療育手帳を取得するメリットや更新方法とは?【発達障害・愛の手帳・税金・手当・等級】

療育手帳という存在は知っていても、具体的にどのような場面で使うことができるのか、詳しくは知らないという人は多いのではないでしょうか。この記事では、療育手帳を取得するたくさんのメリットについて解説します。療育手帳を取得しようか悩んでいる人や、療育手帳を取得したけれどどのような場面で使えば良いのかわからないという人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

療育手帳とは?

知的障害者が取得できる障害者手帳

療育手帳とは、「児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される手帳※」です。自治体によっては愛の手帳や愛護手帳、みどりの手帳などと呼ばれることもあります。身体障害者手帳や精神障害者手帳と異なり、法的裏付けはありません。そのため、療育手帳については都道府県等が独自に運営をしており、手帳の名称や障害区分、受けることのできるサービスが各自治体によって異なるという特徴があります。
厚生労働省ホームページより引用

療育手帳を取得するには?

発達検査を受ける

療育手帳を取得するには、知的障害者であるという判定を受ける必要があります。18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所で判定を受けることができます。判定機関では、子供の状況や今の困りごとを保護者から聞き取り、知能検査の結果も踏まえて、障害の状況を客観的に把握します。状況把握を通して、どのような支援が必要なのかを判断し、療育手帳の交付の判定や、手帳の等級が決まりますよ。

住んでいる自治体に申請する

住んでいる市区町村の窓口に相談・申請することで、療育手帳を取得できます。自治体によっては、窓口と判定機関が直接やり取りをし、申請書を送付してくれるところもあるようです。都道府県や市区町村によって申請手続きや申請に必要なものは異なるため、まずは窓口に相談してみると良いでしょう。申請に必要な書類の例は以下の通りです。

  • 申請書
  • 印鑑
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm)
  • マイナンバーカード
  • 母子手帳や幼少期の様子がわかる資料(自治体による)

療育手帳を取得するメリット

各種手当が受けられる

療育手帳を取得するメリットとしてまずあげられるのは、各種手当が受けられることです。所得制限などの条件はありますが、療育手帳を持っていることで、特別児童扶養手当や障害児福祉手当、特別障害者手当の対象になることがあります。それぞれの支給対象や金額は以下の通りです。

        
手当の種類
支給対象
支給月額
特別児童扶養手当精神又は身体に障害を有する児童を過程で監護、養育している父母等1級 55,350円
2級 36,860円
障害児福祉手当精神又は身体に重度の障害を有するため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の者15,690円
特別障害者手当精神又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の者28,840円

所得制限等のより詳しい情報は、厚生労働省のホームページを確認してみてください。また、各自治体独自の手当がある地域もあるため、お住まいの地域のホームページ等も確認してみると良いでしょう。

税金の控除や減免

療育手帳を利用するメリットとして次にあげられるのは、税金の控除や減免の対象となることです。主に以下のような控除や減免を受けることができます。

     
障害者本人が受けられる特例
所得税27万円の控除(特別障害者の場合は40万円)
相続税85歳に達するまでの年数1年につき10万円の控除
(特別障害者の場合は20万円)
贈与税信託受益権の価額のうち3000万円までは非課税
(特別障害者の場合は6000万円まで)
少額貯蓄非課税制度(マル優)350万円までの預貯金・貸付信託・公社債・公社債投資信託などが非課税
少額公債非課税制度(特別マル優)350万円までの利付国債・公募地方債が非課税
 
障害者を扶養している人が受けられる特例
所得税同一生計配偶者又は扶養親族にあたる障害者1人当たり27万円の控除
(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)

税金の控除や減免について詳しくは、国税庁の障害者と税のページを確認してみてください。

各種料金の免除や割引

税金だけでなく、日常生活に必要な様々な料金も免除や割引になることがあります。免除や割引の例は以下の通りです。

       
割引対象
割引内容
詳細
NHK受信料全額免除世帯構成員のうち1人以上が障害者手帳を所持、かつ、世帯全員が市町村民税非課税の場合
受信料半額免除最重度または重度の障害を持つ人が世帯主かつ受信契約者の場合
有料道路通行料金の割引例:NEXCO東日本 50%の割引
携帯電話基本使用料金の割引
新規契約等各種手続きの手数料無料等
例:ドコモのハーティ割引、auのスマイルハート割引、ソフトバンクのハートフレンド割引

上記の例だけでなく、他にも様々な企業で障害者対象の割引を行っています。身の回りで希望する割引制度を設けている企業がないか、チェックしてみると良いでしょう。

交通機関の割引

また、交通機関でも障害者割引制度を利用することができます。割引制度の例は以下の通りです。

          
交通
企業
詳細
鉄道JR東日本第一種障害者とその介護者を対象に、普通乗車券・回数乗車券・普通急行券が50%割引
バス西部バス療育手帳を持つ本人とその介護者1名を対象に、片道運賃が5割引き・定期券運賃が3割引き
航空JAL療育手帳を持つ本人とその介護者を対象に割引(国内線のみ)
タクシー日本交通乗車した区間のタクシー料金が1割引き

交通機関では、障害者割引制度だけでなく、障害者が交通機関を利用する時のサポートも充実しています。療育手帳を持っていることで、スムーズにサポートを受けることができるでしょう。

医療費の助成

医療費の助成を受けられることも、療育手帳を持つことのメリットです。東京都では、愛の手帳1度・2度の人を対象に、心身障害者医療費助成制度(マル障)として、一部負担金を差し引いた額が助成されます。一部負担金の額については、以下の通りです。

引用:心身障害者医療費助成制度(マル障)|東京都福祉局

今回例とした東京都だけでなく、他の多くの自治体でも医療費助成制度を設けています。所得制限等もあるため、詳しくはお住いの地域のホームページ等をチェックしてみてくださいね。

