皆さんは、異食症をご存知ですか?食べ物以外の物を食べたくなる衝動を伴う障害を異食症と言います。異食対象になる代表的な物には土や石、氷や髪の毛などがあり、継続的に食べることで身体に害を及ぼす可能性があります。この症状は、精神的なストレスや栄養不足、発達障害などが原因になっている場合がありますよ。この記事では、異食症と発達障害との関連性や、異食症の子どもに対しての対処法などについて解説しています。異食症について知りたい方は、ぜひ読んでみてくださいね。
異食症とは?
食品ではない物を繰り返し食べる行動障害

異食症とは、食品ではない物を繰り返し食べる行動障害のことです。一般的には、1ヶ月以上継続して摂取し続けた場合に医師の診断がおります。異食症は小児期に発症することが多い病気です。しかし、好奇心から何でも口に入れてしまう乳幼児のうちは、発達段階での正常な行為と異食症との区別がつかないため、診断はおりません。異食症には様々な原因が考えられます。原因を特定するためには、ストレスや栄養失調、発達障害や精神疾患との関連性など、幅広い視点を持ちながら子どもを観察することが大切です。
土・石・毛髪を食べることが多い
多くの異食症患者が口にする代表的な物は土や石、毛髪などです。一般的に異食症の患者は、身近な物を食べることが多いと言われています。そのため、外で手に入りやすい土や石、自分の毛髪をむしって食べてしまうことが多いのです。また、場合によっては氷も対象物になります。そもそも氷は食べられない物ではありませんが、2カ月以上にわたって毎日製氷皿1枚分以上の氷を食べる人は異食症が疑われますよ。これらの土や石、氷や毛髪を食べる症状は広く知られていることから、それぞれ土食症、氷食症、毛髪食症という個別の症名があります。
小児期に発症することが多い

異食症は小児期に発症することが多い行動障害です。目や耳で対象を判断することができず言葉を話すこともできない赤ちゃんは、好奇心が芽生えると周囲の物を口に入れて調べようとします。この好奇心からくる異食は成長と共に減少します。しかし、2歳を超えても異食が継続する場合は、栄養不足や発達的な問題、強いストレスが原因になっていることが考えられますよ。また、異食症は発達障害を持つ子どもに見られる傾向があります。こうした異食症の治療には栄養改善や行動療法、カウンセリングが有効であり、早期の対処が重要です。
子どもの異食症の原因は?
子どもの好奇心
異食症には、子どもの好奇心が関係していることがあります。特に乳幼児期の子どもは周囲の物を口に入れることで確認しており、これは成長過程の一環と考えられています。この時期に、子どもは食べ物ではない物体でも触ったり味わったりしながら世界を学んでいます。例えば、お散歩で行った公園にある土や石を食べたり、お絵描きをしながら紙などを食べたりすることがありますよ。好奇心からくる異食の多くは成長と共に治まります。ただし、こうした異食が2歳以上になっても治まらず健康に悪影響を与えている場合は、栄養不足や心理的な問題が隠れている可能性があります。早期に病院を受診して専門的な支援を受けましょう。
ストレスや不安

ストレスや不安が原因で、異食症を発症することがあります。特に子どもは、精神的な不安やプレッシャーを断続的に感じていると異食行為が現れることがあります。子どもは大人と違い、ストレスや不安を言葉で適切に伝える能力がまだ発達していません。そのため、異食行為を通じて、感じているストレスや不安を発散しようとするのです。例えば、家庭環境や人間関係の問題、トラウマなどが原因の場合、心理的な緊張感を和らげる手段として異食行為が現れると言われています。そのため、子どものストレスの原因を追及して心理的な問題を解決することで、異食症の改善につなげることができるでしょう。
発達障害
異食症の原因の一つに、発達障害が関係している場合があります。自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの発達障害を持つ子どもは、感覚過敏や感覚刺激といった特徴があります。こうした特徴の影響により、食べ物ではない物質に対しても強い興味を示し、口に入れることがあるのです。また、発達障害を持つ子どもは社会的な一般常識などの理解が難しく自己調整が困難なことから、異食行為が出やすいとも言われています。
異食症と関連する発達障害の例
自閉症スペクトラム(ASD)
ここからは、異食症と自閉症スペクトラム(ASD)の関連について紹介します。自閉症スペクトラムとは、社会的な相互作用やコミュニケーションに困難があり、興味や行動が限られた範囲に偏ることが特徴的な発達障害です。自閉症スペクトラムを抱える子どもたちは、あらゆる感覚が過敏になり強い違和感を抱えがちです。その結果、異食行為が現れることがありますよ。例えば、こだわりの強さから特定の物質や食べ物ではない物に強い興味を示し、大人が目を離した隙に突然食べることがあります。また、自己調整が苦手なことも、異食行為につながるきっかけと言えるでしょう。
知的障害
次に、異食症と知的障害の関連について紹介します。知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の障害により知的能力と社会生活への適応機能が遅れ、日常生活において困難を抱えている状態を指します。そのため、知的障害の子どもは、あらゆる場面において物事の理解や社会的な判断をする能力が乏しくなる傾向です。例えば、本人は食事をしているつもりでも、食べ物ではない物を口に入れてしまうことが少なくありません。また、知的障害は発達障害を併発することもあります。頻繁に異食行為が見られる場合は病院などで専門的なアドバイスを受け、子どもにとって安全に過ごせる環境を整備しましょう。
ADHD
異食症とADHD(注意欠如多動症)の関連について紹介します。ADHDの特徴には注意力の欠如や衝動的な行動、多動が含まれ、こうした特徴が異食症の原因になる場合があります。ADHDの子どもは衝動的に物を食べることが多く、特に食べ物以外の物に興味を持ち、口に入れてしまうことがあります。この場合は、ADHDの子どもの衝動性を食べること以外に向けて、異食行為を回避しましょう。例えば、鬼ごっこなどの体を動かす遊びを取り入れることで、衝動性を発散させることができます。
子どもの異食症の予防方法は?
食事の量を減らして食事の回数を増やす

