児童相談所とは?役割や相談の流れを解説【相談内容・職員・機能・役割】

近年、ニュースなどで児童相談所という言葉をよく耳にしますよね。児相とも略されるこの機関について、詳しく知らない方も多いと思います。この記事では、児童相談所とはどのような機関でどんな役割があるのか、児童相談所で働く人の業種や仕事の手順などを、詳しく解説していきます。「児童相談所ってどんなところなんだろう?」このような疑問をお持ちの方は、是非参考にしてくださいね。

児童相談所とは?

各都道府県に設置される児童福祉の専門機関

児童相談所とは、各都道府県に設置される児童福祉の専門機関です。一都道府県に対して、1箇所以上の児童相談所の設置が義務付けられており、令和6年時点では全国に234箇所の児童相談所があります。児童相談所では、原則0歳〜17歳までの子どもやその家庭に関する相談を受け付けています。相談内容に合わせて適切な支援を行い、子どもの権利を守りますよ。家族や両親からの相談を受けた後は、家庭への調査や指導、一時保護などの様々なサポートを行っているのです。

児童相談センターや青少年センターとの違いは?

機関の位置づけや対象年齢

児童相談所と児童相談センターの大きな違いは、機関の位置づけです。児童相談所は対象児の家族や関係者から直接相談を受けて支援を行います。一方、児童相談センターは各児童相談所の後方支援を行う中央児童相談所としての役割を担っています。また、電話相談事業や児童相談所同士の連携をはかる場の設置も行っていますよ。

児童相談所と青少年相談センターの大きな違いは、対象年齢と相談内容です。児童相談所は0歳~17歳までの人を対象としています。一方、青少年相談センターの対象年齢は15歳〜39歳の人が対象で、主に引きこもりや不登校、家庭内暴力や家出などの悩み相談に対応しています。

児童相談所の役割は?

相談

児童相談所の1つ目の役割は、相談業務です。児童相談所へ寄せられる相談内容と聞くと、虐待相談のイメージが強いかもしれませんね。児童相談所では、養育上の問題や子どもの障がい、子どもの非行など幅広い相談も受け付けています。これらの相談を柔軟に対応するために、児童相談所では電話相談員や受付相談員の他に、児童福祉司や児童心理司などの専門家も配置しています。

相談内容の例
養護相談:家庭で養護することが難しい状況にある子どもについての相談

児童虐待:子どもへの虐待に関する相談

保険相談:未熟児や虚弱児、内部機能障害児や小児喘息などの疾患がある子どもについての相談

障がい相談:身体障害や知的障害、発達障害がある子どもについての相談

非行相談:法に触れるなど将来が心配な非行をする子どもについての相談

調査・診断

児童相談所の2つ目の役割は、調査と診断業務です。子どもの家族や関係する人から相談された内容が、専門的な知識や技術を必要とする場合、専門的な角度から調査と診断をします。調査を行うことにより、子どもが抱える問題の発生原因を分析するのです。

調査する内容
・子どもの家庭の状況
・地域の状況
・生活歴や発達
・性格
・行動

また、診断の結果に基づいて援助方針を定め、必要に応じて指導や治療を行っていきます。

措置

児童相談所の3つ目の役割は、措置です。措置とは、子どもが置かれている状況に応じて児童福祉司や児童委員、児童家庭支援センターなどに子ども又はその保護者へ指導をさせる機能です。指導による改善が見られない場合には、子どもを児童福祉施設や指定医療機関に入所させることもあります。家族による育成が難しい場合は、里親へ委託を行うのも児童相談所の措置機能の1つです。措置を行う際は、親権者の同意と子ども自身の納得を得る必要があります。もし親権者の同意が得られない場合は、家庭裁判所へ承認の審判を申し立てることができますよ。

一時保護

児童相談所の4つ目の役割は、一時保護です。一時保護とは、子どもの心身に問題が見られ保護が必要になった際に、子どもを一時的に預かる機能です。一時保護は主に以下のような場合に行われます。