保育や教育でのサポートを受けられる

ここまでは主にお金に関するサポートを紹介してきましたが、金銭的な面以外でも療育手帳を持つメリットはたくさんあります。その例として、保育や教育でのサポートがあります。幼稚園や保育園では、加配保育士という、園での生活を個別にサポートしてくれる保育士がついてくれる場合があります。特に、集団での生活を苦手とする子の場合は、安心して幼稚園や保育園に通わせることができますね。また、特別支援学校への入学を希望する場合、療育手帳の提示を求められることがあります。他にも、各自治体によって様々な教育サポートを受けることができるでしょう。加配保育士については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

災害時に避難支援が受けられる

災害時に避難支援を受けることができるのも、療育手帳を持つメリットのひとつです。災害時には、普段と違う状況に混乱してしまう人も多いでしょう。東日本大震災をきっかけに内閣府が定めた、避難行動要支援者名簿に登録しておくことで、いざというときにサポートを受けることができます。また、神奈川県海老名市では、障害の内容等を記したシールを貼った、要援護者ベストを無料配布しています。他にも、独自の避難支援を行う地域がありますので、お住まいの地域のホームページなどを確認してみましょう。

就職活動時に障害者特別雇用枠で入社試験を受けられる

療育手帳を持っていると、就職活動時に障害者特別雇用枠で入社試験を受けられる場合があります。採用試験を受けるときだけでなく、入社後もその人にとって働きやすい環境で働けるように、配慮をしてくれることもあるでしょう。障害者雇用枠は、労働者側だけでなく、企業にとってもメリットがあります。障害を持つ人が働きやすい環境にするための助成金や奨励金を、国から受け取ることができるのです。障害を持っていると、一般の人と同じように働くのは難しいこともあるでしょう。しかし、障害者特別雇用枠で入社することで、安心して働くことができますね。

日常生活でのサポートが受けられる

療育手帳を取得することで、日常生活の様々な場面でサポートを受けることができます。日常生活で受けられるサポートの例には、以下のようなものがあります。

    
サポート例
詳細
粗大ごみの運び出し収集例:東京都港区 愛の手帳の交付を受けており、身近な人の協力を得るのが困難な世帯が対象
書類の代用各申請で必要な別途書類を療育手帳で代用できることがある
福祉サービス利用援助事業例:埼玉県新座市 判断力の不十分な人へ、契約により福祉サービスの利用援助、日常的金銭管理等を行う

療育手帳のマイナス面

本人や家族の気持ちの負担になる場合がある

療育手帳にはメリットが多くある一方で、マイナス面もいくつか見られます。マイナス面の一つ目は、障害を持つ本人や家族の気持ちの負担になる場合があることです。療育手帳を持つことで、自分または家族は障害者であると改めて自覚させられることがあるようです。また、療育手帳を持っているという、周りからの偏見に悩まされることもあるでしょう。しかし、療育手帳は、知的障害があるからといって必ず取得しなければいけないものではありません。前述したようなメリットと、気持ちの負担を照らし合わせ、状況によって判断すると良いでしょう。療育手帳が必要なくなったと思ったら、返納することもできます。

更新や変更に時間がかかる

二つ目は、更新や変更に時間がかかることです。各市町村の窓口に更新の申請をし、再判定が必要な場合は、2~3ヶ月前から面談の予約をする必要があります。再判定後も、実際に手帳が交付されるまで1~2ヶ月と長い期間がかかります。療育手帳は定期的な更新が必要なため、その都度これだけの時間がかかっては、面倒に感じることもあるでしょう。しかし、面倒だからと更新を怠ると、福祉サービスを受けることができなくなってしまいます。更新期限を定期的に確認し、更新をし忘れることがないよう注意しましょう。

療育手帳の更新時期

2~4年に一度

療育手帳は、自治体によって異なりますが、2~4年に一度更新を行う必要があります。また、更新時期は年齢によっても異なります。18歳未満では2~4年に一度、18歳以上40歳未満では10年に一度、40歳以上では更新の必要がないところが多いようです。大人になってから知能指数が変化することは通常ありません。そのため、ある程度の年齢になると永久認定となり、更新が不要になるのです。

障害の程度が大きく変わったとき

決められた更新時期に関わらず、障害の程度が大きく変わったときも療育手帳の更新が必要です。この場合も、各市町村の窓口に申請することで通常の更新と同じような手続きで更新することができます。障害の重さによって手帳の等級が決まり、手帳の等級によって受けられるサービスが異なります。必要なサービスを受けるためにも、障害の程度が変わったかも?と思ったら療育手帳の更新をするようにしましょう。

療育手帳を更新するときに必要なこと

再判定を受ける

療育手帳を更新する際には、障害の再判定を受ける必要があります。18歳未満は児童相談所で、18歳以上は知的障害者更生相談所で再判定を受けることができます。再判定の予約はなかなか取れないことが多く、時間がかかるため、更新は早めに動きだせると良いでしょう。再判定の際に、療育手帳の等級が変わることがあります。等級の決定には、知能指数(IQ)が大きく関わっています。知能指数の数値によって等級の目安はありますが、それ以外にも日常生活の能力など、総合的に判断されます。

まとめ

療育手帳の内容を把握して療育手帳を活用しよう!

いかがでしたか?今回は、療育手帳を持つメリットや更新方法など、療育手帳について詳しく説明しました。療育手帳を持つことで、税金が控除されたり、保育や教育でのサポートを受けられたりと、様々なメリットがあります。一方で、気持ちの負担などマイナス面も少なからずあります。この記事を参考にして、療育手帳を取得するかどうか、それぞれの状況に合わせた最善の判断ができると良いですね。