愛着障害とは?【特徴・子ども・症状・原因・関わり方・治し方】

愛着障害は、乳幼児期に親や養育者から受けた経験が影響する障害です。乳幼児期に親や養育者から十分な愛情を受けられなかった子どもは、感情面や精神面、社会生活などで問題を引き起こしてしまうことがあります。今回の記事では、愛着障害について種類別の特徴や原因、愛着障害を抱える子どもへの関わり方について詳しく解説していきます。子どもの愛着障害について悩んでいる方や知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

愛着障害とは

乳幼児期に受けた虐待やネグレクトに起因する障害

愛着障害は、乳幼児期に親や養育者から十分な愛情やケアを受けられなかった場合に発生する心理的障害です。特に、虐待やネグレクトが原因となることが多く、このような体験は子どもの心身の発達に深刻な影響を与えます。安全で信頼できる大人との関係が築けなかった場合、子どもは人間関係や感情の調整が困難になり、他者との結びつきを恐れたり過度に依存したりする傾向があります。結果的に、社会生活や感情面での問題を引き起こすことが少なくありません。

愛着障害の特徴【反応性愛着障害】

感情を表現することが苦手

反応性愛着障害(RAD)の特徴の1つに、感情を表現することが極めて苦手であるという点が挙げられます。この障害を持つ子どもは、幼少期に適切な愛情や安定したケアを受けられなかったため、感情の認識や表現に困難を抱えます。他者との信頼関係が十分に築けなかった結果、自分の感情をうまく言葉や行動で示すことができません。また、喜びや悲しみ、怒りといった基本的な感情さえ抑圧してしまい、無表情や冷淡な態度を取ることがあります。これにより、周囲の人々との適切なコミュニケーションが難しくなり、人間関係にも支障をきたすことがあるでしょう。

他人を頼れず助けを求めることが少ない

2つ目には、他人を頼ることができず、助けを求める行動が少ない点が挙げられます。幼少期に信頼できる養育者との安定した関係が築けなかった子どもは、他者への信頼感を持つことが困難になり、自分の問題や不安を自分1人で対処しようとする傾向があります。その結果、感情を抑え込んだり、人に対して無関心な態度を取ったりすることが多くなります。これにより、社会的な関係を築くことや適切な支援を受けることが難しくなり、将来的に心理的な問題や孤立が生じる可能性があるでしょう。

恐怖心や警戒心が強い

反応性愛着障害は、乳幼児期に愛情や適切なケアが不足した子どもに見られる障害で、特に恐怖心や警戒心の強さが特徴です。この障害を持つ子どもは、養育者に対して適切な愛着行動を示さず、他者に対して強い不信感や恐れを抱くことがあります。そのため、日常生活において常に警戒心を持ち、人との距離を取ろうとする傾向があります。また、過去のトラウマが原因で、他者からの支援や愛情を拒絶することも少なくありません。このように、他者に対して心の内を開くことが難しいため、対人関係において深刻な問題を引き起こすことがあります。

落ち込みやすい

反応性愛着障害の特徴の1つに、気持ちが落ち込みやすいことが挙げられます。この障害を持つ子どもは、養育者との安定した愛着が形成されていないため、他者との関係に対して不安や不信感を抱きやすく、感情の調整が困難です。その結果、自己肯定感が低く、孤独感や無力感に苛まれることがあり、これが気持ちの落ち込みやすさに繋がります。気持ちが落ち込みやすいという感情は、子どもの日常生活や学業、社会的な関わりに悪影響を及ぼすことが多いですよ。