子どもが食べ物以外の物を口にすることが多く異食症の疑いがある場合、まずは1回に摂る食事の量を減らし、食事の回数を増やしてみましょう。食べ物ではない物を口に入れる理由として、鉄分などの栄養の不足や発達障害が影響していると言われています。しかし、単純に口寂しかったり、空腹の時間が長かったりすることが原因になるとも考えられていますよ。子どもの特性や体調を考慮しつつ、食事の回数を増やし空腹の時間を減らすことで、異食症の予防につなげていきましょう。
異食症の相談先
精神科や心療内科を受診する
子どもに異食症の疑いがある場合は、精神科や心療内科に相談してみましょう。まず、異食によって身体に何らかの悪影響が出ている場合は内科に行きます。そして、その後は異食行為の根本的な問題を解決するために精神科や心療内科を受診します。精神的なストレスが原因で異食症を発症している場合は、問題解決のためにカウンセリングを行うことになりますよ。また、発達障害が原因で異食症を発症しているかどうかも調べられます。
身体的な不調がある場合は内科へ

異食症によって身体的な不調がある場合は、まず内科に行きましょう。食べられない物を飲み込んだ場合、体内で消化できず体調不良の原因になることがあります。紙くずやティッシュなどは問題視されない場合があります。しかし、石や電池、ビー玉などを飲み込んだ場合は体内を傷つける恐れがあるため、速やかに病院へ行くことが必要です。特に、電池は有害物質を含みますので必ず病院を受診してください。また、子どもが痛がっていたり明らかに違和感があるときは、躊躇せずに救急車を呼びましょう。
治療法
確立された治療方法はない
現在、異食症の治療方法は確立されていません。異食症は、患者本人の心理的な問題や精神疾患、発達障害が原因で発症することが多く、適切とされる治療方法は患者によって異なるからです。そのため、異食症を根本から治すためには、異食行為を引き起こす原因と異食衝動の引き金となる事象を調べて、患者一人ひとりに寄り添いながら解決に導くことが必要不可欠なのです。その中でも、具体的な対処方法としてカウンセリングやセラピーが効果的とされていますよ。
心理的な問題の解決

異食症を改善するには、子どもの心理的な問題の解決が必要です。異食症の原因は様々ですが、心理的な問題を抱えている子どもが異食症を発症することが多いと言われています。例えば、生活環境や人間関係でストレスを抱えた子どもは安心感を求めて異食を引き起こすことがあります。口に物を入れる行動は、一時的に欲求を満たし安心をもたらすからです。そのため、不安なときや寂しいときに、食べられない物でも口に入れてしまうことがあるのです。この場合は、ストレスを引き起こす原因にアプローチする必要がありますよ。
行動変容法
異食症の治療には、行動変容法も用いられています。行動変容法とは、患者にとって望ましい行動を学習しつつ、望ましくない行動をとらないように意識と習慣を変える方法です。この方法は、指導者と援助者が主体となって異食症を治療するというものではありません。指導者と援助者は、異食症患者本人の考えや意向を汲み取りながら患者主体でサポートを行います。子どもの場合は、生活環境を見直すだけで異食症が改善することもあり、その場合は行動変容法は行いません。
保育園での異食による緊急時の対処法
物を口に含んでいるときの対処法

保育園において、異食行為のある子どもが食べてはいけない物を口に含んだ場合の対処法をお伝えします。もしも、子どもが口の中に物を入れている場面を目撃したときには、そっと近づき、目線を合わせて口の中の物を出すように誘導しましょう。このとき、大きな声で呼びかけて脅かさないようにします。なぜなら、保育者の大きな声に驚いて、口に含んだ物を誤って飲み込んでしまう恐れがあるからです。例えば、子どもが石を口に入れたときは「きれいな石だね。でも食べ物じゃないから、口から出して、見るだけにしようね。」と、優しく話しかけてみましょう。
物を飲み込んでしまったときの対処法
保育園で、異食行為のある子どもが食べ物ではない物を飲み込んでしまったときの対処法をお伝えします。まず、飲み込んだ物と子どもの様子を確認します。口を開けて、飲み込む前の状態であれば急いで吐き出させましょう。次に、応急処置をして、必要があれば救急車を呼びます。飲み込んだ物によって応急処置の方法は変わります。
飲み込んだ物を吐き出させる詳しい方法については、こちらの記事を参考にしてみてくださいね。
まとめ
子どもの異食症は治る可能性がある
子どもの異食行為は、成長過程における好奇心や心の不安定さが原因で引き起こされている場合があります。そのため、子どもの異食症は成長とともに自然に治ることがありますよ。しかし、異食症の子どもに対して強い口調での注意や誤った対応を取ってしまうと、症状が悪化したり健康に支障をきたしたりする恐れがあります。また、2歳以上になっても頻繁に異食行為などの症状が見られる場合は、病院への早期受診が推奨されます。子どもに寄り添いながら、適切な支援を行っていきましょう。