児童発達支援の5領域とは?【具体例・支援プログラム・個別支援計画・ガイドライン・解説】

皆さんは、児童発達支援の5領域をご存知ですか?児童発達支援の5領域は療育の分野でとても重要視されています。この記事では、5領域の具体的なねらいと支援内容のほか、個別支援計画についても解説します。療育の仕事に携わっているけれど、どのような支援を行ったらいいのかわからず困っている方や、5領域に基づいた支援を行う難しさを感じているという方は、ぜひこの記事を参考にして子どもたちへの支援方法を考えてみてくださいね。

児童発達支援の5領域とは?

子どもの成長と発達を支える主要な領域

児童発達支援の5領域とは、障害を持つ子どもの成長と発達を支える5つの支援領域のことを指します。保育の5領域と混同しやすいですが、内容が異なりますので注意が必要ですよ。児童発達支援の5領域は、以下の5つから成り立っています。

  • 健康・生活
  • 運動・感覚
  • 認知・行動
  • 言語・コミュニケーション
  • 人間関係・社会性
この5項目はそれぞれ独立しているのではなく、互いに重なる部分があったり関連し合ったりしています。保育の5領域については、以下の記事を参考にしてみてくださいね。

児童発達支援における本人支援とは?

5領域に基づいて支援を行うこと

児童発達支援における本人支援とは、5領域に基づいて子どもたちに支援を行うことです。本人支援の最終的な目標は『障害のあるこどもが、将来、日常生活や社会生活を円滑に営めるようにする』ことであり、事業所等で行われる本人支援は『家庭や地域社会での生活に活かしていくために行われるもの』である必要があります。(児童発達支援ガイドラインより引用)このことを前提に、子どもたち一人ひとりに合った支援を提供することが重要と言えるでしょう。

5領域の具体例

健康・生活

ねらい

児童発達支援の5領域における健康・生活とは、子どもたちの心身の健康や生活に関する領域であり、基本的な生活スキルの取得を目標としています。基本的な生活スキルを取得することは子どもたちの心の安定につながり、他の領域とも大きく関わっています。具体的なねらいは以下の通りです。

  • 健康状態の維持・改善
  • 生活習慣や生活リズムの形成
  • 基本的生活スキルの獲得
児童発達支援ガイドラインより引用)

支援内容

健康・生活の領域における具体的な支援内容は以下の通りです。

健康状態の維持・改善
  • 健康状態の把握と対応
  • 健康な心と体を育て、健康で安全な生活を作り出すことを支援する。また、こどもの心身の状態をきめ細やかに確認し、平常とは異なった状態を速やかに見つけ出し、必要な対応をすることが重要である。その際、意思表示が困難であるこどもの障害の特性および発達の過程・特性等に配慮し、小さなサインでも心身の異変に気づけるよう、きめ細やかな観察を行う。
  • リハビリテーションの実施
  • 日常生活や社会生活を営めるよう、それぞれのこどもが持つ機能をさらに発達させながら、こどもに適した身体的、精神的、社会的支援を行う。
生活習慣や生活リズムの形成 睡眠、食事、排泄等の基本的な生活習慣を形成し、健康状態の維持・改善に必要な生活リズムを身につけられるよう支援する。また、健康な生活の基本となる食を営む力の育成に努めるとともに、楽しく食事ができるよう、口腔内機能・感覚等に配慮しながら、咀嚼・嚥下の接触機能、姿勢保持、手指の運動機能等の状態に応じた自助具等に関する支援を行う。さらに、衣服の調整、室温の調整や換気、病気の予防や安全への配慮を行う。
基本的生活スキルの獲得
  • 生活に必要な基本的技能の獲得
  • こどもが食事、排泄、睡眠、衣類の着脱、身の回りを清潔にすること等の生活に必要な基本的技能を獲得できるよう、生活の場面における環境の工夫を行いながら、こどもの状態に応じて適切な時期に適切な支援をする。
  • 構造化等による生活環境の調整
  • 生活の中で、様々な遊びを通して学びが促進されるよう環境を整える。また、障害の特性に配慮し、時間や空間を本人に分かりやすく構造化する。
  • 医療的ケア児への適切なケアの実施
  • 適切に医療的ケアを受けられるよう、こどもの医療濃度に応じた医療的ケアの実施や医療機器の準備、環境整備を行う。
児童発達支援ガイドラインより引用)

