感覚特性とは?【発達障害・ASD・自閉スペクトラム症・チェックシート】

にぎやかな場所で急に不安そうになったり、服のタグや靴下の感触をとても嫌がったり、そんな子どもたちの姿を身近で見かけたことはありませんか?実はこうした様子の背景には、感覚特性と呼ばれるその子ならではの感じ方が関係していることがあります。感覚特性を知ることは「なぜこの行動をするのかな?」と子どもの気持ちを理解するための大きな手がかりになります。子ども自身は理由を言葉で伝えられないことが多いため、大人が気づいて寄り添うことが大切ですよ。この記事では、子どもの感覚特性の種類や関わり方のポイントを分かりやすくまとめています。理解を深めて、感覚特性を持った子どもたちが安心して過ごせるよう一緒に考えていきましょう!

感覚特性とは?

刺激に対する感じ方や反応の個人差のこと

感覚特性とは、体の内側や外側から受けた刺激を、脳がどう受け止めるかによって生まれる、感じ方や反応の個人差のことです。そもそも感覚とはどういったものでしょうか?よくイメージされるのは、五感と呼ばれる5種類の感覚ですよね。五感は、体の外側から受けた刺激を感じ取るものです。一方で、前庭感覚・固有感覚と呼ばれる、体の内側から刺激を感じ取る感覚も存在します。しかしながら、これらの感覚はあくまで受容器としてのみ機能しており、刺激を処理することはできません。人が刺激をどう感じるかは、感覚器官ではなく最終的に脳の認識の仕方によって決まりますよ。詳細なポイントは以下のとおりです。

  • 体の外側から受けた刺激を感じ取る感覚
    視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚
  • 体の内側から刺激を感じ取る感覚
    前庭感覚‥体の揺れや傾きを感じ取り、姿勢やバランスを保つ
    固有感覚‥筋肉や関節から、体の動きや力の入れ具合を感じ取る

  • が受け取った刺激を処理する

    人それぞれ異なる感じ方・反応が生まれる=感覚特性

感覚特性は主観的なもので、人それぞれ個性があるものだと認識しましょう。周囲の子どもたちと感じ方や行動が異なるからといって問題だと判断せず、前向きに対処の方法を考えることが重要ですよ。

主な感覚特性の3つのタイプ

①刺激を強く感じる感覚過敏

感覚特性には、主に3つのタイプが存在します。まず1つ目は、感覚過敏です。感覚過敏とは、音・光・におい・触覚・揺れなどの刺激を脳が必要以上に強く受け取ってしまう特性のことです。具体的には次のような種類があります。

  • 視覚過敏
    蛍光灯や日差しがまぶしすぎたり、しま模様や点滅を見ると目が疲れたりして、気分が悪くなる。
  • 聴覚過敏
    掃除機やチャイム、人の話し声など特定の音が必要以上に大きく感じてつらい。
  • 味覚過敏
    味が濃すぎると感じたり、特定の食感(ドロドロ・ザラザラなど)が苦手で食べられなかったりする。
  • 嗅覚過敏
    香水や洗剤、食べ物のにおいが強く感じられ、気分が悪くなる。
  • 触覚過敏
    服のタグや素材がチクチクして不快だったり、軽く触られるだけでも強く気になったりする。
  • 前庭感覚過敏
    ブランコやエスカレーター、高い場所で強い不安や怖さを感じる。
  • 固有感覚過敏
    人とぶつかることや体を押されることに強く反応し、不快に感じやすい。

このように、日常生活のなかで不快・苦痛・疲労として感じやすくなるのが特徴です。その結果、遮断・回避行動として現れる場合が多いと言えるでしょう。

②刺激を感じにくい感覚鈍麻

2つ目は、感覚鈍麻です。感覚鈍麻とは、音・光・痛み・触覚・動きなどの刺激を脳が感じ取りにくい特性のことです。具体的には次のような種類があります。

  • 触覚鈍麻
    転んで擦りむいても痛がらず、ケガに気づかない。熱いものが触れていても気づかず、火傷しやすい。暑さや寒さを感じにくい。
  • 視覚鈍麻
    物をよく見落とし、目の前の変化に気づきにくい。
  • 聴覚鈍麻
    名前を呼ばれても反応が遅く、音に気づきにくい。
  • 味覚鈍麻・嗅覚鈍麻
    味やにおいに鈍く、濃い味や強いにおいを好む。
  • 前庭感覚鈍麻
    揺れや回転、スピード感を感じにくく、回る・高速で走る・ジャンプを繰り返すなど激しい動きを好む。止まると物足りなく感じる。
  • 固有感覚鈍麻
    体の位置や力加減を感じにくく、人や物にぶつかりやすい。ドアを強く閉めたり、鉛筆を強く押しすぎたりする。

