生まれつきの病気ではなく、病気によって生じた後天的な問題であるためです。また二次障害と一口にいっても、上記で紹介したような多様な現れ方があります。障害や問題の種類によって解決の方法は異なるため、適切な支援が行えるよう専門家のサポートを受けましょう。また、より根本的な解決を図るためには、二次障害のもととなる病気との付き合い方を身に着けることが重要となります。

二次障害を治す方法【予防にも】

医療機関へ相談する

二次障害の治療を行う際、最初に行うべきことは医療機関を受診し医師から診断や指導を受けることです。周囲の人が自己判断で治療や指導を行うと、二次障害を改善するどころか悪化させてしまう可能性がありますよ。必ず医師の指示に従い、適切な支援に繋げましょう。また、二次障害はできるだけ早く対処し、さらなる悪循環を止めることが大切です。子供の様子がいつもと違うと感じたら、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。

環境を調節する

環境を調節することで、二次障害の改善につながる可能性があります。子供の場合は、保育所等訪問支援や放課後等デイサービスといった発達支援を利用し、安心して過ごせる場所を確保するのも一つの手です。一方で転校のような大きな環境の変化は、子供にとってはストレスにもなるため、本人の意向に沿ったかたちで計画的に進めるようにしましょう。また家族が本人のもつ障害について理解し、適切な対応を行うことも効果的ですよ。

生活リズムを整える

生活リズムの乱れが、二次障害との悪循環を招いている可能性があります。以下で紹介するポイントを意識して、規則正しい生活が送れるようにしましょう。一方で、ストレスや障害によって以下の取り組みが難しい場合もあります。そういった場合は薬物療法やカウンセリングといった治療と組み合わせながら、徐々に生活リズムを改善していきましょう。

  • 朝に日の光を浴びる
  • 朝ご飯を食べる
  • 昼間に運動や勉強などの活動をしっかりと行う
  • 夜は部屋を暗くし、リラックスする時間をとる
  • 就寝の2~3時間前に入浴する

定期的にストレス発散する

二次障害の原因はストレスであるため、定期的にストレス発散を行うことも大切です。この際いろいろなストレス発散法を試し、本人が得意なことや、夢中になって取り組めることを探すのがおすすめです。自分の好きなことや得意なことに取り組むことでよりポジティブな気持ちになることができますよ。

ストレス発散の例
・読書
・運動
・入浴
・カラオケ
・音楽鑑賞
・お絵描き
・ゲーム

まとめ

二次障害の予防と対処を理解して療育に活かそう!

今回の記事では、二次障害の種類と治し方について解説しました。二次障害が生じた場合、まずは医療機関を受診し、適切な指示をうけることが重要です。また二次障害の原因はストレスですので、環境調節によって本人が安心して過ごせる環境を整えることや、ストレスを発散することも治療の一つとなります。またこれらの治療法は、二次障害の予防にも有効ですよ。今回の記事で紹介した二次障害に関する情報を、ぜひ療育に役立ててくださいね!

引用文献

医療法人永明会 名駅さこうメンタルクリニック 「適応障害の診断、具体例とともに」
厚生労働省 「依存症についてもっと知りたい方へ」
厚生労働省 eヘルスネット「強迫省/強迫性障害」
厚生労働省 eヘルスネット「適応障害」
厚生労働省 こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~体がだるい、眠れない、・イライラする……、こころの健康が気になるときに。 「不安障害」
こころの健康情報局 スマイルナビゲーター うつ病 「うつ病ABC うつ病早わかりガイドです」