愛着障害の特徴【脱抑制型愛着障害】

誰にでも馴れ馴れしくしやすい

脱抑制型愛着障害(DSED)は、幼少期に不安定な養育環境や愛着関係の欠如が原因で発生する愛着障害です。その特徴の1つに、子どもが誰に対しても馴れ馴れしく接してしまうことが挙げられます。通常、子どもは知らない人に対して慎重になりますが、脱抑制型愛着障害を持つ子どもは他者との関係に対する境界が曖昧なため、見知らぬ人にも過度に親密な行動を取ることがあります。これは、養育者との安定した関係が築けずに、特定の大人に対する信頼感が十分に発達していないことが原因と言えるでしょう。この馴れ馴れしさは、子どもの安全を危険にさらす可能性があり、社会的な問題を引き起こすことも考えられます。

ボディタッチが多い

脱抑制型愛着障害の特徴の1つとして、過剰なボディタッチが挙げられます。脱抑制型愛着障害の子どもは見知らぬ人にも抵抗なく接触し、親密さを急速に求める傾向があります。この行動は、安全な愛着を形成できなかったことが原因と言われています。相手との適切な距離感がわからないため、物理的な接触を多用してしまうのです。その結果、他者との境界線が曖昧なことにより、不適切な場面でボディタッチをしてしまい問題になることがあるため、早期の支援が重要と言えるでしょう。

慣れない場所や初対面の人に対するためらいがない

脱抑制型愛着障害の特徴の1つで、慣れない場所や初対面の人に対するためらいがないことがあります。通常、子どもは親や保護者といると安心し、知らない場所や人に対して慎重な態度を示しますが、脱抑制型愛着障害の子どもはこのような慎重さが欠けています。彼らは、見知らぬ大人に対して過度に親しげに接し、すぐに距離を詰めることが多いです。これは、安定した愛着関係が形成されなかったことが原因で、幼少期のトラウマやネグレクトが背景にある場合が多いとされています。

愛着障害の原因

養育者との離別や死別

愛着障害の原因のはいくつか考えられますが、1つ目には幼少期における養育者との離別や死別が挙げられます。特に幼い頃に主要な養育者と長期間離れる、あるいはその死によって突然の別れを経験すると、子どもは安定した愛着を形成しづらくなります。愛着は、養育者との継続的で安全な関係を通じて育まれるため、その関係が途切れると、子どもの心に不安や恐怖が生じてしまうのです。発達において重要な時期にこのような経験をすると、他者との感情的な繋がりが弱まり、後の対人関係にも悪影響を及ぼすことがあるとされています。また、適切な対人関係を築くことも困難になってしまうでしょう。

養育者によるネグレクトや無関心

2つ目には、養育者によるネグレクトや無関心が挙げられます。幼少期において、子どもは養育者との安定した愛着を通じて情緒的な安心感を得ますが、ネグレクトや無関心にさらされると、養育者との重要な絆が形成されません。例えば、子どもが泣いても適切な反応が得られなかったり、基本的な世話や感情的なサポートが欠如したりする場合、子どもは信頼関係を築く方法を学べなくなります。その結果、他者との関係において不安や不信を抱えやすく、愛着障害が発生するリスクが高まるのです。

ネグレクトについての詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください。

養育者が複数もしくは頻繁に替わっていた

3つ目には、養育者が複数いたり頻繁に替わることが挙げられます。幼少期における安定した養育者との関係は、子どもの情緒的な安心感を築く上で重要です。しかし、養育者が定期的に変わる場合、子どもは一貫した信頼関係を築くことが難しくなります。その結果、愛着障害が発生しやすくなり、子どもは安心感を得るための基本的なスキルを習得できなくなります。このような状況は、施設での養育や里親制度など、特定の大人と継続的に関わる機会が少ない場合に見られることが多い傾向です。

養育者による身体的虐待を受けて育った

愛着障害は、幼少期の養育者との関係が影響して生じる心理的問題です。特に身体的虐待を受けた場合、子どもは安全な環境を得られず、信頼感や安心感を育むことが難しくなります。虐待によって、愛着形成に必要なポジティブな経験が欠如し、自己肯定感の低下や他者への不信感が生まれます。このような背景を持つ子どもは、成人後にも人間関係での不安や回避行動を示すことが多く、情緒的な問題を抱えることがあるため、早期の介入が重要と言えるでしょう。