感覚鈍麻は、痛みや疲労感に気が付きにくく、知らぬ間に怪我や無理をしていたということが起こりやすいです。また、刺激に鈍感であるがゆえに、強い刺激を無意識に求めている状態であることも特徴と言えるでしょう。

③強い刺激を求める感覚探求

3つ目は、感覚探求です。感覚探求とは、体が必要としている刺激を自ら補充しにいく行動のことです。具体的には次のような種類があります。

  • 前庭感覚の探求
    ぐるぐる回る、ジャンプを繰り返す、ブランコを強く・長くこぐ、高い所に登りたがる、走り回る、車やエレベーターで揺れを楽しむ。
  • 固有感覚の探求
    人に強くぶつかる・抱きつく、物を強く押す・引く・握る、重い物を運びたがる、きつく包まれると落ち着く。
  • 触覚の探求
    いろいろな物を触り続ける、他人に頻繁に触れる、砂・水・粘土などの感触遊びを好む、血が出るまで掻く・噛む。
  • 味覚・嗅覚の探求
    からい・濃いなどの刺激の強い味を好む、何でも匂いを嗅ぐ、ガムを噛み続ける、口に物を入れたがる。
  • 聴覚・視覚の探求
    大きな音を出したがる、反響を楽しむ、点滅する光や動く映像をじっと見る。

先述した感覚鈍麻の特性がある場合に、感覚探求として行動に現れやすいことが特徴と言えますね。

感覚探求と常同行動の違いとは?

目的が刺激の補充か不安の解消かの違い

感覚探求と常同行動は、行動として目に見えるという共通点があり混同されがちですが、その目的や原因には違いがあります。具体的には、以下のとおりです。

項目感覚探求常同行動
主な目的不足した感覚刺激を補う安心・安定を得る、不安を解消する
原因感覚鈍麻や刺激不足不安・ストレス・環境変化
様子能動的(自ら探しに行っている)自動的(気がついたらしている)
行動の例回る・強く噛む・押す・跳ぶなど手をひらひら動かす・体を揺する・指を舐める・爪を噛む・同じ道順にこだわるなど
刺激との関係強い衝撃や痛みを求める刺激の種類に関係なく、安心のために同じ動作や行動を繰り返す

感覚探求は不足している刺激を補充するための行動であり、常同行動は不安を解消するための繰り返し行動であることがポイントですね。ただし、同じ行動が両方の目的を兼ねる場合もあるため、注意が必要です。また、感覚探求や常同行動自体が問題となるわけではありませんが、他者や周囲を巻き込んだり、害を与えたりする場合には対応を考えなければなりません。それぞれの特性を理解して、環境整備や行動の置き換えを図るなど内容によって対応を工夫していきましょう。

常同行動については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

主な原因とは?

発達段階による要因

感覚特性の背景には、子どもの発達段階や感覚統合能力(いろいろな感覚をひとつにまとめて使う力)の育ちが深く関わっています。たとえば、まだ感覚をうまくまとめる力が育ち途中の時期には、友だちや物に強く触れることで体の感覚を確かめようとすることがあります。他にも、音や光に敏感で泣き出してしまう子がいるかもしれません。しかし、日々の遊びや生活のなかで体の使い方が上手になるにつれて、落ち着いて過ごせるようになるケースが多くありますよ。成長とともに気になっていた行動がなくなる場合があるため、すぐに問題や病気と捉える前に、子どもの成長過程をよく観察することが大切ですね。

感覚統合については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

遺伝子的要因

他にも、生まれ持った気質や遺伝的な要因が関わっている場合もあります。家族のなかに音に敏感な方や、におい・肌触りに強いこだわりを感じやすい方がいると、子どもにも似た感覚特性が見られることがあります。こうした特性は育て方のせいではなく、その子がもともと持って生まれた個性のひとつです。だからこそ、大人は無理に変えようとするのではなく、「この子はこう感じやすいんだね」と受け止めながら、安心して過ごせる環境を整えていくことが大切ですよ。