・迷子や虐待により緊急に保護が必要な場合
・子どもの行動の観察が必要な場合
・子どもの指導のために規則的な生活習慣の改善が必要な場合

児童相談所で働く職員の業種

児童福祉司

児童相談所には児童福祉司が配置されます。児童福祉司とは、子どもの福祉に関する相談に応じ、その支援や調査を行う職種です。児童相談所における児童福祉司の役割は以下の通りです。

・子どもや保護者から、子どもの福祉に関する相談への対応
・必要な調査や社会診断を行う
・子どもや保護者、関係者に必要な支援や指導を行う
・子どもや保護者の関係調査を行う

児童相談所で児童福祉司として働くには、任用資格の要件を満たし、地方公務員試験に合格する必要があります。

参考:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv09/01-02.html

相談員

児童相談所には相談員が配置されます。相談員には受付相談員や電話相談員などがあり、様々な相談に対応します。それぞれの役割は以下の通りです。

受付相談員の役割
・相談の受付対応
・面接と応急の援助
・会議に関する業務

電話相談員の役割
・電話での相談の対応

相談員の役割
・子どもや保護者からの福祉に関する相談の対応
・児童福祉司と協力して調査、社会診断を行う
・子どもや保護者、その関係者の相談に対して調査や診断、指導を行う

相談員として働くには、地方公務員試験に合格し、児童相談所に配属される必要がります。

児童心理司

児童相談所には児童心理司が配置されます。児童心理司とは、子どもの福祉に関する相談を受けて、心理学的な側面からケアを行う職員ことです。児童相談所における児童心理司の役割は以下の通りです。

・子どもや保護者の相談に応じて診断面接や心理調査と観察を行い、心理診断を行う
・子どもや保護者に対して、心理療法やカウンセリングなどの指導を行う
・一時保護となった子どもの訪問
・必要に応じて学校や家庭など、子どもに関わる場所への訪問

児童心理司になるには、心理学科やそれに相当する課程を修めて卒業し、任用要件を満たした者が地方公務員試験に合格する必要があります。

心理療法担当職員

児童相談所には心理療法担当職員が配置されます。心理療法担当職員とは、虐待などが原因で、心理的なケアが必要な子どもに心理療法を行う職員のことです。児童相談所における心理療法担当職員の役割は以下の通りです。

・子どもや保護者に対して心理療法やカウンセリングなどの指導を行う
・自立支援計画書の作成の際の助言
・子どもへの知能検査の実施

心理療法担当職員になる要件は、次のように定められています。

大学や大学院で心理学を専攻するか相当する課程を修了する。もしくは、これに相当する課程を修めて卒業した者であり、個人及び集団心理療法の技術や、これと同等以上の能力を有すると認められる者でなければならない。

参考:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000057362.pdf

医師(精神科医・小児科医)

児童相談所には医師が配置されます。児童相談所に配置を義務付けられている医師は、精神科医と小児科医です。医師は、子どもや保護者に対して医学的な調査や診断を行います。児童相談所における医師の役割は以下の通りです。

・診察や医学的検査などによる子どもの診断
・子どもや保護者に対する医学的知見からの指導と指示
・医学的治療
・脳波測定や理学療法などの指示と監督
・児童心理司や心理療法担当職員が行う心理療法などに必要な指導
・一時保護中の子どもの健康管理
・医療機関や保健機関との連絡調整と情報交換

保健師

児童相談所には保健師が配置されます。保健師とは、保健指導や衛生管理の専門家です。児童相談所での保健師の役割は以下の通りです。

・公衆衛生や予防医学的知識の普及
・育児相談
・障がい児や虐待を受けた子どもやその家庭に対する在宅支援
・子どもの健康や発達に関するアセスメントとケア
・一時保護している子どもの健康管理
・市区町村保健センターや医療機関との情報交換と連絡調整
・関係機関との協働による子どもや家庭への支援