運動・感覚

ねらい

身体機能の向上や感覚の発達に関する運動・感覚の領域では、必要な場合は補助器具を活用して、姿勢の保持や動作を習得することを目標としています。具体的なねらいは以下の通りです。

  • 姿勢と運動・動作の基本的技能の向上
  • 姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用
  • 身体の移動能力の向上
  • 保有する感覚の活用
  • 感覚の補助及び代行手段の活用
  • 感覚の特性への対応
児童発達支援ガイドラインより引用)

支援内容

運動・感覚の領域における具体的な支援内容は以下の通りです。

姿勢と運動・動作の基本的技能の向上 日常生活に必要な動作の基本となる姿勢保持や上肢・下肢の運動・動作の改善及び習得、関節の拘縮や変形の予防、筋力の維持・強化を図る。
姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用 姿勢の保持や各種の運動・動作が困難な場合、姿勢保持装置など、様々な補助用具等の補助的手段を活用してこれらができるよう支援する。
身体の移動能力の向上 自力での身体移動や歩行、歩行器や車椅子による移動など、日常生活に必要な移動能力の向上のための支援を行う。
保有する感覚の活用 保有する視覚、聴覚、触覚、嗅覚、固有覚、前庭覚等の感覚を十分に活用できるよう、遊び等を通して支援する。
感覚の補助及び代行手段の活用 障害の状態や発達の段階、興味関心に応じて、保有する感覚器官を用いて情報を収集し、状況を把握しやすくするよう、眼鏡や補聴器等の各種の補助機器やICTを活用することや、他の感覚や機器による代行が的確にできるよう支援する。
感覚の特性への対応 感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う。
児童発達支援ガイドラインより引用)

認知・行動

ねらい

認知・行動の領域では、思考力や判断力、問題解決能力や論理的思考などを身につけることで、子どもたちの社会性を発達させることを目標としています。具体的なねらいは以下の通りです。

  • 認知の特性についての理解と対応
  • 対象や外部環境の適切な認知と適切な行動の習得(感覚の活用や認知機能の発達、近くから行動への認知過程の発達、認知や行動の手掛かりとなる概念の形成)
  • 行動障害への予防及び対応
児童発達支援ガイドラインより引用)

支援内容

認知・行動の領域における具体的な支援内容は以下の通りです。

認知の特性についての理解と対応 一人一人の認知の特性を理解し、それらを踏まえ、自分に入ってくる情報を適切に処理できるよう支援する。また、こだわりや偏食等に対する支援を行う。
対象や外部環境の適切な認知と適切な行動の習得
  • 感覚の活用や認知機能の発達
  • 視覚、聴覚、触覚等の感覚を十分活用して、これらの感覚から情報が適切に取得され、認知機能の発達を促す支援を行う。
  • 知覚から行動への認知過程の発達
  • 取得した情報を過去に取得した情報と照合し、環境や状況を把握・理解できるようにするとともに、これらの情報を的確な判断や行動につなげることができるよう支援を行う。
  • 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成
  • 物の機能や属性、形、色、音が変化する様子、大小、数、重さ、空間、時間等の概念の形成を図ることによって、それを認知や行動の手掛かりとして活用できるよう支援する。
行動障害への予防及び対応 感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防及び適切行動への対応の支援を行う。
児童発達支援ガイドラインより引用)

言語・コミュニケーション

ねらい

言語・コミュニケーションの領域では、言語能力や多様なコミュニケーション方法を身につけて、円滑に意思の伝達ができるようになることが目標です。具体的なねらいは以下の通りです。