環境要因

子どもを取り巻く環境による影響も大きく関わっています。たとえば、生活音が多く人の出入りが激しい場所で過ごす時間が長いと、音に敏感になったり、反対に音に気づきにくくなることがあります。外遊びの機会が少なく体を動かす経験が限られていると、回る・跳ぶといった動きを強く求めるようになることもあるでしょう。他にも、連休明けや生活のリズムが崩れた時期に「いつもより音を嫌がっているな」と感じることがあるかもしれません。このような場合は、環境を変えたり規則正しい生活に戻ったりすると、すぐに落ち着くケースがほとんどです。環境の変化や体調不調によって、一時的に強く表れる場合があることも知っておくと良いでしょう。

心理的要因

子どもの心の状態に関わる心理的な要因が影響していることもあります。環境の変化や人間関係によるストレスが続くと、ホルモンバランスが乱れ、音や触れられることにいつも以上に敏感になることがあります。また、不安な気持ちが強いと脳が危険を察知しやすくなり、ちょっとした刺激にもドキッと反応してしまうことがあるでしょう。過去に大きな音で驚いた経験や、怖い思いをした体験がきっかけで、似た場面を避けるようになる子もいます。こういった場合は、わがままではなく「心が一生懸命サインを出しているんだな」と受け止め、安心できる関わりを重ねていくことを大切ですよ。

関連性のある発達特性とは?

ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)とは、発達特性のひとつで、生まれつき脳の情報処理の仕方に特徴があります。ASDの特性がある人は、感覚特性や常同行動が見られやすいです。また、これらが単独ではなく組み合わさって現れることが多いのも特徴と言えるでしょう。身近に発達特性を持つ子どもがいる場合には、感覚特性を十分に理解するよう心掛けると良いですね。以下ではASDの具体的な行動パターンと、感覚特性との関連性についてご紹介します。

    ASDの具体的な行動パターン
  • 人の表情や言葉の意図を読み取りにくい
  • 自分の興味や関心に強くこだわる
  • 感覚に敏感だったり鈍感だったりすることがある

区分ASDとの関連
感覚過敏非常に多く見られる
感覚鈍麻見られることがある
感覚探求ASDの子どもに多く見られる
常同行動ASDの中核的特徴のひとつ

ASDについては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

ADHD(注意欠如・多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)も、ASDと同様に発達特性のひとつで、生まれつき脳の情報処理や注意の向け方、衝動のコントロールに特徴があります。特に感覚探求は、ADHDの注意が逸れやすい・衝動的に動いてしまうといった特性と重なって表れることがあるでしょう。保育の場や家庭内で、その子の特性をよく理解しておくことが大切ですね。以下ではADHDの3つの特徴と、感覚特性との関連性についてご紹介します。

    ADHDの3つの特徴
  • 不注意:宿題や片付けに集中しにくく、すぐに気が散ってしまう
  • 多動:座っているのが苦手で、手足を動かしたり歩き回ったりする
  • 衝動性:思いついたことをすぐ行動に移してしまい、順番を待つのが難しい

区分ADHDとの関連
感覚過敏時々見られる
感覚鈍麻時々見られる
感覚探求ADHDで見られることがある
常同行動衝動や注意の移りやすさで現れることがある

ADHDについては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

子どもの感覚特性を見極める方法は?

日常での観察するべきポイントを知る

感覚特性は、日々の生活のなかでの関わりや観察を通して気づけることが多いです。具体的には、以下のような行動が手がかりになるでしょう。

  • 五感
    音がすると耳をふさぐ、においに敏感に反応する、服の素材を嫌がる
  • 前庭感覚
    ブランコやすべり台を何度も繰り返す、高い所を怖がる
  • 固有感覚
    友だちにぶつかりやすい、物を強く握る、ぎゅっと抱きしめられると落ち着く

何気ない日々の様子を丁寧に見つめるとともに、全体的な傾向を知ることが重要ですよ。

成長過程での変化パターンを知る

感覚特性は生まれてからずっと同じ状態で続くものではなく、成長の過程に応じてさまざまな変化の仕方を見せることがあります。具体的には以下のようなパターンが考えられます。

  • 一時的パターン
    乳幼児期など特定の発達段階で一時的に現れ、経験を重ねるなかで自然と落ち着いていく
  • 変動パターン
    環境の変化や疲れ、不安などのストレスによって強さが変わる
  • 持続パターン
    成長しても特定の感覚過敏が長く続く