兄弟や他の子どもと明らかに差別されていた

5つ目には、兄弟や他の子どもと明らかに差別される体験が挙げられます。差別された子どもは、親からの無条件の愛情や安心感を得られず、情緒的な結びつきが弱くなります。このような不公平な扱いは、子どもの自己評価や他者との関係に悪影響を及ぼし、他者との信頼関係や安心感を築くことが難しくなります。また、差別により生じる孤独感や拒絶感が深まることで、情緒面や行動面での問題が表れる可能性が高くなりますよ。その結果、愛着形成が妨げられ、対人関係の困難が長期的に続くことがあります。

褒められることが極端に少ない環境で育った

6つ目には、褒められることが極端に少ない環境で育ったことが挙げられます。幼少期に親や周囲の大人から十分な肯定的なフィードバックを受けられないと、自己肯定感が育ちにくくなり、劣等感を感じることで、他者との信頼関係を築くのが難しくなります。褒められることで子どもは自己価値を認識し、安心感や他者への信頼感が育まれます。しかし、それが欠如する環境では、人間関係に不安や不信感を抱えやすくなり、結果的に愛着障害が発生する可能性が高まります。

愛着障害を抱える子どもへの関わり方

しっかりと顔を合わせてコミュニケーションを取る

愛着障害を抱える子どもとの関わり方では、しっかりと顔を合わせてコミュニケーションを取ることが重要です。視線を合わせることで、子どもは相手の関心や愛情を感じやすくなります。愛着障害のある子どもは、自ら他者との信頼関係を築くことが難しいため、まずは大人が顔を見て優しく話し、安心感を与えましょう。また、視線を通じて感情や意思のやりとりが行われ、共感が生まれます。このように、顔を合わせたコミュニケーションは、子どもの自己肯定感を育み、他者への信頼を促し、愛着形成の促進に寄与します。

子どもの感情に寄り添う

また愛着障害を抱える子どもへの関わり方の重要なポイントの1つは、子どもの感情に寄り添うことです。愛着障害を持つ子どもは、他者との信頼関係を築くことが難しく、感情の表現や理解に困難を感じていることがあります。大人が子どもの感情を否定せずに受け入れ、共感を示すことで、子どもは自分の感情が尊重されていると感じ、安心感を得られますよ。大人が冷静に反応し、共感的に接することで、子どもは徐々に信頼関係を築きやすくなり、心の安定を取り戻す助けになります。このように子どもの感情に寄り添う姿勢が、心理的な回復の重要な一歩となるでしょう。

家族の支援や保育サービスを利用する

愛着障害を抱える子どもへの関わり方では、家族の支援と保育サービスの利用も重要です。まず、家族は子どもとの安定した信頼関係を築くため、無条件の愛情や適切なフィードバックを日常的に提供することが求められます。さらに、保育サービスや専門機関のサポートを利用することで、子どもにとって安全で安心できる環境での成長を促せます。保育者や専門家と連携して子どもの心のケアや社会性の発達を支援することは、家族だけでは補えない側面もカバーできるので、長期的な改善の助けとなるでしょう。

まとめ

愛着障害を正しく理解した上で寄り添うことが大切

いかがでしたか。今回の記事では、愛着障害について種類別の特徴や原因、愛着障害を抱える子どもへの関わり方について詳しく解説しました。愛着障害を持つ子どもは、自分の感情を上手く相手に伝えられず、他人を頼ることに苦手意識を感じることが多い傾向です。それらの特徴を深く理解したうえで、子どもの気持ちに寄り添って支援することが最も大切だと言えるでしょう。また、育児に悩む養育者へのサポートも重要であるため、広い視野での対応が求められます。この記事を参考に、課題を抱える家庭を適切に支援していきましょう。