  • コミュニケーションの基礎的能力の向上
  • 言語の受容と表出
  • 言語の形成と活用
  • 人との相互作用によるコミュニケーション能力の獲得
  • コミュニケーション手段の選択と活用
  • 状況に応じたコミュニケーション
  • 読み書き能力の向上
児童発達支援ガイドラインより引用)

支援内容

言語・コミュニケーションの領域における具体的な支援内容は以下の通りです。

コミュニケーションの基礎的能力の向上 障害の種別や程度、興味関心等に応じて、言葉によるコミュニケーションだけでなく、表情や身振り、各種の機器等を用いて意思のやりとりが行えるようにするなど、コミュニケーションに必要な基礎的な能力を身につけることができるよう支援する。
言語の受容と表出 話し言葉や各種の文字・記号等を用いて、相手の意図を理解したり、自分の考えを伝えたりするなど、言語を受容し表出することができるよう支援を行う。
言語の形成と活用 具体的な事物や体験と言葉の意味を結びつけること等により、自発的な発声を促し、体系的な言語を身につけることができるよう支援する。
人との相互作用によるコミュニケーション能力の獲得 個々に配慮された場面における人との相互作用を通して、相手と同じものに注意を向け、その行動や意図を理解・推測するといった共同注意の獲得等を含めたコミュニケーション能力の向上のための支援を行う。
コミュニケーション手段の選択と活用
  • 指差し、身振り、サイン等の活用
  • 指差し、身振り、サイン等を用いて、環境の理解と意思の伝達ができるよう支援する。
  • 手話、点字、音声、文字等のコミュニケーション手段の活用
  • 手話、点字、音声、文字、触覚、平易な表現等による多様なコミュニケーション手段を活用し、環境の理解と意思の伝達ができるよう支援する。
  • コミュニケーション機器の活用
  • 機器(パソコン・タブレット等のICT機器を含む。)等のコミュニケーション手段を適切に選択、活用し、環境の理解と意思の伝達が円滑にできるよう支援する。
状況に応じたコミュニケーション コミュニケーションを円滑に行うためには、伝えようとする側と受け取る側との人間関係や、そのときの状況を的確に把握することが重要であることから、場や相手の状況に応じて、主体的にコミュニケーションを展開できるよう支援する。
読み書き能力の向上 発達障害のあるこどもなど、障害の特性に応じた読み書き能力の向上のための支援を行う。
児童発達支援ガイドラインより引用)

人間関係・社会性

ねらい

人間関係・社会性の領域では、必要な社会性を身につけて、将来を見越した社会生活の基盤を作ることを目標としています。社会性を身につけるための支援には、ロールプレイや地域との交流を取り入れることが推奨されています。人間関係・社会性の領域における具体的なねらいは以下の通りです。

  • アタッチメント(愛着)の形成と安定
  • 遊びを通じた社会性の発達
  • 自己の理解と行動の調整
  • 仲間づくりと集団への参加
児童発達支援ガイドラインより引用)

支援内容

人間関係・社会性の領域における具体的な支援内容は以下の通りです。

アタッチメント(愛着)の形成と安定
  • アタッチメント(愛着)の形成
  • こどもが基本的な信頼感を持つことができるように、環境に対する安心感・信頼感、人に対する信頼感、自分に対する信頼感を育む支援を行う。
  • アタッチメント(愛着)の安定
  • 自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう「安心の基地」の役割を果たせるよう支援する。
遊びを通じた社会性の促進
  • 模倣行動の支援
  • 遊び等を通じて人の動きを模倣することにより、社会性や対人関係の芽生えを支援する。
  • 感覚・運動遊びから象徴遊びへの支援
  • 感覚機能を使った遊びや運動機能を働かせる遊びから、見立て遊びやつもり遊び、ごっこ遊び等の象徴遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する。
  • 一人遊びから協同遊びへの支援
  • 周囲にこどもがいても無関心である一人遊びの状態から並行遊びを行い、大人が介入して行う連合的な遊び、役割分担したりルールを守って遊ぶ協同遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する。
自己の理解と行動の調整 大人を介在して自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解するとともに、気持ちや情動の調整ができるように支援する。
仲間づくりと集団への参加 集団に参加するための手順やルールを理解し、こどもの希望に応じて、遊びや集団活動に参加できるよう支援するとともに、共に活動することを通じて、相互理解や互いの存在を認め合いながら、仲間づくりにつながるよう支援する。
児童発達支援ガイドラインより引用)