感覚特性があるからといって、必ずしも発達障害であるとは限りません。「このまま様子を見ていいのかな」「誰かに相談した方がいいかな」と迷ったときには、地域の子育て支援センターや保健センターに気軽に相談するのも大切な一歩ですよ。

チェックシートを活用する

子どもの感覚特性を知るためには、感覚特性チェックシートを活用する方法がおすすめです。五感だけでなく、前庭感覚や固有感覚、視覚認知など細かい項目に分かれているため、普段の様子を振り返りながら無理なく整理することができますよ。記入後は感覚特性を見える化したシートとして出力でき、視覚的に分かりやすく、その子に合った関わり方や対処法を具体的に考えやすくなります。言葉で気持ちを伝えるのが難しい子どもにとっても、答えやすい点が安心ですね。チェックシートは診断ではなく判断材料のひとつとして、無理のない形で活用していきましょう。

感覚特性のある子どもへの対応は?

感覚過敏の子どもに対する接し方

感覚過敏のある子どもと関わるときに大切にしたいのは、減らす・守る・選ばせるという姿勢で支えることです。

  • 慣れさせようと無理に刺激を与えない
    かえって不安や拒否を強めてしまう場合があります。
  • 嫌がる刺激を避けられる環境を整える
    大きな音・まぶしい照明・チクチクする素材など、子どもがつらいと感じやすい刺激を、できる範囲で避けられる環境に整えましょう。
  • 子どもが負担を減らせる選択肢を用意する
    イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホン、サングラス、肌触りの違う衣服など、代替手段があることで安心感が高まります。
  • 事前に説明を行い心の準備をさせる
    急な刺激は不安を強めやすいため「あとで音が鳴るよ」「少し明るい場所に行くよ」と伝えるだけでも、受け止め方は大きく変わります。
  • 気にしすぎと否定しない
    感じ方の違いを尊重されることで、子どもは安心して自分の状態を伝えられるようになります。

こうした安心できる経験を積み重ねていくなかで、結果として刺激への耐性が少しずつ育っていくことが多くありますよ。

感覚鈍麻の子どもに対する接し方

感覚鈍麻のある子どもと関わるときに大切にしたいのは、気づかせる・補う・見える化するという関わり方を意識することです。

  • 声かけは近くで行い、視覚情報も添える
    離れた場所から呼ぶのではなく、近くに寄って目に入る位置で行い、必要に応じてジェスチャーや指差しなどの視覚的な情報を添えます。
  • 痛みや疲れに気づきにくい前提で見守る
    本人の訴えだけに頼らず、大人が意識的に様子を確認しながら見守ることが大切です。
  • 動作や力加減を言葉で伝える

    「もう少し力を弱くしよう」「今は止まるよ」など、感覚に頼らず理解できるように言葉で具体的に伝えましょう。

気づきにくい特性があるだけという理解を周囲で共有することが、安心して過ごせる環境づくりにつながりますよ。

感覚探求の子どもに対する接し方

感覚探求のある子どもと関わるときに大切にしたいのは、止めない・置き換える・先に満たすという姿勢で理解し支えることです。

  • 危険でなければ無理に止めない
    命の危険や大きなケガにつながらないものであれば、理由もなく無理に止めないことが大切です。
  • 目的に合った安全な刺激に置き換える
    回る感覚を求めている子どもには、トランポリンやブランコ、くるくる回る遊び。強く触りたい・押したい欲求がある子どもには、重い物を運ぶ活動や、壁やクッションを押す遊び。
  • 活動前に感覚を満たすと落ち着きやすい
    外遊びの前に体を動かす時間を取る、感覚遊びを入れるなど、先回りした関わりが効果的。

感覚探求の行動は、ふざけているわけでも言うことを聞かないわけでもなく、体や脳が必要としている刺激を得ようとする自然な行動です。周囲がその意味を理解し、適切に支えることで、子どもは安心して行動できるようになるでしょう。

まとめ

感覚特性を理解して生きづらさを解消しよう

いかがでしたか?感覚特性について考えるときは、人それぞれの感じ方に正解や不正解はないという視点を持つことが大切です。特性そのものを問題として捉えるのではなく、その子の感じ方と、今いる環境や周囲の理解がうまく合っていないのかもしれないと、一度立ち止まって考えてみましょう。そうすることで、子どもへの関わり方は自然とやさしいものに変わっていきます。子どもが感じている生きづらさを少しずつ減らし、より快適に暮らせるよう支えられる大人を目指していきましょう!