就労継続支援事務所A型とは?【B型・違い・対象者・選び方・利用方法・就労移行支援・就労定着支援】

皆さんは、就労継続支援事務所という施設を知っていますか?普段の生活ではあまり耳にしない言葉かもしれません。この記事では、就労継続支援事務所A型を利用できる対象者やB型との違い、利用方法など、就労継続支援事務所A型について詳しく解説します。働くことに対して困難を抱えているけれど働きたい人や、就労に関して周りに困っている人がいる人は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。

就労継続支援事務所A型とは?

働くのが難しい人の支援をする場所

就労継続支援事務所A型とは、働くのに困難を抱えている人に対して支援を行う施設のことを指します。具体的には、一般企業で就職することが難しい人に対して、働く場所を提供しています。また、この施設を利用する人には障害を持っていたり難病にかかってしまった人も多いため、利用者一人ひとりに合わせたサポートも行っています。障害の特性や体調に配慮した支援が提供されるため、利用者は安心して働くことができますよ。

就労継続支援事務所A型を利用できる対象者は?

【必須条件】障害を抱える人や難病の人

就労継続支援事務所A型を利用するには、必須の条件があります。それは、障害を抱える人や難病にかかった人であることです。障害に関しては、知的障害や発達障害、精神障害や身体障害が対象となりますが、障害者手帳は必須ではありません。医師からの診断書があれば、支援を受けるために必要な障害福祉サービス受給者証が発行される可能性があります。自治体によっても受給者証が発行される基準が異なるため、まずは、お住いの自治体の障害福祉窓口などに相談してみてくださいね。

就労移行支援を利用しても就職できなかった人

障害を抱えていたり難病にかかったりしたことが必須の条件ですが、就労継続支援を利用するには、さらに以下の条件の中から1つ以上を満たしている必要があります。条件の1つ目は、就労移行支援を利用しても就職できなかった人です。後ほど詳しく説明しますが、就労移行支援とは、一般企業への就職をサポートする支援のことです。この制度を利用しても一般就労が叶わなかった際に、就労継続支援に移行して働く場合がありますよ。また、就労継続支援A型での就労でスキルを磨き、一般就労に向けた準備をした後に就労移行支援を利用してから、一般企業への就職を目指すケースもあります。

特別支援学校を卒業後に就職できなかった人

2つ目は、特別支援学校を卒業した後に就職できなかった人です。就労することを希望していても、一般企業で働くための体力や職業能力が不足している場合には、就労継続支援事務所A型を利用することができます。就労継続支援事務所A型を利用しての就労は、一人ひとりに合わせた支援を受けながら自分のペースで作業を行うことができるでしょう。そのため、一般企業での就職が難しかった人でも、安心して働くことができますよ。

就労していたことがあるが現在は働いていない人

3つ目は、就労していたことがあるが現在は働いていない人です。過去に一般企業で就労していたが、体力や能力に困難が生じて離職したという人も、就労継続支援事務所A型を利用することができます。就労継続支援事務所A型での就労には、お金を得るためだけでなく、能力を高めるためという利用の仕方もあります。再度、一般企業での就職を目指したいという人は、自分のペースで働くことができる環境で能力を高めるのも良いでしょう。

就労継続支援事務所B型との違いは?

年齢制限の有無

就労継続支援事務所にはA型のほかにB型があります。B型との違い1つ目は、年齢制限の有無です。A型には年齢制限があり、利用できるのは原則18歳以上65歳未満と決められています。一方、B型には年齢制限がありません。B型は65歳以上でも利用できるため、A型の条件に当てはまらない場合はB型を利用すると良いでしょう。しかし、65歳以上でもA型を利用できる場合があります。利用できる条件は以下の通りです。

  • 65歳に達する前5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けていた人
  • 65歳に達する前日までに就労継続支援A型の支給決定を受けていた人
また、18歳未満でも児童相談所でサービスを受けることが妥当と認められた場合には、15歳以上の障害児でも就労することができます。

雇用契約の有無

2つ目は、雇用契約の有無です。就労継続支援事務所A型では、雇用契約を結んで就労を行う一方、B型の場合は雇用契約を結ばずに就労を行います。雇用契約の有無によるメリットは以下の通りです。

雇用契約あり(A型)のメリット
  • 最低賃金が保障されている
  • 一般企業への就職数がB型よりも多い
  • 労働保険に加入できる(労働時間が週20時間以上の場合)
雇用契約なし(B型)のメリット
  • 労働時間の縛りが少ない
  • 収入に対する制約が少なく、社会保障などの支援を受けながら働くことができる

給料

3つ目は、給料の違いです。先ほども触れた通り、A型では雇用契約を結んで就労をするため、各都道府県の最低賃金が保障されています。一方、B型では雇用保険を結ばずに作業の成果に対して工賃が支払われるため、時間額にすると最低賃金を下回ることが大半でしょう。A型とB型それぞれの令和4年度平均工賃(賃金)は以下の通りです。

    
施設種別 平均工賃(賃金)
月額 時間額
就労継続支援A型事務所83,551円947円
就労継続支援B型事務所17,031円243円
(参考:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」

就労継続支援事務所A型の選び方は?

