ゲーム障害という言葉を聞いたことがありますか?2019年5月、世界保健機関は正式にゲームへの依存をゲーム障害として疾患に分類しました。現代はスマートフォンやパソコン、家庭用ゲーム機の普及により、気軽にオンラインゲームを楽しむことができます。たとえば、人気のシューティングゲームVALORANTでは、世界大会が日本で開催されるほど多くのファンがいますよ。ゲームを通して仲間とつながったりストレスを発散したりする人がいる一方で、ゲームをやめられず、生活リズムが乱れてしまう人も増えています。今回は、そんなゲーム障害について、原因や対処法をわかりやすくお伝えしていきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
ゲーム障害とは?
ゲームに没頭して依存すること

ゲーム障害とは、ゲームに夢中になるあまり、自分の意思ではやめられなくなってしまう依存状態のことを指します。ゲーム障害の原因は、アルコール依存やギャンブル依存と同じように、脳の報酬系と呼ばれる部分が関係していると考えられています。たとえば、オンラインゲームで勝利したときの達成感や、レアアイテムを手に入れたときの喜びが忘れられず、つい「もう1回だけ」と繰り返してしまうのです。特にオンラインゲームは、常に新しいイベントやアップデートがあり、終わりが見えにくいという特徴がありますよ。さらに、ゲーム内で仲間ができると「みんなと遊びたい」という気持ちから抜け出しにくくなり、日常生活に支障をきたすこともあります。
子どものゲーム障害の診断基準
ゲームの時間をコントロールできない

子どものゲーム障害の診断基準の1つに、ゲームの時間を自分でコントロールできないというものがあります。たとえば、「あと10分だけ」と思っていても気づけば深夜になってしまう、宿題や食事の時間になってもやめられない、というような状態です。こうした状況が1年以上続く場合、ゲーム障害の可能性が高いとされていますよ。ただし、症状が重い場合は、1年未満でも診断されることがあります。本来であれば、翌日の学校や仕事に備えて早めに寝たいところですが「次のステージをクリアしたい」という気持ちが強くなり、つい時間を忘れてしまうのです。
ゲームの優先度が何よりも高い
子どものゲーム障害の診断基準の2つ目は、生活の中でゲームの優先度が極端に高くなることです。たとえば、
・ご飯の時間になっても手を止められない
といったように、日常生活よりもゲームを最優先してしまう状態です。特にオンラインゲームでは、仲間と同じ時間にプレイする必要があり、イベントが平日のお昼や深夜に行われることもあります。そのため、「今しかできないから」と無理をして起きていたり、学校や仕事を休んでしまうこともあるのです。このように、生活の中心がゲームになってしまう場合は、ゲーム障害のサインかもしれません。
悪影響があるのにゲームをやめられない

子どものゲーム障害の診断基準の3つ目は、ゲームによって日常生活に悪影響が出ているのに、やめられずに熱中して続けてしまうことです。たとえば、夜遅くまでゲームをして寝不足になり、学校での集中力が落ちて授業についていけなくなるといった影響が見られます。それでも「負けたまま終わりたくない」「次こそ勝ちたい」という気持ちが強まり、自分の意思でゲームをやめることができません。また、家族の声かけに反発したりイライラすることもありますよ。ゲームに依存する前は安定していた生活リズムが乱れてしまう場合は、注意が必要です。
生活や健康に支障が出ている
子どものゲーム障害の診断基準の4つ目は、ゲームに依存することによって学業や家庭生活、人間関係などに支障が出ていることです。たとえば、宿題を後回しにして成績が下がったり、家族との会話が減ったり、友達とのトラブルが増えたりなど、日常生活が不安定になることがありますよ。中には、朝起きられず学校を休むようになったり、友達との約束を守れず信頼を失ってしまうケースも見られます。このように、ゲーム中心の生活によって社会的なつながりが薄れてしまう場合は、早期の対処が必要です。
上記の症状が1年以上続いている