保健師になるには、学校や養成所に通って看護師免許を取得し、所定の保健師養成課程を修了後、保健師国家試験に合格する必要があります。

理学療法士等

児童相談所には理学療法士等が配置されます。理学療法士の他に作業療法士や言語聴覚士などが配置され、子どもの身体機能や日常生活での動作、聴覚や発語に関するリハビリを行います。児童相談所における理学療法士や作業療法士、言語療法士の役割は以下の通りです。

理学療法士
・身体機能の回復のためにリハビリを行う
・手技や器具によって身体機能の改善を目指す

作業療法士
・日常生活で必要となる動作の改善を行う
・基本的動作能力や応用的動作能力、社会的適応能力の改善と維持をサポート

言語療法士
・聴覚や発語に関するリハビリ
・家族や教育機関と連携して周辺環境を整える

臨床検査技師

児童相談所には臨床検査技師も配置されます。臨床検査技師とは、医師の指示のもと患者の血液や尿、脳など身体の検査を行う職業です。児童相談所での臨床検査技師の役割は以下の通りです。

・病気の診断や治療
・健康の維持に必要な検査
・脳波測定などの検査

臨床検査技師として働くには、国家試験に合格して臨床検査技師免許を取得する必要があります。また、受験資格を満たしていないと国家試験を受験することができません。

その他

児童相談所には、その他にもたくさんの職員がいます。各職員の仕事内容は次の通りです。

児童指導員や保育士
・一時保護中の子どもの生活指導や学習指導
・児童福祉司や児童心理司と協力して子どもや保護者への指導

看護師
・一時保護中の子どもの健康管理
・精神科医や小児科医の診断に関わる補助的な業務

栄養士
・栄養指導
・栄養管理や衛生管理
・一時保護中の子どもの給食の献立作成

調理員
・一時保護中の子どもの給食業務

児童相談所の仕事の手順

援助方針の決定

児童相談所で援助方針が決定するまでの流れは次の通りです。

受付:虐待の報告や相談を受けたら、報告者から対象者の住所や現状を情報提供してもらい、受付表を作成する。

受理:所長や報告を受け付けたスタッフ、他に対応可能なスタッフを集めて会議を開き次の内容を決定する。
   
調査と診断:必要な場合は保護者の出頭要請や現地訪問、家庭訪問を行う。子どもや保護者、関係者との面接と普段の様子の観察を行い、生活環境の調査を実施する。

援助方針の決定:それぞれの診断をもとに援助方針を決定する。

援助の実行

援助方針が決定したら、その方針に従って援助を実行します。援助を実行するときは、子どもや保護者に援助を行う理由や方法を説明する必要があります。子どもや保護者の意見を聞く際に保護者への指導も行います。主な指導の例は以下の通りです。

・電話や文書、面接などの方法による助言指導
・治療プログラムやカウンセリングなどの継続指導
・家庭訪問や通所等による児童福祉指導
・家族間の人間関係や経済的援助などの児童委員指導

虐待を受け、危機的な状況にある子どもと家族の場合は、施設入所措置や里親委託などの制度が利用される場合もありますよ。

まとめ

たくさんの職員が協力して子どもへの支援を行っている!

いかがでしょうか。今回は児童相談所について詳しく解説していきました。児童相談所は0歳〜17歳までの子どもや、その家庭に関する相談を受け付けています。養育への不安や虐待、健康問題など相談される内容は多岐にわたりますよ。こども家庭庁によると、近年では子どもへの虐待に関する相談の件数が増加しており、児童相談所の需要が高まっているそうです。子どもに関する悩みを解決するためには、児童相談所に配置される児童福祉司や児童心理士といった、たくさんの職員の連携と協力が必要不可欠なのです。この記事を参考にして、児童相談所への理解を深めてくださいね。