仕事内容

就労継続支援事務所A型での就労を希望する場合、働きたい事務所を選ぶ必要があります。令和4年度時点で、就労継続支援事務所A型は全国に4,196か所あります。その中から自分に合った事務所を選ぶポイントとして、仕事内容があげられるでしょう。代表的な仕事内容には以下のようなものがあります。

  • パンやお菓子などの製造
  • レストランやカフェなどのホールスタッフ
  • パソコンを使ったデータ入力
  • Webサイトの作成
  • ホテルやビルの清掃
  • 配達業務
  • 倉庫での軽作業やパッキング
  • 工業部品などの加工作業
  • 農作業
自分に合った仕事内容でないと、働くことを苦痛に感じてしまい、一般就労がより難しくなってしまうでしょう。働くモチベーションを保てるよう、自分が楽しいと思える仕事内容を選ぶと良いですね。事務所によっては、数日間の実習体験を行っている場所もあります。仕事内容に不安がある場合は、実際に働いてみて、自分のスキルに合った仕事内容か確かめてみましょう。

一般就労への移行率

就労継続支援を利用した就労でスキルアップし、一般企業への就職を目指す人にとっては、一般就労への移行率も重要なチェックポイントとなります。就労継続支援事務所よって、一般就労への移行に支援の重きを置いている事務所もあれば、働く人がその事務所で安定して働き収入を得ることに重きを置いている事務所もあります。自身の希望に沿った支援が提供されているかどうかの指標になるため、その事務所の一般就労への移行率はチェックしておきましょう。これらの情報は、各事務所のホームページやWAM NET(ワムネット)という福祉医療機構が運営するサイトに掲載されていることもあるため、ぜひ確認してみてくださいね。

就労継続支援事務所A型を利用するには?

主治医に相談した後に選考を受ける

就労継続支援事務所A型の利用を希望する場合は、まず主治医に相談しましょう。働くことができる体調や状況であるかを医師に確認できた場合は、就労を希望する事務所を探し、選考を受けます。事務所によって応募方法や選考方法は異なるため、希望する施設に問い合わせ、履歴書の送付や面接などの選考を受けましょう。就労する就労継続支援事務所は、ハローワークや障害者就業・生活支援センターに相談したり、インターネットで検索したりすることで探すことができますよ。

市区町村の窓口で利用申請をする

利用する事務所が決まったら、お住いの市区町村の窓口で利用申請をしましょう。利用申請をすると、はじめに市区町村の担当職員から生活状況などの聞き取りを受けます。その後、指定特定相談事業者もしくは自分自身でサービス等利用計画案を作成し、提出しましょう。市区町村の審査に通ると障害福祉サービス受給者証が発行され、就労継続支援事務所での勤務を開始することができます。市区町村の窓口に利用申請してから勤務開始までは、約2ヶ月かかるため、早めに窓口に相談すると良いでしょう。

就労継続支援事務所A型の利用料と利用期間

利用料:世帯収入による

就労継続支援事務所A型は働く場であるとともに障害福祉サービスであるため、利用料が発生します。障害福祉サービスの利用料は、世帯収入(利用者本人とその配偶者の所得)により4区分の負担月額上限が設定されています。利用料の区分は以下の通りです。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯※1 0円
一般1 市町村民税課税世帯
(所得割16万円※2未満)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます※3
9,300円
一般2 上記以外 37,200円
※1:3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
※2:収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。
※3:入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村税課税世帯の場合「一般2」となります。
(参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」

利用期間:制限なし

就労継続支援事務所A型の利用には、基本的に期間の制限はありませんが、事業所との間で交わされる雇用契約には、契約期間が設定されることがあります。そのため、契約を結ぶ際には、雇用契約書の内容をしっかり確認することが大切です。特に契約期間やその他の条件については、後でトラブルが生じないよう、チェックを怠らないようにしましょう。疑問点があれば、担当者に相談するなど、細部まで納得してから契約を締結すると良いですね。

他の就労支援サービスとの違いは?

就労移行支援との違い

就労継続支援の他にも、さまざまな就労支援サービスが設けられており、障害を持つ人や難病にかかってしまった人はこれらを利用することができます。就労移行支援とは、障害を持つ人や難病を抱えた人が、一般企業への就労を目指す際に利用できる障害福祉サービスです。具体的には、一般企業で働くための知識や能力を身に付けられるような支援を行ったり、職場探しや就職活動のサポートを行ったりします。すでに就労継続支援A型で働きながら、就労移行支援を受けることはできません。就労継続支援A型から就労移行支援に切り替える場合は、収入がなくなることを防ぐため、失業保険や障害年金を受給しながら就職活動をするケースが多いようです。

就労定着支援との違い

就労定着支援とは、就労移行支援などを利用して一般企業に就職した人が、その企業で長く安定して働くことができるよう支援する障害福祉サービスです。各事業所の担当者は月1回以上面談を行います。「どうしても仕事でミスをしてしまう」「職場の人とうまくコミュニケーションが取れない」など、障害や難病を抱えた人ならではの悩みもあるでしょう。担当者はその人の職場環境や生活面での課題を把握し、アドバイスをします。また、就職した企業や各医療機関との調整も行ってもらえるため、働きやすい環境で安心して働くことができるでしょう。

就労選択支援との違い

就労選択支援とは、障害のある人が、より良い働き方ができるように支援する障害福祉サービスです。令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定により新設されたサービスで、令和7年10月から利用が開始されます。就労選択支援を利用することで、適切なタイミングで就労移行支援や一般企業への就職をすることができるでしょう。就労選択支援について、詳しくは厚生労働省の資料を確認してみてくださいね。

まとめ

就労継続支援事務所A型はサポートを受けながら働ける場所

いかがでしたか?今回は、就労継続支援事務所A型の利用方法や働く事務所の選び方、他の就労支援サービスとの違いについてなどを詳しく解説しました。就労継続支援事務所A型では、障害や難病が理由で働くのが難しい人に働く場所を提供しています。一人ひとりに適した支援を受けながら自分のペースで働くことができるため、一般就労が難しかった人でも、安心して働くことができるでしょう。就労継続支援事務所A型での勤務を通して、自分に合った働き方を見つけることができると良いですね。