子どものゲーム障害の診断基準の5つ目は、これまでに挙げた1つ目から4つ目の症状が1年以上続いていることです。たとえば、毎日のように長時間ゲームをして睡眠時間が削られたり、学校や家庭でのトラブルが繰り返し起きている場合が当てはまります。一時的なのめり込みではなく、長期間にわたって生活の中心がゲームになっていると、心身の発達にも悪影響を及ぼすことがありますよ。こうした状態が1年以上続く場合、専門機関への相談を検討することが望ましいでしょう。
子どものゲーム障害の特徴
生活習慣が乱れている
ゲーム障害の子どもの特徴の1つ目は、生活習慣の乱れが見られることです。たとえば、夜遅くまでゲームを続けてしまい、
・朝食を抜いて登校する
・学校で眠くなり授業に集中できない
といった様子が見られます。休日には昼夜が逆転してしまい、家族と過ごす時間が減ってしまうこともありますよ。このように、ゲームを優先するあまり生活のリズムが崩れてしまうと、心や体の健康にも影響が出てしまうため、早期に習慣の見直しをしましょう。
ゲームのことばかり考えている

ゲーム障害の子どもの特徴の2つ目は、1日中ゲームのことばかり考えてしまうことです。たとえば、食事中や入浴中でも「次はどんなステージかな」「早く続きをしたい」と、頭の中がゲームでいっぱいになってしまいます。この状態が続くと、ゲーム以外の活動への関心が薄れて部屋にこもる時間が増える可能性がありますよ。やがて学校に行くのも面倒になって休みがちになり、勉強が遅れてしまうことがあります。そして「成績が下がってつらい」「行きづらい」と感じる気持ちを紛らわすために、さらにゲームにのめり込んでしまうという悪循環に陥ることもあるのです。
ゲームへの課金が多い
ゲーム障害の子どもの特徴の3つ目は、ゲームへの課金が増えすぎてしまうことです。もちろん、少しの課金で楽しむ程度であれば問題ありませんが、制限なくお金を使ってしまう場合は注意が必要です。たとえば、過去のニュースで話題になった中学生の男子は、親のクレジットカードを使って500万円以上も課金してしまったそうです。最初は「課金を許してくれたら学校に行く」と言っていたものの、次第に金額が増え、止められると暴言や暴力に発展してしまいました。このように、課金のために嘘をついたり、家族のクレジットカードを無断で使ったりする行動が見られる場合、ゲーム障害のサインと考えられます。
ゲームについて注意すると激怒する

ゲーム障害の子どもの特徴の4つ目は、ゲームをやめるように注意されると強く怒ってしまうことです。たとえば「もう寝る時間だよ」「宿題をしてからにしようね」と声をかけただけで、怒鳴ったり物にあたったりしてしまうことがあります。このような反応は、アルコール依存症やギャンブル依存症の人が制止されたときに見せる行動と似ており、依存が深まっているサイン。子ども自身が「やめたいのにやめられない」という葛藤を抱えていることも多く、感情が爆発してしまうのです。注意するときは、頭ごなしに叱るのではなく、気持ちを受け止めながら少しずつ話し合う姿勢が大切です。
子どもがゲーム障害になる原因
脳の神経伝達物質の異常

子どもがゲーム障害になる原因の1つ目は、脳の神経伝達物質の働きに異常が生じることです。その神経伝達物質とは、ドーパミンを指します。ゲームで勝ったときやレアアイテムを手に入れたときに分泌されるドーパミンという物質は、強い快感や達成感を与えます。それに加え、ドーパミンは1度に放出できる量が限られているため、すぐに枯渇します。この快感を何度も繰り返し感じるうちに、脳が「もっと遊びたい」と求めるようになり、ゲームをやめたいのにやめられない状態へとつながってしまうのです。特に成長期の子どもの脳は影響を受けやすく、依存に発展しやすいといわれていますよ。
精神的な障がいの併存疾患
子どもがゲーム障害になる原因の2つ目は、精神的な障がいが一緒にみられる併存疾患です。たとえば、ADHDやうつ病、不安障害などと併発した場合、悪化したり回復が遅れたりしますよ。こうした障がいからくる不安や現実のつらさから逃げるために、ゲームにのめり込む傾向です。ゲームの世界では努力がすぐに結果につながり、達成感や安心感を得やすいため、現実よりも居心地が良く感じてしまうのです。このような状態が続くと、ますますゲーム中心の生活になり、依存が深まることが考えられます。
子どものゲーム障害を治すには?
明確な治療法はまだ確立されていない