個別支援計画とは?

利用者個人に合った支援計画の内容を記したもの

個別支援計画とは、子どもたちを支援していく中で個人個人に必要な支援の内容を盛り込んだ計画書のこと。療育に関わる職員や子どもの保護者と支援の内容を共有する役割も果たします。個別支援計画書に記載が必要な項目は以下の通りです。

  • 利用者の現状
  • 利用者が置かれている環境
  • 利用者とその保護者のニーズ
  • メインとなる目標と達成時期
  • その他の目標と達成時期
  • 個別支援の具体的な内容
  • 支援を行う際の留意事項
個別支援計画を作成する際に重要な役割を果たすサービス管理責任者については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

個別支援計画に5領域をつなげるコツ

目標を明確化する

個別支援計画に5領域をつなげるためのコツはいくつかあります。1つ目は、目標を明確化することです。目標を明確化することで、子どもたち自身やその保護者は成長の進度を実感しやすくなります。子どもたちは成長の進度を実感することで、さらに努力しようと思う気持ちが強くなるでしょう。目標を短期と長期でそれぞれ定めることも大切です。短期目標は6ヶ月、長期目標は1年が目安となっています。

支援内容を具体化する

2つ目は、支援内容を具体化することです。複数の職員が連携して支援を行う場合、支援内容が具体的に示されていることで、職員全員が明確な目的意識を持って取り組むことができるでしょう。例えば、支援の目標や手順を事前に共有しておくことで職員間の認識のズレを防ぎ、スムーズな支援が可能になります。また、支援内容が具体化されていることで、支援を受ける本人やその保護者も支援の方向性を把握しやすくなり、不安の軽減や信頼の向上にもつながるでしょう。

5領域のバランスを図る

3つ目は、5領域のバランスを図ることです。児童発達支援の5領域はそれぞれの領域が相互に影響し合っているので、すべての領域をバランスよく鍛えることが求められています。また、5領域のバランスを図ることで、子どもたちが健やかに成長できる環境を整えながら、個別支援計画の効果を最大化することが可能です。そのため個別支援計画を作成する際は、どれか1つの領域に偏ったり、欠けたりしないように注意しましょう。また、各領域に均等にアプローチができているかを必ず確認し、必要に応じて修正することも大切ですよ。

関係機関との連携を強化する

4つ目は、関係機関との連携を強化することです。障害を持つ子どもたちへの支援は1つの事業所だけでおさまることはありません。教育機関や医療機関、発達支援センターなど多数の機関と連携しながら支援していることが大半です。子どもたちに対して効果的な支援を提供するためにも、関係機関と情報の共有を行うことは重要と言えるでしょう。個別支援計画を作成する段階から関係機関と明確に連携しておくことで、質の高い支援を子どもたちへ提供することが可能になります。

まとめ

5領域に基づいた療育で子どもたちの成長を促そう

いかがでしたか?今回は、児童発達支援の5領域の具体的なねらい、支援内容や個別支援計画に5領域をつなげるコツなど、児童発達支援の5領域について解説しました。児童発達支援の5領域は、障害を持つ子どもたちが健やかに成長するためには欠かせないものです。個別支援計画を作成する際は、5領域をバランスよく取り入れて子どもたちの成長に効果的な支援を提供できるようにしましょう。