ゲーム障害は、2019年に世界保健機関によって正式な疾患として認められた、比較的新しい病気です。そのため、現在も明確な治療法や統一された対処法はまだ確立されていません。治療は主に、専門医やカウンセラーによるカウンセリング、家族のサポート、生活リズムの改善などを組み合わせて行われています。とはいえ、早期に気づき、周囲が穏やかに支えていくことで、回復の道につながるケースも多く報告されています。
認知行動療法

ゲーム障害の治療には、認知行動療法(CBT)が効果的といわれています。たとえば「ゲームをしていれば嫌なことを忘れられる」といった偏った考え方や習慣を見つけ出し、少しずつ現実的で前向きな考え方に変えていく方法です。治療では、ゲームをしたい衝動が起きたときの対処法や、外で体を動かしたり友達と話したりといった別の楽しみを見つける練習も行われますよ。無理にゲームをやめさせるのではなく、気持ちを整理しながら考え方のバランスを取り戻すことを目指します。
無理やりゲームを取り上げない
ゲーム障害の治療で大切なのは、無理にゲームを取り上げないことです。なぜなら、強引にゲームを禁止してしまうと、子どもは激しく反発し、かえって状況が悪化してしまうことがあるからです。たとえば、ゲームを隠したことで子どもが怒って暴れたり、嘘をついて隠れてプレイするようになったりするケースもあります。そのため、保護者と子どもが一緒にどうすれば上手にゲームと付き合えるかを話し合い、時間の決め方や気持ちの切り替え方を練習していくことが大切ですよ。大人が寄り添いながら、子ども自身で自分をコントロールする力を育てていく姿勢が、回復への第一歩となります。
ゲーム以外の体験を増やしてあげる

ゲーム障害の治療では、ゲーム以外の楽しい体験を増やしてあげることもとても大切です。子どもが夢中になれることが他にも見つかると、自然とゲームに費やす時間が減っていきます。たとえば、公園で友だちと遊んだり、サッカーやピアノなどの習い事に挑戦したり、ペットのお世話を通して責任感を育むのも良い方法ですよ。また、休日に家族で釣りやキャンプに出かけて、自然の中で過ごすのもおすすめです。こうした体験の積み重ねが、子どもの心を豊かにし「ゲーム以外にも楽しいことがたくさんある」と気づかせてあげるきっかけになります。
子どもがゲーム障害かも?と思ったら
ゲーム障害テストを受けてみる
「もしかして、うちの子はゲーム障害かもしれない」と感じたときは、まずネット上にあるゲーム障害チェックテストを受けてみるのがおすすめです。簡単な質問に答えるだけで、ゲームとの関わり方に偏りがないかを知ることができますよ。たとえば「ゲームをやめるとイライラする」「夜遅くまでプレイして睡眠不足になっている」などの項目を確認することで、注意すべきサインに気づける場合もあります。早期の気づきが、適切な対応につながります。下記のリンクからインターネットゲーム障害テストを受けることができます。
参考:久里浜医療センター
まとめ
ゲーム障害について知り対策しよう!
いかがでしたか?今回はゲーム障害について解説しました。アルコール依存症やギャンブル依存症と同じように、ゲーム障害も増加傾向にあり深刻な問題となっています。特に最近では、小学生のうちから長時間スマートフォンゲームに没頭してしまうなど、低年齢化も進んでいるのが現状です。手軽に遊べるゲームは、上手に付き合えば気分転換やストレス発散にもなります。時間を決めて遊ぶなど、親子でルールを作りながら楽しむことが大切ですね。


